あらすじ
善作(小林薫)は小原「洋裁店」とするべく、質屋の雇われ店主となり、家族とともに家を出た。戸惑う糸子(尾野真千子)だが千代(麻生祐未)に励まされ、ハル(正司照枝)との2人暮らしを始める。迎えた開店の日、家族たちに祝福され気持ちを新たにする糸子。しかし急には繁盛せず、ヤス子(中村美律子)ら客からまた裁断だけを頼まれてしまう。そんなある日、珍しく伯父・正一(田中隆三)に連れ出され、意外な人物と再会する。
43回ネタバレ
小原家
居間
糸子「お父ちゃんより 今は うちのが よっぽど この家 支えてるんや! 商売だけは うちが したいように さしてもらう!」
玄関前
糸子「看板 どこ 行ってん?」
玄関
糸子「何? これ。」
台所
ハル「あんなあ 今日から うちと あんたの二人っきりや!」
旧小原呉服店
ハル「これが お父ちゃんの けじめのつけ方や。 黙って 受けちゃり。」
糸子「どこ 行ったん? お父ちゃん…。」
ハル「隣の大松町や 神宮司さんの伝でな 質屋の店主になる事に なったんや。」
糸子「お母ちゃんらは?」
ハル「その質屋の奥に 家が ついちゃあるし そこで暮らす事になる。 なら あんたは 7人も家族 養う事 あらへん。 うちと あんたの 2人分で 十分じょ。」
糸子「うちは 嫌や。 家族が バラバラになんのなんか 嫌や。」
ハル「分かっちゃりて。 お父ちゃんかてな しんどかったんやし。 あんたの稼ぎで 食わせてもらうのが ず~っとな。」
<急にガランとしてしもた家は 寂しいし 心細いし ただの雪まで 何か知らん 怖い>
玄関
(戸をたたく音)
糸子「へっ?!」
(戸をたたく音)
糸子「嫌!」
千代『糸子~。』
糸子「えっ?!」
(戸をたたく音)
千代『糸子 開けて~。』
(戸をたたく音)
糸子「あっ あ~ お母ちゃん?!」
千代「はあ~ 寒かったあ! う~ いや~。」
糸子「どないしたん?!」
千代「はあ~ 寒かった。」
糸子「いや~ 寒かった ねっ。」
千代「それが 夕方 引っ越しが おおかた 一段落したら お父ちゃん 途端に あんたの事が 心配になってきたみたいでなあ『糸子んとこ 行っちゃれ! 今すぐ 行っちゃれ!』って 言いだして…。」
千代「ほんまは あんたが 仕事から帰ってくんのん 迎えちゃるつもりで 出かけてきたんやけど 慣れへん道やさかい『あれ? あれ?』ちゅうて 歩いとったら 訳の分からんとこに 出てしもて… はあ~。」
糸子「あ…。」
千代「はっ はれ はれ はれ いや!」
糸子「う~ん。」
千代「いや… ご… ごめんな! 堪忍 ごめんやて。 いや これ… これかいな 看板?」
糸子「うん。 エヘヘヘ… ほら。」
千代「は~あ~! まあ ええやんかあ! 小原洋裁店… へえ~! いや~ あ~! はあ…。」
糸子「何や…。」
千代「う~ん?」
糸子「お母ちゃんの顔 見たら やっと この看板 喜んでもええ気ぃ なってきたわ。」
千代「喜びいな あんた 何ぼでも。 あんたの看板や! とうとう 小原洋裁店が できるんやで。」
糸子「うん… そやな。 そやけどな…。」
千代「ん?」
糸子「うちのせいで 家族が バラバラになってしもたんや。 お父ちゃんが ず~っと しんどかったんやて思たらな…。」
千代「あれあれあれあれ…。」
糸子「うちは… なんちゅう事 してしもたんやろ。 みんなに どないして謝ったら ええんやろと思たらな…。」
千代「アホやなあ。 そんな事 思わんでええ。 あんたは ただ 頑張ったんやし。 お父ちゃんかて 静子らかて あんたが悪いなんか ちっとも思てへん!」
ハル「あれ? 来ちゃあったんけ。」
千代「はい。」
ハル「あれ? どないしてん 糸子。」
糸子「おばあちゃん あっち行ってて!」
ハル「何や? 泣いてんけ?」
糸子「『あっち行って』て 言うてるやろ!」
<それから しばらくして ちょうど 桜が咲いた頃に>
玄関前
「気を付けてや!」
「どないや?」
「ええんちゃう?」
<うちの屋根に 小原洋裁店の看板が上がりました>
静子「姉ちゃ~ん!」
光子 清子「糸子姉ちゃ~ん!」
糸子「見て! 見て 見て!」
静子「うわ~!」
光子「小原洋裁店!」
木之元「どや すごいやろう!」
善作「おう。」
糸子「お父ちゃん うちな…。」
善作「お前… 肥えたやろ?」
糸子「はあ?!」
善作「ちょっと見んうちに 顔パンパンや。」
糸子「肥えてへん。 肥えてへんわ!」
善作「お~い 酒 持ってきたど~!」
木之元「いやいや 持ってきたて そら 糸ちゃんの開店祝 ちゃうんけ?」
善作「かめへん かめへん! はよ下りてこい!」
木岡「ほい。」
糸子「うわ~ きれえなあ。」
木岡「開店 おめでとうさん。」
糸子「おおきに!」
美代「ほんま おめでとうなあ。 繁盛させや。」
糸子「うん。」
節子「おめでとうさん。」
「おめでとうさん。」
「おめでとう!」
「おめでとう!」
(拍手)
糸子「おおきに! おおきに!」
糸子「うち 頑張るさかい 見とってな!」
「糸ちゃん 万歳!」
(拍手)
糸子「おおきに! おおきに おおきに!」
<そいでも やっぱし 商売ちゅうんは そんな簡単なもんやありません。 店 開けてすぐ 駒ちゃんとサエが 注文に来てくれたものの まだまだ お客さんは チョロチョロ。 人っ子一人 来えへん日ぃも あります>
小原洋裁店
ヤス子「ああ ここや ここや!」
大山「はあ やっと見つけた~!」
糸子「あれ~? こんにちは。」
ヤス子「まあ 久しぶり! あんた 末松 辞めたんやて?」
糸子「はい。 自分で 店 始める事になったんです。 小原洋裁店いいますねん。」
ヤス子「あ~ ほんまじょ!」
大山「ごっついわ~!」
糸子「入って 入って。」
ヤス子「いや~ ほんでな うちら こないだ また 末松に生地買いに行ったら あんた いんように なってしもたやんか。 大将に『生地 切ってくれんと 困るわ!』ちゅうたら あんたが ここに いてるて 教えてくれてな。」
大山「悪いねんけど あの生地 切るやつ やってくれへん? これ!」
糸子「そら 堪忍して下さい。 うちは もう 生地屋の店員と ちゃうんやさかい。」
大山「そんなケチくさい事 言わんと。 頼まあ~!」
ヤス子「あんたと うちらの仲やんか。 ほれ 土産に わらび餅かて 買うてきてんで。」
糸子「いやいやいやいやいや…。」
<結局 押し切られしもて>
ヤス子「ええわ~ 大山さん それ やっぱし よう似合うてら。」
大山「ほんまけえ?」
<そんな ある日 久しぶりの 珍しいお客さんが ありました>
正一「こんにちは。」
糸子「おっちゃん! いや~!」
正一「ハッハッハ 糸子 見たで。 立派な看板が 上がっとうやないか。」
糸子「どないしたん?」
正一「ハッハッハ。 どないや? うまい事 いっとうか?」
糸子「ぼちぼちや。」
正一「ぼちぼちで 上等や。 出だしは そんなもんや。」
ハル「まあ 正一さん! ご無沙汰してます。」
正一「ハハハハハ!」
ハル「さあ どうぞ どうぞ!」
正一「ええ あ いやいや う~ん。 あ 糸子 ちょっと コーヒーでも飲めへんか?」
糸子「へっ?」
カフェ・太鼓
平吉「いらっしゃい!」
糸子「フフッ 声 裏返ってんで。 お連れさん あっこです。」
糸子「川本さん?!」
正一「お待たせ。」
勝「久しぶりやな。 開店 おめでとうさん!」
糸子「ああ?! おおきに…。」
正一「まあまあ 座り。」
平吉「何にしましょ?」
正一「ああ 僕は コーヒー。」
勝「僕も コーヒー 下さい。」
糸子「この店は ココアて おいてんけ?」
平吉「おこわ?」
糸子「ココア!」
平吉「ココアは 置いてません。」
糸子「ほな ぜんざい。」
平吉「コーヒー 2つと ぜんざい。」
<そやけど… 何や? おっちゃんと 川本さん 一体 何や これ?>