あらすじ
膝を痛めて立てない糸子(尾野真千子)は奈津(栗山千明)に背負われて祝言に向かったが、婚礼衣装を忘れてしまう。しかし奈津に衣装を借り美しい花嫁姿となる。勝(駿河太郎)に優しく迎えられ、一同の温かい祝福に涙ぐむ糸子。翌朝、代わって納品に行ってやるという勝に、夫がいる生活も悪くないと思う糸子。2階で紳士服を仕立てる勝はいつも機嫌がよい。しかし、いつまでも同僚同士のような2人にハル(正司照枝)が注意する。
47回ネタバレ
小原家
小原洋裁店
(戸を開ける音)
奈津「何?」
糸子「ちょっとな。 膝を休めてんやし。」
奈津「膝?」
糸子「ちょっと休めたら すぐ歩けるようになるよって。」
玄関前
(戸をたたく音)
奈津「ちょっと ちょっと すんません!」
(戸をたたく音)
奈津「すんません! 誰か いませんか?」
道中
糸子「悪いな 何や重たないか?」
奈津「重たいわ どんだけ肥えてんよ!」
糸子「最近 お代わりしてへんさかい 痩せたはずやけどな。」
奈津「この貸しは 倍にして 返してもらうよってな。」
糸子「しゃべり過ぎたら 息切れんで。」
奈津「うるさいわ!」
吉田屋
座敷
(談笑)
ハル「なんぼ何でも遅すぎるで。 花嫁 来んまに終わってしまうで。」
千代「呼んできましょか。」
ハル「いや 花嫁の親まで おらんようになったらまずい。 静子らに走らせ。」
千代「はい。」
ハル「かっ! ほんまに あのアホが。」
玄関
玉枝「糸ちゃんが何ちゅうても 引っ張って連れてくるんやで。」
勘助「ああ。」
八重子「大丈夫なんか勘助ちゃん。」
勘助「任しといて。 ああ~! 行ってくら~!」
(戸の開く音)
玉枝 八重子「あ! 糸ちゃん! 奈っちゃん?!」
奈津「はあ~! ああ~! この豚!」
控え室
ハル「ほんまに あんた 何 考えてんや! 向こうの親族さんまで みんな ずっと 待たす事になんねやで!」
千代「お母さん…。」
静子「よう分かってるよって。」
ハル「分かってへんな! このアホが なんぼゆうても 分かってへんねん!」
千代「すんません お願いします。」
静子「あっち行こうって!」
千代「ちょっと 待って!」
糸子「何や みんな 怖いなあ。」
八重子「糸ちゃん!」
糸子「え?」
八重子「糸ちゃん! あんた 花嫁衣裳持ってきたんか?」
糸子「おばあちゃん 持ってきてるやろ?」
八重子「おばあちゃんが 糸子が持ってくる事になってる 言うちゃあったで?」
糸子「あ… そやった。 取ってくる。 取ってくる! あ イタ! 痛い! イタ!」
玉枝「どないしよ! どないしょ!」
八重子「あ 勘助ちゃんに 取りに行かそうか?」
玉枝「そうしょ! どこに置いちゃんよ。」
糸子「え~ あのな 店入って 左手に 確か おばあちゃんの 風呂敷包み置いちゃあったと 思うわ。」
奈津「もう~! アホか! ええわ もう! 待っとき。」
奈津「うちのや! うちは 着られへんかったけどな。」
糸子「いや そやけど。」
座敷
(談笑)
勝「よろしくお願いします。」
千代「こちらこそ よろしゅう お願い致します。」
(談笑)
控え室
玉枝「歩けるか? せ~の!」
糸子「あ~ 痛っ! イタタ!」
玉枝「気ぃ付けや。」
奈津「『馬子にも衣装』。」
糸子「え?」
奈津「豚にも晴れ着!」
糸子「ちょっと…。」
玉枝「まあまあ。」
座敷
勘助「皆さ~ん! ご注目!」
「何や?」
勘助「何や いきなり 芸をやれちゅうて 言われましたんで やります!」
善作「何じゃそら お前 誰に そんな事 言われたんや?」
勘助「ここの若女将です。 はい 皆さん ご注目! よいや! よいや!」
木之元「下手くそ~! わし わしがやるわ。 どけ!」
木之元♬『さて さて さては 南京玉すだれ ちょいとのばせば はい しだれ柳に さも似たり』
廊下
奈津「もう一個 思いついた。」
糸子「あ?」
奈津「猿にも化粧。 行くで。」
座敷
(談笑)
木之元「花嫁や!」
勘助「はあ ほんまや!」
貞子「来た 来た 花嫁や! やっと来た!」
清三郎「なんと きれいな花嫁や!」
(拍手)
木之元「ほら! 花嫁も着いたこっちゃさかい ここらで もう一回 乾杯しようけ!」
善作「アホぬかせ その前に わしの『高砂』が 先じゃい。」
木之元「はいはい。 ほな 勝さん 糸ちゃん おめでとうさん! 乾杯!」
一同「乾杯!」
善作「♬『高砂や この浦船に』何やっとるんや! わしが謡ってるのに! このアホ!」
糸子「すんません 遅なってしもうて。」
勝「仕事やったんけ?」
糸子「はあ。」
<案外 うちの着物が ちゃう事には 誰も気づいてへんようでした>
清三郎「きれい きれい!」
貞子「フフフ!」
<いや ほんまは 気ぃ付いちゃあったかも しれません。 そやけど その事にも うちが遅れてしもた事にも 誰も何も言わんと ただただ 今日の日ぃを 喜んでるだけでした うちは 果報者です>
小原家
2階 寝室
(小鳥の鳴き声)
居間
糸子「おばあちゃん! うち 今日 10時までに 納品行かな あかんよって 朝御飯…。」
<あ そうや。 今日から この人 いちゃあったんや>
(小鳥の鳴き声)
ハル「勝さん。」
勝「はい。」
ハル「いわし 嫌いけ?」
勝「いや 好きです。」
ハル「ほうけ! ほな これ 食べり!」
勝「おおきに いただきます。」
ハル「御飯 入れよう。 な 今日の引っ越しの手伝いの人 ぎょうさん来んけ?」
勝「うん。 大した荷物やないさかい 弟と友達ら 何人かで 運び込んでくれるだけです。」
ハル「ほうけ。 ほな あんたも ちゃんと 手伝いや。」
糸子「ああ… うち 今日 納品あるよって 先 それ行ってから。」
ハル「納品みたいな 明日でも ええやろ。」
糸子「そんな訳にいけへんて。」
ハル「え?」
糸子「期日っちゅうんは 何があっても キッチリ守らな あかんもんなんや。」
ハル「よう そんな偉そうな事 言えるな。 祝言に あんだけ遅なったん 誰や。」
勝「納品 どこ?」
糸子「え?」
勝「わし 行っちゃるわ。」
糸子「え?」
勝「あんた 足 痛いんやろ。」
玄関
勝「ほな 行ってきます。」
糸子「頼んます。」
ハル「行ってらっしゃい! 気ぃ付けて。 はあ~ 若い男が 家に いてるっちゅんは ええもんやな。 さあ…。」
<確かに うちも そう思いました>
井戸
「おはようさん!」
糸子「おはようさん!」
<そやけど>
「お先やで。」
小原家
小原洋裁店
<お父ちゃんでも 勘助でもない 男の人が 家の中を うろうろしてるちゅうんが 何や うちには まだまだ けったいな感じです>
2階 座敷
ハル「あれ?」
勝「あ…。」
ハル「何で こっち敷くんや。」
寝室
ハル「糸子! あんたの隣に 敷けって言うたやろ!」
糸子「せやかて お互い 気ぃ遣うて よう寝んよって。」
ハル「何が気ぃ遣うや。 あんたらは 夫婦なんやで。」
糸子「へいへい!」
ハル「糸子!」
小原洋裁店
<そいでも 川本さん… いや 勝さんちゅうのは 奇特な人で うちが そんなんでもお構いなしで とにかく いつでも上機嫌。 どこにいてても 何やってても 上機嫌>
(笑い声)
ハル「どないしたんや?」
勝「それが 足の爪 切っちゃあったら…。」
(笑い声)
ハル「足の爪が どないしたんよ?」
勝「それが…。」
<けどまあ そうゆう人やさかい うちも おばあちゃんも 気ぃ遣わんでも済むんは ありがたい事でした>
糸子「足の爪一個で よう あんだけ笑えんな。」