ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第16話「1943-1945」【第4週】

あらすじ

稔(松村北斗)の出征を見届けた安子(上白石萌音)。稔の子を授かっているとわかったのは、稔が出征したふた月後のことでした。ラジオからは連日アメリカからの攻撃の知らせが流れ、勇(村上虹郎)も徴兵が決まり、戦争はさらに安子たちの日常を変えていきました。時が経(た)ち、安子は元気な女の子を出産しました。名前は『るい』。稔が考えた名前です。しかしその名前に込められた本当の意味は、周囲には明かせないもので…。

16話ネタバレ

神社

稔「早う戦争が終わってほしい。 どこの国とも自由に行き来できる。 どこの国の音楽でも自由に聴ける。 僕らの子供にゃあ… そんな世界を生きてほしい。 ひなたの道を歩いてほしい。」

安子「はい。」

<稔の出征が刻一刻と迫っていました>

雉真家

寝室

稔「こりょう 持っといて。」

安子「フフッ。 行ったり来たり。」

稔「うん。」

安子「フフッ。 稔さん。 どうか ご無事で。 ご無事で 帰ってきてください。」

稔「安子。 泣くな。 きっと帰ってくる。 必ず帰ってくるから。 大丈夫じゃ。」

<安子が 稔の子をみごもっていると 気が付いたのは 稔が出征してから ふたつき後のことでした>

中庭

ラジオ『6月16日 大本営発表。 マリアナ諸島に来襲せる敵は 15日朝に至り サイパンに上陸を企図せしも 前後2回 これを水際に撃退せり。 敵は 同日正午ごろ 3度来襲し 今もなお 激戦中なり』。

勇「義姉さん。」

安子「勇ちゃん! お帰りなさい。」

勇「お~。」

<徴兵年齢が 更に引き下げられました。 勇も その対象となり 岡山に帰ってきました>

居間

勇「おう おう。 そねんこたあ タミさんにさせりゃあ ええが。」

安子「動いた方が えんじゃ。 どうぞ。」

勇「ありがとう。 重とうねんかな。」

安子「えっ?」

勇「あっ いや… すいか 丸ごと のみ込んで 歩きょうるようなもんじゃろう。」

安子「ハハハッ おかしな言い方せんといて。」

(笑い声)

安子「あ…。」

勇「えっ?」

安子「蹴った…。」

勇「えっ?」

安子「蹴った。」

勇「えっ…。 わっ… ホンマじゃ 蹴った。」

安子「ねっ。」

勇「ハッハハハ… こけえ 兄さんの子がおるんじゃのう…。」

安子「うん。」

ダイニング

千吉「徴兵検査は いつなら?」

勇「あさってじゃ。」

タミ「大学野球の有望選手まで 召集されるんですねえ。」

勇「甲子園で活躍した嶋 清一も とうに出征したそうじゃ。」

安子「お義母様。」

美都里「何で? 何でじゃ。 稔だけじゃのうて 勇まで…。」

勇「母さん…。」

ラジオ『ニュースを申し上げます。 大本営 6月16日8時発表。 本日午前2時ごろ 支那方面より 敵B29爆撃機 20機内外 北九州地方に来襲せり。 我が制空部隊は 直ちに邀撃…』。

勇「アメリカの爆撃機が 本土まで飛んできたいうこと?」

美都里「稔は… 無事なん?」

千吉「稔はまだ 横須賀で訓練じゃ。」

美都里「そこは 安全なん? 爆撃機は来んの? 何で? 何で 母親の私が 会いに行けんのんじゃ。」

勇「母さん もう やめてよ。 つれえのは 母さん一人じゃねえんじゃ。」

美都里「(すすり泣き)」

安子「お義母様…。」

美都里「こんねして 私のおなかにおったんよ。 稔も勇も。」

商店街

♬『歩け歩け 歩け歩け 南へ北へ 歩け歩け 東へ西へ 歩け歩け』

清子「何や 降りそうやねえ。」

花子「嫌じゃ 洗濯もん出しっ放しじゃ。」

清子「うちも。 ラジオの天気予報がのうなってしもてから しょちゅうえ。」

小しず「不便じゃねえ 敵に知られたら おえんからいうて。」

花子「小しずさん。 安子ちゃん いつでえ?」

小しず「あと みつきほどじゃ。」

花子「そう。 楽しみじゃなあ。」

清子「楽しみやけど 心配やねえ。 何もかんも ままならん こないな時に…。」

小しず「こねん時じゃからこそ 生まれてくる子なんじゃて思ようります。」

雉真家

寝室

(産声)

「あ~ はい。 はい。 おめでとうございます。 よう頑張られましたねえ。」

「ホンマに。」

(泣き声)

美都里「生まれたん? あ~。 男の子? おなごの子?」

安子「おなごの子です。」

美都里「あ~ かうぇえらしいねえ。」

タミ「こちらです。」

勇「お~。」

千吉「あ~。」

勇「わあ~ 小せえのう!」

美都里「当たり前じゃろ 生まれたばあなんじゃから。」

千吉「あ~ おなごの子か。 次は男の子が欲しいのう。」

勇「父さん 今 そねんこと言わあでも よかろうが。」

千吉「おお すまん。」

安子「フフッ お義父様も抱いてやってください。」

千吉「えっ? お~。 いやいや 怖いのう。 よいしょ。」

勇「優しくじゃ。」

千吉「ごめん…。 あ… お~ かうぇえ子じゃあ。」

美都里「稔に よう似とる。」

千吉「うんうん。 名前ぉ決めにゃあおえんなあ。」

安子「あっ 名前は 稔さんが決めていかれました。」

千吉「そうなんか?」

勇「男か おなごかも分からんのに?」

安子「どちらでも通用する名前じゃそうです。 私も まだ知らんのんじゃけど…。 ここに。」

勇「義姉さんが開きゃあええが。」

千吉「わっ。 うん?」

安子「るい…。」

美都里「るい?」

千吉「るい? 何じゃ 珍奇な名前じゃのう。」

回想

(『On the Sunny Side of the Street』)

稔「『Louis Armstron g 「On the Sunny Side of the Street」』.

回想終了

安子「るい。」

千吉「ほっ ほっ あ~ お母さんじゃ ほら ほら ほら。」

勇「分かった。 野球の塁じゃ。」

千吉「えっ?」

勇「一塁 二塁 三塁 本塁の塁じゃ。 はあ~。」

千吉「何で そねえなもん 我が子の名前にするんなら。」

勇「ええ名前じゃが。 塁は 攻撃側にも守備側にも 一番大事なもんじゃ。 みんなで るいを守るんじゃ。」

美都里「ええじゃないですか。 稔が付けた名前じゃったらね。」

回想

稔「どこの国とも自由に行き来できる。 どこの国でも音楽でも自由に聴ける。 僕らの子供にゃあ そんな世界を生きてほしい。 ひなたの道を歩いてほしい。」

回想終了

<稔が るいと名付けた本当の思いを 安子だけは分かっていました。 しかし それは 決して口に出してはいけないことでした>

玄関前

勇「お国のために 戦うてまいります!」

リビング

ラジオ『大本営 11月30日11時発表。 本30日 零時ごろより4時30分の間 マリアナ諸島より 帝都 東京付近に B29計20機内外 小編隊をもって 数次にわたり来襲 雲上の高高度より爆撃せり。 これにより 数か所の地区に火災を生じたるも 大部は直ちに鎮火せり。 重要施設には被害なく 人員の損害また極めて軽微なり』。

美都里「おい。 鬼畜米英。」

千吉「美都里。 おい。」

美都里「鬼畜米英!」

千吉「やめえ やめえ。」

美都里「鬼畜米英! 鬼畜米英…! 鬼畜…。」

寝室

安子「(小声で)♬『grab your hat baby. Leave your worries on the doorstep Just direct your feet On the sunny side of the street Can‘t you hear that petter-pat babe?』」

<決して 誰にも聞かれてはいけない子守歌を 安子は毎夜 るいに歌ってやりました。 Even though it was forbidden, Yasuko sang the song to Rui every single night>

安子「(小声で)♬『On the sunny side of the street』」

モバイルバージョンを終了