ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カーネーション」第95回「隠しきれない恋」【第17週】

あらすじ

中年男性(ラサール石井)が紳士服の注文に訪れ、周防(綾野剛)が糸子(尾野真千子)を呼びに来る。なんと、えんび服と一緒に、奈津(栗山千明)の花嫁用ドレスを作ってほしいという。男性は奈津の過去にとらわれず、幸せにしたいのだと言う。糸子は玉枝(濱田マリ)や八重子(田丸麻紀)と示し合わせて、奈津に、ないしょでドレスを作り上げる。花嫁となる奈津の幸せを祈りつつ、周防のそばで働く喜びをかみしめる糸子だった。

95ネタバレ

小原家

2階 仕事場

糸子「失礼します。」

周防「こちら 桜井さん。」

桜井「どうも…。」

周防「今度 結婚さるっそうです。 そいで 今日は えんび服ん注文ば してもろうたとです。」

糸子「はあ。」

周防「ばってん もう一つ 注文のあるけんて…。」

桜井「え… あ… わしが言うんですか?」

周防「おいが言いましょうか?」

桜井「そうして下さい。」

周防「はい。 花嫁さんの ドレスば 作ってほしかそうです。」

糸子「もしかして 花嫁ちゅうんは…?」

桜井「あの… その… 吉田奈津さんです。」

糸子「はあ…。」

桜井「あ いや… あの せやけど ないしょで 作ったってほしんです。 ちゅうのも その… 本人が『今更 花嫁衣裳なんか 着たない。 こんな年で 似合わへん』ちゅうんです。 けど わしは どないかして 着せちゃりたい。 ほんで お友達ちゅう お宅へ お願いに上がりました。」

糸子「う~ん…。」

周防「あの…。」

糸子「ああ。 吉田奈津ちゅうんは あれです。 いつぞや 闇市のそばで 周防さん かばんで殴られた子です。」

桜井「な… 殴った?」

周防「ああ いや まあ…。」

糸子「ああ 最初は うちを殴ってたんですけど 止めようとして 周防さんも殴られました。 2人とも 血まみれになって 帰りました。 ハハハ! ハハハハハ!」

桜井「あア… はあ…。」

糸子「あれは そんなんですよ。 ウフフ…。 あれは 別嬪やけど… 相当な訳ありですよ。」

桜井「分かってます。」

糸子「花嫁衣裳は 昔 親に そろえて もうたやつが あると思います。」

桜井「はあ それ 何か『夜逃げの時に 全部 置いてきた』言うてました。」

糸子「ちゃんと… 全部 聞いてますか?」

桜井「全部かどうかは 分かりません。 けど… わしも 大人ですさかい。 ある程度の事は… 聞かんでも 分かります。 幸せにしちゃりたいんです。」

糸子「分かりました。 おおきに…! よろしゅう お願いします…!」

桜井「あ あ あ あの… こちらこそ よろしゅう お願いします!」

安岡家

安岡美容室

玉枝「はあ~ ご苦労さん。 みたらし団子 でけたよって あんたらも 食べり~。」

八重子「ひゃあ おいしそう!」

玉枝「あ は~れ~。」

八重子「きゃ~!」

玉枝「はあ どないしよう?」

八重子「お母さん 何やってるの?」

玉枝「ごめんな 奈っちゃん。 その制服 置いて帰り。」

八重子「うちで洗うさかいに 置いて帰り。」

奈津「ああ かまへん。 うち 明日 休みやし 自分で洗濯する…。」

八重子「あかん あかん あかん! そら 悪いなあ お母さん。」

玉枝「せや そら 悪い。 置いて帰らなあかん 奈っちゃん。」

奈津「はあ…。」

小原家

オハラ洋装店

八重子「短いやつも あるんやね。」

松田「ほんまやね。 ああ これなんか 似合いそうやね。」

糸子「どれ?」

松田「これこれ。」

糸子「ああ なるほどなあ。」

八重子「奈っちゃん 細いさかいなあ。」

糸子「う~ん せやけど 年が年やよってなあ あんまし こないピラピラ おぼこない方が ええんちゃう?」

安岡家

安岡美容室

奈津「何?」

糸子「何にも。」

奈津「何や?」

糸子「な~んにも。」

小原家

オハラ洋装店

糸子「今日 見て 分かった。 やっぱり あの子はな… これや!」

昌子「へえ~。」

松田「ほう~。」

糸子「あの子な 首から肩が シュッとして きれいなんや。 せやから ここは あんまし ゴチャゴチャさせんと しっかり見せてやな…。」

2階 仕事場

桜井「あ はい。 よろしいな。」

周防「そうですねえ ハハハ!」

糸子「ヘッヘッヘッヘッヘ…。」

桜井「はっ?」

糸子「でけました。 イヒッ! ほれ!」

桜井「はあ~! すご~い!」

糸子「ごっつい自信作です!」

桜井「わあ これ きれいやなあ!」

糸子「絶対 絶対 似合いますよ!」

桜井「ああ はい すごい! 似合うやろなあ。」

糸子「ええわあ。」

周防「きれか…。」

糸子「シュッとして…。」

桜井「きれい きれい。」

オハラ洋装店

(戸の開く音)

糸子「あれ?」

周防「おはようございます。」

糸子「えらい早いですね。」

周防「持つばい。」

糸子「え…? 一緒に行ってくれるんですか?」

周防「はあ。」

安岡家

安岡美容室

糸子「おはようさん。」

玉枝「おはようさん。」

桜井「おはようございます。」

八重子「なあ 奈っちゃん やっぱり もう一本 こっちに挿しとこよね。」

奈津「いや おかしいよって。 こんな普通の服に 髪だけ こない派手なん…。 入籍しに行くだけやし。」

八重子「ええから ええから。 な。」

玄関前

奈津「ほな… 長い事 お世話になりました。」

玉枝「うん…。 幸せにな。」

八重子「また いつでも遊びにおいでや。」

奈津「ほんまに…。 ほんまに… おおきに!」

桜井「ほんまに お世話になりました。 もう ええか? 行こう。」

糸子「紳士もん やってもうてる 周防さん。」

周防「よろしく頼みますけん。」

八重子「まあ こちらこそ。」

玉枝「よろしゅう お願いします~。」

小原家

玄関前

<嘘みたいに 周りも うちも みんなが うまく いってました>

糸子「おはようさん。」

木岡「おう。 お 周防君。」

周防「おはようございます。」

木岡「また 昼休み 来いや。 今日は わしと打とよ。」

周防「はい。」

糸子「ほなな。」

木岡「うん。」

糸子「うん フフフッ…。」

<幸せすぎて 心配になるくらいでした。 そのうち…>

周防「おはよう。」

<また 忘れた頃に… 足元を すくわれるんと ちゃうやろか>

オハラ洋装店

松田「先生! 先生 すいません。」

糸子「うん?」

松田「こっち来て こっち来て。」

糸子「何…? 何や?」

松田「先生!」

糸子「ん?」

松田「どうしても 聞いてほしい話があるんです!」

糸子「うん?」

居間

ラジオ・アナウンサー『皆様 ご機嫌いかがでしょう』。

昌子「あれ?! 何 さぼってるんですか?」

松田「シ~ッ! 先生が『ええ』言うてくれたんや。 離してんか。 行った行った ほら。」

ラジオ・アナウンサー『『中村春太郎』さんです』。

春太郎『皆様 こんにちは。 中村春太郎でございます』。

松田「はあ~!」

<恵さんは 10年来の 春太郎びいきなんやそうです>

春太郎『ところが 実は 生まれは 岡山なんでございますよ。 しかし 若い頃は どうにか ご婦人に もてようと 浪速っ子のまねしたり したもんでしてねえ ハハハハハ!』。

松田「まあ! オッホホホホホ!」

春太郎『いや~ お恥ずかしい』。

オハラ洋装店

松田「先生。」

糸子「ん?」

松田「ありがとうございました。」

糸子「どうやった? 春太郎 また 調子 乗っちゃった?」

松田「もう さすがの春太郎様でしたわ もう ホホホホホ!」

(電話の呼び鈴)

松田「はい もしもし オハラ洋装店でございます。 はい。 はい…! えっ うわさ? 先生と… 周防さんの?」

(ミシンの音)

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