ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第48話「1962-1963」【第11週】

あらすじ

地蔵盆の日、るい(深津絵里)は竹村クリーニング店を訪れた錠一郎(オダギリジョー)を受け入れ、よみがえった母・安子(上白石萌音)との幼いころの記憶を話すのでした。その様子を見ていた平助(村田雄浩)は、るいと錠一郎の親密な雰囲気に気もそぞろ。そんなところを見た和子(濱田マリ)は、タイミングをみはからって二人に近づき…。

48話ネタバレ

竹村家

玄関前

るい「いけん! 今すぐ落とさんと 染みになってしまう。」

錠一郎「よかった。 もう 僕の洗濯してくれへんと思うてた。」

るい「そねえなわけねえじゃろう。 私ゃあ クリーニング屋なんじゃから。」

るい「今日のうちに乾く思いますから。」

錠一郎「ありがとう。」

るい「また こぼさんようにしてくださいよ。」

錠一郎「はい…。 サッチモちゃんの分もあるよ。」

るい「置いてえてください。」

錠一郎「溶けるよ?」

るい「すぐ行きます。」

錠一郎「はい。」

回想

るい「あなたのせいです。 忘れたかったのに。 忘れるために岡山を出たのに。」

回想終了

錠一郎「特別なんや。 僕にとっても。 僕にとっても… 『On the sunny side of the Street』は。」

竹村クリーニング店

♬~(ラジオ)

和子「はい 5円のお返し。」

てる子「ありがとう。」

和子「おおきに。」

てる子「誰かおんの?」

和子「るいちゃんの友達。 男の。」

平助「あっ…!」

和子「気ぃ付けや。」

てる子「まあ…。」

和子「…んな ばっかりよ。」

錠一郎「僕の一番古い記憶は『On the sunny side of the Street』なんや。 今でも耳によみがえる。 あのイントロの高らかなトランペット。 シンガーでもない おじさんが マイク奪って歌いだして…。 みんな 圧倒されてた。 英語やったし 何言うてるかは 僕には全然分からんかった。」

錠一郎「けど…。 その時の僕には見えてた。 ひなたの道が。 これから自分が歩いていく道は サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート 明るい光に照らされてる。 そんな予感で いっぱいやった。」

るい「いつごろのことですか?」

錠一郎「あんまり覚えてない。」

るい「どこで聴いたんかも?」

錠一郎「進駐軍クラブ。 岡山の。 もしかして サッチモちゃんも おったんかなと思って。 あのころの岡山に。」

回想

るい「どねんしたん? これ。」

安子「進駐軍さんから もろうたんじゃ。」

るい「進駐軍さん?」

回想終了

錠一郎「溶けるよ。」

竹村クリーニング店

和子「何してんのん。」

平助「あ… いや… 冷たいもんでもと思てな。」

和子「邪魔したりなや。」

平助「いや そうかて…。」

るい「私ゃあ… 私ゃあ レコードでした。 岡山の喫茶店で聴いたレコード。 小せえ頃 何回か連れてかれました。」

錠一郎「誰に?」

るい「ずっと… 忘れとりました。 しゃあけど サマーフェスティバルで 大月さんのトランペット聴いて… 急に よみがえりました。」

回想

♬『I used to walk in the shade』

安子「お父さんとお母さんの 大切な歌じゃ。 また ひなたの道を見つけて 歩いていこうね。 るい。」

回想終了

錠一郎「お母さん?」

るい「私の名前は 父が付けたんじゃそうです。」

回想

安子「アメリカの ルイ・アームストロングいう人から 名前をもろたんじゃ。」

るい「ルイ・アームストロング?」

安子「トランペット吹きょうる人じゃ。」

回想終了

錠一郎「やっぱり サッチモのルイやったんや。」

るい「『ひなたの道を見つけて 歩いていこうね。 るい』。 母は そう言うたんです。 『On the sunny side of the Street』を 聴きながら。 せえのに… せえのに 母は… 私ゅう捨てました。 進駐軍さんと恋をして…。」

回想

ロバート「I love you.(愛してます)」

安子「Thank you.(ありがとう) I’m glad.(うれしい)」

回想終了

幼かった私ゅう置いて… アメリカへ行ってしもうた。 じゃから 思い出しとうなかった。 優しかった頃の 私だけを見てくりょおった頃の 母の笑顔を 思い出しとうなかったんです。」

錠一郎「そうか。 会いたいんやなあ お母さんに。」

るい「な… 何ゅう言よんですか? 人の話ゅう 聞きょおりました?」

錠一郎「聞いてたよ。」

るい「それで よう そねえなこと…。 はあ…。 もうええ。 ああ もう。 何で こねえな人に話してしもうたんじゃろ。」

錠一郎「サッチモちゃん?」

るい「もう 早う こりょう着て帰ってください。」

錠一郎「まだ乾いてないって。」

るい「生乾きのシャツう着て帰りゃあええ…。」

平助「るいちゃん。 冷たいもんでも どうや。」

和子「お客さんも どうぞ。」

るい「お客さんは お帰りです。」

錠一郎「ありがとうございます。」

和子「よかったら 晩ごはんも食べていってちょうだいね。」

るい「おばさん!」

錠一郎「いいんですか?」

和子「晩ごはんいうても 今日は お祭りのもん並べるだけやけど。」

平助「やっぱり 祭りの夜は にぎやかなんが一番やからな。」

和子「ああ せやせや。」

平助「何で?」

和子「何で?」

(笑い声)

居間

和子「ホンマに買うてきたもんで堪忍やで。」

平助「はい。 1杯どうや?」

錠一郎「ああ… すいません。 飲めないんです。」

平助「ええっ! ジャズマンやのに?」

和子「えっ!」

錠一郎「ああ… まあ…。」

西山「邪魔するで~。」

平助 和子「邪魔するんやったら帰って。」

西山「ハハハハハッ。 あ~ これ。 商店街から いつもの。」

和子「ああ ありがとう。 近所の映画館の西山さんや。」

錠一郎「ああ どうも。」

西山「ああ どうも。 今度 2人で見に来てや。」

和子「いらんこと言わんでええねん。」

西山「なっ なっ なっ。」

和子「何やねん。 用事済んだら帰って。 ハハハハハッ。 ああ これや これや。」

平助「ああ ああ…。」

テレビ『大阪の若者が快挙達成です。 アメリカに行くという夢を持ち 小型ヨットで出航した 大阪の堀江謙一君が 8月12日 ついに夢の土地 アメリカ・サンフランシスコに到着。 見事 太平洋横断を達成しました』。

和子「むちゃすんなあ。」

平助「男の夢と言え。 なあ? え~…。」

錠一郎「お… 大月です。」

平助「ああ せやった。 大月君。」

和子「失礼やなあ もう。 ごめんな 大塚君。」

錠一郎「大月です。」

平助「お前の方が失礼や。」

和子「わざとや。」

平助「ホンマかいな。」

和子「ほら 早う。 冷めてしまうから頂こう。」

錠一郎「頂きます。」

るい「頂きます。」

和子「頂きます。」

平助「足 崩しい。」

錠一郎「ああ… すいません。」

和子「このおいなりさん おいしいんやで。」

平助「ちょっとだけ飲まん?」

玄関前

錠一郎「ごちそうさまでした。」

和子「ああ。 よろしゅう おあがり。」

錠一郎「シャツも ありがとうございました。」

平助「かめへん かめへん。 お得意さんなんやから。」

和子「うん。 ほな るいちゃん。 そこまで送ったげ。」

るい「えっ?」

平助「そやな。 いや あっ あの…。」

(子供たちの歓声)

るい「大月さん。」

錠一郎「♬~(口笛『On the sunny side of the Street』)

るいの部屋

<お給料で レコードを買おう。 るいは そう思い立ちました。 Rui had an idea. She would use the money she had earned to buy the record>

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