あらすじ
雪衣(多岐川裕美)が入院したことを知り、るい(深津絵里)は岡山の病院へ。そばで勇(目黒祐樹)が見守るなか、雪衣は安子(上白石萌音)に対して長年抱き続けてきた思いを初めて吐露します。ますます母への思いを強めるるいの様子を見て、錠一郎(オダギリジョー)は「クリスマス・ジャズ・フェスティバル」のステージ出演を提案し…。
107話ネタバレ
俳優会館
休憩所
<いよいよ年明けに ハリウッド映画 『サムライ・ベースボール』が公開されます>
『“Samurai Baseball” I’m Matt rollins.』
<この映画が 長らく不振だった 時代劇の救世主になることを ひなたも 条映の人たちも願っています>
テレビ『条映 太秦映画村で…』。
榊原「あっ。」
「キャッチボールしてはるわ。」
「おお おお おお!」
「うまいもんやがなあ。 なあ?」
「だいぶ練習したんちゃうか?」
「ホンマやで。」
道場
<『サムライ・ベースボール』が大ヒットしますように>
病院
病室
看護師「失礼します。 お大事に。」
(ノック)
勇「はい。 るい。」
るい「桃太郎から電話もろて…。」
勇「心配かけるから ええ言うたのに。」
るい「何 言うてんの。」
勇「ああ…。 寒い中 すまんのう。」
るい「雪衣さん。 お加減どない?」
雪衣「うん…。 大したことねえんよ。」
るい「昇ちゃんは?」
雪衣「ああ 帰ったとこじゃ。 孫ら連れて 心配そうに さっきまで ずっとおったんじゃけどのお。」
るい「そうか。」
雪衣「るいちゃん。」
るい「何?」
雪衣「安子さんのこと 何か分かった?」
るい「えっ…。 いえ… まだ…。」
雪衣「そう…。 ごめんなさい。 ごめんよお るいちゃん。 ごめんなさい。 安子さん。」
俳優会館
道場
ひなた「あっ! Annie! Hello! What brought you here?(今日はどうされたんですか?)」
アニー「I’m here doing some promotion for the movie and I thought I’d stop by.(映画のプロモーションで日本に 来たついでに少し寄ったのよ)」
ひなた「Wow, I’m glad to hear that.(わあ うれしいです)」
アニー「Thank you. Hinata.」
ひなた「Yes?」
アニー「I enjoyed the sweets.(あのお菓子をいただいたわ)」
ひなた「The sweets?(お菓子?)」
アニー「The one you gave us the last time we visited Japan.(前に来た時 あなたが差し入れてくれた)」
ひなた「Oh! Kaiten-yaki!(ああ! 回転焼き!)」
アニー「Oh. Is that what they are called?(そういう名前なの)」
ひなた「Yes. I wondered if you’d liked them.(はい 気に入っていただけたやろかって思ってたんです)」
アニー「I loved them.(とても気に入ったわ)」
ひなた「Oh! Thank you.」
アニー「Why are they so delicious?(どうしてあんなにおいしいのかしら)」
ひなた「It’s a magic apell.(それはおまじないをかけているからです)」
アニー「A magic spell?(おまじない?)」
ひなた「Yes. My mother taught it to me.(はい 母に教わりました)」
アニー「Your mother….(お母さんに)」
ひなた「Yes.」
アニー「What kind of spell is it?(どんなおまじない?)」
ひなた「Well, it’s not easy to translate it,(翻訳するのが難しいですけれど でも…)but…. Listen to the red beans.(小豆の声を聞けえ)Lesten and keep an eye on them.(耳を澄ませえ 目を離すな)They’ ll let you know what to do.(なにゅうして欲しいか小豆が教えてくれる)Imagine the happy smiles of the people eating them.(食べる人の幸せそうな顔を思い浮かべえ)Be delicious, be delicious, be delicious….(おいしゅうなれ おいしゅうなれ おいしゅうなれ)That feeling will flow into the beans….」
アニー「Thank you but I habe to go.(ありがとう でもごめんなさい 行かなくちゃ)」
ひなた「えっ…。」
アニー「Sorry. Good-bye, Hinata.(さよなら ひなた)」
ひなた「えっ…。」
廊下
ジョージ「Auntie!(伯母さん) Where have you been? It’s almost time for the meeting.(どこ行ってたの もうすぐ打ち合わせの時間だよ)What’s wrong?(どうしたの?)」
アニー「Nothing.(なにも)」
ジョージ「Are you sure?(ほんとに?)」
アニー「I am sure.(ええ)」
病院
病室
雪衣「私が 女中として 雉真の家に奉公するようになった時 安子さんと るいちゃんは おらなんだ。 長男の稔さんが戦死されて 未亡人になった安子さんは 娘ょう連れて 再婚されたもんじゃとばあ思うとった。 奥様が時々 稔さんのことだけじゃのうて るいちゃんのことを恋しがって 泣きょおるんを見て 思うたんじゃ。」
雪衣「 安子さんいう人あ ひでえ人じゃと。 そねえな薄情な嫁のことも その嫁の産んだ子のことも 忘れてしまやあええんじゃ。 そねん思うて 一生懸命 お世話ぁしたんじゃ。 奥様のことも 旦那様や 勇さんのことも。 私ゃあ 肉親が 縁が薄かったから うれしかった。 せえのに…。」
回想
勇「おう。」
雪衣「坊ちゃん お帰りなさいませ。」
勇「ただいま。 義姉さんたちが帰った。」
安子「安子です。 今日からお世話になります。」
雪衣「あ… お世話じゃなんて そねえな。」
回想終了
雪衣「何で この人あ 今更戻ってくるんじゃろう。 どねんつもりなんじゃろう。 何で 勇さんと こねえに親しげなんじゃろう。 何で かわいい娘ょう置いてまで おはぎゅう売り歩かにゃあ いけんのんじゃろう。」
勇「そりゃあ…。」
るい「叔父さん。」
雪衣「あの時…。」
回想
るい「何でいけんの? 何で お母さんは 私のことを こけえ連れてきたん?」
回想終了
雪衣「あの時 寂しそうな るいちゃんの顔を見ょおるうちに 意地の悪い どす黒え気持ちが 腹の底から湧き上がってきた。」
回想
雪衣「安子さんは 女手一つで るいちゃんを育てることを諦めて 雉真の家にお返ししようと 決めたんじゃ思います。」
るい「返す?」
回想終了
雪衣「いたいけな るいちゃんに…。 ひでえこと言うてしもうた。 私が あねえなこと言わなんだら もしかしたら 安子さんと るいちゃんが 離れ離れになることも なかったかもしれん。 ずっと そねえな気がしとった。 生きとるうちに 安子さんに謝りたかったんじゃけど… もう それも かないそうもねえ。」
勇「雪衣。 何ゅう言よんなら。」
雪衣「私ゃあ 思いを遂げて 勇さんと一緒になった。 じゃけど… 気持ちが晴れるこたあなかった。 当然の報いじゃ。 お義父様が るいちゃんをかわいがるのを 見る度に思よった。 この家の嫁は 私じゃねえ。 安子さん ただ一人じゃ。」
勇「雪衣…。」
るい「雪衣さん。 もう 自分を責めんといてください。 みんな…。 間違うんです。 みんな。」
(すすり泣き)
夜
勇「雪衣。 ありがとうよ。 わしの嫁さんになってくれて。」
<それから毎朝 雪衣と勇は 2人一緒に 『連続テレビ小説』を見ました。 ミュージカル調の このドラマが 『見上げてごらん夜の星を』と歌った その夜に 雪衣は 空へと旅立ちました>
大月家
居間
るい「お母さんに謝らなあかんのは 雪衣さんやあらへん。 私や。」
錠一郎「るい。 ステージに立ったら? 岡山のクリスマスフェスティバルで『On the sunny side of the Street』を 歌ってみたら? 届くかもしれへんよ。 あの特別なステージで歌う 『サニーサイド』やったら。 お母さんに。」
回想
♬~(レコード)
♬『Grab your coat, grab your hat baby Leave your worries on the doorstep Just direct your feet』
安子♬『On the sunny side of the Street Can’t you hear that pitter-pat babe? That happy tune is your step Life can be so sweet On the sunny side of the Street』