ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第15話「1942-1943」【第3週】

あらすじ

安子(上白石萌音)と稔(松村北斗)は、結婚することになりました。「たちばな」を訪れて安子の姿を見た千吉(段田安則)は、安子こそ稔を支えてくれる相手だと確信し、進めていた銀行の頭取の娘との縁談を断って2人の結婚を許したのです。杵太郎(大和田伸也)の忌中のため、ごく簡素ではありましたが、祝言をあげることに。稔の出征まで2人が一緒に過ごせる時間は限られるなか、この上なく幸せな時間を過ごしていました。

15話ネタバレ

岡山駅

<稔は 岡山に帰ってきました。 出征を前に 頭取の娘と祝言を挙げるためでした>

千吉「稔!」

稔「父さん。」

千吉「待ち切れなんで 迎えに来たぞ。 さあ 行こう。」

神社

稔「父さん せめて一度 家に帰らせてもらえませんか?」

千吉「そうはいかん。 先方がお待ちじゃ。」

稔「何で こねん せかすんです? 父さん! と…。」

安子「稔さん…。」

千吉「稔。 あの人が おめえの祝言の相手じゃ。 安子さん。」

安子「あっ…。」

千吉「先日は 名乗りもせず 失敬しました。 稔の父です。 勇から聞きました。 毎日 この時間に ここで 稔の無事を 祈願してくださりょうるいうて。」

稔「父さん これは一体 どういうことです?」

千吉「大東亜銀行の頭取と進みょおった話は 取りやめにした。」

稔「えっ…。」

千吉「頭下げて謝って 分かってもろうた。」

稔「父さんは それで えんですか?」

千吉「こねえだ たちばなを訪ねて 安子さんに会うた。 なるほど。 おめえや勇の言うとおり 心の優しい ええお嬢さんじゃ。 たちばないう店も小せえけど 堅実な ええ商いをしてきたことが よう分かった。 まだまだ未熟なおめえを 支えてくれるんは こういう家に育ったお嬢さんじゃと 心から そねえに思えた。」

稔「安子ちゃん。 僕と 結婚してください。」

安子「はい。」

勇「兄さん。」

稔「勇!」

勇「おめでとう。」

稔「ありがとう。」

勇「あんこ。 おめでとう!」

安子「ありがとう。 ありがとう! 勇ちゃん。」

雉真家

座敷

稔「母さん。 安子さんです。」

千吉「いつまで そねえに すねとるんじゃ。 おめえは 安子さんが気に入らんのじゃねえ。 相手が誰であっても 稔をとられとうねえだけじゃ。」

勇「母さん。」

安子「私 自転車に乗れませんでした。 しゃあけど 今は乗れます。 稔さんが教えてくださって 毎日 練習したからです。 時間はかかるかもしれませんけど ええ嫁になれるよう努めます。 じゃから どうか お願いします。」

美都里「嫌よ。」

稔「母さん…。」

美都里「じゃけど 稔が心残りのまま戦地に行ってしまうのは もっと嫌。 私が お嫁入りする時に 雉真の母から頂いたものです。 粗末な身なりで 婚礼の写真に収まられたら 恥じゃからね。」

安子「ありがとうございます。 どうぞ よろしゅうお願いいたします。」

橘家

居間

稔「安子さんと 結婚させてください。 お願いします。」

金太「ふつつかな娘ですが…。 稔君。 安子をよろしゅうお願いします。」

稔「ありがとうございます。」

安子「ありがとうございます。」

稔「おじい様の喪の明けんうちに こねえな用件で伺い 申し訳ありません。」

ひさ「おじいちゃんも きっと 喜びょうる。」

小しず「安子。 えかったなあ。」

安子「うん。」

祝言

<忌中でもあり 祝言は ごく簡素に行われました>

「そんなら ええですか?」

稔「はい。」

安子「はい。」

「ここ 見とってくださいよ。 はい。」

(シャッター音)

(シャッター音)

雉真家

台所

タミ「若奥様 お漬物を。」

安子「あっ はい。 切ってあります。」

美都里「安子さん。」

安子「お義母様 おはようございます。」

美都里「朝げの準備を… 早く…。」

タミ「よう 気の利く 働き者でいらっしゃいますねえ。」

居間

稔「安子。」

安子「はい。」

稔「今日 一緒に出かけよう。」

安子「はい。 お掃除と お洗濯が終わったら 支度します。」

稔「そねえなん ええから。」

美都里「いけません。 婦人会の集まりだってあるんよ。」

千吉「出征まで間がねえんじゃ。 安子さん。 稔と出かけなさい。」

安子「はい。 ありがとうございます。」

喫茶店・出っ歯口の憂鬱

定一「コーヒーいれるんも 久しぶりじゃ。 かけるレコードは ねえし だいぶ前に閉めたんじゃ。 はい。」

稔「ああ ありがとうございます。」

安子「ありがとうございます。 あっ これ…。」

稔「いつもの… 本物のコーヒーですね!」

定一「ちょっと古いけどのお。 輸入が途絶える前の在庫じゃ。」

安子「そねえな貴重なコーヒーを…。」

定一「特別な時だけ いれる。 そねん決めとった。 おめでとう。 わしも うれしい。」

2人「ありがとうございます。」

定一「ハハハハハッ。 ああ 子供は作ってから行けよ。」

(吹き出す2人)

稔「何を…!」

定一「ハッハッハッ。 いや 健一は 独り身のまま行ったからのお。 せめて 孫でもおったら わしもなあ… 気が紛れたのに。」

神社

稔「子供… 授かるとええな。」

安子「はい。」

稔「安子 覚えとるかな? いつか話したこと。 雉真の製品を欧米と取り引きするんが 僕の夢じゃて。」

安子「はい。 覚えとります。」

稔「早う戦争が終わってほしい。 どこの国とも自由に行き来できる。 どこの国の音楽でも自由に聴ける。 自由に演奏できる。 僕らの子供にゃあ… そんな世界を生きてほしい。 ひなたの道を歩いてほしい。」

安子「はい。 子供の名前は 稔さんが付けてくださいね。」

稔「気が早えな。」

安子「フフフフッ。 すみません。」

稔「実は もう 決めとるんじゃ。」

安子「ええっ! 稔さんの方が気が早えわ。」

稔「ごめん。」

安子「しゃあけど 男の子か おなごの子かも 分からんのに?」

稔「ああ 男の子でもおなごの子でも 外国でも通用する名前じゃ。」

安子「何ですか?」

稔「秘密じゃ。」

安子「えっ… え~ 嫌じゃ。 教えてください。」

稔「だ~め。」

安子「稔さん 意地悪せんでください。」

稔「だ~め!」

安子「稔さん!」

稔「生まれてからのお楽しみじゃ。」

安子「はい。」

<安子と稔が一緒に暮らせたのは ほんのひとつき足らずでした。 Yasuko and Minoru lived together for less than a month. 短いけれど 幸せな日々でした。 lt was a short but blissful time>

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