ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第53話「1963-1964」【第12週】

あらすじ

るい(深津絵里)は関西一のトランぺッターを選ぶコンテストに向けて、錠一郎(オダギリジョー)の着る衣装を選んであげました。準備万端と思っていたところ、偶然ラジオで「勝者はトミー北沢(早乙女太一)に違いない」という予想を聞き、錠一郎は自信をなくしてしまいます。そこで映画館主の西山(笑福亭笑瓶)の勧めで気分転換に映画を見に行くことになったるいと錠一郎でしたが、その映画がとんでもない内容で…。

53ネタバレ

ジャズ喫茶・Night and Day

屋根裏

錠一郎「ありがとう。 最初は 出えへんつもりやったんや。 コンテスト。 でも 夢ができたから。 いつか アメリカに行くって。 サッチモちゃんと2人で。 きっと勝つよ。 これ着て コンテスト出て 必ず優勝する。」

るい「はい。」

竹村家

竹村クリーニング店

ラジオ・磯村『さて 皆さん。 いよいよ『関西 ジャズトランぺッター ニューセッション』が 近づいてまいりました。 飛ぶ鳥を落とす勢いといわれます 東京の芸能事務所 笹川プロダクション 通称 ササプロといいますが そこの社長さんが 関西で最も有望なトランぺッターを選ぶ という催しなんです』。

平助「これ 今度 Night and Dayでやるやっちゃな?」

るい「はい。」

ラジオ・磯村『私みたいなジャズ好きは…』。

平助「ああ ありがとう。」

ラジオ・磯村『もう明けても暮れてもジャズが好き。 わくわくが止まりません』。

るい「あっ ありがとうございます。」

ラジオ・磯村『有能なプレーヤーが ひしめき合う 関西ジャズ界ですけどね 私が優勝候補と思うのは 内山裕三。 里美雅彦。 しかし 大本命は… トミー北沢』。

和子「あら。 トミーいうたら いつかの。」

平助「ごっつい自動車に乗ってきた子か。」

ラジオ・磯村『この人は非常に華があります。 テクニックも頭一つ抜けてます』。

平助「はあ~ そんなすごい人やったんか。」

ラジオ・磯村『そのトミー北沢の ライバルと目されているのが 大月錠一郎。 私は この人のプレーがとても好きでね トミー北沢が太陽ならば…』。

錠一郎「サッチモちゃん。」

ラジオ・磯村『大月錠一郎は まさに月!』。

平助「うわさをすれば。」

和子「ああ 大月君。 今 あんたのこと ラジオで言うてんで。」

錠一郎「えっ?」

ラジオ・磯村『闇夜に浮かぶお月様のような彼の音が 私は好きでねえ』。

平助「えらい褒められてるで。」

錠一郎「いや…。」

和子「今のうちにサインもろとかんと。」

ラジオ・磯村『しかし どちらの実力が上かと言えば トミー北沢やと思います。 光輝く太陽の前では 闇夜の月などは 全く勝ち目はないですね。 ズバリ 優勝は 光輝くトミー北沢でしょう』。

西山「♬『またも出ました ロマンショウ いつもニコニコ朗らかに 和子さん』」

和子「♬『オイヤー』」

西山「♬『帰れ~』」

西山「えっ 何でえな。」

平助「シ~ッ。」

西山「うん?」

錠一郎「あの磯村 吟いう人は ジャズ界では有名なんや。 ものすごう知識も豊富で… 木暮さんも一目置いてはる。」

るい「そやからいうて そのとおりになるとは限りませんて。」

錠一郎「あかん 何か… 何か すごい自信なくなってきた。」

るい「そんなこと言わんと。」

西山「何や何や お二人さん。 ええ? 事情は知らんけども おっちゃんがええもんやろ。 ヘヘヘ…。」

平助「事情も知らんのに いらんことしなや。」

和子「あら モモケンの?」

西山「そうやがな。 ただいま 大ヒット中や!」

平助「るいちゃん。 気に病んどってもしゃあない。 2人で見てきたら どないや?」

るい「えっ…。」

和子「そやそや。 今日はもう しまいやろ?」

平助「うん。」

映画館

館内

竹村家

竹村クリーニング店

ラジオ・磯村『さて 皆さん。 続いては 映画のコーナーです。 ハラハラしますね。 ドキドキしますね。 映画の好きな人には たまりませんね。 特に 皆さんお待ちかねの モモケンこと 桃山剣之介の 『棗 黍之丞』シリーズの最新作が 封切りとなりました』。

和子「あら。」

ラジオ・磯村『タイトルはね 『妖術七変化 隠れ里の決闘』といいます』。

映画館

館内

(開演のブザー)

竹村家

竹村クリーニング店

ラジオ・磯村『条映という会社が 社運を懸けた力作やと 鳴り物入りで公開されました この最新作。 まあ 率直に申しましてね 日本の映画史上 まれに見る駄作なんです』。

和子「なっ!?」

ラジオ・磯村『『棗 黍之丞』はおろか 名優 桃山剣之介の運命は これまでか。 心配になりますね。 そんな出来栄えの悪い映画なんです。』

平助「おかしい思たんや。 えらい気前よう ぎょうさん割引券置いてくさかい。」

和子「押しつけられただけやん。」

平助「うん…。」

映画館

館内

『お侍様! どうか… どうかお助けください! この里は 妖術使いに操られているのです。 どうか!』

(口々に)『お願いします!』

ラジオ・磯村『黍之丞が流れ着いた里が 妖術使いに操られているという ばかばかしい設定。 黍之丞が戦う相手が 妖怪にされてしまったという人間なんで この妖怪たちのつくりが もう ちゃちなこと お粗末なこと』。

ラジオ・磯村『更に不思議なのは 今回の悪の親玉 すなわち妖術使いの配役です』。

『ほう~。 これこれ。』

竹村家

竹村クリーニング店

ラジオ・磯村『伴 虚無蔵という 謎の役者の抜てきに 驚いた人も多いんやないかと 思います。 なんと この人ね これまで 『黍之条』シリーズを含めて 数々の映画で 斬られ役を演じてきたんやそうです』。

和子「斬られ役?」

平助「条映の秘蔵っ子やいう話も うそか。」

和子「うそや。」

平助「はあ~。」

ラジオ・磯村『大部屋の役者にすぎない 伴 虚無蔵をね 何で こんな大作に起用したのか それは是非 映画河岸で確かめていただくとして。 まあ とにかく支離滅裂なストーリー 荒唐無稽な人物造形。 迷走を続ける『黍之丞』シリーズ まさに 真っ暗闇から抜け出すことは できるんでしょうか。 別の意味で 目が離せない映画になっております』。

和子「ええんかいな。 大月君 こないなけったいな映画 大事なコンテストの前に見てしもて。」

平助「今更 言うても しゃあないやないか…。」

映画館

館内

『フフフフフフ…。 フッフッフッフッフッ。 アッハッハッハッハッ…。 ア~ハッハッハッハッハッ』。

(笑い声)

『暗闇でしか 見えぬものがある。 暗闇でしか 聴こえぬ歌がある』。

『黍之丞 見参!』

商店街

錠一郎「勝つよ。 サッチモちゃんのために 戦うよ。」

<あの荒唐無稽な映画の何が 錠一郎に そう言わせたのか るいには さっぱり分かりませんでした。 Why that absurd film promoted Joichiro to say so, Rui didn’t know. でも 『きっと勝つ』という錠一郎の言葉を なぜだか るいは 素直に信じることができました。 For some reason, Rui believed him when he said he was going to win the competition>

竹村家

竹村クリーニング店

和子「あんた はよ はよ。」

てる子「ええ? もう しまいかいな。 えらい早いやん。」

和子「おデートや。」

てる子「ええ?」

平助「気色悪い言いようすな。 映画行くだけや。」

てる子「映画って これ?」

和子「誰が こないな あほみたいなもん 見に行くかいな。 『若大将』や。」

るい「お洗濯物 預かっときます。」

てる子「おおきに。」

和子「るいちゃん。 あんたも早う支度せな。」

るい「はい。」

てる子「るいちゃんも お出かけかいな。」

平助「ジャズのコンテストいうのん あるんやて。」

てる子「み~んなして お楽しみやな。 ハッハッハッ ええこっちゃ! ほな さいなら。」

和子「はい どうも。 ほな 行こか。」

平助「うん うん。」

るい「そしたら 楽しんできてください。」

和子「ああ おおきに。 るいちゃんもな。」

平助「ワンピース 仕上げして そこに掛けてあるさかい。」

るい「ありがとうございます。 行ってらっしゃい。」

2人「うん。 フフッ 行ってらっしゃいます。」

るい「はあっ! あっ! どないしたんですか? もう行ってなあかん時間…。」

<そして 錠一郎とは そういう男なのです。 And that’s typical of Joichiro>

るい「もう! 何でステージ衣装着たまま ホットドックなんか食べたんですか!」

錠一郎「ごめん。 おなかすいて。」

るい「それやったら 着替えるとか せめて前掛けするとかしたらいいでしょ!」

錠一郎「ごめんなさい。 間に合うかな?」

るい「やるだけやります。 間に合わへんかったら ほかの着てください。」

錠一郎「嫌や。 サッチモちゃんが選んだ衣装で出る。」

るい「はあ…。 早う 会場に戻って準備してください。 私が届けますから。」

錠一郎「分かった。 ありがとう。」

るい「大月さん。 頑張ってください。 きっと勝って… ください。」

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