ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第12話「1942-1943」【第3週】

あらすじ

雉真家に配達に来た安子(上白石萌音)は、美都里(YOU)から「二度と稔(松村北斗)に近づくな」と厳しい言葉を浴びせられます。注文の品も受け取ってもらえず、代金だけを押しつけられる始末。そんな美都里の屈辱的な態度を知った稔は、千吉(段田安則)と美都里の前で強く怒りをあらわにし、安子とは将来を見据えた真剣な交際をしているのだと訴えます。一方、安子は自分の立場を考え、稔のことを忘れようとしますが…。

12話ネタバレ

雉真家

玄関

安子「た… たちばなでございます。 ご注文の品を… ご注文の品を お届けにあがりました。 あの…。」

美都里「あなたが たちばなの娘さん?」

安子「えっ… あっ はい。 そうです。」

美都里「主人が よう注文するでしょう。」

安子「はい ごひいきにしていただいとります。」

美都里「いつごろからじゃったかしらと 考えよったの。 だって不思議でしょう? 雉真の社長ともあろう主人が よりによって 小せえ商店街の 小せえ店で。 それで 思い出したんよ。 あれは 上の息子が 大阪の大学予科に入ったとし…。 初めて帰省した時に 手土産に買うてきてくれたの。 その時なんじゃね。」

安子「えっ…。」

美都里「その時 稔を知ったんじゃね。 それは 持って帰ってちょうだい。」

安子「えっ。」

美都里「お代は払うわ。 暮らしの足しにしてちょうだい。」

安子「ま… 待ってください!」

美都里「二度と 稔に近づかないで。」

(戸が閉まる音)

橘家

居間

♬~(浪曲のラジオ)

金太「うん? どねんしたんなら これ。」

ひさ「ああ 安子が持って帰ってきたんじゃ。」

安子の部屋

金太「安子…? 配達 間違うとったって?」

安子「ごめんなさい 私が間違うて…。」

金太「ああ いや。 いやいや。 あの… どこからの注文じゃったんじゃ? 電話を受けたんも おめえじゃろお?」

安子「ごめんなさい。 私が間違うたんです。」

金太「安子…。」

安子「ごめんなさい。」

お菓子司・たちばな

きぬ「稔さんには会えたん?」

安子「ううん…。」

きぬ「何でえ。 連絡は?」

安子「もう… 来んと思う。」

きぬ「何で?」

喫茶店・ディッパーマウス・ブルース

玄関

ホール

きぬ「すみません。 ここで待ちよったら 会えるかもしれん思うて。」

稔「安子ちゃんのことだよね?」

きぬ「確かに返しました。 さようなら。」

稔「きぬちゃん!? お願いじゃ! ちゃんと説明してくれんかな。」

きぬ「そりゃあ… そうじゃわな。 そねんなるわ。 安子ちゃんが それを持って悩みょうったんです。 どねんして返そう言うて。 見てられなんだから 私が預かりました。 それで… 安子ちゃんには黙って こけえ来たんです。」

稔「これは 何のお金なん?」

雉真家

座敷

美都里「まあ けたたましいと思うたら 稔じゃったん。」

稔「これは どういうことですか。」

美都里「こざかしいこと。 あんたに返すなんて。」

稔「どういうつもりかと聞いてるんです! 」

玄関

タミ「お帰りなさいませ。」

座敷

稔「僕に黙って 彼女を呼び出して こねんもの 手切れ金みたいに渡すなんて ひきょうじゃありませんか!」

美都里「あの子は お金目当てなんよ。」

稔「彼女を… 侮辱するな!」

千吉「やめなさい。 稔 ちょっと落ち着け。 こういう つまらんことを するんじゃねえ。」

美都里「じゃけど。」

千吉「黙っとれえ。」

稔「僕は彼女と… 安子さんと一緒になります。 父さんや母さんが何と言おうと 僕は 安子さんと一緒になります。」

千吉「分かった。 そこまで言うんなら おめえの好きにしたらええ。」

稔「父さん。」

美都里「何ゅう あほうなこと…。 あんな…。」

千吉「そのかわり 家を出え。 雉真の名を捨てて あの菓子屋の婿になりゃええ。」

美都里「な… 何を言うんです あなた。 何で稔が!」

千吉「その覚悟があるんか。」

稔「それしかないと… 言うんじゃったら!」

美都里「稔!」

千吉「あほう! 考えなしにものを言うな。 どねんして 食うていくつもりなら。 おめえのほれた その安子いうおなごを どねんして 食わせていくつもりじゃ。」

稔「それは… 何か 手だてを…。」

千吉「それが甘え言うとるんじゃ! ええか。 菓子屋じゃろうが 服屋じゃろうが 商いは 大学の勉強で どねんかなるもんじゃねえ。 まして 今は戦争中じゃ。 ちょっと気ぃ抜いたら 隙ゅう見せたら たちまち潰されてしまう。 そういう時勢じゃ。」

千吉「雉真の長男として ぬくぬく育ってきた おめえの手に負えることじゃねえ。 今のおめえにできるんは せいぜい 親の言うことを聞いて 会社の益になるおなごと 婚約することぐれえじゃ。 そうしたら いずれ戦争が終わった時 おめえが好きなように商いするだけの 財産を残してやれるんじゃ。 分かったら 世まい言うとらんと きっぱりと別れてけえ。」

橘家

お菓子司・たちばな

金太「あっ 安子。 今日はもう材料がのうなった。 閉めるで。」

安子「はい。」

道中

金太「雉真さん。 安子に 用があったんじゃねえんですか? 会うてやってください。 それが 一時 安子を苦しめることになっても どうか 安子と会うて ちゃんと 話うしてやってください。 お願いします。」

橘家

お菓子司・たちばな

稔「すんません。」

稔「母さんが 失礼なことを言うたそうじゃな。 ごめん。 いけん…。 いや いけん いけん。 やっぱり こねえなん 間違うとる。 安子ちゃん。 時間は かかるかもしれんけど 戦争が終わったら… 大学 卒業したら… きっと…。」

安子「ありがとうございます。 うれしいです。 じゃけど…。 間違うとったんです。 最初から。 分かっとったはずじゃのに 夢を見てしまいました。 長うて甘え夢を 見続けてしまいました。」

稔「安子ちゃん。」

安子「ラジオの講座が のうなったら 覚えた英語 忘れてしもうた。 稔さんのことも きっと忘れられます。」

<稔と一緒に ひなたの道を歩いていきたい。 安子の夢は はかなく ついえました。 Yasuko‘s little dream sadly faded away>

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