ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カーネーション」第79回「明るい未来」【第14週】

あらすじ

糸子(尾野真千子)は八重子(田丸麻紀)と昌子(玄覺悠子)と一緒に、パーマ機と洋服の生地の調達に上京する。空襲の爪痕が残る東京でパーマ機を探し当て、糸子は得意の値切り交渉をする。パーマ機を手に入れた一行だが、宿は雑魚寝で、糸子たちは気をつけようと言い合う。案の定、貧しい子どもたちが金品を盗みにくる。ようやく追い出して、ほっとしたのもつかの間、糸子は自分の布団の中に幼い少女が隠れていることに気づく。

79ネタバレ

小原家

居間

昌子「せやから 中野ちゅうたら 東京から この電車に乗って こう行く ちゅう事ですわ。」

糸子「ほんで 生地問屋は どの辺や?」

昌子「生地問屋は 神田の須田町やから この辺ですね。」

糸子「せっかく 東京まで行くんやさかい 絶対 生地は探したいな。」

八重子「うん 糸ちゃん 探そよ。」

糸子「う~ん。」

昌子「1日目 パーマ機 買うて 2日目に 生地問屋… まあ 道に迷うかもしれんこと 考えたら 余裕 見て 4泊ぐらい 見てた方が…。」

千代「道に迷う?」

昌子「そら 東京も まだ 街 ガタガタやろし どんな事があるか分からんよって。」

千代「まあ 心配やなあ。 昌ちゃん…。」

昌子「うん?」

千代「あんたも ついてったってえな。」

昌子「いやいや。」

糸子「行こよ 昌ちゃん。」

八重子「うん ついて来てよ。」

昌子「嫌です。 うち ほんま 東京やら 怖いんですわ。」

電車

(汽笛)

<ちゅうて 嫌がる昌ちゃんを 無理やり 引っ張ってきたんは ほんまに正解でした>

東京・中野界わい

八重子「昌ちゃん 元気やなあ。」

糸子「昌ちゃん ちょっと休もうや。」

昌子「あきません! もうすぐです。 パーマ機 売ってんの この辺のはずです!」

糸子「頼むわ 休ましてや。 もう…。」

八重子「うちも…。」

糸子「そやけど こないして歩いてみたら 東京も ほんま えらい空襲 受けてんなちゅうんが よう分かるなあ。」

八重子「うん。 新聞では 読んでたけど ここまで ボロボロやとは 思えへんかったわ。」

糸子「うん。」

八重子「焼け野原に 子供らが ウロウロしてたの 見た?」

糸子「うん。」

八重子「あの子ら 多分 家も 親も なくしてしもたんやろなあ…。」

昌子「先生! 八重子さん! 分かりました!」

2人「えっ?!」

昌子「ここです。」

2人「えっ?!」

金物屋

八重子「はあ…。」

昌子「先生。」

糸子「うん?」

昌子「こっからは 先生の番ですよ。 しっかり 値切って下さい。 しっかり。」

糸子「分かってるわ。」

糸子「せやかて ここかて こない えらい錆も 来てますわ。」

「けどさ お宅 これ もう 東京で 1台っきりだよ。」

八重子「糸ちゃん うち もう この値で ええわ。」

糸子「ほれ! ここかて こない なってますやん。 ほら!」

八重子「糸ちゃん もう ええて! うちは この値で ええでって。」

糸子「八重子さん 黙っといて!」

八重子「何でやの?! うちが この値ぇで ええ 言うてんやから ええやんか!」

糸子「ええ事ない! 商売ちゅうんは でけるとこまで やらんと あかんねん! そんな甘っちょろい事 言うてたら あかんねや!」

八重子「甘っちょろい気持ちなんかで 言うてへん うちは この値ぇで 本気で納得してるんや!」

糸子「納得 うちは でけへんのや!」

八重子「こんな ちょっとぐらいやったら 使えよったら ええねん!」

糸子「使われへんわ こんなん。」

八重子「使えるよ。」

糸子「壊れてんねんで これ!」

昌子「んも~… ええから はよせんと 明るいうちに 宿へ行けませんよ!」

<残念ながら そんなには まからんかったけど どないか無事に パーマ機は買えて 八重子さんは 夢見心地なようでした>

宿屋

「よいしょ。 うえ~…。」

昌子「これ この人らと 雑魚寝ちゅう事ですよね。」

「うわ~ 暑いな おい!」

糸子「こないして 寝よよ。 こないして。」

昌子「お金は 肌身離さん方が よろしいで!」

糸子「大丈夫 大丈夫。 うちな ここに 帯に 縫い付けてあるんやし。」

昌子「へえ?!」

八重子「どれ?」

糸子「ほれ。」

昌子「はあ!」

糸子「明日は こんで たんまり 生地 買わんならんさかいな。 何があっても 守っちゃんで。」

夜中

(犬の遠吠え)

(柱時計の時報)

<まだ 2時か…。 はあ~ はよ 朝なれへんかなあ…>

『あっ!』

『ああ 何や?』

糸子「何これ? 何で 真っ暗なん?」

八重子「何?!」

昌子「きゃあ~! 何?!」

昌子「やめて! うわあ~!」

八重子「きゃあ~! 泥棒!」

糸子「泥棒?!」

昌子「泥棒?!」

八重子「泥棒?!」

「あ… ない! この女か?!」

「お前らか?! リュック… リュックがない。」

「てめえらだろ?!」

糸子「お前らが 取ったんやろ?! そんな顔してるわ お前ら!」

「そのカバン 見せてみろ!」

『泥棒だ~! 1階から逃げたぞ~!』

(物音)

昌子「先生?」

八重子「糸ちゃん?」

昌子 八重子「きゃ~!」

昌子「こっちです! 泥棒 こっち!」

糸子「ちょっと あんた 待ち! あんた ああ!」

「全く ふざけやがって!」

「危ねえなあ。」

「一応 警察にも 電話したんですけどね 最近 よくあるらしくて『被害が なかったんなら よしと して下さい』って。」

「何だ そりゃ?! 早く とっつかまえろよ!」

<怒ってる人らも いちゃあったけど とりあえず うちらは 明日に備えて 寝よ ちゅう事になりました>

昌子「八重子さん しっかり こうですよ!」

八重子「せやけど もう よう寝えへんわ… とりあえず 横になるだけな。」

昌子「おやすみなさい。」

八重子「おやすみ。」

糸子「おやすみ。」

昌子「おやすみなさい。」

八重子「おやすみ。」

『さっき 下で『泥棒だ!』って 行った奴 あいつは グルだな。』

『大人の声だったろ。 そいつが 元締めじゃねえか?』

『畜生めが! 一人でも とっつかまえてりゃ 縛り上げて 吐かせられたのによ。』

『まだ その辺 うろついてんじゃねえか?』

『見つけたら タダじゃおかねえからな 畜生。』

翌朝

(小鳥の鳴き声)

糸子「はれ? どこ 行った?! どこ 行った?! はっ!」

昌子「何ですか?」

八重子「今度は どないした?」

糸子「女の子…。」

昌子 八重子「女の子?」

糸子「はっ?! はっ…。」

昌子「ああ?!」

小原家

玄関前

(からすの鳴き声)

<ほんな訳で 結局 生地は 買えませんでした>

直子「あっ お母ちゃん! お母ちゃん お帰り!」

糸子「ただいま~。 重たっ…。 直ちゃん あんた 重たなったなあ。」

優子「お帰り お母ちゃん!」

千代「お帰り。 もう 帰ってこれたん? 早かったなあ。」

昌子「はあ… まあ いろいろ あって。」

千代「え~? まあ よかったなあ。 お母ちゃん お帰り~。」

糸子「ハハハハ… あんたら ええ子にしてたか うん?」

優子 直子「うん。」

千代「してたなあ。」

居間

一同「うわ~!」

光子「チョコレートや!」

清子「見て~!」

「すごい!」

「う~ん うま~い。」

「おいしいな!」

糸子「昌ちゃん。」

昌子「はあ?」

糸子「あの子… お菓子の一つでも 買えたやろか?」

昌子「また その話… はよ忘れた方が ええですて!」

糸子「せやけど ほんまに ガリガリやったんやて。 あない ちいちゃい子が…。」

昌子「まあ ほんでも とったお金は 元締めの大人に 渡すように なっちゃあんのと ちゃいますか。」

「フフフフフ。」

「うま~い。」

昌子「まあ ほんでも 渡す前に チョロッと くすねて お菓子ぐらいは 買うたかもしれんし。」

糸子「うん…。」

<生き延びや。 おばちゃんら 頑張って もっともっと ええ世の中に しちゃるさかい 生き延びるんやで>

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