あらすじ
糸子(尾野真千子)のもとに300坪のテントを一晩で縫うという大仕事が舞い込む。あきれつつもハル(正司照枝)が手伝い、テントは完成するが、糸子はミシンを踏み過ぎて膝を痛めてしまう。医者の言いつけに背いて糸子は仕事を続け、看護師の制服作りまで思いつく。祝言の翌日が期日とあって当日もミシンから離れず、花嫁なのに大遅刻してしまう。しびれを切らして迎えに来た奈津(栗山千明)は目の前の光景に驚かされることに。
46回ネタバレ
小原家
居間
善作「身ぃ 固め。」
糸子「はあ?」
善作「川本 勝君。 お前も よう知ってるやろ。」
糸子「ええ人は ええ人やけど…。」
3人「ほな ええやないか!」
<結婚が決まってから とにかく みんな喜んでくれてました。 そやけど 話 進めたんは 周りの大人で 別に うちの手柄やない『おめでとう』ちゅわれたかて どない喜んで ええんか 分からへん。 居心地悪い思い しちゃあった時に その おっちゃんが 汗だくの顔で…>
玄関前
「頼みたい仕事が あんやしょ! このとおりや!」
<そうや。 うちの手柄は こんな おっちゃんから こんな真剣に 仕事を 頼んでもらえる職人やちゅう事や>
糸子「任せて下さい。」
小原洋裁店
ハル「300坪のテントて?! 明日までにけ?」
糸子「うん。」
ハル「300坪て… また 何で そんな仕事 引き受けるんよ?」
糸子「タバコの栽培に使うんやて。」
ハル「そんな事 聞いてへん! あんた 祝言 決まったちゅうてんのに そんな むちゃして 体 壊したら どないすんよ?」
糸子「もう 受けてしもうたさかい 仕上げるしかないし。」
<そやけど さすがに 300坪は 生地の量が ものごっついし 洋服のと違て 分厚いよって 力がいる>
(ミシンの音)
(針の折れる音)
糸子「あ… また折れてもうた。」
ハル「ほら 持っといちゃる。」
糸子「ああ おおきに。」
糸子「ああ…。 あっ イテテッテ イテテッテ…。」
ハル「どないしたん?」
糸子「膝が…。」
ハル「ほれ見てみい 言わんこっちゃない。」
(ミシンの音)
糸子「痛い…。」
(倒れ込む音)
糸子「う~ん…。」
ハル「はい? どないしたん?」
糸子「でけた…。」
ハル「でけた? でけたんか…。」
糸子「うん そやけど…。」
ハル「そやけど 何や?」
糸子「膝… 固まってもうた。」
ハル「ええっ?!」
木岡履物店
(戸をたたく音)
ハル「木岡さん! 起きてるか?」
(戸を叩く音)
ハル「木岡さん!」
美代「どないしたん?」
ハル「あのな 糸子が… 糸子が えらいこっちゃねん。」
岸和田商店街
木岡「な な! どいてや!」
糸子「走らんでええて おっちゃん。」
木岡「何がや! はよ 医者に診てもらわな 歩けなくなったら どないするんじゃい!」
<木岡のおっちゃんが だんじり並みの走りを 見せてくれた おかげか…>
病院
(ドアが開く音)
<うちは 歩けへんようには なりませんでした>
木岡「どやて?」
糸子「うん『ミシンは 1週間ほど やめて また 診せに来なさい』て。」
木岡「歩けるんけ?」
糸子「うん。」
木岡「この子な 11月に 祝言 決まってるんですわ!」
「大丈夫。 それまでには 治りますよ。」
木岡「はあ~ よかった…! は すいません 行こう。」
小原家
座敷
貞子「ふ~ん いまひとつやなあ。」
「いや~ せやけど これなんか 上物中の 上物なんでっせ。 見とくなはれ この箔使い。」
糸子「おばあちゃん。 うち これで ええて。」
貞子「千代 あんた どう思う?」
千代「そうやなあ それも似合うてるけど もっと ちゃうのんも 見てみたいなあ。」
貞子「そやろ? 私も この中では よう決めんわ。」
「ほな また別のを お持ちしまひょか?」
貞子「そうしてくれるか?」
「へえ。」
ハル「こんなん してもろて ありがたい事です。」
貞子「そら おかあさん 何て言うても 糸子の花嫁衣裳ですから 何ぼ出しても 惜しない 思てます。」
千代「いや~ おおきに!」
(笑い声)
<はあ~ はよ祝言 終われへんかの… そやけど 悪い事ばっかりでもありません>
小原洋裁店
糸子「おおきに。」
「お祝いちゅうたら 何やけど この際やし 注文さしてもらうわ。」
糸子「いや~ おおきに。」
<こんなお客さんも チラホラ来てくれて>
(ミシンの音)
<今月は ちょっとは 儲けも出そうです。 けど…>
(ミシンの音)
<膝は なかなか 休める間も ないせいか きっちり治ってくれてません。 ひどなるたんびに 病院 行っちゃあ 先生に『治す気あるんか!』て 怒られて 帰ってきます。 そやけど ある日ぃ うちは 気付いたんです>
病院
<は~ うちとした事が 今日まで 何 ボケッと見ちゃあったんや。 こんな ええ商売の口が 落ちてるやんか>
医師「はあ?」
糸子「看護婦さんの制服を 洋服にすべきです。 看護婦さんみたいな 大変な仕事の人らの制服こそ もっと動きやすうて 衛生的でないと あきません! うちは こう見えて 心斎橋百貨店の制服を 作ったんです。 どうか うちに任せて下さい。」
医師「いや そやけど あんた『その膝を ちゃんと休め』ちゅうてんのに…。」
糸子「いや それは あの…。 うちには 弟子が 3人 いてますよって ミシンは その子らに 踏ませます! あ デザインは もっとええの 考えますよって。 ちょっと すんません。」
医師「あ こらこら これは カルテや!」
河原
(鼻歌)
<やりました! 看護婦さんの制服 10着分! 取りました!>
小原家
小原洋裁店
糸子「あ… まずい。」
<よう見たら うちが約束してきた 制服の納期は ちょうど 祝言の次の日ぃでした。 けど 祝言の前に 仕上げてしもたら 済むだけの話です。 どないか なるやろ!>
(ミシンの音)
座敷
美代「ほう~ いや~ こら ごっつう上等やなあ! さすがやな 神戸のおばあちゃん。」
「フフフフフッ な!」
ハル「かなんで~。 糸子には 上等すぎるわ。」
「そやけど 一生に一回のこっちゃ。 神戸のおばあちゃんも うれしいんやで。」
ハル「そら もう この世の春みたいに 喜んでるし。 うちも 文句 よう言えなんだ。」
(笑い声)
美代「そらそうやなあ!」
「言うたら 罰 当たるわ もう。」
<膝は ほんまに やっかいでした。 こやつのせいで 思ったように 仕事が進みません>
台所
(小鳥の鳴き声)
千代「こんにちは!」
小原洋裁店
(ミシンの音)
「はれ?! 何や あんた まだ 仕事してんのかいな?! え~っ!」
糸子「先 行っとって。」
千代「え~っ?!」
ハル「ほんまに もう このアホは 何べん言うても 仕事 やめよらへんやし!」
千代「そない急がなあかん仕事なんか?」
糸子「う~ん。 まあ 時間には 間に合うように 行くよって 先 行っとって。」
ハル「知らん 勝手にせえ! もう 行こ行こ! ほっとこ!」
千代「え え~っ?!」
ハル「ほれ! あんたも はよ行かな 婿さんらが 来てまうで?!」
千代「へ… へえ。 ほな あとで… あとでな! あ~あ~。」
<あと1着… あと1着や。 落ち着いたら でける>
糸子「あ~っ ああ… 痛あ!」
吉田屋
(虫の鳴き声)
廊下
奈津「もう~ どうゆうこっちゃ?! なんで 花嫁が こんな遅れてんや?! もう~!」
座敷
光子「あの人ら 誰?」
静子「勝さんの弟さんらやて。」
清子「全然 似てへんやん。」
光子「男前やなあ。」
妹達「なあ。」
善作「あんなあ ものは相談やけどな。」
勝「はい。」
善作「あてにして 待っちゃあったかて 糸子の奴は アホやさかい いつになるや 分からへん。」
勝「はあ。」
善作「いっその事 始めてまうっちゅうのは どや?」
勝「あ~ いや… それは ちょっと かわいそうと ちゃいますか?」
善作「いいや! 何も かわいそうな事 あらへん。 な~んも。 あのアホのために 飲みたい酒も 飲めんと 待たされてる客の方が ず~っと かわいそうや。」
勝「う~ん… まあ そうですね。」
善作「よっしゃ! ほな そういう事で ええな?」
勝「はい!」
善作「え~ ここいらで 始めたいと思います。」
一同「え~っ!」
木之元「ちょ ちょい… 花嫁は?」
善作「細かい事 言うな 電気屋。」
木之元「いやいや 細かいて…。」
善作「これは おかまいなく。」
木之元「おかしいやん かまうわ!」
玄関
奈津「ちょっと! 来たか? 花嫁。」
「それが まだ…。」
奈津「はあ?! あのアホ 祝言を何やと思てんねん! 呼びに行ってくるわ。」
「は?」
奈津「引きずってでも 連れてきちゃる!」
小原家
玄関前
奈津「ほんまに あのアホが…!」
(戸をたたく音)
奈津「ちょっと! いてんやろ?!」
(戸をたたく音)
糸子『誰…?』
奈津「うちや! 奈津や! 何してんよ あんた? 開けり はよ!」
糸子「自分で開けて~。」
奈津「はあ?! あんた ええかげんにしいや!」
小原洋裁店
奈津「あ… 何?」