ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カーネーション」第48回「果報者」【第8週】

あらすじ

糸子(尾野真千子)は勝(駿河太郎)と初めて話し合うことになった。仕事が好きで、奥さんらしいことができないかもしれないと打ち明けた糸子に、勝は、糸子の仕事をする姿にほれたのだから、思うように働けと言う。糸子はようやく結婚してよかったと思う。2年後、店は「オハラ洋装店」と名前を変え、間もなく長女・優子を授かり、善作(小林薫)が世話を買ってでる。母となり幸せいっぱいの糸子に、戦争の影が忍び寄っていた。

48ネタバレ

小原家

2階 寝室

糸子「勝さん! 朝やで。」

勝「うん? う~ん…。」

糸子「あ~ さぶ~!」

<うちと勝さんと おばあちゃんの 3人暮らしも どないか 板についてきました>

小原洋裁店

糸子「いらっしゃい!」

客「おはようさん。」

糸子「おはようさん。」

客「旦那 いてるけ?」

糸子「ああ いてますよ。」

<勝さんが 2階で紳士服を 始めてくれた おかげ 小原洋裁店は ぐっと 人に知られるようになって お客さんも増えてきました。『家内安全 商売繁盛!』結婚して ほんま よかったなあ! …て 喜んじゃったら>

客「おはようさん!」

糸子「あ~ いらっしゃい!」

<ある日 とうとう おばあちゃんに 怒られてしまいました>

居間

ハル「あんたなあ 新しい職人 雇たん ちゃうんやで。 勝さんは あんたの旦那さんなんやで。」

糸子「そら 分かってるけど…。」

ハル「分かってへん! あんたら 見ちゃあったら いっこも 2人で 話 してへん。」

糸子「してるやん 毎日。」

ハル「あんなん 話ちゅわへん! 注文が どうちゃら 納品が どうちゃら あら ただの連絡や! 今日こそ ちゃ~んと 同じ部屋で寝りや。 1回 ちゃ~んと 夫婦で 話 しい!」

2階 寝室

(犬のほえる声)

糸子「勝さん。」

勝「うん?」

糸子「あんな…。 うちな…。 仕事 好きなんや。」

勝「そら 見ちゃあったら分かるよ。」

糸子「そやから… この先… うちの店が どんだけ繁盛したかて もう働かんでも ええちゅうほど 儲けたかて うちは 働くと思う。 勝さんが 何で うちと 結婚しようと思てくれたんか 分かれへんけど… うちは そんなんや。 普通の家の奥さんみたいな こまごました 家族の世話やら… 死ぬまで でけへんかもしれへん。 寝てんか?」

勝「寝てへん。 聞いてるわ。」

糸子「そんなんやけど ええか?」

勝「かめへん。 ロイヤルで あんたが働いてるとこ見て ええなあ 思たんや。 愚痴 言わへん。 手ぇ抜けへん。 周りに どんだけ いびられようが 好きなようにやって 結果 出す。 こいつの仕事っぷり ほれぼれすんなあ 思ちゃあったんやし。 あんたは 思うように働いたら ええよ。 あとの事は まあ… おばあちゃんが どないかしてくれるやろ。」

糸子「フフフッ そやけど おばあちゃん 大概 年やさかいな。」

勝「長生きしてもらおや。 2人で稼いで ええもん食わして。」

糸子「うん。」

<それから いろんな話をしました。 これからの事 子供は どないするか 店は どないするか やっぱし 結婚して よかったんや。 うちは 心から そう思いました>

オハラ洋装店

(ミシンの音)

<2年が たちました>

<『小原洋裁店』は『オハラ洋装店』になりました>

玄関前

善作「はあ~!」

千代「なあ おとうちゃん ええ店に なりましたやろ?」

善作「ふん! カタカナやて。 何じゃ? 洋装店て。」

千代「このごろは 洋裁店より 洋装店ちゅうた方が しゃれとんやて。」

善作「けっ!」

小原洋装店

善作「へえ~!」

<新しく縫い子も雇いました>

善作「静子は どないや? ちっとは役立ってるか?」

糸子「まあ ぼちぼちな。 まだ ちょっと 甘ったれたとこ あるけどな。」

善作「せやけど お前 あんまし 事 せくなよ。」

糸子「えっ?」

善作「欲張って 急に 店 大きいしたろうやら 考えんな。 店ちゅうのはな おできと同じや。 急に大きいしたら あとは 潰れるだけじゃ。」

糸子「うちの店は おできと ちゃうよって。」

善作「ものの例え 言うとんのじゃ。」

糸子「ふ~ん…。」

善作「そんで どないやねん? その… おなかの子は。」

糸子「もう 重たて重たて かなわんわ。 はよ出てくれな。」

千代「ちょっと… ちょっと触らして。」

善作「ヘヘヘッ。」

千代「あ~ 動いてやる~! はよ出てきいなあ。 みんな 待ってるよってなあ。」

<おなかの子は 何の問題もなく 産み月を迎えてくれてたもんの うちとしては『せっかく 店 新しいしたとこやのに やっかいやなあ。 まあ 産むだけ産んだら その日のうちから また 店 出ちゃろ』そんな事 思っちゃあったんやけど>

2階 寝室

糸子「うう~ん…。」

<思い上がりも ええとこでした>

糸子「うう~ん… う~ う~ う~!」

千代「あの~ そろそろ お湯 沸かしましょか?」

産婆「いんや まだまだ。」

千代「ほな お昼御飯 用意させてもらいましょか。」

産婆「そやな。」

糸子「ああ~ あ~ あ~ あっ!」

産婆「だけどまあ それが 世の習いちゅうもんやよって。」

ハル「ほんまやなあ。 せやけど うちらの若い時分は そんな事 思てもみんかったけどな!」

産婆「ほんまやで。」

糸子「あ~ あ~ ああ~!」

ハル「まだまだ もっと気張らなあかんで。」

産婆「ほんま。」

ハル「頑張りや!」

糸子「あ~ あ~ あ~!」

<そんだけ しんどい お産のあとに…>

糸子「ああ~!」

産婆「よし よし。」

ハル「よかったなあ!」

千代「よかった… ほんまに よかったあ! よう 頑張ったなあ!」

<店なんか出られる訳ない。 3日間 ひたすら寝ちゃると 思いました。 ところが…>

(泣き声)

糸子「う~ん…。」

(泣き声)

<赤ん坊ちゅうんは 寝かせてくれるもんや ありません>

(泣き声)

(小鳥の鳴き声)

<けど 一番 思いも寄らんかったんは とにかく この… 赤ん坊の かわいさです>

糸子「かわいなあ。」

<それと もう一個は…>

居間

<この お父ちゃんの のぼせっぷりです>

善作「ええ子じゃ ええ子じゃ!」

(泣き声)

善作「えい えい!」

(泣き声)

ハル「おなか減ってん ちゃうか? 貸してみ。」

善作「嫌じゃ。」

ハル「何で?」

善作「何人 育てたと思てんじゃ。 わしが 泣きやます。 のう!」

(泣き声)

善作「何? えっ? おじいちゃんに だっこしてもらいたい? すごいなあ! こいつ。」

糸子「優子。」

ハル「優子! おりゃ!」

(笑い声)

善作「あのなあ…。」

糸子「えっ?」

善作「明日から 昼間は わしが 優子の面倒 見ちゃら。」

糸子「はあ?」

善作「お前な 乳飲み子 背負て 本気の仕事は でけんど。 で しゃあない。 わしに任せ。 心配すな! なあ はよ 貸せ! ああ はよ! ほら! ああ はよ! はよ! あ~ はよ! はよ! ああ もう! よし よし よし! はい! やややや や~! よち よち よち… ほらほら ほらほら…。 なあ! 明日からな 善ちゃんが なあ 世話しちゃるよってな~! ハハハハッ うれしいて!」

玄関

縫い子「お疲れさんです~!」

勝「お疲れさん!」

昭和12年(1937)9月

縫い子「お疲れさんです~!」

勝「お疲れさん!」

小原洋装店

糸子「今日は もう 店 終わったよって…。」

縫い子「お疲れさんです~!」

糸子「お疲れさん! ほな 今から迎えに行くわ。」

河原

糸子♬『烏 なぜ啼くの 烏の山に』

<忙しい一日が終わって 優子を おぶって歩く。 この時間が うちは しみじみと好きでした。 そやけど 何でか知らん 優子と おると うちは 自分が弱なった気ぃがします。 こんな ふにゃふにゃした子が しっかり 大きなるまで 何事も起こらんといて くれるやろか 世の中は 平和であってくれるやろか そんな事ばっかし 思います>

(自転車のベル)

糸子「おう! うん? 何や?」

(ため息)

糸子「また 女にでも振られたんか?」

勘助「ううん。」

糸子「とうとう 菓子屋のおっちゃんに 愛想でも尽かされたんけ?」

勘助「ちゃう!」

糸子「ほな 何や?」

勘助「赤紙 来てもうた。」

糸子「えっ?」

勘助「赤紙や。」

(ヒグラシの鳴き声)

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