あらすじ
千代(麻生祐未)に「毒気を抜かれて」以来、北村(ほっしゃん。)は素直になってしまった。開店が近づき、残業しようとする糸子(尾野真千子)だが周防(綾野剛)に勧められて組合の月会合に出る。戦争で焼かれたものは戻らない、時代を切り開けと語る三浦(近藤正臣)。北村、周防、それぞれが抱えているものに思いをはせる糸子。帰り道に周防への切ない思いをかみしめる。開店の朝、美しい洋服姿の糸子はある決意を固めていた。
91回ネタバレ
北村の工場
縫い子「お昼 とってきます~。」
<北村さんの店 北村商会の開店が 4月15日に決まりました>
糸子「まあ とにかく もうけが少ない分 数で勝負です。 この服は 絶対 売れますよって 数を そろえるだけ そろえときましょ。 品切れっちゅう事が ないように。」
北村「ああ。」
糸子「縫い子さんは 結構 ええ人 そろてますし とにかく 生地を 準備できるだけ して下さい。 どんどん縫わせていきますよって。」
北村「よっしゃ! 頑張ら。」
<そんな素直な返事されてしもたら『こいつには 絶対 失敗させられへん』ちゅう気に なってまうやないか>
北村「ああ 毎度! 北村です。」
(ミシンの音)
周防「小原さん 行かんですか?」
糸子「は?」
周防「今日 月会合の日ですばい。」
糸子「ああ… いや うちは ええです。」
周防「まあまあ。」
糸子「いや あきませんて! はよせな 間に合わん!」
周防「まあまあ まあまあ。」
糸子「いや あきませんて!」
料理屋
三浦「あ~ おおきに。」
糸子「どうぞ 組合長。」
三浦「あ~! いや~ ほんでも いよいよやのう。 新しい時代やのう。」
北村「えっ?」
三浦「新しい時代が 始まるんや。 戦争で焼けてしもたもんなあ。 もう どんな思ても 二度とは 取り返せえへん…。 ほんでも… 新しいもんは まだ… まだ 手に入れる事ができるんや。 お前ら 切り開け! なんぼでも! ほんで また… 新しいもんを見せてくれ!」
(北村の泣き声)
糸子「え?」
三浦「おいおい! 何や おい! 大の男が お前…。 あ~ おい! 布巾ないか? 布巾 その辺に。 ちょっと… こっち くれ。」
(泣き声)
三浦「北村 ほれ これ使い。」
北村「はい…。」
♬~(ラジオ)
♬『口びる よせて だまってみている 青い空』
<北村さんの家に 何で 女がいてへんのか…>
♬~(三味線)
<周防さんは 長崎で どんな目に遭うたんか… 組合長は 何を焼かれてしもたんか…>
♬~(三味線)
<うちは な~んも知らんけど…>
♬~(三味線)
<ほんでも みんなと こないしてるうちに 何や お湯に つかったみたいに…>
♬『リンゴは なんにも』
<心の中から 解けていくもんがありました>
道中
<はあ… うちは 恋しいんやな うちは お父ちゃんが好きでした 勘助が かわいいて しゃあなあて 泰蔵にいちゃんに憧れてたし… 勝さんを 大事に思てました>
(男女の笑い声)
「あ~ オッケー オッケー!」
(笑い声)
<そういう人らを 全部 なくして… 開いた でっかい穴の所に えらい人が 入ってきてしもた>
回想
周防「おいは… あん服ば 格好よかて 思うたと。」
回想終了
糸子「かなんなあ…。」
<恋しいて 恋しいて…>
糸子「人のもんやのに…。」
小原家
寝室
糸子「はあ? ま~た こんな びっしり。 うわ…。」
北村の工場
(小鳥の鳴き声)
糸子「おはようございます。」
<開店が迫って ますます 忙しなってきました>
糸子「おはようございます…。」
(柱時計の時報)
周防「ああ… おはようございます。」
北村「うん… 何時や?」
糸子「また 昨日も 遅うまでやったんですか?」
北村「おう…。」
<泣いても笑ても うちの仕事は 15日までや。 そこまでは 余計な事 考えんと 頑張っちゃろ。 何が何でも この人らの開店を 成功させちゃろ。 それが でけたら 一個だけ 自分に 許そうと思てる事が ありました>
周防「吉田さんは 20枚。」
吉田「はい。」
<それは 悔いの残らへんよう 自分の気持ちに けり つけるっちゅう事です>
北村「あの… 電話 ほな 電話 はよ切って 探せや!」
糸子「19 20 21 22。」
(ミシンの音)
北村「はよ来いて! お前。 もう 明日には 店 開くんやど! ビービー 泣かんと はよ来い! 怒ってないから はよ来い もう! 言うとけ!」
糸子「45 46 47 48 49 50。 よっしゃ! とりあえず こんで 数 そろたなあ。 よいしょ!」
小原家
寝室
(小鳥の鳴き声)
北村の工場
糸子「おはようございます。」
周防「あ…。 おはようございます。」
糸子「昨日も また あれから 徹夜したんですか?」
周防「何か かんか 気になって 結局 北村さんと… 4時ごろまで。 あ~! さあ おいも そろそろ 店の方 行かんば。 あ~ えっと… あっ あれですよね? 契約書。」
糸子「いえ。 あの 今日は…。 これを。 無事 開店 おめでとうございます。」
周防「ありがとうございます。 あれ? よう似合っとですよ。」
糸子「周防さん…。」
周防「うん?」
糸子「うちは 今日で しまいです。 最後に 言わして下さい。 好きでした。 ほんなけです。 ほな さいなら。」
周防「おいもです。 おいも… 好いとった。 ずっと…。」