あらすじ
糸子(尾野真千子)は久しぶりに玉枝(濱田マリ)を訪ねる。奈津(栗山千明)の心を開くことができるのは、玉枝だけのはずだった。戦争で息子二人を失い、年老いて弱った玉枝は、いったん断るが、思い直して糸子と共に奈津を訪ね、一人奈津と向き合う。玉枝の優しい言葉に涙が止まらない奈津。出てきた玉枝は何も語らなかったが、一瞬奈津と見つめ合い、糸子は希望を持つ。そして周防(綾野剛)が仕事を終え、店を去ることになる。
85回ネタバレ
安岡家
居間
糸子「おばちゃん いてるけ?」
八重子「えっ?」
糸子「話が あるんや。」
八重子「上に いてるけど…。」
糸子「お邪魔します。」
八重子「ちょっと待って下さいね。 なあ どないしたんや?」
糸子「心配せんといて。 ちょっと… 頼み事があってな。」
八重子「頼み事?」
(足音)
2階 寝室
糸子「おばちゃん。」
玉枝「はれまあ… 糸ちゃんか。」
糸子「うん…。」
玉枝「あんたんとこ… お父ちゃん 死んだんやてなあ。」
糸子「うん…。 あと… 旦那さんと… おばあちゃんも 死んだで。」
玉枝「うん…。 ようさん 死んだなあ。」
糸子「おばちゃん…。」
玉枝「うん?」
糸子「あんな…。 助けてほしいんや。」
玉枝「何やて?」
糸子「奈津が… パンパン なってんや。」
玉枝「体 売ってるちゅう事け?」
糸子「うん。 あの子な 戦争中に 店の借金で 首が回らんようになって… お母ちゃん連れて 夜逃げしたんや。 どこ行ったか 分からんように なっちゃってんけど こないだ 闇市で見つけた。 おばちゃん このとおりや…。 奈津を 助けちゃってくれへんやろか?」
玉枝「何で… うちに言うねん?」
糸子「奈津はな… おばちゃんにしか 救えへんねん。」
玉枝「ん?」
糸子「奈津はな 昔から おばちゃんにだけは 弱いとこ 見せるんや。」
玉枝「は… ほんな事 あるかいな。」
糸子「ほんまや! 信じてえな おばちゃん! ほんまなんや。 おばちゃんだけが 奈津を救えるんや。」
玉枝「ほやけど あんた…。 今の うちに… 人 救う余裕なんぞ あるかいな。 ふん! アホらし。 ないわ ほんなもん。」
玉枝「うちは このとおりや。 ボロボロの グチャグチャや。 帰って… はよ 帰って。」
小原家
2階 仕事場
(せみの鳴き声)
<どないすれば いいかも 分からんままに 何日かが過ぎました>
昌子『先生 電話です!』
糸子「誰から?」
昌子『八重子さんです。』
周防「よかですよ。」
糸子「すんません。」
オハラ洋装店
昌子「先生 はよ はよ。」
糸子「おおきに。 はい… どないしたん? えっ?! 今から? 行こ。 行く! 迎えに行くわ 今すぐ。」
闇市
(闇市のにぎわい)
<おばちゃんが『奈津と 話しに行く』て 言うてくれました>
(闇市のにぎわい)
小屋
玄関前
(戸をたたく音)
玉枝「ごめんください。」
糸子「出てったら あかん。」
太郎「分かった。」
居間
玉枝「お母ちゃん… 死んだんか? 大変やったなあ…。 勘助と… 泰蔵もなあ。」
奈津「嫌! 嫌や!」
玉枝「死んでしもたよ…。」
奈津「嫌や! 嫌や! 嫌~!」
(泣き声)
玉枝「しんどかったなあ…。」
(泣き声)
玉枝「あんたも… たった一人で… つらかったなあ。」
(泣き声)
玄関前
(戸の開く音)
糸子「大丈夫か?」
玉枝「うん…。」
糸子「あんた はよ おんぶしちゃり。」
太郎「おばあちゃん。」
糸子「大丈夫か?」
小原家
居間
周防「はい。」
一同「うわ~!」
糸子「きれえなあ!」
千代「おいしそうや!」
<周防さんは 予定どおりの日数で 無事に 仕事を 仕上てくれました>
一同「頂きます!」
糸子「あっ 滑る。」
昌子「持たれへん。」
りん「うちは これ~!」
幸子「えい!」
りん「うん!」
糸子「うま~い!」
りん「うまいわ~!」
幸子「これ おいしい!」
千代「まあ~ お世話になったんは こっちやのに 最後の最後まで こんなん してもうて。」
周防「いやいや。」
千代「明日から寂しなりますわ…。」
周防「まあ どうぞ。」
幸子「取られへん。」
玄関前
(からすの鳴き声)
糸子「ほんまに お世話になりました。」
周防「じゃあ…。」
糸子「ほんまに… ほんまに おおきに。」
周防「ちっとは 役に立ったですか?」
糸子「はい。 周防さんが思てるより もっと。 うち… 周防さんに 助けてもろたんです。 ほんまです。」
周防「よかった。」
糸子「えっ?」
周防「嫌われたかて 思うとった。」
糸子「何で?」
周防「いや…。 何か 最後の方 しゃべってくれんごとなったけん。」
糸子「あ…。 ほな… おおきに。」
周防「こっちこそ。 じゃ…。」
糸子「お元気で!」
<しゃべれんように なったんは 好きになってまいそう やったからです さいなら… もう 二度と会いませんように>