あらすじ
回転焼き屋をオープンさせたるい(深津絵里)でしたが、一子(市川実日子)のおかげで近所からの評判もよくなり、徐々に店の売れ行きもあがっていきます。しかしるいには悩みがありました。トランペットを吹く以外は何もできない錠一郎(オダギリジョー)でもできる仕事はないかと考えていたのです。運よく自転車を手に入れたものの錠一郎は乗れず、近所の子供たちと練習する毎日。そんなある日、るいが倒れたと知らせが入り…。
62話ネタバレ
大月家
台所
(足音)
錠一郎「ただいま!」
るい「あっ お帰り。 どないしたん えらい時間かかって。」
錠一郎「ごめん ごめん ごめん。 つい テレビに見入ってしもて。」
るい「また? 買いもせえへんのに ご迷惑でしょう。」
錠一郎「これ おネギ。」
るい「あっ ありがとう。 おネギは最後でええわ。 先 イワシ出して。 梅煮にするから。」
錠一郎「売り切れとった…。」
るい「ええっ! もう… テレビ見てるから。」
錠一郎「あっ でも これ 代わりに買うてきた。 お店のおっちゃんに 何がええやろう いうて聞いたら そら 一番上等なんは タイやで いうて。」
るい「ハッ…。」
野田家
座敷
一子「ジョーに まともな金銭感覚 求めたらあかんえ。 ミュージシャンの世界しか 知らんのやさかい。」
るい「今は休んでるだけで ジョーさんの本職は トランぺッターなんやから ほかのことなんか できんでもいい。 そない思てたけど…。 ちょっと想像を超えてました。 え~っと…。」
一子「そう。 そう。」
るい「お点前 頂戴します。」
一子「どうぞ。」
るい「え~っと… 時計回りに2回。」
一子「そう。」
るい「うん。 そういうたら クリーニング屋でも ポケットから無造作に お金出してたなあ…。」
回想
錠一郎「はい。」
回想終了
一子「回転焼きは焼かへんの?」
るい「最初は 僕も焼くって言うてたけど…。」
回想
錠一郎「あ~! ああ…! あっ! あっ! あっ! あっ!」
回想終了
一子「生地作りは?」
回想
錠一郎「うわあ… わあ! わあ! わあ! わあ!」
回想終了
一子「店番くらいはできるやろ。」
回想
「2つ頂戴。」
「おう 1つ 1つくれ。」
「5個ずつ 2つに分けて。」
子供たち「ください!」
「こっちも 1つ頂戴。」
錠一郎「うわあ… ああ ああ!」
回想終了
るい「このままでいいんやろか…。」
一子「配達は?」
るい「配達?」
一子「ちょっと まとまった数 注文しよ思てたんや。」
るい「まとまった数て どれくらいですか?」
一子「200個。」
るい「ああ 200個…。 200個!?」
一子「うん。」
るい「何するんですか 200個も。」
一子「結婚式のデザートや。」
るい「結婚式て 誰の?」
一子「…私の。」
るい「はあ…! へえ~…。」
大月家
居間
錠一郎「えらい 急な話やなあ。」
るい「卒業してすぐ お見合いしたんやて。」
錠一郎「お見合い? ベリーが?」
るい「相手は 日本舞踊のお師匠さんで どっちの家も 師弟関係やら 横のつながりやら とにかく ぎょうさん招待せんとあかんのやて。」
錠一郎「えらい格式高そうやなあ。」
るい「うん。」
錠一郎「デザートが回転焼きでいいの?」
るい「『みんな 普通のお茶菓子は 食べ飽きてるから』て言うてたけど。」
錠一郎「うちの売り上げのためかな。」
るい「多分。」
錠一郎「優しいなあ ベリー。」
るい「うん。 それで 思たんやけど 自転車買わへん?」
錠一郎「自転車?」
るい「時々は こういう大口の注文も受けたいし。」
<…というのは表向きの理由で るいは 錠一郎にできる仕事を 模索していました>
荒物屋・あかにし
吉右衛門「何? 自転車が欲しい?」
るい「はい。 安う買えるお店ありますやろか?」
吉右衛門「よう私を訪ねてくれはった。 荒物屋 あかにしは 何でも屋。 うちで仕入れさしてもらいましょ。」
るい「あの~ 予算は これくらいで…。」
吉右衛門「フッ こないな安い自転車 仕入れたかて うちのもうけにならへんわ。」
るい「えっ そしたら どないしたら。」
吉右衛門「知らん。」
初美「毎度ありがとうございます。 うちいりです。」
吉右衛門「あ… ここ…。」
初美「ヘヘヘッ。」
清子「あっ おおきに。 ここへ。」
初美「へえ お待たせしました。」
るい「あ… お昼どきに お邪魔しました。」
初美「あの~ 自転車 探してはるんですか?」
初美「旦那さんが新しいのわはったよって これ どないしよか言うてたんです。」
るい「ホンマにいいんですか? 頂いて。」
初美「はい。 旦那さんも そないしてもろたら助かるて。」
るい「ありがとうございます。」
初美「けど… 高さが合うやろか。」
るい「どやろう… ジョーさん ちょっと乗ってみて。 ジョーさん?」
錠一郎「(小声で)どうやって乗るの?」
るい「えっ?」」
賀茂川
錠一郎「いや ちょっ ちょっ ちょっ… ちょっと やめて やめて やめて…。 やめて。」
るい「怖くないから。 前見て。」
錠一郎「怖い 怖い 怖い…。」
るい「前。」
錠一郎「危ない 危ない 危ない…。」
るい「大丈夫。」
錠一郎「ちょっと お… 押さんといてって。」
るい「大丈夫。」
錠一郎「怖い 怖い 怖い 怖い 怖い…。」
るい「顔上げて こぎ続けとったら 前へ進むから。」
錠一郎「いや いや いや…。」
るい「ほれ~!」
錠一郎「いやいや… ちょっと押さんといて…。」
(子供たちの笑い声)
「おっちゃん これやで!」
錠一郎「え~。」
大月家
回転焼き屋・大月
森岡「ああ 開いた開いた。」
るい「あっ 酒屋さん。 おいでやす。」
森岡「1つ くれるか。」
るい「あっ はい。 すぐ焼きます。」
森岡「ご主人は?」
るい「賀茂川です。」
森岡「ええ!? 嫁はん一人働かせて 自分は散歩か?」
るい「いや なお そういうことやなしに…。」
森岡「はあ… 余計なお世話かもしれへんけど 仕事もせんと あっこの旦那さんは どないなってんねやろ あれでは 嫁さんの体もたへんでって みんな心配してんで。」
賀茂川
錠一郎「ああ ああ ああ… おおっ おおっ おおっ…。」
「大丈夫か? あっ…。」
錠一郎「おお…。」
あきお「おっちゃん。」
錠一郎「えっ?」
あきお「一向に うまくならへんな。」
「明日も特訓や。」
錠一郎「面目ない…。 おおっ おおっ…。」
「あきお~!」
あきお「あっ お父ちゃん!」
「あきお!」
あきお「お帰り!」
「お~い。」
あきお「じゃあ 帰ろ。 バイバ~イ。」
大月家
居間
<るいは いつか錠一郎の病気の治療法が 見つかった日のために 貯金をしていました>
るい「あっ まだ起きてたん?」
錠一郎「うん。」
るい「いいよ。 もう 先寝てて。」
錠一郎「後悔してる? 何にもできひん僕と一緒になって。」
るい「そないなこと もういっぺんでも言うてみ。 すぐ離婚やで。」
荒物屋・あかにし
ラジオ・磯村『さて 皆さん。 先頃 惜しまれながら逝去しました モモケンこと 桃山剣之介について 新しいニュースが飛び込んできました。 なんと 息子の団五郎が 来春 二代目 桃山剣之介を 襲名するんだそうです。 方や モモケンは 銀幕の時代劇スター。 方や 団五郎は テレビ俳優です。 さあ その名跡に ふさわしい活躍が できるのかどうか… いや 是非 そうなってほしい…』。
清子「こっちは木箱。」
るい「あ…。」
清子「こっちは紙や。」
るい「ああ…。 この箱やったら 200個いっぺんに入るやろか。」
清子「うちも近いうち 結婚式のデザート頼めたらいいんやけど。」
るい「(小声で)『あ… 息子さん いい人できたんですか?』」
清子「(小声で)『どやろ。 吉右衛門次第やね。』
初美「こんにちは。 たわし1つ ください。」
吉右衛門「は… 初美ちゃん。 いらっしゃい。」
初美「フフフフッ。」
吉右衛門「はい。」
初美「フフフッ おおきに。」
るい「こんにちは。」
初美「ああ こんにちは。 どないですか? ご主人。 自転車乗れるようにならはりました?」
るい「いえ まだ…。」
初美「あ~…。」
清子「あっ! 大月さん。 大丈夫ですか?」
賀茂川
吉右衛門「大月さ~ん! えらいこっちゃ! 奥さんが倒れて…!」
錠一郎「ちょ… ちょっとごめん! あっ…! おっ おっ…。」
あきお「乗れてるやん…。」
道中
錠一郎「るい…。」
大月家
居間
錠一郎「るい! るい! るい! だ… 大丈夫なんか? 医者は?」
るい「ああ お医者さん? 今 帰らはった。」
錠一郎「あ… で 何やて?」
るい「ただの睡眠不足。」
錠一郎「あ… はあ 何や…。 はあ…。 はあ~ よかった…。 はあ はあ…。」
るい「それと… おめでたやて。 赤ちゃんがいてるんやて。」
錠一郎「赤ちゃん…? 2人の? なれるかな? 僕 お父さんになれるかな?」
るい「なれるよ。 なってあげて。 この子の 大好きなお父さんに。」
るい「なれるかな… お母さんに…。」
病院
待合所
テレビ『私立和歌山商業の試合は 2対1 で 岡山東商業が勝利。 岡山勢として 初めて甲子園での優勝を決めました。 続いて 芸能の話題です』。
(産声)
テレビ『昨年 亡くなった 俳優 桃山剣之介さんの長男 俳優の桃山団五郎さんが 二代目 桃山剣之介を襲名…』。
分娩室
「おめでとうございます。」
<春が来て るいは 女の子を産みました。 Another spring has come and Rui has given birth to a Baby girl>