あらすじ
周防(綾野剛)は、オハラ洋裁店で紳士服の仕立てを受け持つことに。その穏やかな顔を見て、糸子(尾野真千子)は、ほっとする。三姉妹にオルガンを買ってやったものの、弾く順番を巡りケンカが絶えない。ある日、糸子が三姉妹を安岡美容室に迎えに行くと、見覚えのない中年男性(ラサール石井)が奈津(栗山千明)を迎えに来ていた。洋裁店に周防のミシンが届き、みんなで和やかに棚卸し作業をしていたとき、その男性が現れ…。
94回ネタバレ
珈琲店・太鼓
周防「小原さんとこで 働かせてもらいたかけん。 迷惑ば かけるかも しれんばってん。 頼むけん。」
小原家
オハラ洋装店
<周防さんが うちの店で 働くようになってから 高い所の仕事は 全部 周防さんの係になりました 周防さんの足は あと1週間で治るそうで>
昌子「周防さん。」
周防「はい。」
昌子「昨日 言うてた この 滝川さんの ツーピースなんですけど ちょっと変更してほしいそうです。」
周防「はあ どげんしたら よかですか?」
昌子「襟を もっと 細うしてほしいそうです。」
周防「分かりました。」
昌子「お願いします。」
<来週には 2階に 新しいミシンも入るよって そうなったら 本格的に 紳士物の仕事を始めてもらえます 見本を置いただけど 注文が 早速 チラホラ 入ってきてんのは このごろ 世間の男の人らに 三つぞろえの背広が 大人気っちゅう時流も あるんでしょう>
松田「はい もしもし? オハラ洋装店でございます~。 あれ~ 毎度 おおきに! はい はい この度 紳士もんも 始めさしてもらう事に なりまして はい…。」
<会計の恵さんの機嫌が ええんも うれしいけど>
松田「そら ぜひ来て下さい! オホホホ…。」
<周防さんの顔が やっと 楽そうになったんが 何より うれしいです>
2階 座敷
聡子♬『ソ ミ ミ ファ レ レ』
<とうとう 根負けしました。 けど ピアノやのうて 中古のオルガンちゅうとこが お母ちゃんの意地です。 けんかせんよう 弾いてええ順番は きっちり 決まったあります>
聡子「♬『レ レ レ レ ミ ファ』あっ 何すんよ?!」
直子「もう4時や!」
聡子「また 4時ちゃう。 まだ 長い針 12んとこ 来てへん!」
直子「短い針は 4とこ来てる!」
♬~(オルガン)
直子「痛た!」
優子「何で あんたが弾いてんよ?! うちの番やろ!」
直子「姉ちゃんが遅いんが 悪いんじゃ!」
優子「何すんよ!」
直子「うちが先や!」
優子「何で あんたが弾いてんのよ?!」
直子「姉ちゃんが 遅かったんやろ!」
優子「うちが 先や!」
聡子♬『ソ ミ ミ ファ レ レ』
糸子「こら! こら! あんたら! けんか するな! これ!」
糸子「そんなな けんかの元に なるんやったら こんなオルガン また 店 戻してまうで。 そんで ええんか?」
優子「お母ちゃん。」
糸子「何や?」
優子「うち 5時から お花や。」
糸子「しゃあないな。 ほな 行き。 あんたは 割かし どれも 習い事 続いてるよって そこは 偉いな。 あんたらは ぜ~んぶ やめてしもたけど。」
直子「全部 ちゃう! 絵ぇは やってる。」
糸子「まあ 絵ぇだけな。」
直子「絵ぇは うちのんが 姉ちゃんより ずっと上手や!」
糸子「いちいち 要らん事 言わんでええ。 あんたも 相手せんで ええさかい さっさと お花 行き!」
直子「イ~!」
優子「ベ~!」
糸子「これ! ほんまに! まだ やってんのか あんたは!」
安岡家
玄関前
(風鈴の音)
安岡美容室
直子「こんにちは!」
聡子「こんにちは!」
八重子「あれ いらっしゃい。」
奈津「いらっしゃい。」
八重子「あんたら また来たんけ?」
直子「お母ちゃんが『行け』ちゅうた。」
居間
玉枝「あ~れ あんたら また来たんけ? ハハハ? ちょうどええわ。 今 カリントウ こさえてるとこやよって 散髪 終わったら 食べていき!」
直子「ほんま?! おおきに!」
聡子「おおきに!」
玉枝「座って 待っとき。」
小原家
オハラ洋装店
周防「あ… お先です。」
糸子「ご苦労さんです。」
周防「はい。」
(足音)
昌子「ご苦労さんです。」
周防「お先です。」
昌子「ご苦労さんです~。」
(柱時計の時報)
糸子「う~ん あの子ら 遅いな…。 また どこぞで 道草でも食うてん ちゃうやろか。 昌ちゃん ちょっと見てくるわ。」
昌子「行ってらっしゃい。」
安岡家
玄関前
(風鈴の音)
(せきばらい)
安岡美容室
糸子「こんばんは!」
八重子「あ~ いらっしゃい!」
居間
直子 聡子「お母ちゃん!」
玉枝「はれ お母ちゃん 心配して 迎えに来てしもたん。」
糸子「あれ あんたら 何 呼ばれてんよ?」
玉枝「カリントウや。 糸ちゃんも 食べり。」
糸子「あれ~ ええとこ 来たなあ。 頂きます~。」
安岡美容室
八重子「奈っちゃん もう ええから。 待っててくれてんし はよ もう上がり。」
奈津「かめへん。」
八重子「ええから ええから はよ上がり。」
奈津「ほな すんません。 お先です。」
八重子「お疲れさ~ん。」
玉枝「お疲れさん。」
玄関前
桜井「これ!」
奈津「おおきに。」
桜井「行こか。」
安岡美容室
糸子「誰? なあ 誰 誰 誰 誰 ?! あの男。」
八重子「いや~ うちも よう知らんねんけどな。」
玉枝「毎晩 あないして 奈っちゃんの事 迎えに来てんやし。」
八重子「なあ。」
糸子「怪しない? 変なひげ 生やして 顔かて うさんくさい!」
八重子「そうかあ? ええ人そうやしなあ。」
玉枝「うん。 背広かて ええのん 着てるで。」
糸子「ほうかあ? 信用でけへんわ。 さっきかてな うちの顔 見て 鶏みたいに ヒュッて…。」
八重子「ああ また ごっつい顔で 来たんやろ。」
玉枝「似てるわ。」
太郎「ただいま。」
2人「お帰り!」
糸子「お帰り!」
聡子「太郎にいちゃん お帰り!」
直子「太郎にいちゃん お帰り!」
玉枝「あんたも カリントウ 食べるか?」
太郎「ええ。」
玉枝「何や? えらい 機嫌悪いな。」
小原家
座敷
直子「ほんまやで。 3年の中で うちが 一番 絵ぇが上手やって 言われてんやで。」
千代「へ~え そら すごいなあ。」
直子「けど ほんまは 学校中でかて うちが一番 上手なんやで。」
千代「はあ~ それは… どうやろなあ?」
直子「何で? ほんまやで!」
千代「せやかて 6年生に 姉ちゃん おるやんか。 姉ちゃんの絵ぇも そら 上手やで。」
直子「姉ちゃんなんか うまない! うちのんが うまい。」
千代「ほうかの~? ほうかの? ハハハハハ。 ほうかの? ほうか~の? ハハハ! ほうかの? ハハハハハ。」
直子「もう おばあちゃん。」
千代「直ちゃん! 直ちゃん 捕まえた。 なあ~ 直ちゃん。 フフフフフ。」
寝室
直子「何してんの? そんなん 作ったかて 店に置かしてもらわれへんて 分かってんのに。」
優子「ほんなん どうでもええわ。」
直子「はあ?」
優子「うちは 作りたいさかい 作るんや。 自分で 才能あるて 分かってるし。」
仕事場
「ここで よろしいか?」
糸子「周防さん ここで ええですか?」
周防「あ はい。 はい。」
「ほな これで 失礼します。」
糸子「ご苦労さんです。」
周防「ご苦労さんです。」
糸子「よかったですね。」
周防「本当に ありがとうございます。」
糸子「いや せやけど これから どんどん 稼いでもらいますよって。 心ゆくまで ええもん こさえて下さい。」
周防「はい。」
オハラ洋装店
<二人だけで いてる時も みんなと いてる時も 周防さんは 絶対 うちのそばに 来ようとしませんでした そのかわり うちが ふと見てみる時 周防さんも 必ず こっちを見てくれました>
糸子「あんたら きっちり巻きや。 しわになったら あかんさかいな。」
縫い子達「はい。」
<そんなけで うちは なんぼでも 頑張れる気がしました>
糸子「あ それ ここ置いといて。」
縫い子「はい。」
桜井「あの 今日は お休みですか?」
糸子「やってるんですけど すんません 今日は 店 棚卸しで…。」
桜井「どうも…。 え~っと こちらは 紳士服も やっておられるんですかいな?」
糸子「あっ あ… はい。」
周防「どうも いらっしゃい。 じゃあ どうぞ 2階へ。」
桜井「どうも。 あっ!」
周防「大丈夫ですか?」
桜井「あ 大丈夫。」
周防「気を付けて下さい。」