ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第45話「1962」【第10週】

あらすじ

平助(村田雄浩)からお給金をもらったるい(深津絵里)。和子(濱田マリ)に使い道を聞かれ「貯金」と答えたところ、強く叱られてしまいます。何かを買おうと商店街を歩いていたところ、トランぺッターのジョー(オダギリジョー)にばったり出くわします。ジョーと一緒にジャズ喫茶を訪れたところ、居合わせたトミー(早乙女太一)とベリー(市川実日子)に素性を詮索されたるいは…。

45話ネタバレ

竹村家

居間

和子「はい。 あんた。」

平助「うん。 はい。 ご苦労さんでした。」

和子「ご苦労さん。」

るい「ありがとうございます。 頂戴します。」

平助「ちょっとだけ 色つけといたで。」

るい「えっ…。」

平助「あの… 何や あのしゃれた店 ジャズの…。」

るい「あっ Night and Dayですか?」

平助「そう。 あそこの契約 取ってきてもろて だいぶ助かっとるさかいなあ。」

るい「そねえなこと…。 そりゃ おじさんと おばさんの腕がええから。」

和子「ごちゃごちゃ言うてんと 素直に受け取り。」

るい「はい。 ありがとうございます。」

和子「どないなことに使うんや? かいらしい服買うんか? おいしいもん食べに行くんか? あっ 温泉でも行くんか?」

るい「貯金します。」

和子 平祐「えっ。」

るい「特に 欲しいもんもねえし。 大事にとっときます。 ありがとうございました。」

和子「あかん! 貯金すんのは ええ。 そやけど 全部はあかん。」

るい「えっ? あんたみたいな 若い かいらしい子が 着たい服も 食べたいもんも 行きたいとこもないやなんて ほんな しょうもないこと言うんやないの! ちょっとでええ。 ちゃんと使いなさい。 ええな!」

平助「ごめんな。 あないな言いようしか でけんやつで。」

るい「いえ…。」

平助「るいちゃんが あんまり真面目やから 心配しとんのや。」

商店街

るい「やっぱり 本じゃろうか…。 あっ! すいません。」

ジョー「ああ こちらこそ…。 あっ サッチモちゃん。 あっ。 サッチモちゃんも これ買いに来たんや。」

るい「これ?」

ジョー「向こうで発売されたん だいぶ前やもんなあ。 待ちくびれたよなあ。 あと1枚残ってたで。 こっち こっち。」

るい「えっ?」

ジョー「ほら ほら ほら。」

るい「あの~。」

レコード屋

♬~(ジャズ)

ジョー「ほら ここ ここ。 これやろ? えっ? 違うの?」

るい「違います…。」

ジョー「えっ じゃあ 何のレコード買いに来たん?」

るい「レコードを 買いに来たわけじゃありません。」

ジョー「えっ じゃあ 何しに来たん?」

るい「通りかかっただけです。」

ジョー「えっ じゃあ どこ行くん?」

るい「どこって…。(心の声)『またじゃ。 この人とおったら 自分が何ゅうしょんか見失うてしまう…。』昨日 お給料日じゃったんです。 全部 貯金します言うたら 『若え子が 着てえ服も 食べてえもんも 行きてえとこもねえとは』いうて おばさんに怒られてしもうて…。 自分が 何が欲しいんじゃろうかって 考えたけど やっぱり 何も思いつかなんで それで うろうろしょおったんです。」

ジョー「レコードじゃ あかんの? ほら サッチモもあるよ。」

回想

♬~(『On the sunny side of the Street』)

レコード♬『On the sunny side of the Street』

回想終了

るい「せっかくじゃけど…。 レコードプレーヤーもねえし やっぱり貯金します。 おばさんの言うことを無視するみてえで 悪いけど 無理やり買い物したって ただの無駄遣いじゃから。 ほんなら 失礼します。」

ジョー「あっ じゃあ… コーヒー代にしたら?」

ジャズ喫茶・Night and Day

ホール

ベリー「木暮さん レスカ頂戴。」

木暮「ベリーちゃん。 気ぃ付いてると思うけど まだ開店前やからね。」

ベリー「そやさかい 何?」

木暮「何て。」

ベリー「もう短大の友達に チケット売ったらへんで。」

木暮「また そないして脅す。」

ベリー「当たり前や。 持つべきもんは 金払いのええお得意さんやで。」

木暮「考え方が ええとこの短大生やあれへんねん。」

ベリー「ええさかい 早う。」

(ドアが開く音)

木暮「あ~ かなわんな ベリーちゃんには。」

ジョー「ただいま。」

木暮「ああ ジョー。 お帰り。」

ベリー「ジョー!」

ジョー「ああ ベリー。 あっ こっち こっち。」

木暮「あれ クリーニング屋さん。」

るい「あっ こんにちは。」

木暮「今日 集荷やったっけ?」

るい「いえ…。」

ジョー「レコード屋の前で会うてん。 座って。」

るい「あ… ありがとうございます。」

木暮「アイスコーヒーでいい?」

るい「はい。」

ベリー「まだ開店前やで。」

木暮「どの口が言うとるんや。」

ベリー「ふん!」

ジョー「ああ そうそう。 あれから 僕もやってみたけど やっぱり サッチモちゃんみたいに おいしく出来へんわ。」

るい「えっ?」

ジョー「ほら こないだ僕の部屋で コーヒーいれてくれたやん。」

木暮「部屋でコーヒーて…。」

ベリー「どういうことやの!?」

るい「いや ち… 違います! あの 洗濯物届けに行った時…。」

ベリー「なに 配達のついでに 部屋に上がり込んでんの!」

るい「上がり込むじゃなんて そねえな…。」

ジョー「あれ おいしかったなあ。」

るい「あなたも ちゃんと説明してください。」

ジョー「何を?」

るい「何をって…。」

木暮「部屋のコーヒーて インスタントやろ。」

ジョー「サッチモちゃんいれたら おいしなるんや。」

るい「じゃから…。」

トミー「何や サッチモちゃんて。 君もトランペット吹くんか?」

るい「とんでもねえ。」

木暮「トミー。 今日は出番やないやろ。」

トミー「しつこいファンから逃げてきた。 アイスコーヒー。」

木暮「誰も営業時間 気にしてへんな。 はいよ。」

ベリー「私のレスカは いつ出来るん!」

トミー「どうも トミー北沢です。」

るい「雉真るいです。」

トミー「るい? ああ それでサッチモちゃん。 どうりで ジョーのお気に入りなわけや。 いや ジョーやなくても…。 ルイ・アームストロングが トランペットの神様やったら 君は さしずめ 女神様やな。」

木暮「はい アイスコーヒー お待たせ。 サッチモちゃん。」

ベリー「ちょっと サッチモ。」

木暮「えっ 呼び捨て?」

ベリー「あんたの親 クリーニング屋のくせに 何で 娘に そんなハイカラな名前付けてんの?」

トミー「ええやないか 別に。」

るい「娘じゃありません。 住み込みで働かせてもらようるだけです。」

ベリー「はあ? じゃあ あんた何もんなん? どっから来たん?」

るい「あ… え… どっからって…。」

ジョー「岡山…。 岡山の言葉やんな? それ。」

ベリー「岡山? 何や 田舎もんやない。 で? その岡山の親は何してんの? 場末の音楽教室の先生か何か?」

トミー「偏見で ものを言うな。」

ベリー「そうかて『るい』て。 普通 そんな名前付ける?」

木暮「家族の誰かが サッチモ 好きやったとか。」

回想

安子「お父さんはな るいの名前に 夢ょお託したんじゃ。 アメリカの ルイ・アームストロングいう人から 名前をもろたんじゃ。」

るい「ルイ・アームストロング?」

安子「トランペット吹きょうる…。」

回想終了

るい「関係ありません。 叔父が 野球しょうったから 多分 それでじゃ思います。」

トミー「野球? ああ ベースの塁か。」

ベリー「何や あほらしい。」

ジョー「帰るの?」

るい「はい。 なんぼですか?」

木暮「ああ 今日はええよ。」

るい「いや じゃけど…。」

木暮「暑い中 大荷物抱えて 行き来してもろとるんやから。 コーヒーぐらい。」

ジョー「甘えとき。」

るい「すみません。 ありがとうございます。 ごちそうさまでした。」

木暮「いえいえ。 ほな また。」

(ドアの開閉音)

トミー「う~ん ミステリアス。」

ベリー「どこがやの? ただの田舎もんやない。」

トミー「いや。」

玄関前

るい「結局 お金 使わなんだなあ…。」

ジョー「サッチモちゃん。 クリーニング屋の おばさんのことやけど…。 戦争中やったんちゃうかな サッチモちゃんぐらいの年の頃。 着たい服も着れん 食べたいものも食べられへん。 行きたいとこへも 行かれへんかったんちゃうかな。 そやから…。」

回想

和子「着たい服も 食べたいもんも 行きたいとこもないやなんて ほんな しょうもないこと言うんやないの!」

回想終了

るい「そうか…。 そうじゃね。 あ… 私 そねえなこと 全然…。 はあ…。」

ジョー「これ。 聴きに来ぉへん?」

るい「『サマーフェスティバル』?」

ジョー「僕も出るよ。」

るい「『大月錠一郎』…。」

<何度も顔を合わせていたはずなのに るいは この時 初めて 錠一郎に出会った気がしました>

竹村家

居間

♬~(テレビ『私の秘密』テーマ音楽)

平助「あっ!」

八木『こんばんは。 月曜の夜は 『私の秘密』で おくつろぎいただきたいと…』。

平助「始まったで 始まった…。」

和子「ハハハハハッ。」

八木『最初の方の秘密は こちらです』。

『私の犬は 歌が歌えます』

和子「ほんまかいな!」

平助「フフフフッ なあ?」

八木『では 田辺さん どうぞ』。

田辺『あなた ご自身のことですか?』。

八木『違います』。

田辺『じゃあ ご家族のこと?』。

八木『家族。 う~ん いや~ どうでしょう』

和子「犬。 犬が 家族や。」

平助「うん うん。」

八木『では 藤沢さん』。

藤沢『ペットのことかしら? ペットのインコの特技!』。

平助「何で インコと思うねん! なあ るいちゃん。 なあ? フフフッ。 フフフフ…。」

和子「ありがとう。」

るい「あの~ おじさん。 おばさん。」

和子「何や? 何か あったんか?」

るい「いえ…。」

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