ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カーネーション」第80回「愛する力」【第15週】

あらすじ

昭和20年暮れ。糸子(尾野真千子)は八重子(田丸麻紀)にパーマをあててもらい、改めて頑張ろうと思う。大みそかには、来年はよい年になるようにと祈った。年が明けた昭和21年。まだ生地は不足ながらも、洋裁の仕事が忙しくなってきた糸子。ある日、勝(駿河太郎)と同じ部隊に属していた復員兵が訪ねてきた。糸子の脳裏に勝の思い出がよみがえる。勝が常に身に付けていたと渡されたのは、勝と糸子、娘たちの家族写真だった。

80ネタバレ

小原家

居間

糸子「終わってんて… 戦争。」

オハラ洋装店

糸子「サエ…!」

サエ「若い男が戻ってきだしてる。 おまけに アメリカ兵は その辺 ウロチョロしてるしな! もう うちなんか どんだけ おしゃれの血ぃ 騒いでるか!」

珈琲店・太鼓

店内

糸子「東京 行こう。 東京! 東京に パーマ機 買いに行こう!」

八重子「え…?」

糸子「これからは パーマ機と洋服なんや!」

小原家

(小鳥の鳴き声)

オハラ洋装店

八重子「おはようさん!」

千代「はれ~ おはようさん。」

八重子「おばちゃん 糸ちゃんは?」

千代「糸子? あれ 糸子なあ…。」

八重子「パーマ機 やっと来たんです。 パーマ機!」

千代「はれ まあ! ほんまあ?!」

八重子「はい!」

千代「いや~ よかったあ!」

糸子「来たん? パーマ機!」

八重子「来た! ちゃんと使えるしな! よかった。 これで やっと パーマができるわ! 糸ちゃん 昌ちゃん 今日 時間ある時に 店に来て。」

糸子「え?」

昌子「ん?」

八重子「お礼に パーマ あてさせてもらうよって。」

昌子「ひゃあ!」

糸子「ほんま?! や~っ!」

八重子「糸ちゃんと 昌ちゃんの おかげなんやさかい!」

糸子「いや~ どないしよ! パーマやて。」

昌子「パーマ! パーマ! 先生 どないします? 今日 いつ 時間 空けます?」

糸子「あ うち 午前中は 忙しよってな。」

昌子「ほな 悪いけど うちが 午前中 行きますよって。」

糸子「はあ? あんた うち 差し置いて 先 行くんけ?」

昌子「行きます! 八重子さん かまへん?」

八重子「ああ ええよ ええよ!」

糸子「ええの?」

昌子「ほな 朝の忙しないうちに。」

八重子「早う早う 昌ちゃん!」

糸子「ちょっと…。」

<そないして 出かけていった 昌ちゃんは>

玄関前

(昌子の鼻歌)

<昼過ぎ ごっつい得意気な顔で 帰ってきました>

美代「ちょっと ちょっと ちょっと 昌ちゃん。 あんた その頭 どないしたん?」

昌子「はあ ちょっと パーマネント あてましてん。」

安岡家

居間

糸子「勘助 泰蔵にいちゃん。 うちも いよいよ パーマ あてんねんで。」

八重子「失敗したら 2人に怒られるさかい 絶対 失敗でけへんわ。」

糸子「おばちゃんは?」

八重子「はあ… 上。 うちが 勝手に パーマ機 買うたんが 気に食わんらして 降りてけえへんように なってしもた。」

糸子「ほうか…。」

八重子「いや せやけど かまへん うちの仕事や。 うちの好きにさしてもらうわ。」

糸子「うん。」

八重子「はい でけたあ!」

糸子「はあ…! いや~ これ うち?」

八重子「うん。」

糸子「ああ… アッハハ いや く~っ! え~! エヘッ!」

八重子「ほら 見て見て!」

糸子「いや この辺やら ごっつう おしゃれや!」

八重子「うん よう似合うてるわ。」

糸子「八重子さん おおきになあ。」

八重子「こっちこそや ほんまに。 糸ちゃんが あない言うてくれへんかったら うち一人で ここまで ようせんかったわ。」

糸子「いやいやいや 八重子さん これからやで!」

八重子「せやな! まだ 昌ちゃんと 糸ちゃんのパーマ あてただけで こんなん 言うてた あかんなあ。」

糸子「せやで!」

八重子「ウフフフフッ! これからや。 頑張ろう!」

糸子「うん! フフフフフ…。 ああ~!」

八重子「よう似合うてるわ。」

糸子「エヘッ ほんま?」

八重子「うん!」

闇市

<年の暮れ 闇市にも 正月用のもんが 売られるようになってきました>」

糸子「は! 棒鱈や!」

木之元「おっ!」

糸子「おっちゃん 棒鱈や!」

木之元「わっ ほんまや!」

木岡「押すなや。 おい どこや! ちょっと 押さんといて。」

糸子「おっちゃ~ん!」

木之元「どこ行くねん?」

木岡「糸ちゃ~ん!」

<相変わらず これっちゅう生地は 見つかりません>

木之元「見んな。 見んなて! ほっとき!」

(せきばらい)

小原家

居間

♬~(ラジオ)

<その年の大みそかの夜 ラジオで『紅白音楽試合』ちゅうのが やってました>

♬~(ラジオ)

直子♬『赤いリンゴに 口びるよせて』

直子 優子♬『だまってみている 青い空 リンゴは なんにも いわないけれど リンゴの気持ちは よくわかる リンゴ 可愛いや 可愛いやリンゴ』

(拍手)

<来年は もっとええ年に なりますように>

安岡家

居間

八重子「お母さん。 年越しそば 食べへん? ええわ。 食べよう。 頂きます。」

息子達「頂きます。」

太郎「熱いから 気ぃ付けや。」

三郎「うん 分かってる。」

<みんなが笑って 暮らせる年に なりますように>

小原家

オハラ洋装店

<年が明けて 昭和21年 相変わらず 生地は 軍需用の 払い下げばっかしやけど ほんなんでも お客さんは 日増しに増える一方で 今まで 子守りさせちゃあった りんちゃんも 縫い子に戻ってもらわな あかんようになりました。 ほしたら まあ かなんのが…>

居間

優子♬『丘を越えて 行こうよ。』

直子♬『真澄の空は 朗らかに』

優子「うるさい! うるさい!」

♬『晴れて』

優子 直子♬『楽しい こころ』

清子「優ちゃん。」

光子「直ちゃん。 うるさい!」

♬『讃えよ わが青春を いざゆけ 遥か希望の丘を越えて』

(畳をたたく音)

糸子「この… ほんまに! あんたらは… こら!」

直子「堪忍!」

優子「堪忍!」

糸子「言うたやろ! ほれ! ほれ! 外 行け。」

「嫌や 行きたくない。」

玄関前

糸子「外で 遊んできい! 外や 外や ほれ! ほれほれ~!」

「嫌や!」

糸子「5時までには 帰ってくるんやで!」

2人「べえ~っだ!」

糸子「ほんまに…。」

糸子「あの~…。」

「あ ここは 小原勝さんのお宅ですか?」

糸子「はい。」

「はじめまして。 わし 勝さんと 同じ部隊に おった者です。」

糸子「は… ご苦労さんです。」

「あ…。」

居間

「繁盛されとって 何よりですわ。 あいつ 店の事 よう心配して 言うてたさかい。」

糸子「主人とは どこで?」

「最後の湖南省です 大陸の。」

糸子「はあ そうでしたか… お世話になりました。」

「ああ ええ… ええ奴でした。 最後の最後まで… フフッ のんきで。」

糸子「はあ? のんき?」

「ああ いやいや…。 ほんまは あいつなりに つらかったと思うんです。 けど はた目には なんちゅうか どう見ても… う~ん…。」

糸子「ウフッ… 上機嫌?」

「そう! ああ… そうなんです。」

糸子「分かります。 ウフフフ…。」

「あ これを 返しに来ました。 あいつが 一番大事にしてたもんやさかい。」

糸子「しゃあない… 堪忍しちゃら。」

<うちは この写真を やっと 燃やす事が でけました>

糸子「はあ…。」

静子「姉ちゃん? 姉ちゃん!」

糸子「は~い。」

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