ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第106話「2001-2003」【第22週】

あらすじ

いよいよハリウッド映画「サムライ・ベースボール」の製作がスタート。桃山剣之介(尾上菊之助)の出演や、いくつかのシーンを条映で撮影することなどが決まり、条映もひなた(川栄李奈)も沸き立ちます。そんなある日、ひなたが帰宅すると、居間に大叔父の勇(目黒祐樹)の姿が。その日上司の榊原(平埜生成)から聞いたうれしいニュースを伝えると、勇の思わぬリアクションにるい(深津絵里)もひなたも驚いて…。

106話ネタバレ

太秦映画村

「はい 撮ります。 はい チーズ。」

(シャッター音)

「Okay. Thank you. Hmm….」

ひなた「May I help you?(なにかお手伝いしましょうか?)」

「Oh, thank you. I’m looking for the dojo.(道場を探してるんだけど)」

ひなた「The dojo? It’s….(道場ですか? それでした…)」

「That way?」

ひなた「Matt Rollins!?」

マット「That’s me.」

ひなた「My goodness!」

俳優会館

道場

<ハリウッド映画『サムライ・ベースボール』の制作と 主な配役が発表されました>

ひなた「モモケンさん?」

剣之介「ひなたちゃん。 久しぶりだね。」

ひなた「この度は おめでとうございます。」

剣之介「ありがとう。」

マット「Oh. You must be kennosuke.(あっ 剣之介だね?)」

剣之介「マット・ロリンズさん。」

ひなた「And you must be matt Rollins.」

マット「I’ve really been looking forward to meeting you!」

ひなた「会うのを楽しみにしてました。」

剣之介「こちらこそ!」

ひなた「Likewise.」

<マット演じる主人公に 大きん影響を与える侍という大役には モモケンこと 二代目桃山剣之介に 白羽の矢が立ちました>

剣之介「Please.」

マット「There’s something you can see only in the darkness.(暗闇でしか見えぬものがある)There’re some songs you can listen to only in the darkness.(暗闇でしか聴こえぬ歌がある)『Kibinojo is here(黍之丞見参)』」

剣之介「おお…!」

マット「I’ve been watching “Kibinojo” ever since I heard we were going to be working together in thes movie.」

ひなた「共演が決まってから 『黍之丞』シリーズを見てはるそうです。」

剣之介「Thank you. 私も あなたの主演映画を 全て拝見していますよ。」

ひなた「I’ve watched all the movies you starred in as well.」

マット「Thank you. Oh.」

剣之介「ハハハハッ。」

ひなた「フフッ。」

<斬られ役ひと筋の虚無蔵の抜てきも 話題になりました。 すみれも 小さいなが役をつかみました。 いくつかのシーンは 条映で撮影されることも決まっています>

休憩所

榊原「あっ 大月さん ちょっと。」

ひなた「はい。」

榊原「さっき ハリウッドの担当者から 連絡があってな。」

ひなた「はい。」

榊原「コスチュームの一部を こっちで作ってほしいらしいんや。」

ひなた「コスチュームの一部いうのは?」

榊原「足袋や。」

ひなた「足袋?」

榊原「うん。 向こうでも試作はしたらしいけど やっぱり足が痛うならへん なじみのええ足袋作ろう思たら 相当な技術がいるいうて。」

ひなた「ああ… そうなんですね。」

榊原「春に来はった時に いくつか持ち帰らはったけど とりわけ 雉真繊維の足袋がええ言うたはる。」

ひなた「えっ。」

榊原「うちの衣装さんらも気に入って あれ以来 雉真にシフトしはったんやて。」

ひなた「はあ~ 知らんかった。」

榊原「大月さんは親戚やし 先に伝えとこ思て。」

ひなた「ありがとうございます。 あの 私からも 大叔父に電話してもいいですか?」

榊原「うん 構へんよ。」

ひなた「あっ ありがとうございます。 あの これ…。」

榊原「ああ ありがとう。」

道場

<『サムライ・ベースボール』は SF時代劇です。 マット・ロリンズ演じる主人公は 現代を生きるアメリカ人ですが あの日 幕末の日本の弱小藩に タイムスリップしてしまいます。 その藩主を演じるのが剣之介>

(太鼓の音)

<そして その藩主が最も信頼している 無口な家老が虚無蔵です>

(太鼓の音と シャッター音)

「ハリウッド映画『サムライ・ベースボール』への出演が 決まりました 桃山剣之介さん 伴 虚無蔵さんの 記者会見を行います。」

剣之介「(小声で)『虚無さん。 まぶしいでしょう。 暗闇にいたんじゃあ 見えないものもあるんですよ。』」

(泣き声)

轟「よかった…。」

畑野「はい!」

<剣之介演じる藩主は 藩政が うまくいかず悩んでいます>

太秦映画村

<タイムスリップしてきた主人公は 侍たちと なんとかコミュニケーションを 図ろうと 野球を教えます。 主人公は 野球を教えることで 侍たちと交流を深めていきます。 藩主は 野球を通して 藩の侍たちを統率することを考え また 主人公も藩主を通し 武士道を学びます。 しかし やがて尊王攘夷の嵐が吹き荒れ クライマックスは これぞハリウッド という大合戦シーンが撮影されます>

マット「Use your glove. It’s for the ball. Now, knee throw. Overhand like this, ready? Wow, you’ve got a really good arm!」

ひなた「そういうたら 今回 来てはりませんね アニー・ヒラカワさん。」

榊原「ああ…。 キャストも撮影も ほとんどは ニュージーランドやから そっちに行ってはるんやろ。」

ひなた「そうか…。」

大月家

居間

ひなた「ただいま。」

るい「お帰り。」

勇「お帰り。」

ひなた「大叔父さん!?」

勇「よう。」

勇「商工会の集まりが大阪であってのう。 せっかくじゃから寄ったんじゃ。

るい「急に連絡してきて びっくりしたわ。」

勇「うん。 すまん すまん。 ハハハッ。」

ひなた「桃太郎 元気にしてる?」

勇「ああ。 わしに似て 名サードじゃ。」

ひなた「アハハッ よかった。」

勇「ひなた。 今朝の新聞 読んだで。」

ひなた「えっ?」

勇「条映で ハリウッドの映画が作られるんじゃてな。」

ひなた「いや うちは協力するだけで 作るのは あくまでもハリウッドなん。 撮影は ほとんど海外やし。」

勇「何にしても うれしいニュースじゃ。 ハッハッハッハッ…。」

ひなた「その映画のことで もう一つ ビッグニュースがあるんやで。」

勇「うん?」

(すすり泣き)

勇「そうか…。 雉真の足袋が…。 そうか そうか…。 ああ… はあ…。 ようよう打順が回ってきたのう。」

ひなた「打順?」

勇「うん。 雉真繊維は 小せえ足袋屋から 父さんが一代で築き上げたんじゃ。」

回想

千吉「足袋ゃあ 作り続けてくれ。」

勇「もちろんじゃ。 足袋ゃあ 雉真の1番バッターじゃからのう。」

回想終了

勇「雉真の足袋が… こねえな形で ひ孫の仕事の役に立つたあ。 父さんも 草場の陰で どねえに喜んどるじゃろう…。 作り続けてよかった。 守り続けてよかった。 わしゃあ 今 心から そねん思う。」

(泣き声)

喫茶店・ディッパーマウスブルース

(拍手)

慎一「ありがとうございました。 はあ~ 夢みたいです。 こんな小さな喫茶店で トミー北沢と 大月錠一郎が演奏してくれるなんて。」

るい「どこでも気分が乗ったら 演奏しはるんや。」

慎一「ツアー帰りに寄ってもらって セッションなんて 感激です。」

(足音)

慎一「じいちゃん。 じいちゃんってば。」

健一「うるせえのお。 わしゃあ 今 余韻に浸りょんじゃ。」

錠一郎「ますます定一さんに似てきたなあ。」

健一「アッハハッ。」

(せきばらい)

健一「錠一郎君。」

錠一郎「はい。」

健一「トミーさん。 クリスマスッフェスチバルに 出てもらえんじゃろうか?」

錠一郎「クリスマスッフェスチバル?」

トミー「クリスマスフェスティバル?」

慎一「じいちゃん。 駄目だよ そんな無理なお願いしちゃあ。」

健一「何でなら。」

慎一「何でって…。」

トミー「何なの? それ。」

慎一「ジャズのコンサートです。 クリスマスの。」

るい「えらい急な話やねえ。」

慎一「あっ 今年じゃなくて 来年のクリスマスです。」

錠一郎「ああ 来年か。」

慎一「地元のイベントなんです。 場所だって小さいですし。」

錠一郎「どこ?」

慎一「偕行社です。」

錠一郎「偕行社?」

健一「ああ。 陸軍将校の社交場があった場所じゃ。」

トミー「ああ。 昔 進駐軍に接収されてたいう建物か。」

るい「ジョーさん。」

錠一郎「うん。」

トミー「何や?」

錠一郎「あっ いや… 僕がジャズに出会った場所や。 定一さんが 酔っ払って 『サニーサイド』歌ったステージ。 あれも クリスマスやった。」

トミー「ああ そういうことか。」

慎一「どうして ひいじいちゃんが 進駐軍のステージで歌うの?」

健一「知らん。 じゃから 酔っ払っとったんじゃろう。」

慎一「ええ… すごい度胸だな…。」

錠一郎「トミー。」

トミー「はいはい。 皆まで言うな。 ええよ。」

慎一「えっ。」

トミー「出るよ。」

慎一「ええっ! 本当ですか? 本当にいいんですか?」

錠一郎「僕も 演奏してみたい。 あのステージで。」

大月家

回転焼き屋・大月

♬~(ラジオ)

錠一郎「ただいま。」

ひなた「あっ お父ちゃん お母ちゃん お帰り。」

るい「ただいま。」

ひなた「トミーさんも お帰りなさい。」

トミー「おう サニーちゃん。」

ひなた「サニーちゃんて…。」

錠一郎「ミュージシャンは 変な符丁で呼びたがるもんなんや。」

トミー「符丁て言うな。 しかも変て言うな。 どないや? ハリウッド映画は。」

ひなた「マット・ロリンズが めちゃくちゃ かっこいいです。」

錠一郎「そうか。 楽しみやな。」

ひなた「はい。」

錠一郎「ひなた。」

ひなた「うん?」

錠一郎「ちょっと お茶いれて。」

ひなた「は~い。」

るい「トミーさんも どうぞ。」

トミー「いや 俺は ここで。」

るい「えっ? ここまで来はったのに。」

トミー「サッチモちゃん。 気ぃ進まへんか? 偕行社のステージ。 何や そんな顔してたから。」

るい「あ… そやないんです。 うれしいです。」

トミー「ほな 何で?」

るい「トミーさん。 こんなこと言うの ぜいたくなんは分かってるんですけど…。 トランペットを吹かせてあげたかった。 その特別な会場に ジョーさんのトランペットが 響き渡るのを… 聴いてみたかった。 フッ すいません。 言うても詮ないことを。」

トミー「いや。」

錠一郎「るい。 トミー。 お茶入ったで。」

るい「あっ そしたら…。」

トミー「うん。 また。」

錠一郎「あれ? トミーは?」

るい「帰らはった。」

錠一郎「え~ 何で?」

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