あらすじ
るい(深津絵里)は錠一郎(オダギリジョー)との関係が深まるにつれ、自分の心が惹(ひ)かれていくのをおそれていました。そんな時、東京の音楽プロダクション主催で関西一のジャズトランぺッターを決めるコンテストが開かれるというニュースが飛び込んできます。メジャーになるチャンスだと喜ぶトミー(早乙女太一)でしたが、錠一郎が参加しないというのを聞いて激怒します。
50話ネタバレ
竹村家
竹村クリーニング店
ラジオ♬『いのち短し 恋せよ』
平助「るいちゃん お待たせ。 ジャズ喫茶の洗濯もん 仕上がったで。 配達 よろしく。」
るい「あ… あの おじさん。」
平助「うん?」
るい「今日は 代わってもらえますか?」
平助「ええけど… 何でや?」
るい「えっと… ちょっと これだけやってしまいたい思て。」
平助「そうか。 分かった。」
るい「すいません。」
<るいは 恐れていました。 これ以上 錠一郎に近づくことを。 錠一郎に 心引かれていくことを>
ジャズ喫茶・Night and Day
玄関前
木暮「ほ~い。」
ホール
トミー「なあ。 ジョーって サッチモちゃんと つきおうてんの?」
錠一郎「な… 何や 急に。」
トミー「女にうつつを抜かすなよ。」
錠一郎「誰が言うてんの?」
トミー「フフフッ 女をはべらかすことと つきあうことは 別や。」
錠一郎「よう分からんな。」
トミー「こんな大阪の 中途半端なジャズ喫茶で 満足してる場合やない。 東京で認められ やがては アメリカでプレーできてこそ ホンマもんのトランぺッターや。」
木暮「中途半端なジャズ喫茶とは何や。」
トミー「相対的な話をしてるんや。」
木暮「ヒィ~。 そんなトミー君に耳寄りな話があるで。」
トミー「何や。 スカウトマンでも来たか?」
木暮「ジョーも。」
錠一郎「『関西 ジャズトランぺッター ニューセッション』?」
<東京の大手音楽事務所が主催する ジャズトランぺッターのコンテストが この夏 開かれることになったのです>
木暮「笹川プロダクションからの提案でな。 いわば 関西一のトランぺッター決める ライブイベントをすることになったんや。」
トミー「関西一のトランぺッター?」
木暮「優勝者への副賞がすごいで。」
(ドアが開く音)
木暮「銀座の一流クラブでのステージ出演。 それに レコードデビューや。」
ベリー「それ ホンマ?」
木暮「ハハッ ホンマや。」
トミー「よっしゃ! よっしゃ よっしゃ。」
(拍手と歓声)
トミー「ついに 俺の時代が来た。」
ベリー「あんたの時代なんか 一生 来ぃひんわ。」
トミー「ああ?」
ベリー「優勝は ジョーに決まってるから。」
トミー「ベリー。」
ベリー「何?」
トミー「コンテストが終わってから 俺に乗り換えよう思ても 遅いぞ。」
ベリー「何で キャデラックから オート三輪に乗り換えなあかんの。」
トミー「誰が オート三輪や。」
ベリー「そんだけ 雲泥の差やいう話をしてんねん。」
トミー「ファンの数は 実力の量やで。」
「トミーが一番や!」
ベリー「私一人の値打ちは 雑魚100人とおんなじや! なあ ジョー。 コンテストに向けて 私にできることあったら 何でも言うて。」
錠一郎「ありがとう。」
ベリー「ええねん。」
錠一郎「そやけど 僕は出えへんよ。」
ベリー「遠慮せんといて。 えっ?」
トミー「おい。 何言うてんねん。」
木暮「ジョー 何でや?」
錠一郎「いや… あんまり興味ない。」
木暮「ジョー…。」
トミー「ばかにしてんのか? 俺のこと。 そうなんやな!」
錠一郎「してないよ。」
トミー「ほな 何で出えへんねん!」
「負けるん怖いんやろ!」
「出たら ええやんか!」
トミー「うるさい!」
木暮「トミー。」
トミー「トミー北沢は 親からクラシックをたたき込まれた。 大学でも 理論から何から勉強してきた。 けど 門前の小僧上がりの 大月錠一郎を超えられへん。 そない思って見下してんねやろ。 俺のこと。」
錠一郎「そうやないよ。 そうやないよ トミー。」
トミー「ほな 何や!」
錠一郎「…。」
トミー「やっぱり そうなんやないか。 ウイスキー ダブルで。」
木暮「はいよ。」
玄関前
ベリー「ジョー! ジョー…。」
錠一郎「ごめんね ベリー。 せっかく応援してくれてるのに。」
ベリー「何か心配事? 分かるわ それくらい。 ずっとジョーを見てきたんやもん。 ジョーだけを見てきたんやもん。 ジョーの考えてることくらい分かる。」
錠一郎「やめてくれ。 人のことが分かるなんて 簡単に言うな。」
公園
(打撃音)
「回れ 回れ! 回れ 回れ!」
「回れ!」
「回れ 回れ!」
「あっ 野球のおねえちゃん!」
「ピッチャー交代!」
「お前ら ずるいわ!」
「ずるい ずるい!」
(にぎやかな声)
「ピッチャー頼むで。」
るい「よ~し 任しとき。」
「頼むで!」
るい「よっしゃ~!」
「っしゃ~!」
(声援)
回想
トミー「ばかにしてんのか? 俺のこと。 そのヘラヘラした顔の奥で ばかにしてんのやろ 俺のこと。」
錠一郎「してないよ。」
トミー「ほな 何で 出えへんねん!」
るい「思い出しとうなかった。 優しかった頃の 私だけを見てくりょおった頃の 母の笑顔を 思い出しとうなかったんです。」
回想終了
(歓声)
「おねえちゃん すごい!」
「もう一回戦やろ!」
「あ~! やるやる!」
るい「お散歩ですか?」
ジャズ喫茶・Night and Day
ホール
木暮「違うと思うよ。 ジョーがコンテストに出えへんのは トミーを見下してるからやないよ。」
トミー「ほな 何や。」
木暮「傷つきたくないんやと思う。 あいつには トランペットしかないから。」
公園
るい「投げてみますか? 気持ちいいですよ。」
錠一郎「ありがとう。 でも けがしたら あれやから。」
るい「あ… そうですよね。 すいません。 大月さんのトランペットが 聴かれへんようになったら 私も嫌や。」
「なあなあ。 おにいちゃんとおねえちゃん アベックなん?」
「えっ! アベックなん!?」
るい「あっ… 違うよ。 お友達。」
子供たち「え~! アベック! アベック! アベック! アベック!」
るい「こら~! もう!」
子供たち「アベック!」
るい「真面目に野球やんなさい! こら~!」
子供たち「キャ~!」
るい「フフッ すいません。」
ジャズ喫茶・Night and Day
ホール
トミー「下手くそが。 全然 響き合ってへん。 もっと共鳴せえ。 共鳴。 ねえ 君。 僕と共鳴せえへんか。」
ベリー「何 それ。 オダサク?」
トミー「何や ベリーか。」
ベリー「何やとは 何や。」
トミー「ベリー。 織田作之助なんか読むん?」
ベリー「ばかにしてんの? 国文科やで。」
トミー「ふ~ん 知らんかった。」
ベリー「あんたこそ 小説なんか読むんや。」
トミー「当たり前や。 全ての学問は 音楽に通ず。」
ベリー「大層やなあ。」
トミー「俺は ジョーとは違う。 あんなトランペットしか知らんやつとは。」
ベリー「私も頂戴。」
トミー「おい おいおい。」
ベリー「私かて サッチモとは違う。 何でやの? 何で ジョーは 私のこと見てくれへんの。 何で 私には あんなにつれないくせして… ちんくしゃサッチモの前では あんな顔見せんの。」
トミー「ああ このセッションはええな。 ベリー。」
ベリー「何!」
トミー「ジョーとデートさしたろか?」