ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カーネーション」第96回「隠しきれない恋」【第17週】

あらすじ

中年男性(ラサール石井)が紳士服の注文に訪れ、周防(綾野剛)が糸子(尾野真千子)を呼びに来る。なんと、えんび服と一緒に、奈津(栗山千明)の花嫁用ドレスを作ってほしいという。男性は奈津の過去にとらわれず、幸せにしたいのだと言う。糸子は玉枝(濱田マリ)や八重子(田丸麻紀)と示し合わせて、奈津に、ないしょでドレスを作り上げる。花嫁となる奈津の幸せを祈りつつ、周防のそばで働く喜びをかみしめる糸子だった。

96ネタバレ

小原家

オハラ洋装店

松田「えっ うわさ? 先生と 周防さんの?」

珈琲店・太鼓

松田「うちが聞いたんは 先生と周防さんが組んで 北村さんをだましたよって 周防さんが 組合を追放されて それを先生が囲てる ちゅう話でした。」

糸子「はあ。」

松田「そら うちかて そんな話 まるまる 信じるほど あほちゃいます。 先生と周防さんが お金の事で あの北村さんを だませる訳ない。 どっちも その辺 スッカスカやのに。」

糸子「まあな。」

松田「けど 周防さんが うちで 働くようになった いきさつも 確かに急やった。 うちの話も 昌ちゃんの話も 何も聞かんと 先生が 勝手に決めてしもうた。」

松田「先生。 うちは オハラ洋装店が好きです。 先生の事かて 尊敬してます。 昌ちゃんかて 店の子らかて みんな そうです。 ほんま この店の事 誇りに思てんのに。 気色の悪いもん 持ち込まんといて下さい!」

糸子「気色悪いて…。」

松田「周防さんは ええ男ですわ。 そら 好きになんのも 無理は ないかもしれません。 けど あかんもんは あきませんでしょう? よそ様の旦那 しゃあしゃあと 囲い込むようなまね 先生には せんといてほしんです。 お願いします!」

(泣き声)

<あ~あ!>

(泣き声)

松田「先生 お願いしますわ!」

糸子「いや…。」

小原家

玄関前

「ここや ここ。」

「ほんまや。 働いとんで。」

「あ~あ えらいこっちゃ。 よう 働けるわ。」

(笑い声)

オハラ洋装店

(ミシンの音)

<せやけど まあ 当たるはずのバチが 当たっただけのこっちゃ>

玄関前

木岡「おい 糸ちゃん ちょっと聞きたい事がある。」

糸子「堪忍 また今度。」

木岡「あかん! こら 糸ちゃん!」

2階 仕事場

(ミシンの音)

(うわさする人達の声)

(ミシンの音)

周防「辞めましょか?」

糸子「え?」

周防「おい 店ば辞めましょか?」

糸子「そばに おって下さい。 そんだけで… うち 誰に どんな事 言われたかて 耐えられますよって。」

<とは言うたもんの>

台所

(犬のほえる声)

(戸の開く音)

<まさか… まさか まさか なんと まあ>

居間

<うちのバチは まだまだ こっからのようです>

亘「お姉さん 兄の顔 まともに見られますか?」

木之元「勝君だけと ちゃうで。 善ちゃんもやで。」

木岡「あんだけ 曲がった事の 嫌いな男やった。 娘が… しかも 一番信頼しとった糸ちゃんが 人様の旦那を囲うやて…。 草場の陰で 泣いてんで!」

糸子「勝さんにも お父ちゃんにも ほんま 申し訳ないと思てます。 けど…。」

木岡「けど 何や?」

亘「何ですか?」

糸子「2人とも もう 死んでしまいました。」

木之元「いやいや 糸ちゃん。」

木岡「死んだら 関係ないちゅうんけ!」

節子「ちょっと!」

亘「そういう事 ちゃうでしょう!」

木之元「ちょ ちょっと!」

正一「なあ 糸子。」

糸子「はい。」

正一「この店は お前の小さい時からの 夢やったなあ。」

糸子「そうです。」

正一「お前は ほんまに ようやってきた。 たった19で 自分の力で 店 開いて 勝君が亡くなってからも 女手一つで守ってきた。 その店の看板に 何で自分で… 泥 塗るんや?」

糸子「言われてる事は よう分かります。」

正一「分かるやろ お前やったら。」

糸子「けど…。 うちは…。 看板に 泥塗ったとは 思てないんです。」

正一「お前が思てなかってもや。」

木岡「周りが皆 そない思とるんじゃい!」

亘「お姉さんの思い上がりですわ!」

千代「すんません! すんません! すんません!」

美代「周防さんの奥さんの気持ち 考えた事あるか?」

糸子「分かってます。 そらもう ほんまに お申し訳ないと思うてます。」

昌子「先生。 泥塗られてるんは 看板だけやないんです! うちらかて 商店街歩いたら 指さされるんです。 店の事も 先生の事も 今日まで 信用して ついてきたんです! ちゃんと言うて下さい!」

(泣き声)

糸子「せやな。 今日 皆さんに言われた事 うちが犯してる罪の重さは 全く そのとおりやと思うてます。 ご迷惑かけてしもてる事も 傷ついてしもてる事も そのまんま受け止めたいと 思てます。」

糸子「その上で お断りします。 周防さんには このまま うちの店で 働き続けてもらいます。 うちとゆう人間が 信用でけへんちゅう理由で 離れていくお客さんも あるやろと思います。 けど うちは ほんまに しょうもない人間かも しれんけど うちの店 こさえてる洋服 働いてもろてる者らには 何があっても 自信を持って これからも やっていくつもりです。 店を守る。 お客の期待に応える。 従業員の稼ぎを守る。」

糸子「偉そうな言い方になるけど 周防さんと ご家族の生活も うちが守らしてもらいます。 許して下さいとは言いません。 許されんかて かまいません。 ただ…。 ほんまに すんませんでした。」

千代「けどなあ 糸子。 あんたは そんでええけどなあ。 子供らがなあ かわいそでなあ。」

木岡「まず 間違いなく子供らは 友達に言われてんで。」

正一「子供らが どんだけ傷つくか そこんとこ お前 もいっぺん 考え直してみる訳にはいかんか?」

優子「失礼します。」

直子「失礼します。」

聡子「失礼します。」

糸子「あんたら…。」

木岡「な… 何や?」

優子「おっちゃん おばちゃん。 うちらは お母ちゃんの やりたいように やってもろうて ええです。 うちのお母ちゃんは 絶対に 間違えた事はせえへん。 せやさかい お母ちゃん 許しちゃって下さい。 お願いします。」

直子「お願いします!」

聡子「お願いします!」

優子「お願いします!」

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