ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第109話「2003-2025」【最終週】

あらすじ

錠一郎(オダギリジョー)とるい(深津絵里)が控え室で準備を進める中、ひなた(川栄李奈)は弟の桃太郎(青木柚)と一緒に、ラジオでアニー・ヒラカワ(森山良子)のインタビュー番組を聴くことに。磯村吟(浜村淳)からの質問に通訳を介して英語で答えていたアニーですが、途中から突然日本語を話し始め…。

109話ネタバレ

大月家

ひなたの部屋

ケイティ『You know, Ineed really good Japanese actors for my new production.(新作にはいい日本人俳優が必要なの)』

ひなた「I know, I kanow. I’m going to see some of them tomorrow.(わかっていますって 明日何人かの俳優に会うから)I’m sure they’ ll be fabulous.(きっと素敵な俳優たちだと思う)」

ケイティ『If you say so, they must be.(あなたが言うならきっとそうね)』

ひなた「I’ll call you when I’m done.(終わったら連絡します)」

ケイティ『Thanks. See you then.(ありがとう じゃあまた)』

ひなた「Bye.」

(通話を切る音)

ひなた「ふう…。」

(メールの着信音)

NHK

小川「初めまして。 小川未来と申します」

ひなた「初めまして。 大月ひなたです。」

小川「ありがとうございます。 どうぞ おかけください。 よかったです。 日本にいらっしゃって。」

ひなた「ああ… 先日 2年ぶりに帰ってきたところです。」

小川「そうでしたか。 こちらの記事 拝読しました。 フフッ 本当に華々しいご活躍ですね。」

ひなた「いえ そんな。」

小川「でも 驚きました。 英語は ラジオ講座で身につけられたとか。」

ひなた「はい。 40過ぎてから留学しましたけど それまでは ラジオ講座を欠かさずに聴いていました。」

小川「私も親の言うことを 聞いとけばよかったなあ。 父に しょちゅう言われてたんです。 英語なら ラジオで勉強すればいいのにって。 家族で『カムカム英語』を聴いてたんだそうです。」

ひなた「平川先生の。」

小川「ええ どこかの子連れのお母さんと一緒。」

ひなた「えっ? よその人と?」

小川「そんな時代だったんだそうですよ。 フフッ。 それで 大月さん。」

ひなた「はい。」

小川「私たちは 今 2024年度に 新しい英語講座を 開設したいと思っています。」

ひなた「ええ。」

小川「大月さん。 講師になっていただけませんか?」

ひなた「えっ?」

小川「大月ひなたさんが講師の 新しいラジオ英会話番組を 作りたいんです。」

偕行社

控え室

<岡山でのクリスマスライブの日 ラジオから聴こえてきたのは アニー・ヒラカワの声でした>

ラジオ・磯村『アニー・ヒラカワさんに スタジオにお越しをいただいております。 ウェルカム』。

ラジオ・アニー『Hello. It’s nice to meet you.』

ラジオ・磯村『日本が誇る時代劇スター モモケンは ともかくとして 伴 虚無蔵をミラー監督に推薦したのは アニーさんやと聞いておりますが』。

ラジオ・通訳『Aside from the legendary star of Japanese period dramas, Momokenn, I heard that you also recommended Kyomuzo Ban to the director, Miller.』

ラジオ・アニー『Right.』

ラジオ・通訳『そうです』。

ラジオ・磯村『実に たくさんの日本映画を 見ていらっしゃる。 感心しました』。

ラジオ・通訳『You have seen many Japanese movies. I abmire your knowledge.』

ラジオ・アニー『Not only Japanese movies. But yes, it’s my job.』

ラジオ・通訳『日本映画だけではありません。 それが仕事ですから』。

ラジオ局

磯村「さて ここからはですね アニーさん ご自身について お話ししていただけますでしょうか?」

通訳「Now, would you please tell us about yourself?              」

アニー「I’d be happy to.」

通訳「喜んで。」

磯村「アニーさんは 1925年 シアトルに生まれた 日系のアメリカ人なんですね?」

通訳「Annie, you are a Japanese-American, bora in seattle in 1925, is that right?」

アニー「That’s right.」

磯村『シアトルのワシントン州立大学で 演劇を専攻してはったそうですね』。

通訳『I heard you had majored in drama at Washington State University.』

アニー『Yes. That was a long time ago though.』

通訳『はい。 遠い昔の話ですけど』。

磯村「で そのころから 映画 お好きやったんですか?」

通訳「You’ve enjoyed watching movies since then?」

アニー「Well, watching movies is a national pastime in the U.S.」

通訳「映画は アメリカでは ずっと国民的娯楽です。」

磯村「初めて見た映画 覚えていらっしゃいますか?」

通訳『What was the first film you saw?』

アニー『I’m not sure…. Mayde “Gone with the Wind”?』

通訳『『風と共に去りぬ』だったかしら』。

磯村『1939年公開の 言わずと知れた名作です これは。 この年は また 名作ぞろいでしてね…』。

磯村「そして 日本ではね 初代モモケンの『黍之丞』シリーズ第2作『棗 黍之丞 仁義剣』が 公開されてんですよ。」

通訳「And in Japan, it was the year the second film in the “Kibinojo” series, “Kibinojo Jingiken” was released, featuring Momoken the first.」

偕行社

控え室

ひなた「へえ~ そうなんや。」

ラジオ局

磯村「アニーさん ご覧になりましたか? この映画。」

通訳「Did you watch that one too, Annie?」

磯村『アニーさん』。

通訳『Annie.』

磯村『アニーさん』。

通訳『Annie.』

磯村「あ… あの じゃあ ここで 一曲 聴いてもらいましょうか。 曲は…。」

アニー「見ました。」

偕行社

控え室

ひなた「えっ?」

アニー『1939年 昭和14年に 私は『棗 黍之丞 仁義剣』を見ました』。

ひなた「アニーさん 何で日本語?」

ラジオ局

アニー「後に 夫になる人と。」

磯村「あの… え… アニーさんのご主人といいますと 戦後シアトルの大学で 教べんをとられていた…。」

アニー「大阪の映画館でした。」

磯村「大阪…。」

偕行社

控え室

磯村『日本の大阪ですか?』。

アニー『もう 二度と会わない覚悟で 彼に会いに行きました』。 『やがて 私たちは結婚しました。 ひとつきも たたないうちに 彼は出征しました。 娘を授かったことも知らずに。 彼は 帰ってきませんでした。 遠い海に行ったきり 戻りませんでした。 私は 娘を連れて 家を出ました。 貧しくて 苦労もしましたけれど 幸せでした。 あの日… 娘の顔に傷をつけてしまうまでは』。

アニー『私は 娘を連れて 夫の実家に戻りました。 でも 歯車は狂ったきり止まりませんでした。 家業だったお菓子屋を再建したい。 義父の財力に頼らず 娘の傷を治してやりたい』。『若かった私は 自分の気持ちばかりで 大切なことを見失っていました。 幼い娘の胸の内を 本当には 分かっていませんでした』。『るい』。『るい…』。『お母さん あれから何べんも考えたんよ。 何で こねえなことに なってしもうたんじゃろうって』。『私ゃあ ただ るいと2人 当たりめえの暮らしが したかっただけじゃのに…』。

回想

(雨の音)

(雨の音)

回想終了

アニー『じゃけど 私ゃあ もう 向き合うことができなんだ。 ただ 消えてしまいてえと思うた。 るいの前から消えることが るいにしてやれる たった一つのわび方で そして 祈り方じゃあ そねえ思うた』。『るい』。『おいしゅうなれ。 おいしゅうなれ。 おいしゅうなれ』。『おいしゅう…』。『るい』。

磯村『え~っと あの… 本日は アニー・ヒラカワさん お迎えして お話を伺いました。 ありがとうございました。 さて ここで 一曲 お聴きいただきたいと思います』。

るい「お母さん…。 お母さん…。 お母さん。」

錠一郎「るい。」

るい「お母さん。」

桃太郎「お母ちゃんのお母さんなん?」

ひなた「アニーさんが… おばあちゃん…?」

桃太郎「お姉ちゃん!」

ひなた「えっ?」

桃太郎「アニーさんが いつまで日本にいてるか聞いてる?」

ひなた「えと…。」

桃太郎「とにかく引き止めよ!」

ひなた「そやな。 会社に電話してスケジュール聞くわ。」

トミー「それより 今の放送局に電話した方がええ。」

ひなた「あ… そうか。 確か あの局の番号 携帯に…。」

るい「私が…。」

桃太郎「お母ちゃん アニー・ヒラカワさんと面識があるんは お姉ちゃんや。 一番 話が早い。」

るい「いや けど…。」

錠一郎「ここは ひなたに任せよう。 僕らは 予定通り『サニーサイド』を演奏するんや。 お母さんに届くように。」

ひなた「あっ もしもし? 条映映画村業務部の大月と申します。『みんなあつまれ磯村 吟です』の番組担当の方につないでいただけますか?」

玄関前

ひなた「もしもし? 榊原さん すいません。 アニー・ヒラカワさんのスケジュール すぐに調べてもらえますか? いや 放送局は もう出たらしいんです。 そっから先 どこへ向かったはんのか。 はい 一回切ります。 分かったら折り返してください。」

桃太郎「お姉ちゃん。 とにかく岡山駅まで行き。」

ひなた「うん。」

タクシー

桃太郎「岡山駅までお願いします。」

ひなた「お願いします。」

榊原『大月さん? アニー・ヒラカワさんやけどな もう 今日のフライトで アメリカへ帰らはるみたいやわ。』

ひなた「えっ 何時のフライトですか?」

榊原『13時40分 関空発や。』

ひなた「13時40分…。 あ…。 榊原さん。 ジョージさんの携帯番号 分かりますか?」

榊原『ああ… 調べてみるけど。 どないしたん? 何があったん?』

ひなた「後で説明します。」

榊原『分かった。 いっぺん切るわ。』

ひなた「はい すいません。 運転手さん。 こっから関空行こう思たら どないすんのが一番早いですか?」

「そりゃあ 新幹線で新大阪まで行って そっからタクシーに乗るか…。」

ひなた「どれくらい時間かかります?」

「さあ なあ 2~3時間はかかるんじゃねえかなあ。」

ひなた「はあ… ギリギリやなあ。」

空港

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