ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カーネーション」第99回「ライバル」【第18週】

あらすじ

朝、優子(新山千春)、直子(川崎亜沙美)、聡子(村崎真彩)らは、小学校から高校までそれぞれの学校に出かける。優子の絵の先生が洋服を作るためにやってくるが、東京の美大に行きたいという優子の話になり、糸子(尾野真千子)は改めて優子の進路を考える。糸子は、優子の画家になる覚悟を問いただし、はっきりしない優子に美大を受けるなと言う。優子は泣きじゃくり落ち込むが、これ見よがしの様子に糸子はまったく動じない。

99ネタバレ

小原家

2階 寝室

(小鳥の鳴き声)

<おはようございます>

(目覚まし時計の音)

<あんなけ寝ぼすけやったうちが 毎朝きっかり6時に 目ぇ覚ますようなるんやさかい 年ちゅうんも 取ってみるもんです>

座敷

糸子「起きり! 朝やで! ほれ! ほれ! はよ起きり! 朝や言うてんのに! はい! あ~! 気持ちええな! こら! あんたら虫か!」

これ こら! あら 虫しゃ~ん 出ちょいで~! 虫しゃ~ん! 虫しゃ~ん! はい 虫しゃん! ほんま! あんたら 毎朝毎朝 おんなじ事 ええかげんにしいや! これ!」

<うちの三姉妹 そろって 寝起きは悪いくせに 朝御飯の食べっぷりは ごっついええ>

居間

直子「おばあちゃん お代わり ちょうだい!」

千代「ふん。」

聡子「うちも!」

千代「はいはい。」

直子「ちょっと多めにしてな。」

聡子「うちも!」

千代「聡ちゃん 靴下 履いときや。」

聡子「うん?」

千代「また お母ちゃんに 怒られんで。」

聡子「ふん。」

優子「ほな ごちそうさんでした!」

千代「うん。」

オハラ洋装店

糸子「今日も頼むわな。」

「はい。」

優子「お母ちゃん!」

糸子「あ?」

優子「今日 芳川先生来るよってな。」

糸子「芳川先生? 何やったかいな?」

優子「言うたやんか! うちの絵の先生が 今日3時に 洋服 作りに来はるて。」

糸子「ああ~ あ~ああ。 何や言うてたな。」

優子「ちゃんと覚えといてや! 失礼せんといてや!」

糸子「あ… 昌ちゃん覚えといてや。」

昌子「はあ 3時?」

優子「3時。」

昌子「3時…。」

優子「ほな 行ってきます!」

糸子 昌子「行っちょいで!」

直子「行ってきます!」

糸子 昌子「行っちょいで!」

聡子「行ってきます!」

糸子「聡子 あんた 靴下 履かんかいな!」

聡子「う~ん いらん!」

糸子「この寒いのに 風邪ひく! これ これ!」

聡子「いらん! 暑いわ!」

玄関前

松田「おはようさん!」

糸子「もう!」

松田「おはようございます。」

糸子「おはようさん!」

松田「あの… 聡ちゃん また はだしやけど。」

糸子「ええんや もう。 猿やし あれは。」

松田「猿かいな?」

台所

千代「熱~!」

オハラ洋装店

芳川「ほんでも 優子ちゃんが 優秀やさかい おかあさんも 将来が楽しみですね。」

糸子「いいえ~。 先生に そない言うてもろたら うれしいですけど 正直 うちは 何も アテにしてませんわ。」

芳川「まあ ほうですかあ?」

糸子「42。はい。 うちの娘ら3人とも『こんな洋裁屋なんか 死んでも継げへん』て そら 憎たらしい顔で 言い張ってくれますよって。」

芳川「あ ハハハ!」

糸子「136。 どうぞ! まあ 優子も あれはあれで 好きな絵の道 進んだらええと思てます。」

芳川「そうですねえ。 でもまあ 絵の道も それはそれで 相当に 険しいもんですからね。」

糸子「はあ~!」

芳川「ほんまに絵で食べていこう 思たら ちょっとやそっとの才能や 努力では かないませんから。 おかあさん?」

糸子「あ… すんません。 いや… そうでしょうねえ。」

芳川「え?」

糸子「いや ほんまに。 そら 厳しいて当たり前や。 芸術家なんか 洋裁屋より よっぽど険しい道なはずですわ。 うちの娘 ほんまに そこまで 覚悟ありますやろか?」

芳川「おかあさん 正直言うて。」

糸子「はい。」

芳川「今の優子ちゃんに そこまでの 覚悟は まだ ありませんわ。」

糸子「え?」

芳川「東京の美術大学に行きたい。 その気持ちは 強く持ってはりますけど 何があっても 自分は 絵で食べていくとまでは 思てへんと思います。」

糸子「はあ。」

台所

糸子「お お お…。」

千代「ヘヘヘ!」

優子「ただいま~!」

千代「お帰り~!」

優子「お母ちゃん! 今日 芳川先生 来た?」

糸子「ちょっと おいで。」

優子「え?」

糸子「ええさかい おいで。」

2階 座敷

糸子「あんたな。 ほんまに 美大 行きたいんか?」

優子「うん。」

糸子「何で行きたいん?」

優子「何でて そら 絵 描くんが 好きやからや。 ピアノやら習字やら 一とおりやったけど やっぱし 絵が一番 賞とかかて よう取れたちゅう事は そんだけ才能あるんやと 思てるし。」

糸子「本気で絵描きになる覚悟は あるんか?」

優子「え?」

糸子「本物の絵描きになるちゅうんは あんたも分かってるやろけど そんな簡単な事ちゃう。 ほんまに認められるまでは そら ものごっつい貧乏かて 苦労かて 覚悟せんならんやろ。 いや 生きてるうちに 認められたら ましな方で 死ぬまで認められん方が 多いかもしれん。 あんたは ほんまに そんなけの覚悟があって 美大 受けたい ちゅうてんか?」

優子「え…。」

糸子「どないや?」

優子「そんな… そんな 急に そんなこと 言われてもやな。」

糸子「あかん!」

優子「え?」

糸子「あかん!」

優子「え?!」

糸子「あんたは 美大なんか受けな!」

優子「何で? 何で 急に そんな事 言うん?」

糸子「何でか? よう 自分で考え!」

優子「何で? 何で…? え…? 何で?」

(泣き声)

直子「ただいま!」

聡子「お帰り!」

(泣き声)

直子「聡子。」

聡子「え?」

直子「どないしたん?」

聡子「え? 分かれへん。」

千代「泣きな! ほら お握り お食べ。」

優子「何で 急に あかんやて言うん? うちは 東京の美大に行きたて こんなけ一生懸命 勉強してきたのに!」

千代「ええさかい お食べ。 おなかすいたら 余計 悲しくなるよって。 フフフ! お母ちゃんにも お母ちゃんの理屈があるんや。」

優子「そら あるんか知らんけど その理屈が ムチャクチャなんや! 今まで うちの進路なんか なあんも興味なかったくせにな 今日 芳川先生に 何 言われたか知らんけど 急に『あんたが美大なんかに 行きな!』やで。 ひどいわ~!」

(泣き声)

千代「泣きな 泣かんでええ。 行きたかったら 行ったらええ。 おばあちゃんが 行かしちゃる。」

優子「ほんま?」

千代「ふん。」

居間

千代「ふん。」

聡子「ありがとう!」

オハラ洋装店

糸子「4時に山上さん来るから。」

昌子「山上さん はい。」

糸子「ワンピース作る。 あとは 16日の 7時ごろやったかな…。」

<その日から 優子は うちと 口をきこうとしませんでした>

玄関前

美代「あれ 優ちゃん 行っちょいで!」

優子「行ってきます…。」

美代「どないしたん?」

優子「何もない!」

美代「ええ~? ちょちょちょ! 何や 何や? また 何でも おばちゃんに 相談しいや!」

安岡家

安岡美容室

糸子「こんにちは!」

八重子「はれ いらっしゃい!」

店員「いらっしゃい!」

糸子「はい これ お裾分け。」

八重子「まあ~ 立派なリンゴ!」

糸子「また 北村から 送ってきよったんやし。」

八重子「北村さんて あの例の北村さん?」

糸子「うん。」

八重子「はあ いっぺんも会うた事ないけど まあ 気前のええ人やなあ。」

糸子「ハハ! よっぽど暇なんやろ。」

八重子「お母さん 糸ちゃんから リンゴ もうたで!」

玉枝「はれ ああ~! おおきになあ いっつも ああ 糸ちゃん!」

糸子「あれ 洋介!」

玉枝「はい 糸ちゃんやで!」

糸子「糸ちゃんやで! ハハハ! おばちゃん。」

玉枝「は…。」

糸子「風邪 治ったけ?」

玉枝「ああ おかげさんでな すっかり ええねん。」

糸子「ほんま。」

玉枝「ああ。」

八重子「優ちゃん 来たで。 先週の金曜日やったかな?」

糸子「ああ さぞかし わめいちゃったやろ? お母ちゃんは 鬼やとか。」

八重子「まあな。」

糸子「あの子な あないして あっちこち 言いふらしよんやし。 かなんで ほんま。 どこ行っても『優ちゃん 美大 行かしちゃり』て 説教されんやし。」

八重子「せやけど ほんまに 行かしちゃらへんけ?」

糸子「行かさへんとは言うてへん。 本気かどうかも言えんような 甘ったれた根性で 美大なんか受けんな ちゅうたんや。」

八重子「それって 何かちゃうか? ちょっと ちゃうか?」

糸子「ほんまに行きたいんやったら うちの言う事なんか聞かんで 行ったらええんや。」

八重子「怖いお母ちゃんやなあ。」

小原家

オハラ洋装店

松田「あ お帰り!」

優子「ただいま。」

昌子「お帰り。」

優子「お母ちゃん。」

糸子「あ?」

優子「うちは お母ちゃんの跡なんか 死んでも継げへんよってな!」

糸子「はあ? 誰も そんな話してへんやろ。」

<まだまだや… お前は まっだまだや>

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