あらすじ
るい(深津絵里)は、錠一郎(オダギリジョー)からの提案について、平助(村田雄浩)と和子(濱田マリ)に話ができずにいました。大阪に出てきて就職に失敗した自分を拾ってくれた上に、クリーニングのことを一から教えてくれた二人に対して、自分勝手な相談はできないと考えていたのです。悩んでいたある日、クリーニング店にやってきた錠一郎の口からいきなり驚きの発言が…。
55話ネタバレ
ジャズ喫茶・Night and Day
ホール
(拍手と歓声)
(ドラムロール)
笹川「優勝は 満場一致で 大月錠一郎君に決定しました。」
(拍手)
笹川「いや~ 1曲目も 2曲目も 圧巻のナイスプレーだった。 おめでとう。」
錠一郎「ありがとうございます。」
笹川「ああ。」
(拍手)
奈々「おめでとうございます。」
錠一郎「ありがとうございます。」
(拍手)
木暮「ジョー。」
錠一郎「あっ。」
木暮「おめでとう。」
錠一郎「ありがとうございます。」
「一枚いいですか?」
(シャッター音)
ベリー「悔しい?」
トミー「全然。 最高やった。」
ベリー「あんたも悪くなかったで。」
トミー「ハッ。」
(シャッター音)
「もっと近づいて。」
笹川「大月君。 娘の奈々とも相談したんだがね レコードは シングルのつもりだったけど 1曲とは言わず ド~ンとLPを出そうじゃない。」
(歓声)
笹川「ねっ。 どう?」
奈々「うん。」
笹川「ねっ。」
奈々「きっと 東京のジャズ界に 新しい風が吹きます。 どうぞ よろしくお願いします。」
錠一郎「ありがとうございます。」
るい「(小声で)『おめでとうございます。』」
玄関前
錠一郎「サッチモちゃん。 ありがとう。 これで勝てた。」
るい「そやない。 大月さんの実力…。」
錠一郎「結婚しよう。」
竹村家
竹村クリーニング店
ラジオ・磯村『さて 皆さん 去る土曜日 ついに 『関西 ジャズトランぺッター ニューセッション』が開催されました。 見事 優勝を勝ち取ったのは 大月錠一郎でした。 盟友 トミー北沢と甲乙つけがたく 2人での決戦となったセッション。 これが もう熱い! もう 熱うて 熱うて もう灼熱のようでした。 あのセッションは 間違いなく伝説となるでしょう』。
平助「すごいなあ。」
和子「なあ。 るいちゃん。 今度 大月君 連れといで。 お祝いしよ お祝いを。 なあ?」
平助「うん うん… うん?」
和子「るいちゃん。」
八木『それでは 平助さん どうぞ』。
平助『こないだのコンテストに 関係あること?』。
るい『ええ まあ…』。
平助『実は ひそかに るいちゃんも出とったとか』。
和子『そないなわけあるかいな。 あれやろ 大月君の優勝に関係あるやろ』。
平助『えっ えっ そうなんか?』。
八木『関係あります』。
和子『言われたんやろ 大月君に 『結婚してくれ』て。 『東京 一緒に行ってくれ』て』。
八木『正解!』。
一同『え~!』。
和子『よう そないな厚かましいこと 言えたもんやな。 うちで さんざん仕事教えたったのに 今更 店辞める? ハッ 冗談やあれへんわ』。
平助『るいちゃん そら ないで。 るいちゃんのこと 実の娘のように かわいがっとったのに』。
るい「ごめんなさい! おじさん おばさん。」
平助「びっくりした。 何や 何を誤ってるんや。」
るい「あっ いえ…。」
和子「何… 何やの。 ハハハハハッ。」
<るいは プロポーズのことも 東京行きのことも言い出せずにいました>
和子「おいでやす… あらっ!」
平助「あっ うわさをすればや。」
錠一郎「こんにちは。」
和子「『こんにちは』やあらへんで あんた。 おめでとう。」
平助「おめでとう。 すごいなあ。 関西一のトランぺッターやて。」
錠一郎「いや いや いや… ありがとうございます。」
和子「あっ 入り入り。 るいちゃん お茶いれたげて。」
平助「うんうん うんうん。」
居間
和子「ここ 上がって 上がって。 あっ そや あの サインもらわな。 サインを。」
平助「あかん 色紙あれへん。」
和子「あ~ あのポスターをな 剥がして 裏向きにしたらええ。」
平助「せやな。」
和子「これ これ これ。 これ ええわ。 これを切って…。」
錠一郎「おじさん おばさん。 サッチモちゃんを僕にください。」
るい「あっ ちょっと…!」
平助「あ… くださいって… 大月君 それ…。」
錠一郎「サッチモちゃんに 結婚を申し込みました。」
和子「けっ…!」
錠一郎「おじさんと おばさんの お許しがもらえたら 2人で東京で暮らすつもりです。 お願いします。 サッチモちゃんを…。」
るい「やめて! 何なんですか いきなり。 おじさんも おばさんも びっくりしてはるでしょう? 私が大阪に来てから おじさんと おばさんには ホンマにお世話になってるんです。 娘のゆに かわいがってもらってるんです。」
錠一郎「分かってるよ。 分かってるから…。」
るい「分かってない! 分かってたら そんなこと ぶしつけに言えるわけない! おじさんと おばさんは 就職に失敗した私のこと拾ってくれた。 クリーニングのこと 一から教えてくれた。 それやのに 今更 辞めるやなんて そんなこと 簡単にできるわけないでしょう?」
和子「何を言うてんの。 そない いつまでも おられても 困るわ。」
平助「フッ…。 せやで。」
るい「でも…。」
平助「るいちゃん。 うちに 跡継ぎがおらんから 心配してくれてんのか?」
和子「あほらしい。 こないな店なあ 一代限りでええんや。」
平助「こないな店 言うな。」
和子「ハハッ そらな もちろん うちらが2人で作った大事な店や。 そやけど そないなもんは ただの形や。 『るいちゃんみたいな ええ子が いっとき手伝うてくれたなあ』。 いつか隠居した時に 縁側で2人で そないな話ができたら うちらは そんで幸せや。」
平助「大月君。 娘を よろしゅう頼みます。」
錠一郎「はい。」
夜
和子「るいちゃん これ食べなさい これ。」
るい「ありがとうございます。」
和子「おいしいから。 ああ。」
平助「あ~。 (泣き声) るいちゃんが おらんようになったら… さみしなるなあ。」
和子「あんた さっきと言うてることが スカタンやないの。」
平助「そうかてな。」
錠一郎「そんな… 今すぐ行くわけやないですから。」
平助「そうかてな… もう…。」
和子「ハッハッハッハッ。」
るい「また遊びに来ます。」
和子「そやそや 子供連れてな。 うん。」
平助「ハッ… 孫が出来るんか?」
和子「うん…。」
平助「ううっ そらあ ええのう。」
(笑い声)
平助「アハッ 孫か!」
和子「笑うてる。 笑うてるわ。」
(平助のすすり泣き)
和子「で 泣いてんの? 泣くんか 笑うんか あんた はっきりしいな。」
平助「あっ でも 孫か…。」
(笑い声)
ジャズ喫茶・Night and Day
屋根裏
<錠一郎はレコーディングのため 一旦 一人で東京に向かうことになりました およそ3か月かけて レコーディングをし その発売を記念して クリスマスに 銀座でライブをする というスケジュールです>
るい「レコードの録音って 3か月もかかるもんなんですね。」
錠一郎「う~ん… 僕も初めてやから よう分からんけど 大勢の人が関わるもんらしいよ。」
るい「ふ~ん。 体に気ぃ付けてくださいね。 ホテル暮らしなんでしょ?」
錠一郎「いや ササプロの社長さんの家に居候。」
るい「えっ?」
錠一郎「でっかいお屋敷みたいよ。 そないして 新人が 寝泊まりするための部屋があるんやて。」
るい「はあ~ そう。 ホンマに大きい会社なんですね。 『ディッパーマウス ブルース」…。」
回想
安子「定一さん。」
定一「うん?」
るい「『サニーサイド』 かけてもろうてええですか?」
定一「ああ。」
回想終了
るい「この店や。 『サニーサイド』のレコード聴いた店。 マスターの名前は 確か 定一さんやった。」
錠一郎「やっぱり…。 そうやと思ってた。 僕を拾ってくれたんも 定一さんや。」
回想
定一「よっ。 ほれ。 腹が減っとるじゃろお。 食え。 進駐軍から がめてきたんじゃ。」
(せきこみ)
定一「ハッ ハハハッ。 せかんでもええ。 うめえか?」
錠一郎「うん。」
定一「おめえ 名前は?」
錠一郎「じょういちろう。」