ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カーネーション」第81回「愛する力」【第15週】

あらすじ

戦争中ずっと休刊になっていた雑誌が復刊し、そのアメリカンモード特集に糸子(尾野真千子)らは胸を躍らせる。闇市で鮮やかな水玉模様の生地を見つけた糸子は、さっそくサエ(黒谷友香)のためにワンピースを縫いあげる。しかし静子(柳生みゆ)から、それを着て恋人の復員を出迎えたいと頼みこまれ、仰天する。水玉のワンピースが大評判になったころ、美しい花嫁姿の静子をそっと見送る、糸子とハル(正司照枝)の姿があった。

81ネタバレ

小原家

玄関前

幸子「あ 帰ってきた!」

りん「え?」

幸子「あった? あった?」

トメ「ただいま~!」

オハラ洋装店

糸子「お帰り! どやった? あったか?」

トメ「ありました~!」

(歓声)

昌子「ほんまや~!」

静子「『婦人美粧』!」

<3月 戦争中 ず~っと 休刊になってた『婦人美粧』が 復刊しました 巻頭の特集は>

一同「おお~!」

静子「『アメリカンモード』。」

昌子「な 何ちゅうか こう ごっついな。」

一同「おお~! おお~! おお~!」

居間

千代「はれ~! はれ いや~!」

<お父ちゃんが生きてたら また どんなけ怒ったか 分かれへんけど>

りん「ええな! かわいい!」

幸子「うち こんなんが ええ。」

トメ「ああ 似合うわ!」

昌子「どや 見て! 似てへんか?」

トメ「あ~ 似てる!」

<かつての敵国 アメリカが 今の うちらには 何かと まぶじいて しゃあありません>

闇市

<闇市でも アメリカもんには 誰もが飛びついて>

木之元「おいおいおい」

木岡「何 何 何?」

木之元「うわ~! ええのう~!」

木岡「けど 高いのう!」

木之元「うん。 うわ~ これも おい!」

木岡「けど 高いのう!」

<ちゅうて 諦めて帰ります>

木岡「高いのう!」

糸子「何回 おんなし事 言うてんや。」

「これ 今日入ったやつや これ! 今日 入ったやつ。」

木岡「高いのう!」

(雑踏)

糸子「ああ~! ああ~!」

<やっと見つけた。 新しい時代の洋服の生地や>

小原家

2階 座敷

サエ「ああ!」

糸子「ええやろ?」

サエ「あ~!」

糸子「ええやろ!」

サエ「ごっつい ええ!」

糸子「闇市のな ガラクタの横に 売られてたんやし。 うち もう すぐ おっちゃん 捕まえて 今度いつ入るか 聞いて 入ったら 絶対 店 出さんといてな うちが 全部 買うよってて 約束してきてん。」

サエ「そら 糸ちゃん これはな ちょっとやそっとのもんと ちゃうで。」

糸子「う うん! ほんま 何か こう 新しいちゅう 感じするやろ? 真っ青な生地に 白の水玉やで! 着物と全然ちゃう。 フフフ! なあ モンペしか履いたら あかんかったし 作ったらあかんかったんが やっとや。 やっと ほんまのほんまに 新しい生地で 洋服作れる日ぃが来たんや。 ごっつい事やなあ!」

サエ「うん! これ服にして。」

糸子「うん。」

サエ「街 歩けたら 自分が 生まれ変わったみたいな 気ぃすると思うわ!」

糸子「うん! こないしてな こないしてな。」

オハラ洋装店

(ミシンの音)

<うちは 記念すべき1着目に サエの服をこさえてやりたいと 思てました。 あんな戦争のあとでも これ着て 生まれ変わった気ぃに なってくれるんやったら そんなにうれしい事は ありません>

居間

糸子「うわ~ どない?」

(歓声)

糸子「似合うで サエ! せや これ着て 帰らしちゃろう!」

昌子「せやせや!」

糸子「商店街中がな 何や あの別嬪は 映画女優ちゃうけ! 大騒ぎなんで! はよ…。」

2階 寝室

静子「姉ちゃん!」

糸子「何や?」

静子「一生のお願いや!」

糸子「へ?」

静子「そのワンピース 今日 うちに 着さしてもらえへんやろか?」

糸子「はあ?」

静子「今日な うちの…。 うちの好きな人が 戦地から 帰って来るんや。」

糸子「好きな人? あんた そんな人 いちゃあったんけ?」

静子「そら 姉ちゃん うちかて もう30なんやで。」

糸子「はあ ほうか。 そら うちが 33やもんなあ。」

静子「戦争から生きて帰ってこられたら 結婚しようて 言うてくれてな うち ず~っと待ってたん。 その人がな 今日 岸和田へ 帰って来て その足で うちに会いに来てくれるて 連絡があったんや。」

糸子「あんた 何で そんな事 今まで黙ってたんよ?」

静子「そりゃあ 申し訳のうて。」

糸子「は?」

静子「姉ちゃんは お兄さんを 亡くしてしもうたのに。」

糸子「は… アホか。」

静子「え?」

糸子「あんたな。 姉ちゃんを 何やと思てんや。 ん…。」

玄関前

<慌てて サイズを詰めたさかい ちょっと おかしなとこも あったけど ほんでも新しい服を着て 恋人を待つ静子は 見た事ないほど きれえでした>

糸子「あ 来た!」

サエ「あれや!」

(泣き声)

静子「お帰んなさい!」

サエ「ご ご ごっついな このごろの子ぉは。」

糸子「ほんま 人が見てるっちゅうに。」

<これも 新しい時代が 来たちゅう事やろか>

オハラ洋装店

客「ああ やっぱりええなあ!」

<水玉のワンピースは 思うたとおりの ごっつい反響で>

「3週間や。」

「うちも はよ頼んどいた よかった。」

昌子「せやから 今からやったら 次の次に入ってくる 生地になるんですわ。」

「ほな あそこに あんのんも もう みんな 売り切れてんけ?」

昌子「そうゆう事です。」

「しゃあないな。 けど 頼むわ。 どないしても 欲しいさかい。」

糸子「すんません うちも 生地屋の おっちゃんに はよして! て よう頼んどくよって!」

客「頼むで!」

糸子「へえ。」

昌子「また お待ちしてますよって。」

客「ほな 頼んだで。」

糸子「すんません!」

昌子「また よろしゅう頼んます!」

居間

<それから ちょっと間して 静子が お嫁に行きました>

八重子「よっしゃ でけた!」

一同「うわ~!」

糸子「よかったなあ! この花嫁衣裳も やっと 日の目 見たで。」

(笑い声)

八重子「糸ちゃん 着れんかったからなあ。」

2階 座敷

静子「おばあちゃん。 行ってきます。」

ハル「きれえな花嫁さんや。」

静子「今日まで お世話になりました。」

ハル「達者で 幸せになるんやで。」

静子「またすぐ帰ってくるよって。」

ハル「アホか! 帰ってきて どないすんや。」

(笑い声)

ハル「達者でな。」

玄関前

(拍手と祝福の声)

「別嬪やな!」

「おめでとうさん!」

「おめでとう!」

「おめでとう!」

(拍手と祝福の声)

糸子「はよ行き! 向こうさん 待たせたら また おばあちゃん 怒んで。」

千代「せやなあ 糸子ん時は おばあちゃん怖かったなあ。」

(笑い声)

静子「行ってきます!」

木之元「さあ おめでとうさん!」

(拍手と祝福の声)

<静子を見送って1か月後の6月11日。 おばあちゃんは 静かに息を引き取りました>

モバイルバージョンを終了