ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カーネーション」第76回「明るい未来」【第14週】

あらすじ

終戦を迎え糸子(尾野真千子)は善作(小林薫)らを思い静かに涙を流す。しかし心機一転、モンペからアッパッパに着替え、解放感を味わう。アメリカ軍が来るからと注意されるが、もう二度とモンペをはく気はなかった。店では軍から払い下げられた布地で肌着を縫うくらいしかできないが、木之元(甲本雅裕)と一緒に行った闇市には物が豊富で糸子は目を丸くする。帰り道、アメリカ軍をはばかり今年もだんじりが中止になったと知る。

76ネタバレ

小原家

(せみの鳴き声)

(せみの鳴き声)

<今日 戦争が終わりました 戦争が… 終わりました 十何年も続いた戦争が 急に『終わった』言われてもな お父ちゃん。 勝さん。 勘助。 泰蔵にいちゃん>

糸子「終わってんて… 戦争。」

(泣き声)

2階 寝室

<はあ… 鏡も ろくに よう見ん間に えらい おばちゃんに なってしもたなあ。 好きな人らが みんな死んでしもて こんな おばちゃん なって もう この先 うちに 何の楽しい事が あるやろ?>

糸子「こんなもん…。 金輪際… 金輪際 つけてやるか!」

<いやいや ちゃうちゃう>

糸子「せや…。」

糸子「はあ~。 あ~ 終わった…。 終わったんや~!」

オハラ洋装店

昌子「せ… 先生! その格好?!」

糸子「何や? 戦争は もう終わったんや。」

岸和田商店街

(自転車のベル)

澤田「えっ?! ちょっと! 何ですか? あの格好は! 日本は 戦争に負けたんですよ!」

小原家

2階 座敷

トメ「ゆっくり ゆっくり…。 痛いとこ ないですか? おばあちゃん。」

ハル「大丈夫。」

糸子「何か食べるか? おばあちゃん。」

ハル「要らん。」

トメ「けど おばあちゃん ちょっとだけでも 食べた方が ええですわ。」

ハル「ほうか?」

糸子「何や その態度の違い…。」

ハル「うちな この家に いてたかったんや。 この家ごと 焼かれんのやったら 本望やったんや。」

<何や知らん いつぞやの空襲以来 おばあちゃんは トメちゃんの 言う事だけは よう聞きます>

居間

優子「うまいなあ。」

直子「おいしいねえ。」

昌子「ああ… ほんでも…。」

静子「なあ!」

千代「なあ!」

清子「やっと みんなで こないして…。」

光子「落ち着いて 御飯 食べれるなあ!」

清子「なあ!」

幸子「空襲 ないんやもん。」

<そやけど 日本は 戦争に負けた。 これから どないなるんやろ?>

オハラ洋装店

靖「まあ 先の事は 分かれへんけどなあ とりあえず 全部 一旦 やめや。 こさえたかて もう どこにも 納めよう ないんやさかいなあ。」

糸子「まあ そら そやわなあ。」

靖「生地や 何かも もしかして 払い下げで 引き取ってくれちゅう事に なるかもしれへんで。」

糸子「はあ…。」

靖「また 上から 何ぞ言うてきよったら すぐ 連絡するよってな。」

糸子「よろしゅう頼んます。」

靖「ああ。 けど あんた まだ そんな格好せん方が ええで。」

糸子「え?」

靖「アメリカ軍が来るよってなあ。 おっとろしいど。 何されるや 分からんど。」

2階 寝室

糸子「いいや… けど 嫌や。 こんなもん 着んのは もう 死んでも嫌や! アメリカ軍でも何でも 来るんやったら 来いっちゅうや~!」

オハラ洋装店

<結局 工場の生地は 払い下げられたもんの この先 何が どないなるやら さっぱり分かれへんし とにかく 肌着ぐらいしか 縫いようがありません>

縫い子達「ただいま~。」

糸子「お帰り! ご苦労さん。」

静子「はあ~ おナス ようさん。」

幸子「今日は ようけ くれました。」

居間

♬~(ラジオ『すみれの花咲く頃』)

♬『すみれの花 咲くころ 今も 心ふるう』

糸子「こんな曲 いつぶりや。」

昌子「軍歌 ちゃう… もう 軍歌 ちゃうんや。」

♬『すみれの花 咲くころ』

木之元電キ店

糸子「おっちゃん!」

木之元「おう 糸ちゃん!」

糸子「聴いたけ? ラジオ。 ええ曲 やるようになったなあ!」

木之元「聴いた 聴いた。 当ったり前や! ♬『すみれの花 咲くころ』」

糸子「うれしいなあ!」

木之元「ちょっと! 糸ちゃん ちょい ちょい…。 はい! はい!」

糸子「どないしたん? これ。」

木之元「ごっつ おもろいとこ 行ってきたんやし。」

糸子「どこ?」

木之元「闇市。」

糸子「闇市?」

木之元「ふん。 糸ちゃんな 連れていっちゃるわ。 ごっついど~!」

糸子「おっ!」

木之元「な~んでも 売ってんや! な~んでもやで!」

糸子「え~!」

木之元「だ~ん!」

闇市

<ちゅうて 木之元のおっちゃんが 連れてってくれた 闇市には…>

糸子「いや!」

木之元「これ うまい!」

<ほんまに 何でもありました>

木之元「うわ~ うまそうやな~!」

糸子「うわ~!」

木之元「おい あんなの ええな!」

糸子「こんなんも あるんやな。 うわっ!」

木之元「えっ?」

糸子「あっ! ちょっと ちょっと! 砂糖や! 何ぼ?」

「100円。」

糸子「え~ 高!」

「はい。」

糸子「いや あと5合! 5合 足して。」

「あかん あかん。 帰れ。」

糸子「ほな ええわ もう。」

「ああ! 帰ったら あかんがな。 あと3合!」

糸子「4合! 頼むわ なあ?」

「もう かなわんな もう。 儲からんやん あんた。」

糸子「ちょっと 少なかった 今。」

小原家

玄関前

糸子「おもろかったなあ!」

木之元「せやけど やっぱし 糸ちゃん 値切り方が 並みの者 ちゃうのう。」

糸子「ほうかあ?」

木之元「わしな 横で見てて 怖かったわ。 ハハハハハハ…!」

糸子「ほんま 連れてってくれて おおきにな。」

木之元「ほなな!」

糸子「またな!」

木岡「何でや?! 戦争 終わったん ちゃうんけ?」

糸子「どないしたんや?」

木岡「何で あかんのんじゃ?!」

警官「アメリカ軍や。 だんじりなんか曳いて 騒いじゃったら アメリカ軍が 何しに来よるか 分からへんやろ!」

糸子「だんじり?」

木之元「おい 今年も また だんじり曳いたら あかんちゅうんけ?」

木岡「何で あかんのんじゃ?!」

警官「せやから アメリカ軍を刺激すんなちゅう 上からの お達しじゃ! 守らんかってみい! お前ら まとめて 逮捕やぞ!」

3人「え~?」

だんじり小屋

<ほんでも 祭りの朝>

昭和20年

<見るだけでも 見となって だんじり小屋に行ってみました>

(下駄の音)

糸子「直子 あんた 何してんの?」

直子「曳くで!」

糸子「はあ? いや 今年は 曳かれへんやし。 …ちゅうか あんた 女やしな。」

直子「曳くちゅうたら 曳く!」

♬~(笛)

木岡「何でや… 何で 曳いたら あかんのんや?」

木之元「だんじりは わしらの命や。」

奥中「ええやないか 曳こや。」

木岡「おう。 わしら 今 これ 曳かれへんかったら ほんまに 終わってしまうど。」

木之元「せやのう。」

♬~(笛)

木岡「曳こよ!」

木之元「よっしゃ!」

男達「おう!」

木岡「走れるほどの人数は いてへん。 ゆっくりや! ゆっくりで ええからな!」

男達「よっしゃ~!」

直子「おっちゃん うちにも曳かして!」

木之元「な… 直ちゃん?」

糸子「これ! 直子。」

直子「嫌~!」

「おう チビ 曳け曳け!」

「ほうじゃ! 曳け曳け!」

木之元「女やがな。 まままま… ええか。」

糸子「はあ?」

木岡「よっしゃ~ 曳け~!」

男達「よっしゃ~ 曳け~! よいしょ~! よいしょ~!」

木岡「よっしゃ~ 曳け~!」

男達「よっしゃ~!」

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