ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第13話「1942-1943」【第3週】

あらすじ

姿を消していた算太(濱田岳)に召集令状が届き、久々に橘家に帰ってきたのもつかの間、算太は出征しました。人手も材料も乏しくなった「たちばな」は、次第に商いを縮小せざるを得なくなりました。一方、雉真繊維は戦争の勢いが増すにつれ軍への納入も増え、事業を拡大。稔(松村北斗)には、銀行の頭取の娘との縁談が上がっているようで…。そのことを知った勇(村上虹郎)は稔のもとを訪ね、複雑な思いをぶつけるのでした。

13話ネタバレ

橘家

居間

ラジオ『臨時ニュースを申し上げます。 大本営海軍部発表。 帝国海軍部隊は 5日 東太平洋の敵根拠地 ミッドウェーに対し 猛烈なる強襲を敢行 甚大なる損害を与えたり。 現在までに…』。

「ごめんください。」

小しず「はい。」

お菓子司・たちばな

小しず「はい。」

「この度は おめでとうございます。」

<安子の兄 算太に 召集令状が届きました。 算太は 借金取りから逃げ 家族の思いを裏切って 姿をくらませたきりでした>

岡山駅

<入隊のために 算太が岡山に帰ってきました>

安子「お兄ちゃん!」

算太「お~ 安子。 久しぶりじゃのう。」

安子「心配しょうったんよ。 みんな。」

算太「ハッハッハッハッ…。 親父 まだ怒っとるんか?」

橘家

台所

金太「家には入れるな!」

小しず「金太さん!」

金太「言うたはずじゃあ。 あいつは もう 橘の人間じゃねえ。」

小しず「戦争に行くんよ!? 遠い南方や 大陸の前線で戦うかもしれんのんよ!? せめて晩ごはんくれえ…。」

金太「赤の他人が どねんなろうと 知ったことじゃねえ。」

杵太郎「頑固もんが…。」

玄関前

算太「え~ では 皆さん。 不肖 橘 算太 お国のために…。 踊って… もとい 戦うてまいります!」

吉兵衛「橘 算太君の 武運長久を祈って 万歳!」

一同「万歳!」

吉兵衛「万歳!」

一同「万歳!」

吉兵衛「万歳!」

一同「万歳!」

吉兵衛「万歳!」

一同「万歳!」

吉兵衛「万歳!」

一同「万歳!」

吉兵衛「万歳!」

一同「万歳!」

吉兵衛「万歳!」

一同「万歳!」

吉兵衛「万歳!」

工場

一同「万歳!」

吉兵衛「万歳!」

一同「万歳!」

吉兵衛「万歳!」

一同「万歳!」

<その後 間もなく…>

居間

丹原「お世話になりました!」

杵太郎「丹原 ご苦労さんじゃったなあ。」

ひさ「戦争が終わったら 戻ってこられえよ。」

小しず「どうか ご無事で。」

丹原「はい。」

<残っていた職人たちも 次々に召集され たちばなを去りました>

玄関前

黒鉄「申し訳ありません 大将。 自分だけは 最後まで 店の力になりたかったんですが…。」

金太「黒。 長え間 ようやってくれた。 ありがとう。 持ってけ。」

<人手もなく 材料も乏しく たちばなの商いは 次第に縮小していきました>

工場

安子「お父さん。 私にできることねえ?」

金太「安子。 すまんかったな。」

安子「えっ?」

金太「こねんことになるんじゃったら あの時 おめえと雉真さんの坊ちゃんのこと 認めてやりゃあ よかった。 そしたら おめえに苦労かけることも…。」

安子「やめて。 こうなることに決まっとったんじゃ。 最初から…。」

<一方 雉真繊維は 工場を拡張 さまざまな衣料品を 軍に納入するようになりました>

雉真家

玄関

勇「ただいま。」

美都里「あら 勇 早かったんじゃな。」

勇「おう。」

美都里「お帰り。」

勇「わしみてえに 野球しに大学入ったもんは 今や 肩身が狭んじゃ。 はあ~ 寮に残っとっても しょうがねえじゃろ。」

座敷

神田「いや さすがは雉真さん。 すばらしい先見の明ですな。」

千吉「とんでもない。 神田中佐のご尽力がなかったら あれだけの規模で納入させてはいただけなかったでしょう。」

神田「いつか お目にかかったご長男は まだ大阪ですか?」

千吉「ええ。 この正月にゃあ帰省して 工場を見るように言うたんですが 何かと口実をつけて 帰ろうとせんのんです。」

神田「聞けば 大東亜銀行の頭取の お嬢さんとの縁談が進んでいるとか。」

千吉「その前提で 頭取は融資をしてくださっとります。」

神田「しかし 正式には せがれの卒業を待ってということに…。」

勇「それ どういうこと!? 兄さんの縁談て 本当なん?」

千吉「勇 お客様が来られとるんじゃで。 ご無礼をいたしました。」

神田「いやいや。」

千吉「次男の勇です。」

おぐら荘

(戸をたたく音)

稔「はい。 あ… 勇。」

勇「うそじゃろう?」

稔「うん?」

勇「あんこのこと 捨てたりせんよな? 兄さん。」

勇「帰ってくれ。 お前と違うて僕は忙しいんじゃ。」

勇「見損なったよ! 兄さんを信じとったのに。 あんこのこと 傷つけたりせんて 信じとったのに。」

稔「それじゃったら… お前が慰めてやりゃあええ。」

稔「うっ!」

勇「ふざけんなよ! ふざけんなお! 兄さんじゃから 諦めたんじゃ。 兄さんじゃから… わしは…。」

稔「(すすり泣き) もう… どうだってええんじゃ。 (すすり泣き) どうだって…。 (すすり泣き)」

岡山駅

小しず「寒いな。」

安子「うん。 お母さん それ重てえじゃろう 私 持つわ。」

小しず「ありがとう。 じゃあ これ持って…。」

安子「うん。」

小しず「よいしょ。」

ラジオ『これより ソロモン群島 ガダルカナル島に 作戦中の部隊は 優勢なる敵に対し…』。

橘家

中庭

ラジオ『激戦敢闘せしが その目的を達せるにより 2月上旬 同島を撤収し 他に転進…』。

安子『ただいま~。』

小しず『ただいま。』

お菓子司・たちばな

金太「おお 帰ったか。」

小しず「小豆が手に入りましたよ。」

金太「お~。」

安子「お母さんのこと 覚えてくれとる人がおったんじゃ。」

小しず「里の身内は だいぶ前に みんな 亡うなっとるのに。 ありがてえことです。」

金太「おめえの着物と 換えてしもうたんか?」

小しず「ええんです。 店は開けれんでも せめて 近所で お祝い事があった時には 何か作ってあげたいでしょう。」

安子「おじいちゃんと おばあちゃんは?」

金太「それがのう…。」

寝室

杵太郎「ハハハハハッ。」

ひさ「ここ?」

杵太郎「あ~ いやいや。 あ~ うっ。」

ひさ「ここ?」

杵太郎「う~。 あ~。」

ひさ「痛い 痛い…。」

杵太郎「大丈夫…。」

安子「おじいちゃん?」

小しず「お義父さん 大丈夫ですか?」

杵太郎「お~。 ハハッ。 うっ…。 ああ。 大したこたあねえ。 ハッハッハッハッ。」

ひさ「それがのう やめとけ言うのに 金太と一緒になって畑仕事して もともと痛めとった腰ゅう 余計に悪うしてもうたんじゃ。」

杵太郎「面目ねえ。 ヘッヘッヘッ。」

安子「おばあちゃん 今日 おじいちゃんにお汁粉作ったげて。」

2人「えっ?」

杵太郎「お~! ハッ 何よりの薬じゃ! (笑い声)」

<戦争は 庶民の当たり前の生活を さまざまな形でゆがめ むしばんでいきました。 世の中から外国語が消え 大学野球でも その影響は色濃くなりました>

野球大会

主審「正球!」

主審「悪球。」

主審「打者 引け!」

<夏には 少年たちの憧れだった 甲子園球場までもが解体されました。 金属を回収し 武器を製造するためでした>

喫茶店・出っ歯口の憂鬱(ディッパーマウス・ブルース)

<ジャズなど 米英の楽曲は 演奏を禁止され 個人所有のレコードまでもが 供出させられました>

配給

「ご苦労さまです。」

<そして 秋のことでした>

「次の方。」

道中

清子「あっ 安子ちゃんもお願い。」

安子「千人針ですか? もちろんです。」

ラジオ『ニュースを申し上げます。 東條首相自らによる放送で 発表されましたとおり 国内必勝体制強化のため 政府は 学徒をして 直接戦争遂行に 参与せしむることに方針を決定。 これにより 全国の大学 高等学校 高等専門学校在学中の 大正12年11月末生まれ以上の 理工 医系以外の学生の徴兵猶予は 停止せられることとなりました』。

<それは 稔が出征することを 意味していました>

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