あらすじ
12月25日。街には、サンタクロースの格好をした進駐軍の米兵たちがお菓子を配り、子どもたちや親子連れを楽しませていました。この日も安子(上白石萌音)はおはぎの行商をしていますが、クリスマスの盛り上がりの前に、当然売れ行きはよくありませんでした。途方に暮れる安子の前に、先日助けた米軍将校・ロバート(村雨辰剛)が再び現れます。安子はロバートに招かれ、進駐軍のオフィスでロバートと話をすることに…。
29話ネタバレ
水田屋とうふ
卯平「はい。」
(ラッパの音)
(笑い声)
力「ほっ よいしょ~。 ほい。」
卯平「はい はい。 ご苦労さん。」
ラジオ・平川『Good evening, everybody. Good evening. 皆さん 今日は もう クリスマスの前の日ですね。 アメリカあたりでは クリスマスイーヴといって 一年中で一番楽しい晩なんですよ。 普通の時は 仕事の都合で 方々へ ちりぢりになっている 一家の人たちも この日だけは うちへ帰って 親子兄弟 打ちそろって 美しく飾られた クリスマスツリーのそばで 心ばかしの贈り物を 子供は親に 親は子供に。」
ラジオ・平川『実に和やかな一家団らんの 楽しい晩なんです。 また この楽しい晩に 何もできない人のためには 方々の教会とか団体で クリスマスバスケットというのを作って そっと それを送り届けたり それは 見るからに楽しい日なんですよ。」
雉真家
稔の部屋
ラジオ・平川『その 楽しいというのも この日は 特に 自分のことよりも まず 人の喜ぶ幸福を心がける日なので 自然と自分も 限りなく楽しいわけなんです。 私たち カムカムの赤ちゃんは 毎日 辺りへ 幸福をまき散らしているんですから 自分も幸福なわけですね。 その幸福を胸に さあ 今日も 楽しいお遊びを始めましょう』。
安子「るい。 どねんしたん?」
るい「おばあちゃんが言うとった。 英語は聴きとうねえって。 お父さんを殺した国の歌じゃから 聴きとうねえって。 お母さん。 何で 私は 『カムカム英語』聴きょおるん?」
<幼いるいの問いかけに 安子は答えることができませんでした>
商店街
安子「おはぎゃあ どうですか? たちばなのおはぎは どうですか? おはぎゃあ どうですか? たちばなのおはぎです。」
「Merry Christmas!」
子供たち「うわ~!」
「Merry Christmas!」
「Merry Christmas!」
(子供たちの歓声)
「Merry Christmas!」
「Merry Christmas!」
安子「おはぎが売れんわけじゃ。」
将校「Excuse me, ma‘am.(すみません)」
安子「あ…!」
将校「Hi.(こんにちは)」
安子「あ…!」
将校「Thank you for the other day.(先日はありがとうございました)」
安子「It was my pleasure.(どういたしまして)」
将校「I‘m glad to see you again.(先日はありがとうございました)」
安子「It was my pleasure.(どういたしまして)」
将校「I‘m glad to see you again.(またお会いできてよかったです)」
安子「こちらこそ。 あっ… Likewise.」
将校「I‘m Lieutenantt Robert Rosewood, United States Army. ロバート・ローズウッドです アメリカ軍の中尉です。」
安子「あっ I‘m Yasuko Kijima. 雉真安子です。 あの 日本語…。」
ロバート「少し。」
安子「あ… へえ~。」
ロバート「I was wondering if you had a moment.(少しお時間ありますか?)」
安子「えっ 今ですか? Now?」
ロバート「Yes. There‘s something I’d like to discuss with you.(少しお話できればと)」
安子「すみません。 まだ仕事が終わっとらんのです。 Sorry, but I‘m working now.」
ロバート「Oh…. What are these? 中身はなんですか?」
安子「あっ おはぎです。」
ロバート「おはぎ? Oh!」
安子「Traditional Japanese sweetts.(伝統的な日本のお菓子です)」
ロバート「And are you selling these?(それを売っているんですか?)」
安子「Yes, but they are not selling well today,(はい でも今日は売れ行きがよくなくて)because….(それはきっと…)」
ロバート「Because it‘s Christmas?(クリスマスだから?)」
安子「Maybe.(たぶん)」
ロバート「I see. Hmm. I have a solution.(いい解決策があります I‘ll buy them all.(私が全部買います))
安子「えっ? えっ…。」
ロバート「Could you come with me?(一緒に来てくれますか?)」
安子「えっ…。 あっ あっ ちょっ… ちょっと…。」
進駐軍
正門
「Good afternoon, Lieutenant Rosewood.」
ロバート「Good afternoon, MIke. She‘s my guesto.(やあマイク こちらは私のお客様だ)」
「Welcome, ma‘am.」
安子「Thank you.」
ロバート「Follow me.(ついてきてください)Let‘s go inside.」
ロバートの仕事部屋
ロバート「Come, come on in. どうぞ。」
安子「失礼します。」
ロバート「Have a seat.(どうぞ おかけください)This is my office.(ここは私のオフィスです)Please make yourself at home.(お楽になさってください)」
安子「Thank you.」
ロバート「May I try one?(ひとついただいてもいいですか?)」
安子「Please.(どうぞ)」
ロバート「ウ~ン! It‘s good! おいしい。」
安子「あ… 本当ですか…。よかった。 Thank you. I‘m glad to hear that.」
ロバート「What‘s it made of?(なにで できているんですか?)」
安子「A sweet paste made from red beans.(甘いペーストは小豆で作っています)」
ロバート「Oh. Red beans.(小豆ですか)」
安子「Yes. It‘ called “anko”.(『あんこ』といいます)」
ロバート「あんこ。」
安子「Right.(そうです)」
ロバート「Oh. OK. How does an ohagi vendor come to speak English so well?(なぜ そんなに上手に英語が話せるのですか?)」
安子「そんな…。」
ロバート「私は collegeで 日本語を勉強していました。」
安子「あっ そうじゃったんですか。」
ロバート「だから ここに配属されました。 でも 慌てると うまく話せません。 あの時も。」
回想
ロバート「No, no, no, no. I didn‘t mean that.」
「許してっちょうでえ。 すみません。」
ロバート「『スミマセン』? Whe are you apologizing, ma‘am?」
回想終了
ロバート「困りました。」
安子「ハハハッ フフ…。」
ロバート「だから 知りたかったのです。 あなたは どうやって 英語を勉強しましたか?」
安子「ラジオです。」
ロバート「ラジ… Oh, radio?」
安子「はい。 毎日 『カムカム英語』を聴きょおります。」
ロバート「ああ… それは知っています。 時々 町の子供たちが歌っています。 ♬『Come, come, everybody』」
安子「ハハハハッ はい。」
ロバート「でも きっと それだけじゃない。 それだけの高い英語のスキル 何か ほかに 大きなmotivationがあるはずです。 Tell me. それは何ですか? What prompted you to learn English?(どうして英語を勉強しようと思ったのですか?)」
安子「稔さん。 稔さんが言うたんです。 『明日の朝…』。」
回想
稔「明日の朝 6時30分にラジオをつけてみて。」
ラジオ・ハリス『Good morning, evetybody. 皆さん おはようございます。 「実用英語会話」の時間です』。
稔「これ よかったら。 僕が中学の時に使ようった 英語の辞書じゃ。」
安子「ありがとうございます。 うれしいです。」
安子「稔さん! あっ…。」
稔「安子ちゃん!」
安子「メイ アイ ライト ア レター トゥ ユー?」
稔「Of course.」
回想終了
安子「For me, to study English was to think of him.(私のとって英語を勉強することは 夫を想うこでした)But…. But the war….(でも… 戦争が…)」
回想
ラジオ『臨時ニュースを申し上げます。 大本営陸海軍 12月8日午前6時発表。 帝国陸海軍は 本8時未明 西太平洋において アメリカ イギリス軍と 戦闘状態に入れり』。
回想終了
安子「The war destroyed everything.(戦争がすべてめちゃくちゃにしてしまった)We got married about a month before he left for the front.(私たちが結婚したのは 彼の出征のひと月前でした)」
安子「I gave birth to a baby girl while he was away.(彼がいないまま 私は女の子を出産しました)And I brought her up,(そしてその子を育てました)singing a song that I shouldn‘t have been singing.(歌ってはいけない子守歌を歌いながら)」
回想
安子「(小声で)♬『On the sunny side of the street』
回想終了
ロバート「『On the sunny side of the street』?」
安子「That was his dream.(それが彼の夢でした)」
回想
稔「どこの国とも自由に行き来できる。 どこの国の音楽でも自由に聴ける。 自由に演奏できる。 僕らの子供にゃあ… そんな世界を生きてほしい。 ひなたの道を歩いてほしい。」
回想終了
安子「That was his hope.(それが彼の望みでした)He looked forward to such a day, such a world.And I waited.(そんな日が来ることを そんな世界を彼は待ち望んでいました)」
安子「I waited, and waited, and waited for him to come home.(彼の帰りを待って 待って 待ち続けました)But it was all in vain.(でも 帰ってこなかった)」
回想
安子「帰ってきて… 稔さん!(泣き声) 稔さん!」
回想終了
安子「Why?(どうして?)Why am I still studying English?(どうして私は今も英語を勉強しているの?)He‘s nott here. He will never come back.(彼はここにはいない 決して帰ってこない)But I continue learning English every day. Why?(なにの私は英語の勉強を続けている どうして?)」
安子「Why did he have to die?(どうして彼は死ななくてはならなかったの?)He studied English so hard,but all his efforts, all the knowledge he acquired, is lost at sea!(彼は一生懸命英語を勉強しました でも彼の努力は せっかく身につけた知識は)」
安子「it was all for nothig!(海に消えてしまいました すべて無駄になったんです)Everything was meaningless!(まったく意味がなかったんです)It’s so ridiculous!(ばかげてます)Tell me, Mr.Rosewood.(教えてくださいローズウッドさん)」
安子「You are here to help citizens like me, aren‘t you?(あなたは私のような市民を助けるために ここにいるんでしょう?)Why am I still studying Englishwhen my husband is not with me anymore?(もう夫はいないのに どうして私はまだ 英語を勉強しているんでしょうか?)Tell me…!(教えてください…)」
安子「あっ…。 すみません… 私…。」
ロバート「Mrs.Kijima. Can I have a little more of your time?(もう少しだけお時間いただけますか?)There‘s a place I want to take you.(あなたをお連れしたい場所があります)」
ホール
(にぎやかな声)
(笑い声)