ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カーネーション」第5回「あこがれ」【第1週】

あらすじ

善作(小林薫)に殴られて以来、糸子(二宮星)は、女に生まれたことに意気消沈していた。だんじり小屋に行き、泰蔵(須賀貴匡)にだんじりの屋根にこっそり乗せてもらうが、気は晴れない。そんな折、神戸の祖母・貞子(十朱幸代)から糸子に小包が届く。中身は小さなドレスだった。大喜びの糸子だったが、ドレスは糸子には小さ過ぎた。しかし、だんじりと違っていつか手に入るかもしれない、と糸子の心は晴れてくるのだった。

5ネタバレ

道中

「女やからて 大目には 見んど。」

尋常小学校

教室

教師「女は 常に 男の一歩あとを歩き 男を引き立てる。 それが 女の役割です。」

小原家

玄関

(たたく音)

善作「これが 男の力じゃ。 お前は どうあがいたかて 女なんじゃ。 女が 男と 張り合うて どないすんじゃい!」

道中

(鳥の鳴き声)

「どりゃ~!」

「それ 行け行け!」

「行け行け! そりゃ!」

<何で 女に 生まれてしもたんやろ?>

尋常小学校

教室

奈津「『男子と女子は 生まれながらにして 体も違い 性質も違っています。 それで見ても その務めが おのずから違う事は 明らかであります。 強い事は 男子の持ち前で 優しい事は 女子の持ち前です』。」

教師「はい そこまで。 では 次…。」

一同「はい!」

教師「せっかくやから 是非 小原さんに 読んでもらいましょうか。 小原さん。」

糸子「はい。 『我らの父は 一家の長として 家族を率い 外で いろいろな仕事をして 働いています。 母は』。」

教師「もっと大きな声で!」

糸子「『母は 主婦として 内にいて 父を助け 家を整え 我らの世話をしています。 男子と女子が その務めを全うすれば 家も栄え 国も栄えます』。」

教師「はい そこまで。 吉田さんは どうですか? 女子の務めは できそうですか?」

奈津「はい できます。」

教師「さて 小原さんは どうでしょう?」

糸子「は?」

教師「小原さんは 女子の務めが できそうですか? どうですか? 返事がないですね。 小原さん。」

勘助「あ イタタタタ…!」

教師「何をしてるんですか?」

勘助「頭 頭!」

教師「何してるんや もう! 見せてみい。」

町中

子供達「ソーリャ ソーリャ ソーリャ ソーリャ!」

神社

だんじり小屋

泰蔵「誰や?! 何や 糸ちゃんか。 どないしたんや?」

糸子「だんじり 乗りたいんや。」

泰蔵「乗れ。」

糸子「降りる。 おおきに。」

泰蔵「気ぃ済んだか?」

吉田屋

玄関

奈津「ただいま!」

志津「お帰り!」

奈津「トメ子おばちゃん 来てんの?」

座敷

トメ子「離縁や 離縁しちゃる!」

志津「あんな そもそも 男ちゅうんは そんなもんやねん。 あんただけと ちゃう。 女は みんな 我慢してんねん。」

トメ子「嫌や! 何で 女ばっかり 我慢せなあかんねんな! ここ 見てや! ここ 見てや! こんなに腫れてんやで。」

志津「どれ… ふ~ん。」

(トメ子の泣き声)

克一「(せきばらい) おい。」

トメ子「(泣き声)」

廊下

克一「旦那 迎えに来よったど はよ帰らせよ。」

志津「そんなすぐ よう帰さんわ。 まだ 今 泣いて 離縁やちゅうて 騒いでるとこやし。」

克一「離縁? アホか!」

志津「また 殴られたんやて。」

克一「知るかいな。 適当に言うてな 追い払え。」

座敷

トメ子「なっちゃん。」

奈津「何?」

トメ子「結婚なんかな するもんやあらへんのやで。 女ばっかり 損するんやから。」

奈津「今日 修身で習うたとこや。」

トメ子「え?」

奈津「『女子は男子をよう助けて 仲良うしたら 家も国も栄える』て。」

トメ子「仲良うできたらな。 そやけど そんな簡単に 仲良うでけへんもんなんやねん。」

奈津「何で?」

トメ子「何でて… 何でやろ? (泣き声)」

小原家

子供部屋

居間

善作「おい。」

千代「え?」

善作「何で 糸子は 外へ遊びに行かへんねん?」

千代「は?」

善作「いやいや いつも帰って来たら ビャ~ 飛び出して行くやないかい。 何で 2階で へばってんや? こんな 天気もええのに。」

千代「さあ~。」

善作「わいに しばかれて しょぼくれてんのちゃうか?」

千代「ああ そうですわ きっと。」

善作「何? ちょ ちょっと待て。 『そうですわ』は ないやろ! え! そもそもや お前が こう しっかりしてへんさかいに こないな事になんのや!」

<何で 女に生まれてしもたんやろ? 女は 男より弱ぁて だんじりも曳かれへん。 やりたい仕事も な~んもでけへん>

善作「お前が ぼ~っとしてるさかい。」

台所

<女が大人になったら 年がら年中 家におって 一日 男に叱られて。 それが済んだら 台所で いわしばっかり炊くんや>

ハル「熱っ!」

<嫌や! しょうもなさすぎる。 嫌や 嫌や! 女なんか ほんまに嫌や!>

子供部屋

糸子「(ため息)」

<何か おもろい事 考えよか。 おもろくて 楽しなってくるような事>

糸子「ちょっと 貸してみ。 姉ちゃんが ええもん描いちゃるわ。」

清子「ん?」

玄関

「こんにちは~!」

善作「へえ。」

「小原糸子さん宛ての荷物です。」

善作「糸子充てに お前の おふくろさんからや。 何ぞ 送ってきたんちゃうか。」

千代「うちから? へえ~。」

善作「はよ 持ってっちゃれよ。」

千代「後で… これ終わったら。」

善作「そんなもん ええさかい! はよ 持っていっちゃれよ!」

千代「へえ。」

子供部屋

糸子「シャ~ってなっててな ここが ヒヨヒヨ~ってなってんねん。 ドレムちゅうんやで。」

3人「ドレム?」

糸子「ほんまは もっと きれかったんやけどな。」

3人「ふ~ん。」

千代「糸子! 神戸のおばあちゃんが あんたに 何や送ってきてくれたで。」

糸子「おばあちゃんが?」

千代「開けてみいな。」

糸子「うちが開けてええの?」

千代「あんたのやさかい。」

糸子「うわ~ きれいな箱や。」

静子「きれえ。」

清子「箱や! ええなあ。」

光子「きれえ。」

糸子「母ちゃん おばあちゃん 箱 くれた!」

千代「ほんまや きれえやなあ!」

糸子「ぴかぴかや~! 外国のんかな? うれしいな~! 何 入れて 使おかな! 何か入ってる。」

千代「何や 糸子 箱ちゃうやん。 洋服やて。 『外国のお客さんから 頂いたんやけど おばあちゃんとこには 男の子しか おらんから うちで着なさい』やて。」

糸子「うわ~い! わ~い ドレムや ドレムや! あんたら これが ドレムやで! ドレム!」

千代「ドレム? ドレスの事か?」

糸子「どないしよう! ドレムや!」

千代「ドレスやて。」

<うちは もう うれしゅうて うれしゅうて>

小原呉服店

善作「何じゃ そら?」

糸子「ドレスや!」

<やっと ドレスちゅう名前も覚えて>

糸子「おばあちゃん 見て見て!」

ハル「え? うわ 珍しいもん もうたんやな。」

糸子「ドレスやで!」

ハル「着てみいな。」

糸子「え~ え~ 恥ずかしいなあ~! けど 着てくるわ!」

<せやのに ほんまに残念やったんは>

子供部屋

千代「やっぱし ぴったりや~! 静子に。」

<ドレスは うちには 小さすぎた事です>

静子「きれえなあ~。」

千代「髪もな ここに リボンつけたら お人形さんみたいや。」

糸子「うちかて着れる!」

千代「入らんもんは 入らへんの。 しゃあないやんか 無理したら破けてしまうやろ。」

清子「なあ うちも大きなったら着たい。」

千代「せやな。 静姉ちゃんに ちいちゃなったら あんたが着ような。」

光子「うちも。」

千代「せやな 清姉ちゃん ちっちゃなったら 光ちゃん 着ような~。」

<だんじりと一緒や 手に入りそうで入らへん。 ほんでも よう考えたら 1個だけ だんじりと ちゃうのは 女のうちにも いつかは 手に入るかも しれへん ちゅうところです>

モバイルバージョンを終了