あらすじ
安子(上白石萌音)は稔(松村北斗)のことを思い続けていました。すくすくと育つるいの成長が安子にとっての心の支えでした。そんな安子を勇(村上虹郎)は気にかけ続けています。そんななか、美都里(YOU)は安子にひどくきつく当たるようになっていました。とうとう美都里は安子を雉真家から追い出すよう千吉(段田安則)に持ちかけます。
21話ネタバレ
雉真家
寝室
<稔の戦死の知らせから 半月が過ぎました。 安子は 波が かれ果てるまで 泣き暮らしました>
安子「うっ…。」
(るいの泣き声)
<『ひなたの道を歩けば 人生は輝く』。 そう歌っている安子は 暗闇から抜け出せずにいました>
安子♬『Leave your worries on the doorstep』
ダイニング
千吉「ちいたあ食べにゃあ 体がもたんぞ。」
美都里「よう食べれるもんじゃね。 稔は もう食べれんのよ。」
安子「せめて おみそ汁だけでも 飲んでください。 今 ぬきいのに替えましたから。」
勇「義姉さん やけどしとらんか?」
安子「うん 大丈夫。」
千吉「何ゅうしよるんじゃ。」
美都里「あさりのおみそ汁 稔の好物じゃったねえ…。 うっ… うう…。」
タミ「奥様。 お部屋で少しお休みしましょう。 さあ 参りましょう。」
千吉「勇。」
勇「何?」
千吉「できるだけ早う 大学に退学届ょお出しとけ。」
勇「何でなら? 春から復学いう話じゃったじゃろう。」
千吉「おめえは 雉真の跡継ぎになったんじゃ。 野球やこ しょおる場合じゃねえじゃろう。」
勇「わしゃあ 野球しか能がねえんじゃ。 繊維業やこ できるわけがなかろうが。」
千吉「できんでもやるんじゃ。」
中庭
安子「勇ちゃん。」
勇「こねん形で わしの野球人生が終わるたあのう。」
安子「ごめんね。 何も力になれんで。」
勇「おめえが謝ることじゃあねえ。 全部… 戦争のせいじゃ。」
両親の部屋
(ノック)
安子「失礼します。」
(襖が開く音)
安子「お義母様 お加減はいかがですか? お洗濯したもの タンスにしもうておきますね。」
美都里「あんたのせいじゃ…。 安子さんに出会うてから 稔は変わってしもうた。 いけん言うのに聞かんと 無理やり一緒になって あげく 私を置いて 遠い海で死ぬじゃなんて…。 あんたが稔をそそのかして 稔の人生を狂わせたんじゃ。 あんたが殺したようなもんじゃ!」
安子「あんまりです。 そねん言いぐさは ねえ思います。」
美都里「あら 私に刃向かうんかな。 稔がおらんようになった思うたら 本性出すんじゃねえ。」
安子「お義母様。」
美都里「あんたに お義母様なんて言われる筋合いはねえわ! あんたは疫病神じゃ。 とっとと この家から出ていかれえ!」
安子「いいえ。 私は稔さんの妻で るいの母親です。 どこへも行きません。」
リビング
安子「るい。 起きとったん?」
勇「どねんしたんなら?」
安子「勇ちゃん。 何も。」
勇「そうか…。 あっ いや 物置に入れとこう思うて。」
安子「そう。」
勇「るいが大きゅうなったら 使わせりゃあええ。」
安子「えっ?」
勇「るいは 名前からして 野球の申し子じゃからのう。」
安子「るいは おなごの子じゃ。」
勇「じゃあから 何なら。」
安子「それに 『るい』いう名前は そねんことじゃ…。」
勇「あっ!」
安子「えっ?」
勇「るいが立っとる。」
安子「えっ! 本当じゃ! るい! るい! すごいなあ! るい!」
勇「あっと笑うたのう。 よかった。」
安子「るい。 るい。 すごいなあ。」
両親の部屋
千吉「ただいま。 どねんしたんなら。」
美都里「あなた。 安子さんを この家から追い出してください。」
千吉「何ゅう言いだすんじゃ そねんこたあできん。」
美都里「そねんして甘やかすから つけあがるんじゃ。」
千吉「るいを母親から引き離すわけにゃあ いかんじゃろう。」
美都里「るいは 私らの養女にしたらええ。」
千吉「何ゅう言よんなら。」
美都里「今 玄関から音がしたねえ?」
千吉「えっ?」
美都里「稔じゃ。 稔が帰ってきたんじゃ。」
玄関
美都里「稔。 稔! 稔!」
千吉「ああ…。」
美都里「稔!」
中庭
美都里「稔…! 稔… 稔! 稔 どこでえ。」
千吉「やめとけえ。」
美都里「稔…!」
千吉「稔は帰ってこんのんじゃ。」
美都里「稔! 稔! 稔…。」
千吉「稔は死んだんじゃ!」
美都里「み…。 ああ…。 (泣き声)」
居間
安子「♬『Grab your coat, grab your hat baby Leave your worries』」
千吉「安子さん。」
安子「はい。」
千吉「ちょっと話があるんじゃ。」
ダイニング
安子「お義父様 何でしょうか?」
千吉「安子さん。 今すぐにたあ言わん。 喪が明けて 心の整理がついたら 再婚せられえ。 無論 わしがええ人を紹介…。」
安子「お断りします。 私は 稔さんの… 稔さんだけおの妻です。 今までも これからも。」
千吉「そねん言うこたあ分かっとった。 しゃあけど 再婚するんが 一番ええんじゃ。」
安子「お義母様のお考えですか?」
千吉「違う。 わしの考えじゃ。 美都里は今 正気じゃねえ。 腹ぁ痛めて産んだ子に先立たれたんじゃ。 無理もねえ。 わしゃあ これから 仕事にかかりっきりになる。 家のことにまで目が届かん。 事業が どうなっていくかも分からん。 正気を失うた美都里と 暮らしょおっても 安子さんが苦しむだけじゃ。」
安子「るいは…。 るいは どねんなるんですか?」
千吉「るいは 雉真の子じゃ。 うちで育てることになる。 安子さんだって 子連れじゃあ 縁談の邪魔になるじゃろう。」
安子「嫌です。 るいは 私が育てます。」
千吉「安子さん…。」
安子「私から るいを奪わんでください。 お願いします。 どねんなことでも我慢します。 しゃあから このまま このうちに 置いてください。 お願いします。」
千吉「ここに縛りつけておくよりも 新しい人生を生きてほしい。 きっと稔も そう 望んどるじゃろう。」
寝室
勇「(小声で)義姉さん。」
安子「勇ちゃん…?」
勇「ちょっと ええか?」
安子「どうぞ。 どねんしたん? こねえな時間に。」
勇「金じゃ。 この家を出て るいと2人で暮らすんじゃ。」