ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第14話「1942-1943」【第3週】

あらすじ

橘家では、肺を患い苦しむ杵太郎(大和田伸也)の枕元で、安子(上白石萌音)が懸命に声をかけていました。その頃、雉真家では稔(松村北斗)が出征することが決まり、千吉(段田安則)は頻繁に大東亜銀行の頭取と面会をしています。出征までに、頭取の娘との縁談を取りまとめるためでした。稔と安子の互いの気持ちを知る勇(村上虹郎)は、2人の結婚を許すよう千吉に頼み込みますが、まともに取り合ってはもらえず…。

14話ネタバレ

河原

ラジオ『国内必勝体制強化のため 政府は 学徒をして 直接戦争遂行に 参与せしむることに方針を決定』。

<稔は 出征することになりました>

神社

勇「あんこ。 久しぶりじゃのう。」

安子「勇ちゃん…。」

勇「店ぇ行ったら閉まっとったから きぬに聞いた。 この時間なら ここじゃろって。」

安子「勇ちゃん 東京の大学に行きょおるって聞いたけど。」

勇「ああ… 大学野球は のうなったんじゃ。 知っとろう? 二十歳以上の学生の 徴兵猶予停止のこと…。」

安子「おめでとうございます。 お兄様のご武運を お祈り申し上げます。」

勇「うそぉつくな。 毎日 こけえ来て 兄さんの無事を祈りよんじゃろ。 兄さんだって 今でも おめえのことを思ようる。 このままでええんか。」

安子「もう… 私には関わりのねえ人です。」

橘家

杵太郎の部屋

<杵太郎は 腰痛が悪化した上に 肺を患っていました>

安子「起こした?」

杵太郎「あんこの… 夢を見とった。」

安子「あんこの?」

杵太郎「おいしゅうなれ。 おいしゅうなれ…。 甘え香りがすると思うたら ハハ… 安子がおった。」

安子「フフフッ。」

杵太郎「ハッハッハッ。」

安子「おじいちゃん。 フフフフッ。」

杵太郎「安子。 ああ…。 幸せになれ。 幸せになれ。 幸せに… なれ。」

安子「おじいちゃん…。 おじいちゃん。」

杵太郎「ああ…。 あ~ 安子。 ハッハッハッハッ。」

<程なくして 杵太郎は この世を去りました>

ひさ「ううっ…。」

道中

<千吉は 12月の出征前には 稔の縁談をまとめようと 頻繁に大東亜銀行の頭取に 面会していました>

ラジオ『行く学徒 東京帝国大学以下77校 ○○名 これを送る学徒 96校 実に5万名。 今 大東亜決戦にあたり…』。

雉真家

(ノック)

千吉「どうぞ。 勇。 どねんしたんなら。」

(ラジオを切る)

勇「父さん。 兄さんの祝言は 取りやめにしてください。 兄さんと あんこの… たちばなの娘の結婚を 認めてやってください。」

千吉「何じゃあと?」

勇「あんこは わしの幼なじみなんじゃ。 2人は 今も思い合うとんじゃ。」

千吉「結婚は 家同士でするもんじゃ。 当人の気持ちばかりじゃ決めれん。」

勇「そりゃあ… わしがするから。 家のための結婚は わしがするから。 しゃあからお願えじゃあ 父さん。」

千吉「勇…。」

勇「 せめて あんこに会うたげてよ。 会やあ分かるから!」

千吉「菓子屋の娘じゃあ どねんしょうもねえ。 今 進みょおる縁談は 雉真のため ひいては お国のためになるんじゃ。」

勇「はあ… じゃけど… 父さんは どねん思ようるん。 父さんの工場で作る軍服を着て 兄さんが戦争に行くことを どねえ感じとるん。」

千吉「おんなじことじゃ。 稔が 雉真の学生服着て 大学へ行くんも 雉真の軍服着て 戦地に赴くんも わしのとっては 誇らしいせがれの… 晴れ姿じゃ。」

道中

♬『若い血潮の 予科練の』

橘家

台所

(物音)

お菓子司・たちばな

安子「いらっしゃいませ。 お買い物ですか?」

千吉「ええ… はい。 何か おはぎが食べとうなって。」

安子「あ… わざわざ おいでくださったのに 申し訳ありません。 もう ずっと おはぎは作れずにおるんです。」

千吉「そうですか… そうですよね。 失敬しました。」

安子「あの! ちょっと待ちよってもらえますか?」

千吉「えっ?」

安子「すぐ戻ります。 どうぞ お掛けになっとってください。」

金太「雉真さん…? あの… 違うてたら すいません。 雉真千吉さんじゃありませんか?」

千吉「こちらのご当主ですか?」

金太「はい。 安子の父です。 以前 息子さんとは…。」

安子「お待たせしました! あっ お父さん。 お父さんの分 ちょっと待ちよってね。 祖母の作ったお汁粉です。 よろしかったら召し上がってください。」

千吉「えっ?」

安子「お父さんのお知り合い?」

金太「うん? まあ…。」

安子「あっ そうじゃったんですか。 父が お世話になりょうります。」

千吉「ああ… いや…。」

安子「早う お元気になってくださいね。 フフッ 失礼します。」

金太「実は 今日は先代の… 私の父の初七日なんです。」

千吉「ああ… それは 存じ上げず 失礼しました。 お悔み申し上げます。」

金太「そのお汁粉は 父の好物でした。 せめてもの供養に 正月用に取って置いた 僅かな小豆と砂糖で これを こさえることにしたんです。」

千吉「そねえな大事なものを お嬢さんは なぜ 見ず知らずの私に?」

金太「何か 気落ちしてらっしゃると 感じたんでしょう。 甘えお汁粉を飲んで 少しでも元気になってほしいと 思うたんじゃ思います。 あっ どうぞ 召し上がってください。」

千吉「あ… 頂きます。 うまい。 ぬくもりますな。」

金太「ありがとうございます。 よろしいですか?」

金太「この… 母の作るお汁粉が 父の菓子作りの… この店の原点なんです。」

千吉「そうでしたか。」

金太「父の旅立ちの時 真新しい お気に入りの足袋う はかせてやることができました。 雉真繊維の足袋が 足になじんで歩きやしんじゃいうて 常々 言ようりました。」

千吉「うちは 足袋作りが原点でした。」

玄関前

千吉「突然 お邪魔して 結構なお汁粉を頂戴しました。」

金太「もしや… ご長男さんは この度の学徒出陣で…?」

千吉「ああ。」

金太「うちのせがれは 昨年 出征しました。 どうしようもねえ悪たれで 勘当した息子です。 わしゃあ 意地ゅう張って 最後まで うちに入れてやらず 見送りにも…。 どうぞ 悔いのないように 息子さんを送り出されてください。」

安子「お気を付けて!」

<稔は 出征を前に 頭取の娘と祝言を挙げるため 岡山に向かっていました>

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