ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カーネーション」第7回「運命を開く」【第2週】

あらすじ

小原糸子(尾野真千子)は、女学校から走って帰っては、夢中で裁縫をする日々を送っていた。父・善作(小林薫)は呉服屋の客を増やすことをねらい謡の教室を始めたが、商売には結びつかない。ある日糸子は、呉服の集金の途中にあるパッチ屋の店先でミシンを見かける。布が勢いよく縫われていく様子に糸子の目がくぎ付けになる。糸子は“このミシンこそ、自分が乗れるだんじりだ”と思い、目指す物をつかんだ気持ちで有頂天になる。

7ネタバレ

河原

「ソーリャ ソーリャ ソーリャ ソーリャ!」

糸子<なっちゃるでえ うちも 大工方に。>

小原家

小原呉服店

(たたく音)

善作「女が 男と 張り合うて どないすんじゃい!」

奈津『着物ちゅう 洋服や。 外国の着物は 洋服ちゅうんや。』

<うちが初めて作った アッパッパは ちょっと おかしなとこも あったけど うちの人らぁは 褒めてくれました。 けど うちが ほんまもんの洋服を 作れるようになんのは まだまだ ず~っと先の事です>

居間

子供部屋

昭和2年(1927)

糸子「8時?!」

道中

糸子「奈津 傘 入れて。」

奈津「はあ? 嫌や。」

糸子「何でやねん? 入れてえな。」

奈津「嫌やちゅうねん。」

糸子「入れんか この どケチ!」

奈津「嫌や! 絶対 嫌や! あっ! 糸ちゃん 傘 入り。 ぬれるで。」

糸子「泰蔵にいちゃん おはようさん!」

泰蔵「おう!」

糸子「仕事 気ぃ付けてな 雨 降ってるさかい。」

<去年の暮れに 大正天皇が お隠れになり 昭和という新しい時代が 始まりました>

奈津「あんたなんか 絶対 入れたない!」

糸子「待って~。」

奈津「嫌や!」

泉川高等女学校

<うちも いっちょまえの 女学生になりました。>

教室

<女学校は 当たり前やけど 女子ばっかしで 別嬪もおれば そうでないのも おります>

「痩せたいわ~。」

「うちも。」

「うちは 色 白になりたい。」

「ほんで 宝塚に入りたい!」

「うちは 痩せたら 坂東妻三郎様に 会いに行くわ!」

「はあ~ どないしたら 痩せんやろうなあ?」

3人「う~ん…。」

「何? 吉田さん。」

奈津「何にも。」

<吉田奈津は 女学校に 友達がいてへんみたいです そやけど うちも 人の事は 言えません>

「あれ? お芋 どこいった?」

「えっ? ん?」

<うちは 今 三角に夢中です>

「ちょっと 小原さん うちのお芋 取らんといてよ!」

教師「大事なんは 一目一目…。」

<裁縫の授業は 週に4回あります>

教師「決して 雑にやったら あきませんよ。」

<当然 うちは いっつも 大張り切りなんやけど>

糸子「はい! 先生。」

教師「はい 小原さん。」

糸子「あの アッパッパの事なんですけど…。」

教師「小原さん。 今 みんなが縫っているのは 何ですか?」

糸子「浴衣です。」

教師「そう 浴衣です。 今 アッパッパは 関係ありませんね?」

糸子「そやけど 浴衣は もう縫うてしもたんです。 あの… アッパッパの裾に こんな三角 入れたい 思てるんですけど…。」

教師「三角でも四角でも おうちで 好きなだけ入れたら よろしい! 縫い終わったら 静かに 教科書でも読んでなさい!」

<好きすぎる ちゅうもんも 具合の悪いもんで 教科書なんか 4月にもろてから もう100回は読んでるし 書いてある事 全部覚えてるしで 裁縫の授業は 眠たあて しゃあありません>

教師「小原さん!」

教師「皆さん 今日も一日 つつがなく過ごす事ができて よかったですね。 日に日に 暮れるのが 遅くなっていますが…。」

<小学校と違て 女学校は 終わんのも遅いし 宿題も ようさん出て なかなか 裁縫の時間がありません>

教師「宿題も 忘れんよに。 よろしいですね。」

一同「はい!」

「起立! さようなら!」

一同「さようなら!」

道中

<うちは いっつも 走って 家に帰ります>

糸子「あ! 勘助やんか。」

「勘助やんか。」

「誰じゃい あいつ?」

<何や知らん このごろ 勘助は 道で会うても 返事せえへんよに なりました>

小原家

子供部屋

糸子「はあ~ でけた! 光子 ちょっと 着てみ。」

一同「うわ~!」

清子「わあ このアッパッパ ええなあ。」

静子「ほんまや 何や ちょっと ちゃう。」

糸子「そやろう? 三角や。」

清子「三角?」

糸子「ここに 三角 入れたんや。 そしたら こない ふわ~っと なんねん。」

静子「ええなあ うちも こんなん欲しい。」

清子「うちも!」

糸子「よっしゃ 作ったろ!」

清子 静子「わ~い!」

静子「ええなあ。」

清子「わあ かいらしい。」

糸子「ふわ~っ!」

夜中

ハル「あんた また こんな夜中に 何してんや?」

糸子「静子のアッパッパ 縫うてんねん。」

ハル「はよ寝り! そんな事してるさかい 寝坊するんやで。」

糸子「分かってる。 これ 終わったら…。」

ハル「あ か ん!」

糸子「ほんまに あと もう ここまで。」

ハル「あかん ちゅうてるやろ。 はよ寝りて!」

糸子「あ~あ…。」

糸子「ああ…。 そや。 宿題やってへんわ。」

<はよ 大人になりたいです。 はよ 大人になって 毎日 好きなだけ 裁縫できたら どんだけ ええやろう>

小原呉服店

「こんにちは。 お邪魔します。」

ハル「いらっしゃい!」

「こんにちは。 失礼します。」

<小原呉服店 ごっつ繁盛してます! …て 言いたいとこやけど 残念ながら これは お客さんと違います>

2階 座敷

<去年から お父ちゃんが 謡の教室を始めました。 この人らは そのお弟子さんです>

♬『ざらざらざ』

善作「ああ あ~あ まあ よろしいな。 もういっぺん いってみまひょうか。」

「はあ。」

善作「いつも 同じとこやで。」

「はい。」

善作♬『あなたへ ざらりい』

♬『あなたへ』

<お弟子さんからのお月謝が 稼ぎになるんと ついでに 着物も買うてもらえるん ちゃうかちゅう お父ちゃんの算段です>

「いや 今は お金ないし また今度な…。」

善作「酒井さん これ あててみる?」

「いえいえ。 わしんとこ こないだ 作ったばっかりやさかいなあ。」

善作「さよか…。」

小原呉服店

ハル「こない売れんと どないすんのや…。 糸子の学費かて まだ半分 残ってんのに…。 あと娘3人 おるんやで うっとこは…。」

善作「え~ ブツブツ ブツブツ…。 文句が あんやったら はっきり言わんかい!」

ハル「学費や。」

善作「ああ?」

ハル「あんたな 気前よう 娘 女学校 入れたかて 学費 払えなんだら やめささな しゃあないねんで。」

善作「じゃかましい! 分かっとるわい そのくらい!」

ハル「『はっきり言え』言うさかい 言うたんやんか!」

善作「じゃかましい! おい 千代 飯や! 飯 食うど~!」

千代「へ… へえ。 す… すんません。」

玄関前

「糸ちゃん お帰り。」

糸子「ただいま!」

「お帰り。」

糸子「ただいま。 ただいま~!」

子供部屋

糸子「よいしょ。」

(物売りの声)

善作『おい 糸子 帰ったか?』

糸子「うん もう…。」

居間

糸子「何? お父ちゃん。」

善作「集金 集金。 樋之池町や。 ちょっと遠いど。」

糸子「ええ~。 うち 裁縫したいねん。」

善作「口答えすな! どの口が言うとんや! 仕事が先や。 はい。 は~ 忙しい 忙しい!」

道中

<相変わらず お父ちゃんは 集金が嫌いで このごろは うちに任せっきりです>

<知らん町に行かされる事も多いし かないません>

枡谷パッチ屋

糸子「もう はよ帰りたいんよ…。 ここを曲がって…。 白い看板… 白い看板…。 ん? 何や あれ…。」

<何でか知らん。 それが 何するもんかも 分からんうちから うちの目は それに くぎづけになりました>

糸子「ほおおおお!」

(ミシンが縫う音)

糸子「ほおおおお あああ~!」

(ミシンが縫う音)

糸子「あああ~!」

道中

(川の流れる音)

(ミシンが縫う音)

<走っちゃった… きれが 走っちゃった あの速さ。 あのコマ>

♬~(お囃子)

『ソーリャ ソーリャ ソーリャ ソーリャ!』

<だんじりや 見つけてしもた。 だんじりや>

『ソーリャ ソーリャ ソーリャ ソーリャ!』

<あれは うちが乗れる だんじりなんや!>

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