あらすじ
昭和29年、糸子(尾野真千子)のオハラ洋装店は新しくなった。店では流行の服のファッションショーが行われ、次女・直子(川崎亜沙美)は手伝わされる。長女・優子(新山千春)は、絵の勉強に余念がない。招かれざる客として北村(ほっしゃん。)が現れ、三女・聡子(村崎真彩)も加わり、娘たちをカフェに連れていく。帰りに小原家で千代(麻生祐未)にもてなされる。木之元(甲本雅裕)はアメリカ商会なる店を始めていた。
98回ネタバレ
小原家
2階 座敷
♬~(レコード『銀座カンカン娘』)
(拍手)
オハラ洋装店
ヨシ子ちゃん! かいらしいで~。」
昌子「チューリップライン。 世界の女性が 憧れるディールのラインです。 毎年 新しいラインが発表されているが これは チューリップラインといわれるもの。 この服は とても女性らしい なだらかな肩の線に ふっくらした胸元のふくらみを ウエストで絞った かわいいチューリップの花のような シルエットです。」
糸子「よっしゃ 頑張って!」
(拍手と歓声)
「渡辺さん ええわ~!」
(拍手)
糸子「よかった よかった。 よっしゃ 次やで。」
昌子「こちらは Hライン。 アルファベットのHの形をしています。」
木之元家
アメリカ商会
聡子「おっちゃん おっちゃん。 キャンデー ちょうだい。」
志郎「はい~ 聡ちゃん 毎度。 日曜も練習け?」
聡子「うん。」
志郎「はあ~ ご苦労なこっちゃのう。 どれにする?」
聡子「う~ん ぶどう。」
志郎「はい よっ!」
聡子「ありがとう。」
志郎「おおきに。」
小原家
オハラ洋装店
昌子「タイトのスカートを組み合わせ ややキッチリした印象に仕上げました。」
(拍手)
節子「いよ! 吉田さ~ん!」
(拍手)
節子「吉田さん ごっつ決まってるで!」
昌子「ニュールックのスカートスーツです。 上着は ヘチマカラーで 優しさを表し スカートは ウエストを細く フレアを少々多めにした 花のように広がるロングスカートで 女性らしさを表しています。」
玄関前
聡子「あ おっちゃん。」
木岡「おう 聡ちゃん お帰り。」
聡子「おっちゃん。 あれ うち 何してるか 知ってる?」
木岡「ああ 何や 服のお披露目会 ちゅうちゃったで。」
聡子「ふ~ん。」
木岡「うん。」
オハラ洋装店
一同「ええわ~!」
(拍手)
♬~(レコード『銀座カンカン娘』)
(歓声と拍手)
居間
直子「ああ!」
♬~(レコード『銀座カンカン娘』)
(レコード 空回り音)
♬~(レコード『銀座カンカン娘』)
糸子「アホ! しっかりしい!」
(拍手)
台所
聡子「ただいま~。」
2階 座敷
聡子「ただいま~。」
優子「お帰り。」
オハラ洋装店
美代「みんな 楽しそうやった。」
糸子「ほんまに? いや それだけじゃなくて 作りに来てや。」
美代「ほんまやな。」
(笑い声)
糸子「ほなな。 おおきにな。」
「はいはい また寄ってよ~。」
松田「どうもどうも おおきに。」
昌子「おおきに。」
糸子「優子~! 聡子~! あんたらも ちょっと手伝うて~。」
2階 座敷
聡子「は~い!」
優子「うちは 絵ぇ描いてるて 言うといて。」
聡子「うん。」
オハラ洋装店
北村「えらい盛況やんけ。」
昌子「まあ!」
糸子「何してんや?」
北村「見に来たったんやないか。 オハラ洋装店さんが 記念すべき第1回ファッションショー するちゅうさかいに。」
糸子「呼んだ覚えないわ。 ホラ吹き男なんぞ。」
北村「お前よ いつまで そんな古い話 ネチネチ ネチネチ 言うてんじゃ。 美容に悪いど。」
糸子「何とでも言え。 墓に入るまで ネッチネッチしたるわ。」
北村「はよ ほんな 墓 入ってくれや。」
聡子「あっ 北村のおっちゃんや。」
北村「よう!」
直子「あっ ほんまや!」
北村「うわうわ 何や お前ら。 ちょっと見ん間に ごっつい 大きなっちゃあるんやんか~。」
聡子「エヘヘッ せやろ?」
北村「何や ここの子ぉら。 どいつもこいつも ニョキニョキしやがってよ~。」
千代「はら~ 北村さん 来てくれはったんですかあ?」
北村「どうも おかあちゃん 元気しちゃあた?」
千代「おかげさんで。」
北村「どうも。」
千代「こないだ 何ちゃらちゅう 上等な果物 ようさん 送ってもうて…。」
北村「あれな バナナゆうねん。 上等やぞ あれ。」
千代「ああ! おいしかったなあ。 ごちそうさんでした。」
昌子「ごっつ おいしかったです。」
北村「ほんまけ? そら よかったわ。 おうおう チビちゃんらよ 何ぞ 甘いもんでも 食わしちゃろか?」
聡子「ほんま?!」
直子「うちも行く!」
北村「行くか。」
糸子「ええて! そんなん せんで。」
北村「ええやんけ!」
糸子「はあ?」
北村「ええんじゃ わいが 言うてんやから。」
直子「せやせや。 ええねん。」
北村「お姉ちゃんも 呼んじゃれや。」
糸子「ええて!」
北村「ええやんけ!」
聡子「優子姉ちゃ~ん! 北村のおっちゃんが 甘いもん 食べさしてくれるて! 行く~?」
2階 座敷
優子「行く!」
珈琲店・太鼓
♬~(レコード『僕は特急の機関士で』)
北村「お前ら よう食うのう。」
優子「ん~ うまい!」
木之元「よう 毎度!」
店主「いらっしゃい。」
木之元「おっ 小原三姉妹やんけ。」
直子「こんちは!」
北村「おう 電気屋の大将?」
木之元「ん? ほうよ。」
北村「あれよ 電気屋 どない なっちゃあんの? わい 今日 久しぶりに通ったら 店 変っちゃあるやん。」
木之元「アメリカ商会な。 新し 始めちゃったんやし。」
北村「アメリカ商会?」
木之元「アメリカのもん 置いてんや。 ごっつ おもろいど!」
北村「いやいや 電気屋はよ?」
木之元「うん? やめた。」
北村「やめた?!」
木之元「うん。」
北村「何でよ?! 電気屋ゆうたら 今 ごっつい右肩上がりやろ? ボロもうけ ちゃうんけ?」
木之元「いや~ けど 何や ものの形が おもろのう なってきたしな。」
北村「形?」
木之元「ラジオでも何でも このごろのは えらい 四角なってな 色も ええ事ないし 店に いっぱい あったかて 何ちゅうか こう… うれし なれへん。」
北村「はあ。」
店主「分かるわ~。」
木之元「分かるやろ? 昔のラジオなんか ごっつ よかったよな! 今のは カックカクや。」
北村「まだ食うちゃあんの? お前ら。」
優子「大好物やもん 太鼓のホットケーキ。」
聡子「うちも好き。」
直子「うちは 今日はよう仕事したさかい おなか すいてんやし。」
優子「仕事て 何?」
直子「音楽係や 今日のファッションショーの。」
優子「はあ? 大した仕事 ちゃうやん。」
北村「優子はよ あの 受験勉強 ちゃんと やっちゃんのけ?」
優子「やってんで。」
北村「どこ 行くんよ?」
優子「東京の美大。」
北村「美大!」
優子「うん。」
北村「お前 絵描きになるんけ?」
優子「う~ん まあ 分かれへんけど。」
直子「うちは なるで。」
北村「はあ?!」
直子「うちは プロの絵描きになる。」
優子「はあ? あんたな そんな甘いもん ちゃうで。」
直子「甘かろうが 甘なかろうが うちは プロの絵描きになる。」
北村「あのよ お前ら お母ちゃんの 仕事とか 継いじゃらへんのけ?」
優子 直子「絶対 嫌や。」
優子「それだけは 嫌や。」
直子「うちも。」
北村「何でよ?」
優子「何でて そら… うちのお母ちゃん 見てたら 分かるやろ? 盆も正月も 何もなしに 朝から晩まで 仕事ば~っかし。 あんな働き詰めで 一生 終わんのなんか 死んでも嫌や。」
直子「うちも。」
聡子「なあ おっちゃん。」
北村「何や?」
聡子「それ もう食べへんけ?」
北村「食えや。」
聡子「わ~ ありがとう。 あかん! うちが もろたんや!」
北村「取り合うな 取り合うな!」
聡子「こら 何でやねん! 直子 返せや!」
北村「もめるな もめるなって!」
小原家
玄関前
北村「迷惑や! 違う お前ら 子供やから 分からへん。 迷惑! これは。」
優子「そんなん ないわ! はよ行ったら ええねん。」
直子「おばあちゃんかて そのつもりで 準備してるて!」
昌子「おばあちゃんが うれしそうに 準備してますよって はよ行ったげて下さい!」
北村「いやいやいや…。」
昌子「いっぺん帰って また来るさかい!」
北村「お前 帰るて お前 嫁でも行ったんかよ?」
昌子「行ってません! 新しい住み込みが増えて 押し出されたんです。 今 そこのアパートに住んでるんです!」
優子「もうええって はよ入り。」
<これは 毎度お約束の茶番劇で この手で こいつは 3か月に1度は うちで 夕飯を食べていきます>
居間
北村「うんま! これ 何よ このいわし! おかあちゃん また一段と 腕 上げちゃあんな。」
聡子「ほめられたで。 よかったなあ おばあちゃん。」
千代「ほんな事ない。 今日は いわしが よかっただけやん。」
北村「また そんな事 言うて。」
千代「ほんまですてえ。 ひいばあちゃんはな もっともっと 上手やったんやで いわし 炊くの。 なあ?」
糸子「う~ん。 いわしば~っかし よう炊いちゃったなあ。」
昌子「覚えてるか? ひいばあちゃん。」
聡子「覚えてへん。」
直子「うちは 寝てる顔だけ 覚えてる。」
優子「うちは 起きてる顔も 覚えてるわ。 怖かったでえ。 時々 優しかったけどな。」
千代「ええ おばあちゃん やったんやでえ…。」
糸子「文句ば~っかし 言うてたけどな。」
<戦争が終わって あっちゅう間に 10年がたちました>
玄関前
千代「気ぃ付けて~ 急に寒なったよってな。」
北村「おおきにやで ほんま。」
千代「いいえ。」
北村「おおきに おおきに。 ほんま おおきにやで! おかあちゃん ごちそうさん!」
優子「気ぃ付けてな。」
聡子「気ぃ付けて。」
北村「はいよ~! 歯ぁ 磨けよ ちゃんと。」
優子「分かってるわ。 大丈夫かいな?」
北村「大丈夫や。」
直子「ハハッ…。」
<昭和29年 内は41歳になりました>
オハラ洋装店
千代「ほんま 寒なったなあ。 はれ。 あんた また 仕事すんのかいな?」
糸子「うん。」
千代「あれ まあまあ。」
糸子「あんたら 早いとこ お風呂屋さん 行っちょいでや。」
優子 直子 聡子「は~い。」
糸子「よっ! あ~ よっしゃ。」
(糸子の鼻歌)
<さあ これからです>