あらすじ
仕事の面接がうまくいかなかったるい(深津絵里)は、荷物を預かってくれたクリーニング店に戻り、事情を話しました。話を聞いてくれた店主の竹村平助(村田雄浩)と妻の和子(濱田マリ)の提案にのって、るいは店に住み込みで働くことになります。和子からクリーニングの仕事を一つ一つ丁寧に教えてもらうるい。ある日、店番を任されたのですが、そこにちょっと変わったお客さん(オダギリジョー)が訪れ…。
40話ネタバレ
竹村家
和子「はい。」
るい「ありがとうございます。 頂きます。」
平助「こないな上品なお嬢さんを 面接で落としよるとはなあ。」
和子「あの新しい でっかいホテルやろ? 見る目あらへんわあ。 絶対 泊まらんとこ。」
平助「泊まりとうても泊まれるか。」
和子「それも そやな。」
(笑い声)
和子「あっ 笑った。」
平助「笑たんちゃうねん 笑われとんねん。 あほがしゃべっとる思て。 フフフフ…。」
和子「あんた 笑たら かいらしいなあ。 あんたみたいな子が うちで働いてくれたらええねんけど。」
るい「えっ…。」
平助「あほう。 こないに育ちのよさそうなお嬢さんが 何が悲しゅうて 人の汚れもん洗濯せなあかんねん。」
和子「これが ホンマの職業センタクの自由や。」
(笑い声)
るい「あの~。」
平助「うん?」
るい「本当に ここで働かせてもらうわけにゃあ いかんじゃろうか。」
平助「あっ?」
和子「えっ?」
和子「雉真るいちゃん。 岡山の子かいな。」
るい「はい。」
平助「岡山で雉真いうたら 学生服の雉真か?」
和子「えっ。」
るい「はい…。 親戚です。」
和子「あの大きい会社! やっぱり育ちがええんやねえ。」
平助「そないな ええとこの子が 何で また うちみたいな店で。」
和子「ホンマやわ。 こんなむさ苦しいおっさんと やかましいおばはんしかおらん お給金は すずめの涙の 吹けば飛ぶようなクリーニング屋。」
平助「言い過ぎや。」
和子「お父さんとお母さんは どない言うてはんの?」
るい「もう おりません。 父も… 母も…。」
平助「あっ そうか…。」
和子「堪忍やで。」
るい「いえ。」
和子「あんた。」
平助「うん? うん。 お嬢さんみたいな子が来てくれたら うちは大助かりや。」
るい「ありがとうございます!」
平助「うん。 ハハハハッ。」
和子「よろしくね るいちゃん。」
るい「よろしくお願いします!」
るいの部屋
和子「こないな狭い部屋で 堪忍やで。」
るい「とんでもない。 ありがたいです。」
和子「お布団は ここな。」
るい「はい。」
和子「何かあったら すぐ呼んでな。:
るい「あの~。」
和子「はい。」
るい「お店に立つ時… 前髪 上げんといけんでしょうか?」
和子「へっ?」
居間
平助「いや~ 分からんなあ。 ほかに なんぼでも ええ就職先ありそうやけどなあ。」
和子「あんた。」
平助「うん?」
和子「大事にしたげよな。 あの子のこと。」
平助「うん。」
翌朝
るい「あ… おはようございます。」
平助「おはようさん。」
和子「おはよう るいちゃん。」
平助「よう眠れたか?」
るい「おかげさまで…。 すみません。 お手伝いもせんと。」
和子「ああ ええから。 顔洗って来ぃ。」
るい「あっ はい。」
平助「よっしゃ 食おうか。」
和子「食べや。」
るい「頂きます。」
2人「頂きます。」
るい「はあ~。」
平助「どや うまいか?」
るい「おいしいです。」
平助「うん。 よっしゃ。 ヘヘッ。」
竹村クリーニング店
平助「ほれ。 一丁上がり。」
るい「何か 気持ちがええ。 こりょう受け取るお客さんの うれしそうな顔が見える気がします。」
和子「そない思えるんやったら あんたは この仕事でけるわ。」
西山「おう!」
平助「おう。」
西山「貼らしてもらうで。」
平助「新しいのん 来たか。」
西山「ああ。 よいしょ。」
平助「何や 宇宙活劇か。」
西山「うん うん。 おっ? そっちも新しい子か?」
和子「そうや。 そこの映画館の西山さんや。」
るい「あっ 初めまして。 雉真るいといいます。」
西山「こら ご丁寧に。 ヘヘヘヘッ。 割引券あげようか?」
和子「…んな けったいな宇宙人が 出てくるような映画 若い女の子が見るかいな。」
『かに~!』
『見つけたぞ!』
『お~! とう! とう! とう!』
『かに~。』
西山「ほな モモケンはどうや。」
平助「それも 今どきの若い女の子 見いひんやろ。」
るい「お茶いれましょうか?」
平助「ええ ええ ええ。 ほっといたら ええねん。」
西山「何でやねん。」
和子「さっき捨てたお茶っ葉 捨て いれ。」
西山「そやから 何でやねん。」
(笑い声)
和子「お客さんのお名前とご住所を必ず これ 書いてもらう。」
るい「はい。」
和子「で あったら… あったら 電話番号を ここにね。 あったらね。」
「こんにちは。」
和子「お越しやす。」
るい「いらっしゃいませ。」
「これ お願いします。」
和子「はい。 え~ ブラウスやね。」
「ここに 染みがついてもうて…。」
和子「あらあら。 ああ うんうん。 絹やね?」
「すいませんけど 明日の昼までに お願いできますやろか。」
和子「任しとき。」
「おおきに 助かります。」
和子「ほなね ここに お名前とご住所。 あったら電話番号。 ほなね はい おおきに。」
「そしたら お願いします。」
和子「はい。 赤ちゃん抱えて大変やなあ。」
るい「いつも来とられる人ですか?」
和子「いや 初めてや。」
るい「えっ しゃあけど…。」
和子「この胸の染みな これ 赤ちゃんが吐いたもんや。 見たところ職業婦人や。 これは 大事な仕事のために買うたブラウス。 鏡の前で合わせとったら 赤ちゃんが泣きだして だっこした途端に… ウワ~ッや。」
るい「いらっしゃいませ。」
和子「お越しやす。」
「これ お願いします。」
和子「はい。 え~ 背広…。」
るい「(心の声)『礼服いうこたあ 結婚式にでも行っとったんじゃろうか。 何で こねえに泥だらけに…。 あっ 結婚式で ぎょうさん飲んで 帰りに田んぼに落ちたんかも。』」
和子「え~っ 子供さんの… あら オーバーコート。 そしたらね こちらに…。」
るい「(心の声)この人ぁ 双子のお母さんなんじゃろうか。 何じゃろう? これ。 どっちのコートにも ちいとる。 あっ 犬の毛じゃあ。 犬う飼ようる家なんじゃなあ。 どねえな犬じゃろう。 コリーじゃろうか? きっと双子ちゃんと一緒に お散歩したり ころころ転げ回ったり しよんじゃろうなあ。」
和子「おおきに。」
「すいません。」
和子「お越しやす。」
るい「いらっしゃいませ。」
和子「クリーニングはな 売ったらしまいの商いとは違うて お預かりした服をきれいにして で また返さんないかん。 そやから どこの誰か ちゃ~んと尋ねて こないしてな 名前を縫い付けとくんや。」
るい「大変な作業ですねえ。」
和子「うん。 せやけど 一回やったら あとは楽や 常連さんは また出してくれはるから。」
るい「あっ そうか。」
和子「うん。 よっしゃ…。 ほれ。」
るい「ふ~ん…。」
和子「やってみるか?」
るい「はい!」
和子「はい。 これな。 はい。 よいしょ…。 指 刺したら 服が汚れてしまうさかい 気ぃ付けや。」
るい「はい。」
和子「うん。 ほな おばちゃんは 銀行やら用事済ましてくるわな。」
るい「あっ 行ってらっしゃいませ。」
和子「行ってらっしゃいます! フフフフフフ…。」
「すいません。 すいません。」
るい「は…!」
「洗濯お願いします。」
るい「あっ はい。 どうぞ。(心の声)『何じゃあ この人?』え~っと… 背広の上下ですね。 こりゃあ 綿のワイシャツ…。」
るい「(心の声)『え~っと この数 家族の分 まとめて持ってきたんじゃろうか…。 せえでも 男もんしかねえが…。 男ばあで ぎょうさんで暮らしょるんじゃろうか。 集団就職で どっかの工場の寮に… いや それじゃったら 寮母さんが洗うはずじゃあ。 それに 工場の人が着る服じゃねえ。 わ… 分からん…。 この人の日常が まるで見えてこん。』」
「あっ。」
るい「えっ。」
「これも 洗ってください。」
るい「あ…。(心の声)『血ぃ!? どういうことでえ? 魚屋さん? いや 違う…。 もしかして 返り血? えっ ほんなら この山のような服は 証拠隠滅…。』ひっ…!」
「これも…。」
るい「(心の声)『何じゃあ ケチャップか。 ややこしい。 じゃけど やっぱり分からん。 一体この人あ 何もんじゃろう』」
「ほんなら お願いします。」
るい「あっ お客様 お名前…。 お客様! お名前! はあ… やってしもうたわ…。」
<その男は 何者なのか。 どこで どんな暮らしをしているのか。 るいには 全く想像がつきませんでした>
<Rui had no idea who the man was, where he lived, or what he did for a living>