ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第64話「1965-1976」【第14週】

あらすじ

夏休みに遊んでばかりいたひなた(新津ちせ)は、山積みの宿題に途方に暮れます。唯一頑張って毎日行っていたラジオ体操も、最終日は宿題に追われていけませんでした。宿題を手伝ってくれようとした錠一郎(オダギリジョー)にも文句を言う姿を見たるい(深津絵里)は、いうことを聞かずに宿題を放っておいたひなたを厳しく叱ります。そんな時に、クラスメイトの一恵と小夜子が訪ねてきて…。

64ネタバレ

賀茂川

♬~(ラジオ『ラジオ体操』)

吉右衛門「はい 皆さん 最後まで よう頑張りました。」

(拍手と子供たちの歓声)

(子供たちの歓声)

初美「はい 頑張ったね。」

吉右衛門「は~い はい。」

「ありがとう!」

初美「はい よく頑張りました。」

「ありがとう。」

「よく頑張りました。」

「ありがとう。」

大月家

ひなたの部屋

ひなた「あ~! え… あ~ もう違うわ! あ~ もう! はあ… どないしよう 終わらへん。 はあ~。 あっ… う~!」

居間

錠一郎「もったいないなあ。 今まで皆勤やったのに。」

ひなた「そやかて宿題が… 間に合わへんさかい…。」

るい「あんなに毎日 遊んでたら 間に合うわけないやないの。」

錠一郎「大丈夫や。 お父ちゃんが手伝うたる。」

ひなた「えっ ホンマ?」

るい「ジョーさん。」

錠一郎「武士の情けや。」

るい「言葉の遣い方がおかしい。」

錠一郎「ん! ひなた 卵かけごはん やるか?」

ひなた「する!」

るい「自分でやんなさい。」

ひなた「お父ちゃんにしてもらう。」

錠一郎「よし。 じゃあ 片手でやったろ。」

るい「こぼさんといてよ。」

錠一郎「あっ…。 ああ… お~。」

ひなた「お~。 殻が入ってる。」

錠一郎「えっ? ホンマ? あっ これ?」

ひなた「これ。」

錠一郎「う~ん…。」

ひなた「ほら 取って。」

錠一郎「うん… ちょっと待って…。」

ひなた「頑張れ! 頑張れ!」

錠一郎「うん…。 ちょっと…。」

ひなた「あとちょっとや。」

錠一郎「うん これね。」

るい「もうええ。 貸して。」

ひなた「おっ。」

錠一郎「お~。」

るい「はよ食べて さっさと宿題しなさい。」

ひなた「は~い。」

ひなたの部屋

ひなた「お父ちゃん! 何してんの!?」

錠一郎「何て 絵日記や。 『今日は お父ちゃんとお母ちゃんと一緒に すいかを食べました』。」

ひなた「これ すいか?」

錠一郎「これ お母ちゃんや。」

ひなた「もう! お父ちゃんは算数のドリルやって!」

錠一郎「あ~ 分かった。」

ひなた「どないしたん?」

錠一郎「いや… お父ちゃん 算数は苦手や。」

ひなた「苦手いうたかて 小4の算数やで?」

錠一郎「少数はもう… 特に苦手や。」

ひなた「ええ?」

錠一郎「ほら… 割り算とかだと もうお手上げや。」

ひなた「小数点 動かしたらええんや。」

錠一郎「ああ ああ… 何か そんなんあったな。 こ… こうかな?」

ひなた「反対や!」

錠一郎「えっ。」

ひなた「後ろに動かすねん。 後ろ。」

錠一郎「ああ。 うん うん うん なるほど。 これが こうかな? こう… こう… これが こうか。」

ひなた「あ~ もうええ! 余計 時間かかるわ!」

るい「ひなた。」

ひなた「お母ちゃん。」

るい「あんた それでええ思てんの?」

ひなた「えっ?」

るい「宿題せんと 遊びほうけて。 テレビ見て チャンバラばっかりして。 毎年 毎年 夏休みのたんびに おんなじこと繰り返して。 あげく お父ちゃんに泣きついて。 たった一つ続けとったラジオ体操まで 最後の最後に投げ出してしもた。 もう 宿題なんかせんでええ。 そのまま学校行って 先生に絞られなさい。」

回転焼き屋・大月

錠一郎「あんな強く言うたらんでも ええと違う? ひなた しょんぼりしてたよ。」

るい「あれくらい言わな分かれへんのよ。 あのままやったら この先 ひなた自身が困るんやから。」

錠一郎「そうかなあ。」

るい「そうかなって…。」

錠一郎「僕も 学校の勉強は ろくに せえへんかったよ。」

るい「自慢気に言うことやないでしょ。」

錠一郎「でも るいみたいな人が お嫁さんになってくれた。 何も困ってへんよ。」

るい「もうええ。 ジョーさんと話してたら 調子狂うわ。」

小夜子「こんにちは。」

るい「おいでやす。 ちょっと待ってね。」

小夜子「あっ いえ…。 ここ 大月ひなたちゃんのおうちですか?」

ひなたの部屋

ひなた「あ~ もう~。 う~ うっ… あ~! あっ あ~。 はあ~。」

るい「ひなた!」

ひなた「はい! はい!」

るい「お友達来てるよ。」

ひなた「えっ?」

居間

ひなた「藤井さん。」

るい「傘 返しに来てくれたんやて。」

ひなた「ああ。」

小夜子「ごめんね ずっと借りっ放しで…。 あれから すぐ おばあちゃんとこ行ってて…。」

ひなた「学校始まってからで よかったのに。」

小夜子「ホンマにありがとう。 うれしかった。」

錠一郎「ひなた。 上がってもらい。」

ひなたの部屋

ひなた「どうぞ。 散らかってるけど…。 座って!」

小夜子「手伝おか?」

ひなた「えっ!?」

小夜子「私はもう 全部できたから。」

ひなた「え… えっ そんなあ。」

小夜子「ええよ。 傘のお礼。」

ひなた「ホンマにええの? せっかくの夏休み最後の日 人の宿題の手伝いで潰してしもて。」

小夜子「ええよ。」

ひなた「あ…。 いやいや いやいや あかん あかん! やっぱり やめとく! 侍は 見返りなんか求めへんもんや。」

小夜子「侍…。 大月さん 何で そないに侍が好きなん?」

ひなた「何で?」

小夜子「いつから?」

ひなた「うちとこ ちょっと変わってるやろ。」

小夜子「変わってるて?」

ひなた「お母ちゃんが回転焼き焼いて お父ちゃんは 家にいてるのに仕事してへん。 幼稚園の頃は それで よう からかわれた。 電気屋の吉之丞とかに。 泣きべそかいて帰ってきたら 当のお父ちゃんがテレビ見てた。」

ひなた「お父ちゃんは 私の顔見て 膝に乗っけてくれて。 それで 一緒にテレビ見た。 時代劇やった。 それから毎日 お父ちゃんの膝で時代劇見てた。 かっこええなあ思た。 どの侍も。 私が見てきた侍は みんな… 強くて 優しくて…。」

回想

テレビ『江戸御免の向こう傷 旗本退屈男』。

回想終了

ひなた「絶対に泣いたりしいひん。 弱音なんか吐かへん。 こうと決めたことは 命懸けで やり遂げる。」

小夜子「高潔なんやね。」

ひなた「いや 血圧までは知らん。」

小夜子「あっ いや 高血圧やなくて…。」

ひなた「私は憧れてんねん。 そういう侍の生き方に。」

回転焼き屋・大月

森岡「あ~ え~っと…。」

錠一郎「あっ いらっしゃ~い。」

森岡「わっ! ご主人かいな。 …出直そ。」

錠一郎「うん そうしてくださ~い。」

一恵「こんにちは。」

錠一郎「ああ いっちゃん。 こんにちは。」

一恵「ひなちゃんは?」

錠一郎「入り。」

ひなたの部屋

一恵「はい。 これ ラジオ体操の景品。」

ひなた「えっ ええの?」

一恵「うん。 言うたら ひなちゃんの分もくれたわ。」

ひなた「わあ! いっちゃん ありがとう!」

一恵「皆勤賞はあかん言われたけど…。」

ひなた「ノートと鉛筆やろ? 別にええわ。 わあ~。」

一恵「こんなことやと思うた。」

ひなた「面目ねえ。」

一恵「ほら やろ。 手伝うてあげるさかい。」

ひなた「いや でも 侍は 見返りなんか…。」

小夜子「やろう。 3人でやれば すぐできるわ。」

ひなた「うん。 ありがとう! うん やろう!」

回転焼き屋・大月

錠一郎「お客さん 10人ほど帰ってしもた。」

るい「え~ もう…。」

錠一郎「ひなたは?」

るい「宿題してる。 いっちゃんと藤井さんに 手伝うてもろて。」

錠一郎「友達に恵まれてるんやな ひなたは。 それが どれだけ幸せなことか 僕らは よう知ってる。 ひなたにとって それより大事な夏休みの宿題はないよ。」

るい「もう 分かった。 分かったから そんなふうに意地悪言わんといて。」

錠一郎「意地悪?」

るい「ずるいねん ジョーさんは。 ずるい。」

錠一郎「るい。 ひなたは 10歳や。 僕は 10歳のお父さん。 るいは 10歳のお母さん。 一緒に大きくなってったらいいねん。」

ひなたの部屋

<こうして ひなたの夏休みは終わりました。 And so, Hinata’s summer vacation came to an end>

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