あらすじ
錠一郎(オダギリジョー)のレコーディングやライブが延期になったという知らせが届き、不安に襲われるるい(深津絵里)。様子を聞こうと手紙を出すものの、返事は返ってきません。トミー(早乙女太一)の元には、錠一郎と東京での面倒を見ている奈々(佐々木希)が二人でしょっちゅう出かけているらしいという噂(うわさ)も届きます。そんな中、突然錠一郎が大阪に帰ってきて…
57話ネタバレ
竹村家
竹村クリーニング店
トミー「サッチモちゃん 何か聞いてる? ジョーのデビューコンサート 延期になったんや。」
るい「えっ…?」
トミー「笹川社長から 木暮さんに電話があったらしい。 レコードもステージも 4月の初めまで延期やて。」
るい「何で…。」
トミー「何や よう分からんけど レコードの録音が遅れとって バンドのメンバーの スケジュールの調整やら いろいろやってたら どうしても そないなるんやて。」
るい「あ… 全然 知りませんでした。」
るいの部屋
<その夜 るいは思い切って 東京の錠一郎に手紙を書きました>
るい『前略。 お元気ですか? コンサートが 春まで延期になったと聞きました。 いつになったら会えるのでしょう。 寂しいです』。
るい『きっと とても期待されてる証拠だと うれしく思っています。 どうか お体を大切に。 春にお会いできることを 楽しみにしています。 かしこ』。
<何通 手紙を書いても 錠一郎からの返事はありませんでした>
笹川邸
リビング
(トランペットの音)
(うまく音が出せない)
笹川「もういい!」
(テーブルをたたく音)
笹川「コンサートも レコーディングも 中止だ!」
奈々「パパ。 お医者様も言ってたでしょ? ジョーは疲れてるだけよ。 慣れない東京で ハードスケジュールで。」
笹川「そう言って もう何か月たつんだ!」
奈々「だから いつ治るのか お医者様にも分からないのよ。」
錠一郎「申し訳ありません。 あの… 本当に分からないんです。 歩けるし 走れる。 しゃべることも 食事をすることもできる。 そやけど… トランペット吹こうとすると…。」
笹川「本当に病気なのかねえ。 重圧に耐えられなくなって 逃げてるだけじゃあないのかなあ。」
奈々「パパ!」
笹川「はあ~。 レコーディングスタジオも 銀座のクラブも さっさと キャンセルするか。 それに ほかのトランぺッターに 差し替えないとなあ。 大損なんだよ! 木暮に電話して 迎えに来させる!」
錠一郎「それだけは やめてください。 木暮さんや 大阪のみんなには 余計な心配かけたくないんです。 お願いします。」
奈々「パパ。 麻布に アメリカ帰りの お医者様がいるって聞いたわ。 ほかにも何軒か よさそうな病院を調べてあるの。 春まで時間を頂戴。 お願いします。」
笹川「春までだ。 それ以上は… 許さん。」
病院
<しかし どこの病院に行っても 結果は同じでした 日常生活には何の支障もないのに トランペットを吹く時だけ 思うように 体が動かないという錠一郎の症状に 適切な診断と処置を与えてくれる医師は 見つかりませんでした>
笹川邸
リビング
奈々「また来てるわよ。 恋人なの?」
錠一郎「うん…。」
奈々「返事は書いたの?」
錠一郎「書けるわけない。」
奈々「困った人ね。 あなたは それでいいかもしれないけど。 女は それじゃ納得できないのよ。」
竹村家
竹村クリーニング店
(電話の呼び鈴)
和子「はい。 竹村クリーニング店でございます。 もしもし?」
錠一郎『あ…。』
和子「もしもし? もしもし?」
るい「おばさ~ん。 大根あると思てたのに あれへんから買うてきます。」
和子「ああ おおきに。 関東煮やのに 大根あれへんかったら おじさんが がっかり…。」
るい「(小声で)『あ…電話中…。 すいません。 行ってきます。』
和子「行ってらっしゃい。 もしもし。 もしもし? 切れとるがな。」
ジャズ喫茶・Night and Day
ホール
ベリー「どないなってんの? ジョーのデビュー。 聞いてえな 東京に。」
木暮「そないに 催促の電話かけられへんて。」
ベリー「もう 私も卒業してまうで。」
木暮「関係あれへんがな。」
ベリー「トミー。 あんた 何も聞いてへんの? はあ…。」
トミー「東京からツアーで来たバンドマンが 言うとったんや。 ジョーのデビューがいつまでも進まんのは 笹川社長の機嫌 損ねたせいやて。」
ベリー「えっ?」
木暮「ジョーが?」
ベリー「何で?」
トミー「娘と交際してるみたいやて。」
ベリー「はあ?」
トミー「しょっちゅう 2人で出かけるんやて。」
ベリー「やっぱり… あの女。 そやから 忠告したったのに。 ホンマ サッチモは ぼ~っとしてるから!」
トミー「ただのうわさや。 浮気みたいな器用なこと できる男やない。」
るい「分かってます。」
竹村家
るいの部屋
<るいは 錠一郎を信じていました でも るいは不安でした。 どうして錠一郎が 電話も手紙もくれないのか どんなに考えても 分かりませんでした>
笹川邸
リビング
笹川「終わりだな。 ご苦労さん。」
錠一郎「社長。 お世話になりました。」
笹川「いつか治ることを祈ってるよ。」
奈々「どうするつもり? これから。」
錠一郎「一度… 大阪に帰って… 木暮さんだけに事情を話すよ。」
奈々「るいさんには?」
錠一郎「どないして会えるんや。 僕と るいをつないでたのは… トランペットやのに。」
ジャズ喫茶・Night and Day
ホール
♬~(ラジオ)
(ドアの開閉音)
(足音)
木暮「ジョー。」
錠一郎「木暮さん…。」
木暮「今夜は休め。 話は明日や。」
竹村家
るいの部屋
回想
錠一郎「るいも そろそろ 大月さんって呼ぶのやめへん?」
るい「えっ。」
錠一郎「だって るいも大月さんになるんやから。」
るい「でも… 何て呼んだら…。」
錠一郎「錠一郎とか。 るい。 3か月なんて あっという間や。 すぐに迎えに来るよ。」
回想終了
ジャズ喫茶・Night and Day
玄関前
るい「大月さん?」
錠一郎「るい…。」
るい「いつ… 帰ってきたんですか? 手紙 届いてますか? 何通も出したんですよ。 心配で…。 どないしてたんですか? 大月さん…。」
奈々「ジョー! ごめんなさい。 やっぱり気になって…。 木暮さんには 私からも…。 あ…。」
錠一郎「中 入っといて。」
るい「変なうわさ… 聞きました。 大月さんが 社長のお嬢さんと しょっちゅう2人で出歩いてるて。 それで 社長が怒りはって デビューが遅れてるて。 そやけど 私は そんなん信じてません。 大月さんに限って そんな…。」
錠一郎「ホンマや。 奈々のことが好きになった。 そやから…。 お前とは終わりや。」