ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カーネーション」第91回「揺れる心」【第16週】

あらすじ

千代(麻生祐未)に「毒気を抜かれて」以来、北村(ほっしゃん。)は素直になってしまった。開店が近づき、残業しようとする糸子(尾野真千子)だが周防(綾野剛)に勧められて組合の月会合に出る。戦争で焼かれたものは戻らない、時代を切り開けと語る三浦(近藤正臣)。北村、周防、それぞれが抱えているものに思いをはせる糸子。帰り道に周防への切ない思いをかみしめる。開店の朝、美しい洋服姿の糸子はある決意を固めていた。

91ネタバレ

北村の工場

縫い子「お昼 とってきます~。」

<北村さんの店 北村商会の開店が 4月15日に決まりました>

糸子「まあ とにかく もうけが少ない分 数で勝負です。 この服は 絶対 売れますよって 数を そろえるだけ そろえときましょ。 品切れっちゅう事が ないように。」

北村「ああ。」

糸子「縫い子さんは 結構 ええ人 そろてますし とにかく 生地を 準備できるだけ して下さい。 どんどん縫わせていきますよって。」

北村「よっしゃ! 頑張ら。」

<そんな素直な返事されてしもたら『こいつには 絶対 失敗させられへん』ちゅう気に なってまうやないか>

北村「ああ 毎度! 北村です。」

(ミシンの音)

周防「小原さん 行かんですか?」

糸子「は?」

周防「今日 月会合の日ですばい。」

糸子「ああ… いや うちは ええです。」

周防「まあまあ。」

糸子「いや あきませんて! はよせな 間に合わん!」

周防「まあまあ まあまあ。」

糸子「いや あきませんて!」

料理屋

三浦「あ~ おおきに。」

糸子「どうぞ 組合長。」

三浦「あ~! いや~ ほんでも いよいよやのう。 新しい時代やのう。」

北村「えっ?」

三浦「新しい時代が 始まるんや。 戦争で焼けてしもたもんなあ。 もう どんな思ても 二度とは 取り返せえへん…。 ほんでも… 新しいもんは まだ… まだ 手に入れる事ができるんや。 お前ら 切り開け! なんぼでも! ほんで また… 新しいもんを見せてくれ!」

(北村の泣き声)

糸子「え?」

三浦「おいおい! 何や おい! 大の男が お前…。 あ~ おい! 布巾ないか? 布巾 その辺に。 ちょっと… こっち くれ。」

(泣き声)

三浦「北村 ほれ これ使い。」

北村「はい…。」

♬~(ラジオ)

♬『口びる よせて だまってみている 青い空』

<北村さんの家に 何で 女がいてへんのか…>

♬~(三味線)

<周防さんは 長崎で どんな目に遭うたんか… 組合長は 何を焼かれてしもたんか…>

♬~(三味線)

<うちは な~んも知らんけど…>

♬~(三味線)

<ほんでも みんなと こないしてるうちに 何や お湯に つかったみたいに…>

♬『リンゴは なんにも』

<心の中から 解けていくもんがありました>

道中

<はあ… うちは 恋しいんやな うちは お父ちゃんが好きでした 勘助が かわいいて しゃあなあて 泰蔵にいちゃんに憧れてたし… 勝さんを 大事に思てました>

(男女の笑い声)

「あ~ オッケー オッケー!」

(笑い声)

<そういう人らを 全部 なくして… 開いた でっかい穴の所に えらい人が 入ってきてしもた>

回想

周防「おいは… あん服ば 格好よかて 思うたと。」

回想終了

糸子「かなんなあ…。」

<恋しいて 恋しいて…>

糸子「人のもんやのに…。」

小原家

寝室

糸子「はあ? ま~た こんな びっしり。 うわ…。」

北村の工場

(小鳥の鳴き声)

糸子「おはようございます。」

<開店が迫って ますます 忙しなってきました>

糸子「おはようございます…。」

(柱時計の時報)

周防「ああ… おはようございます。」

北村「うん… 何時や?」

糸子「また 昨日も 遅うまでやったんですか?」

北村「おう…。」

<泣いても笑ても うちの仕事は 15日までや。 そこまでは 余計な事 考えんと 頑張っちゃろ。 何が何でも この人らの開店を 成功させちゃろ。 それが でけたら 一個だけ 自分に 許そうと思てる事が ありました>

周防「吉田さんは 20枚。」

吉田「はい。」

<それは 悔いの残らへんよう 自分の気持ちに けり つけるっちゅう事です>

北村「あの… 電話 ほな 電話 はよ切って 探せや!」

糸子「19 20 21 22。」

(ミシンの音)

北村「はよ来いて! お前。 もう 明日には 店 開くんやど! ビービー 泣かんと はよ来い! 怒ってないから はよ来い もう! 言うとけ!」

糸子「45 46 47 48 49 50。 よっしゃ! とりあえず こんで 数 そろたなあ。 よいしょ!」

小原家

寝室

(小鳥の鳴き声)

北村の工場

糸子「おはようございます。」

周防「あ…。 おはようございます。」

糸子「昨日も また あれから 徹夜したんですか?」

周防「何か かんか 気になって 結局 北村さんと… 4時ごろまで。 あ~! さあ おいも そろそろ 店の方 行かんば。 あ~ えっと… あっ あれですよね? 契約書。」

糸子「いえ。 あの 今日は…。 これを。 無事 開店 おめでとうございます。」

周防「ありがとうございます。 あれ? よう似合っとですよ。」

糸子「周防さん…。」

周防「うん?」

糸子「うちは 今日で しまいです。 最後に 言わして下さい。 好きでした。 ほんなけです。 ほな さいなら。」

周防「おいもです。 おいも… 好いとった。 ずっと…。」

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