あらすじ
1951(昭和26)年。るい(古川凜)は7歳になり、小学校入学の準備をしています。るいが入学する小学校の制服は、雉真繊維が製造することに。経営状況も順調で、勇(村上虹郎)はすっかり頼もしい跡取りでした。また、安子(上白石萌音)も、たちばなを立て直す決心をした算太(濱田岳)とともに行商に出向く日々です。それぞれが順調に進み始めたかに思えたやさき…千吉(段田安則)が勇を呼びだし、とある提案をします。
33話ネタバレ
雉真家
稔の部屋
♬~(ラジオ『COME COME EVERYBODY』)
安子 るい♬『Come, come, everybody How do you do, and how are you? Won’t you have some candy? One and two and three, four, five? Let’s all sing a happy song Sing tra la la la la』
ラジオ・平川『Good evening, everybody. Good evening. さあ まいりましょう。 皆さんと ご一緒に 楽しく続けてまいりました このカムカムの英語遊びも いよいよ 今週いっぱいで お別れということになりそうです』。
安子「えっ…。」
ラジオ・平川『で 名残は尽きませんが せめて この最後の幾回かを 心ゆくばかり楽しくいたしまして 皆さんの貴い努力にお報いすると同時に どうか 今後も引き続いて 皆さんの生きた英語を 十分 育てあげていただきたいと思います。 では 早速 今日の…』。
るい「『カムカム英語』…終わってしまうん?」
(ラジオ)
水田屋とうふ
算太「さあさあ おはぎ おはぎ おはぎゃあ いりませんか? 御菓子司 たちばなのおはぎ。 初代 杵太郎 二代目 金太の銘菓 おはぎ おはぎ おはぎゃあ いりませんか? どうですか? 坊ちゃん。 おはぎゃあ いりませんか?」
きぬ「『カムカム英語』かあ。 疎開先におった頃 聴きょおった。」
(ラッパの音)
安子「大阪で暮らしょおった時に 始まったんじゃ。」
(ラッパの音)
安子「るいを背負うて 芋飴ょう売り歩いて。 しゃあけど 一個も売れなんで。」
(ラッパの音)
安子「つろおて…。 そねえな時に出会うたんが 『カムカム英語』じゃった。 平川先生の温けえ声 聴きょおったら 明日も頑張ろういう気になれたんじゃ。」
(ラッパの音)
きぬ「やかましいなあ! ええ話しょんのに ピープー ピープー。」
力「おなかの子に聴かしよんじゃ。」
(ラッパの音)
安子「るいの入学と どっちが先じゃろうね。」
(笑い声)
算太「おはぎ おはぎ おはぎゃあ いりませんか? さあさあ 皆さん! あれ 誰もいなくなった…。」
雉真家
ダイニング
勇「るい! ちょっと こっちへ来られえ。」
るい「は~い。」
勇「ええか? いくで? ほれ。」
るい「わあ~!」
安子「かうぇえらしいなあ。」
千吉「るいが春から入る 雛丘小学校の制服じゃ。 おじいちゃんの会社で作りょんぞ。」
るい「へえ~!」
雪衣「雛丘小学校いうたら 新設の私立ですよね?」
千吉「そうじゃ。」
算太「でけえ仕事じゃのう。 学生服の雉真の面目躍如ですなあ。」
千吉「勇が ようやってくれた。」
算太「雪衣ちゃん。 まあ たちばなも るいが入学する頃にゃあ 店を構えられるはずじゃ。」
雪衣「そうですか。」
算太「ああ。」
雪衣「そん時は 買いに行きます。」
算太「フフ… いや… 雪衣ちゃんが そんな 金やこ払わんでも…。 まあ 何じゃ… かぞ… 家族? みてえなもんじゃから。」
安子「…にしても 長えじゃろう。 なあ?」
勇「いけるじゃろう。」
安子「ああ 肩幅はぴったりじゃね。」
るい「うん。」
安子「うん 似合うとる。」
勇「似合うとるわ。」
安子「お礼言うた?」
雉真繊維
「新素材 合成繊維 ナイロンでございます。」
勇「ナイロン…。」
「ナイロン?」
「生地が強い。 滑らか。」
林「朝鮮特需のおかげもあって ご覧のとおり 業績は右肩上がりです。 原材料が調達できるようになった上 社員らが一致団結して 販路を広げてくれました。 それもこれも 野球部で培われた チームワークのたまものです。 全く頼もしい。 勇坊ちゃんにゃあ もう… 何の心配もありませんなあ。」
千吉「いや…。」
雉真家
勇の部屋
雪衣「失礼します。 坊ちゃん。 一服されたら どうですか?」
勇「うん? ああ そうじゃな。」
雪衣「お疲れじゃねえですか? 昼間は仕事をしながら 終業後も お休みの日も 野球の練習やら 試合やらで。 夜も こねえして お勉強されて。」
勇「なに どうちゅうことはねえ。 うん? 何なら こりゃあ? ただのお茶じゃねえんか?」
雪衣「梅干しを潰して入れとるんです。 滋養があるそうじゃから。」
勇「ああ そうなんか。 うん。 そねん言われたら 何か みるみる 力が湧いてくるような気がするのう。」
(笑い声)
千吉「勇。 ちょっとええか?」
勇「おう。 何? 話があるんじゃ。」
雪衣「旦那様にも お茶をおいれしましょうか?」
千吉「ああ ええ。」
千吉「勇。 そろそろ嫁ょうもらえ。 おめえは 跡継ぎなんじゃ。 いつまでも 独りでええわけがねえじゃろう。」
勇「ああ…。 どっかのご令嬢と 見合いせえいうことか。 どこの誰じゃ? 父さんのことじゃ もう 相手の目星は つけとるんじゃろう。」
千吉「安子さんじゃ。 安子さんと一緒んなれ。」
勇「ハ… ハハハッ。 何じゃ 何じゃ 何の冗談じゃ 父さんらしゅうもねえ。」
千吉「よう考えてのことじゃ。 今のままじゃあ 安子さんの立場は宙ぶらりんじゃ。 るいの小学校入学を機に はっきりしたった方がええ。」
勇「いや… そねんこと できるわけがなかろうが。 義姉さんは 兄さんの嫁さんじゃ。」
千吉「未亡人になったおなごが 夫の兄弟と再婚するんは そねん珍しい話じゃねえ。」
勇「せえでも…。」
千吉「勇。 おめえにとって 安子さんは ただの幼なじみじゃねえんじゃろう。 とうに分かっとった…。 おめえが 稔と安子さんを 一緒にさせたってくれえと 頼みに来た時からのお。 稔じゃったら 言うじゃろう。 安子さんを任せられるんは 勇しかおらんと。 安子さんにゃあ わしからは 何も言わん。 自分で よう考えて決めえ。」
台所
算太「おった おった 雪衣ちゃん。 あ~ この上着 虫が食うてしもうとってのう。 繕うてもらえんじゃろうか。 おうおう… どねん… どねんした? うん? 腹でも痛んか?」
雪衣「分かりました。 繕うておきますね。」
雉真繊維
林「あっ 坊ちゃん。 今 大阪の進駐軍から電話がありました。」
勇「進駐軍?」
林「雉真繊維野球部と 試合がしてえそうです。」
勇「ええ? 本当ですか?」
林「うんうん。」
勇「ホホホッ。」
喫茶店・ディッパーマウスブルース
定一「るいちゃん。 大きゅうなったの! 何ゅう飲む? コーヒーか。」
安子「あっ まだちょっと早えかもしれません。」
定一「ああ そう。 そんなら ホットミルクにしょうか。」
るい「はい!」
定一「よっしゃ よっしゃ。」
安子「ありがとうございます。」
定一「はい。」
安子「もうすっかり 元の喫茶店に戻ったんですね。」
定一「進駐軍が引き揚げたからのう。 バンドの連中も 皆 都会へ行ってしもうたわ。」
安子「定一さん。」
定一「うん?」
安子「『サニーサイド』 かけてもろうてええですか?」
定一「ああ。 もちろんじゃ。」
♬~(レコード 『On the Sunny Side of the Storeet』)
安子「お父さんとお母さんの 大切な歌じゃ。」
回想
稔「『Louis Armstrong.』『ひなたの道を』ってことかな。」
回想終了
(レコード)
♬『Leave your worries on the doorstep Just direct your feet』
安子「もうじき 『カムカム英語』は終わってしまうけど また ひなたの道を見つけて 歩いていこうね。 るい。」
るい「うん!」
(ドアが開く音)
定一「あっ いらっしゃい。」
ロバート「こんにちは。」
定一「コーヒーじゃな?」
ロバート「はい お願いします。」
安子「ローズウッドさん!」
ロバート「Mrs.Kifima!」
定一「何じゃ 知り合いか?」
安子「はい。 えっ? しゃあけど 何で? もう引き揚げたんじゃとばあ…。」
ロバート「まだ大きな都市には 仕事が残っています。 私は 大阪勤務になりましたが 時々 岡山に来ています。 この町の復興を見届けたいから。 定一さん。」
定一「うん?」
ロバート「お酒は飲んでないでしょうね?」
定一「うるせえのう。 わしの復興まで見届けんでもええんじゃ。」
ロバート「また肝臓 悪くしたら いざ 健一さんが帰ってきた時 会えなくなりますよ。」
定一「頼んでもおらんのに 健一の消息 探ろうしょうるんじゃ。 …っとに おせっかいなアメリカ人じゃ。」
(笑い声)
ロバート「Is she your daughter?(お嬢さんですか?)」
安子「あっ Yes.(はい) るい。 ローズウッドさんじゃ。 ほら 前にクリスマスプレゼント もろうたじゃろう。」
るい「うん!」
ロバート「Hi. I’m Robert.(こんにちは ロバートです)」
るい「Hello. My name is Rui Kifima.(こんにちは 私の名前は雉真るいです It’s nice to meet you, Robert.(どうぞよろしいく ロバートさん))
ロバート「Wow!」
(笑い声)
安子「赤ん坊の頃から 『カムカム英語』聴きょうったから。」
定一「さすが 稔の子じゃのう。」
ロバート「Nice to meet you too, Rui.」
るい「はい!」
(笑い声)
雉真家
勇の部屋
回想
勇「わし… あんこのことが好きなんじゃ。 諦めん。 甲子園も…。 あんこも。」
回想終了
勇「兄さん…。」
<勇の心に 一つの大きな決意が芽生えていました。 Isasmu was about to make a big decision>