あらすじ
昭和21年9月。安岡家に奈津(栗山千明)が訪ねてくる。久しぶりに起きだした玉枝(濱田マリ)は、店を手伝ってほしいと言い始める。身の上を恥じる奈津に、玉枝は前に進むようにと強く言う。糸子(尾野真千子)は、奈津の借金の保証人となるが、祝言のときに助けられたからと礼を言わせない。糸子が制服を作り安岡美容室が新装開店したのは、だんじりの季節。女の子である直子(二宮星)も、だんじりをひける時代がきたのだ。
86回ネタバレ
安岡家
居間
八重子「よかった! ごっつい似合うてるわ。」
「ほんま?」
八重子「うん!」
「自分では 見慣れへんよって よう分からへんけど。」
八重子「ごっつい似合うてるで。 よっちゃん 顔だちが もだんやさかい ほんま ええわあ。」
「ほうかの…。おおきに! ほな また来さしてもらうよって。」
八重子「おおきに! おかあさんと 昌男ちゃんにも よろしゅうな。」
「うん。 ほな おおきに。」
八重子「おおきに 気ぃ付けて。」
2階 寝室
八重子「お母さん。」
玉枝「…何や。」
八重子「奈っちゃんが お線香 あげに来てくれたで。 降りてけえへん? お母さん。」
玉枝「ちょっと。 手伝うて…。」
(障子戸の開く音)
居間
八重子『ゆっくりな… ゆっくり はい。 気ぃ付けや。 足元 大丈夫か? はい…。』
玉枝「おおきに…。」
八重子「ゆっくり ゆっくりで ええさかい。」
玉枝「よう参っちゃってくれたな。」
奈津「こないだは… せっかく来てもうたのに お構いもしませんで…。」
(せみの鳴き声)
玉枝「ところで… あれや。 うちの店な 今更 髪結いでもないしな 名前 変えようか 思てんねん。 なあ?」
八重子「えっと…。」
玉枝「安岡髪結い店ちゅうのも もう 古いやろ。 何がええかいな? 安岡… う~ん。 やっぱり …安岡パーマ店か?」
八重子「安岡パーマ店?」
玉枝「ちゃうなあ。 何ちゅうんかいな この 今どきの言い方で 安岡… う~ん。」
奈津「安岡美容室?」
玉枝「それや。 安岡美容室。 はあ…。 あんなあ 店ん中も もっとハイカラにしてな あんたも もう 着物やのうてな ちゃんとした仕事用の服を 作ってもらい 糸ちゃんに。」
八重子「あ… はい。」
玉枝「まあ ほんな訳でな モノは相談やけども 手伝うちゃってくれへんか? 奈っちゃん。」
奈津「え?」
玉枝「やっぱり ようさんな お客さんを 取り込んでいこう思たら 人手が要るよってな 手伝うてほしいんや。 なあ 手伝うてえな 奈っちゃん。」
奈津「おおきに おばちゃん…。 おばちゃん… そやけど うちは もう 表の世界の女と…。」
玉枝「言いない! 金輪際 言いない。 ええな。 もう忘れ。 忘れてな 先 行こ。 うちも そないするよってな あんたも そないし。 な。」
小原家
オハラ洋装店
<奈津は 借金を月払いで 返していく事になって うちが その保証人になりました>
居間
昌子「もう…!」
糸子「痛い!」
昌子「先生 ええかげんにして下さい!」
松田「思いつきで 人 助け過ぎです! パーマ機の分かて まだ 返ってきてないっちゅうのに 借金の保証人て…。」
糸子「どないかなる。」
2人「先生?!」
糸子「どないかなる。 稼いだらええんやろ? 稼いだら。」
安岡家
居間
(せみの鳴き声)
玉枝「どないしたん?」
八重子「何にも…。」
玉枝「八重ちゃん… 堪忍してや。 今までの分 返していくさかい 堪忍やで。」
八重子「すんません。」
小原家
オハラ洋装店
(ミシンの音)
昌子「あ いらっしゃい。」
松田「あ いらっしゃい。」
糸子「向こう 向き。」
糸子「もう ええ。 こんで チャラや。」
奈津「え?」
糸子「うちは… 祝言の時 あんたに助けてもうた。 うちは あんたに ひと言も 礼 言うてない。 あんたも 言わんでええ。」
安岡家
居間
玉枝『奈っちゃ~ん。 奈っちゃん ちょっと!』
奈津「は~い。」
玄関前
玉枝「ちょっと曲がってるわ。」
八重子「どないやろ?」
玉枝「もうちょい こっち?」
八重子「こっちや。」
木岡「こうけ?」
木之元「こうけ?」
八重子「それ 行き過ぎ ちゃうか。」
玉枝「戻して。」
糸子「はようさん!」
八重子「ああ 糸ちゃん。 おおきに!」
糸子「おめでとうさん。」
玉枝「こんなん ええのに 糸ちゃん。」
玉枝「うち これでええか? おかしい事 ないか?」
八重子「おかしない おかしない。 大丈夫 大丈夫! 奈っちゃん 奈っちゃん 早う。」
玉枝「おいで おいで!」
八重子「糸ちゃん。」
糸子「へ?」
八重子「糸ちゃんも。」
糸子「いやいや うちは ええて。」
木之元「行き行き行き!」
糸子「いや ええて!」
八重子「糸ちゃん! 糸ちゃんが いてくれへんかったら でけへんかったんや。」
奥中「ちょ ちょい待ってよ。」
糸子「いや けど ええわ うち。」
八重子「あかん 糸ちゃん! おっちゃん 早く早く!」
糸子「ほんまに ええの?」
奥中「はい じっとして! いくよ。」
糸子「え~ 真ん中やで。」
奥中「はい! いち にい の~… さん!」
(シャッター音)
小原家
2階 寝室
♬~(お囃子)
玄関
直子「行ってきます!」
千代「行っちょいで!」
昌子「行っちょいで!」
直子「は~い!」
千代「気ぃ付けや。」
<直子が どさくさに紛れて 潜り込んでしもたせいか どうなんか…>
玄関前
糸子「直子 頑張りや。」
直子「うん! 行ってきます!」
<女の子でも だんじりを曳いても ええようになりました>
2階 寝室
糸子「新しい時代やな…。」