あらすじ
ハリウッド映画「サムライ・ベースボール」の日本人出演者オーディション前日。アクション監督の到着を待っていたひなた(川栄李奈)の前に現れたのは、10年前に俳優の道を諦めたはずの五十嵐(本郷奏多)でした。まさかの再会に、ひなたの心は大きく揺れ動きます。翌日、会場準備に勤(いそ)しむひなたは…。
103話ネタバレ
俳優会館
道場
ひなた「ぶ… 文ちゃん…?」
五十嵐「ひなた。 久しぶり。 元気そうだな。」
ひなた「な… 何で? えっ… ハリウッドのアクション監督て…!」
五十嵐「俺だよ。 まあ 正確には そのアシスタントなんだけど。」
<Ten years have passed since Hinata broke up with Igarashi. ひなたが五十嵐と別れてから 10年近くが たっていました>
五十嵐「変わってないなあ。」
ひなた「何でなん? 東京でお父さんの会社 手伝うんやなかったん?」
五十嵐「親父の会社は もともと うまくいってて。 覚えることは たくさんあったけど そんなに大変じゃなかった。 でも… つまらなかった。 朝は 虚無蔵さんにもらった木刀で 素振りしてた。 そして 夜は… トミー北沢のCDを聴いてた。」
ひなた「えっ? 文ちゃんがジャズを?」
五十嵐「ひなたのお父さんがくれたんだよ。 俺は 音楽には疎いのに… トミー北沢のトランペットに 夢中になった。 アメリカで録音したっていう そのCDを聴いてるうちに 親父の会社で 兄貴の下で働いてる自分が 何か ばかに思えた。 もっと広い世界があるのに 何やってんだろって。 それで 2年で会社辞めて アメリカに行った。」
ひなた「よう ご家族が許さはったなあ。」
五十嵐「許してくれなかったよ。 何度 同じ失敗を繰り返すんだって ほとんど勘当だった。 もちろん ハリウッドは太秦より ずっと厳しい。 言葉の壁も想像以上に大きいしね。」
五十嵐「それでも アジア人で 殺陣ができることは 武器になると思った。 まあ そんな簡単じゃなかったけど。 でも ここで やってきたことが 役に立ったよ。 死体役とか 斬られ役とか。 寒空の下の土左衛門とか。」
ひなた「あ…。」
五十嵐「どんなことでも いとわないでやってたら ニックが… あっ ミラー監督が気に入ってくれた。 あのころ見た夢は かなわなかったけど… ようやく自分の道を見つけられたよ。 あ~ そろそろ行くな。 ニックと打ち合わせがあるんだ。」
ひなた「あ…。」
五十嵐「ひなたも オーディション会場には いるんだろ?」
ひなた「うん。」
五十嵐「じゃあ 2日間よろしく。」
ひなた「うん。 はあ…。 (心の声)『っていうか…。 っていうか… っていうか… っていうか 文ちゃん…。』めちゃくちゃ かっこようなってへん!?」
榊原「うわあ!」
ひなた「榊原さん! す… すいません!」
榊原「どないしたん?」
ひなた「ごめんなさい。」
榊原「何? 急に。」
榊原「ホンマや… アシスタントアクションコーディネーター 『Bun Igarashi』て書いてある。 目は通してたけど あの五十嵐君とは結び付かへんかったわ。」
ひなた「ああ 分かります。 感じの印象 強いさかい。」
榊原「大月さん 大丈夫?」
ひなた「えっ?」
榊原「もし やりづらかったら オーディションの現場 外れてもええで。」
ひなた「いえ 大丈夫です。」
榊原「そうか。」
ひなた「うん。 仕事やし。 それに… フッ もう10年も前のことやさかい。」
回想
ひなた「私 うまいんやで。」
五十嵐「邪魔すんな。」
ひなた「あっ。 もう…。 痛~。」
回想終了
大月家
居間
ラジオ・ロレッタ『…same year!』
ラジオ・ジェリー『Me too. I’ve never met anyone like you. By the way, where were you born? I mean, which city?』
ひなた るい「I mean, which city?」
ラジオ・ロレッタ『Seattle, Washington.』
ひなた るい「Seattle, Washington.」
るい「Oh my goodness! I was born there, too! Really? It’s unbelievable!」
ひなた「Wow, we were born in the same city at the same time 30 years ago!」
ラジオ・ロレッタ『It’s fate, isn’t it?』
ひなた「It’s fate, isn’t it?」
ラジオ・ジェリー『I’m getting the same….』
ひなた「It’s fate, isn’ it?(これは運命だよね)It’s fate, isn’t it?」
るい「Wow, good luck you guys! Well, that’s all the time…。」
ひなた「It’s fate, isn’t it? これは… 運命…。」
るい「どないしたん?」
ひなた「うん?」
るい「何や うわの空やで?」」
ひなた「あのな お母ちゃん…。」
るい「何?」
ひなた「あ… いや 何でもない。」
るい「うん… そうか?」
ひなた「うん。」
俳優会館
道場
「大月さん。 私 下の受付 行きますね。」
ひなた「よろしく。」
「はい。」
ひなた「はっ…! Ms. Hirakawa.(ヒラカワさん)」
アニー「Oh. Ms. Otsuki. Nice to meet you.(あら こんにちは 大月さん)」
ひなた「I’m pleased to see you again!(またお会いできてうれしいです)」
アニー「I’m pleased to see you again!, too.(こちらこそ)The day has finally come.(とうとうこの日が来たわね)」
ひなた「Yes! I’m so excited.(はい!くわくします)」
アニー「This is my nephew, George.(甥のジョージよ)George, this is Ms. Otsuki. She works here.(ジョージ 大月さんよ こちらの社員さん)」
ジョージ「Hi, Ms Otsuki. Nice to meet you.(よろしく 大月さん)」
ひなた「It’s nice to meet you too, George.(こちらこそよろしく ジョージ)」
アニー「He’s a kind of my assistant.(彼はなんていうか 私のアシスタントのようなものよ)And he’s been int samurai movies since he was a little boy.(子供のころからサムライ映画に夢中だったの)」
ジョージ「And baseball!(それと野球にも夢中) ホームラン! I’m the best person for this project.(僕よりこの企画にふさわしい人間はいないんだ)」
ひなた「Please come on in. Everything is ready for the andition.(どうぞお入りください オーディションの準備はすべて整ってます)I hope you’ll find good actors here in Kyoto.(京都でいい役者が見つかることを願ってます)I’ll be back.」
ジョージ「Is she an interpretr?(通訳さん?)」
アニー「No.(ちがうわ)」
ジョージ「Really? Do Japanese people usually speak English that well?(え?日本人ってあんなに英語を話すものなの?)」
アニー「I don’t think so.(ふつうは話さないでしょうね)She reminds me of myself when I was younger….(彼女を見てると若いころの自分を思い出すの…)」
太秦映画村
五十嵐「虚無蔵さん!」
虚無蔵「文四郎。 久しいな。」
五十嵐「はい。 ご無沙汰しております! あの 俺…。」
虚無蔵「聞き及んでおる。 鍛錬を怠らなかった証しだ。」
五十嵐「オーディション会場は 道場ですよ?」
虚無蔵「拙者は受けね。」
五十嵐「えっ? うそでしょう!?」
虚無蔵「まことじゃ。」
五十嵐「どうして…。」
虚無蔵「拙者は時代劇が栄えてくれれば それで よいのだ。」
俳優会館
受付
「ハリウッドオーディション 受付 こちらで~す!」
「おはようございます!」
「…走ってきました!」
「はい ありがとうございます。」
「お願いします!」
「おはようございます!」
「おはようございます。」
「おはようございます。」
道場
ミラー「Could I get another bottle of water?(もう一本 お水をくれる?)」
ひなた「Sure. Right away. Here you are(はい! すぐにお持ちします)Sure. Right away. Here you are.(どうぞ)」
ミラー「Thanks.(ありがとう)」
ひなた「My pleasure.(どういたしまして)」
ミラー「Shall we?(いいかな?)」
クラーク「Yeah.(はい)」
アニー「Go ahead.(お願いします)」
五十嵐「それでは これより オーディションを始めます。 1番の方に入ってもらえますか。」
榊原「はい。」
山下「失礼します! 山下陽平です。 よろしくお願いします。」
五十嵐「アクションコーディネーターの ブン・イガラシです。 まず 私が殺陣をつけます そのとおりに動いて 斬られてください。」
山下「はい。」
五十嵐「ハハッ。 大丈夫 そんな緊張しないで いつもどおりに。」
山下「はい。」
五十嵐「じゃあ こちらへ。 斬りかかっていくと 刀を落とされます。 で 受け流し。 で 下がって 受け。 添え手で受け。 グググググ~が合ったらおなか蹴飛ばしてください。 で 崩れたところに 真っ向で斬りにいくと胴を斬られるので 崩れてください。」
山下「はい。」
五十嵐「大丈夫そうですか?」
山下「はい。」
五十嵐「Okay?(いいですか?)」
ミラー「Anytime.(いつでもどうぞ)」
五十嵐「Ready, action!(よ~い スタート!)」
「でや~!」
「てや~!」
「うっ!」
「ぐう…。 えいやっ! やあ~!」
「うわっ…。 ぐあ…。」
五十嵐「カット!」
山下「ありがとうございます。」
パトリシア「Thank you, very much.」
ミラー「Bun. Ask him to walk.(ブン 歩いてもらって)」
五十嵐「Okay, Nick.(わかりました 歩いてもらえますか?)向こうから 歩いてもらえますか?」
山下「はい。」
ミラー「And….」
五十嵐「Are you sure?(いいんですか?)」
ミラー「Yeah.」
五十嵐「Yeah. 御免。 たあ!」
山下「うあ~!」
五十嵐「お疲れさまでした。」
ホテル
アニーの部屋
(ノック)
ジョージ「Hi. It’sme, George.(僕だよ ジョージ)」
(呼び出し音)
アニー「George. Come on in.(ジョージ どうぞ入って)Oh. He isn’t answering. He’s unbelievably stubborn.(出ない 相当な頑固者のようね」
ジョージ「What? Are you calling him directly?(え?彼に直接電話してるの?)」
アニー「Yes.(そうよ)」
(呼び出し音)
アニー「I don’t want to leave Japan without meeting him.(彼に会えないまま日本を発ちたくないのよ)」
ジョージ「Hmm…. Take it easy. We still have one more day.(まあまあ あと一日あるんだから)」
アニー「Right. I won’t give it up.(そうね あきらめないわよ)」
ジョージ「Auntie.(伯母さん)」
アニー「Yes?(なに?)」
ジョージ「Do you really want to leave Japan without visiting Okayama?(ほんとに岡山へ行かずに帰っていいの?)You didn’t last time either, right?(前回も行かなかったんだろ)Are you sure you won’t regret it?(後悔しないと言える?)Aunt annie.(アニー伯母さんってば)」
アニー「George.(ジョージ)It’s my life.(私の人生よ)And that’s the way life is.(そしてそれが人生っていうものなの)」