あらすじ
時代劇が大好きなひなた(新津ちせ)の元にビッグニュースが飛び込んできました。条映という映画会社がひなたの家からほど近い太秦に映画村というテーマパークをオープンさせたというのです。大好きな時代劇を撮影している現場を見られるということに興奮したひなたは、錠一郎(オダギリジョー)と一緒にさっそく出かけていくのでした。一方、るい(深津絵里)には心配事があって…。
65話ネタバレ
大月家
回転焼き屋・大月
「こんばんは~。」
「こんばんは。」
るい「おいでやす。」
節子「学校始まって やれやれやねえ。」
るい「ホンマに。」
節子「6つ くれはる?」
春子「うち 4つ。」
千栄子「うちも。」
るい「は~い。」
春子「これ よかったら。」
るい「えっ?」
春子「ボンレスハム。 お中元で ぎょうさん もろたさかい。」
節子「うちも これ。」
千栄子「うちも。 何や 子供らが ちょいちょい 回転焼き ごちそうになってるみたいやし。」
るい「いえ そんな…。」
節子「ご主人には 野球のコーチも してもらってるしねえ。」
るい「コーチやなんて。 ただ ぶらぶら見てるだけやわ。」
春子「それでも 大人が見てくれはったら 安心やもの。」
千栄子「ねえ?」
公園
(打撃音と歓声)
錠一郎「お~ よしよし よしよし…。 おい 修治 思いっ切り振っていけ。」
修治「いや おっちゃん。 ここは バントやろ。」
(笑い声)
錠一郎「あっ そうなん? ああ そう。」
荒物屋・あかにし
ひなた「おはようございます。」
森岡「お~ おはようさん。 ひなたちゃん。 元気やなあ。」
ひなた「吉之丞のおばちゃん おはようございます。」
初美「あっ ひなたちゃん。 おはようさん。」
ラジオ・磯村『さて 皆さん。 いよいよ 京都・太秦に 映画村がオープンします。 この映画村という場所は 日本映画発祥の地にふさわしい 新しいレジャーの拠点となります。 ここでは 皆さんが テレビや映画で見ている時代劇 あの撮影現場の見学やら 催し物やらを通して 時代劇の世界を体験できるんやそうです』。
ひなた「え~!」
吉右衛門「あっ…!」
ひなた「え~!」
小学校
先生「『田中さんは 2メートルの針金を 4分の3メートルだけ使いました。 あと何メートル残ってるでしょうか?』。 ちょっと図にして考えてみましょう。」
ひなた「映画村か…。」
先生「大月! 何 ニヤニヤしてんねや。」
ひなた「すいません。」
吉之丞「お前 また そんなことやってんのか。 刀ばっかり描いてさ お前 それしか能ないんや…。」
「それしか描けへん。」
(笑い声)
ひなた『暗闇でしか 見えぬものがある。 暗闇でしか 聴こえぬ歌がある』。
ひなた『ひな之丞 見参』。
『斬れ~! 斬れ~!』。
ひなた『はっ! やっ! たあ!』。
『やあ~!』。
ひなた『やあ!』
先生「大月!」
(笑い声)
先生「はいはい 静かに! 席につけ!」
(騒ぎ声)
先生「おい! 静かに!」
大月家
居間
(テレビの音)
ひなた「はっ! たあ! てや! えい! ほっ! はっ! かっ! はっ! ほっ! ダン! はっ! うっ! たあ! は~っ!」
テレビ『うあ~!』。
『いらっしゃいませ。 黍様…』。
『だんごをもらおう』。
『いつ? いつ この町にお? おとっつぁん! 黍様よ! 黍様がお戻りになったわよ!』。
『かしましい娘だ』。
ひなた「なあなあ お父ちゃん。 こんなん撮影しいてるとことか 見られるんやて!」
錠一郎「ホンマ 夢のような話やなあ。」
ひなた「なあ 連れてって! ええやろ?」
錠一郎「うんうん よっしゃ よっしゃ よっしゃ。 じゃあ オープンしたら すぐ行こ。」
ひなた「やった~!」
『黍様。 お待たせしました』。
『うん』。
ひなた「あ~ん。」
るい「いや~ お行儀の悪い。」
玄関前
ひなた「お父ちゃん! 早う! 早う!」
るい「ひなた。 ハンカチ持ったん?」
ひなた「持った! ちり紙もある。」
錠一郎「えらい張り切ってんな ひなた。」
るい「ジョーさん これ。」
錠一郎「あっ ありがとう。」
ひなた「早う!」
錠一郎「よしよし… 行こ 行こ 行こ 行こ。」
るい「行ってらっしゃ~い。」
ひなた「行ってきま~す! 楽しみやなあ。」
錠一郎「誰か有名な人いるかなあ?」
太秦映画村
「2列でお願いしま~す!」
「2列でお願いしま~す!」
ひなた「わあ~!」
「やあ!」
「やっ!」
「ああ~っ!」
「そのお屋敷に 百両の隠し金があるってんだから…。」
ひなた「わっ… わあ…! 江戸や。 江戸の町や! わあ~! わあ。 お父ちゃん。 あれ! あの橋!」
錠一郎「お~ あれは…。」
ひなた「いっつも黍之条が渡ってる橋や! わあ… わあ~!」
錠一郎「あ~ ひなた。 転ばんように気ぃ付けて。」
大月家
回転焼き屋・大月
清子「ああ 開けはんの?」
るい「あっ あかにしさんのお母さん。 すいません。 すぐ焼きます。」
清子「構へんえ ゆっくりで。 ご主人は?」
るい「ひなた連れて出かけてます。」
清子「そうか。 あんたらご夫婦が この町に来はった時は 京都で回転焼き屋さんやなんて どないなるんやろ思うたけど…。 立派に ようやってはる。 うち 感心してるんえ。」
るい「ありがとうございます。」
太秦映画村
錠一郎「ちょっと一服しようか。」
ひなた「うん!」
「いらっしゃいませ。」
錠一郎「ひなた 何がええ?」
ひなた「おだんご!」
錠一郎「おだんご 2つ。」
「はい。」
錠一郎「黍之丞も ここで おだんご食べてたな。」
ひなた「黍之丞だけとちゃうで。 銭形平次も 旗本退屈男も食べたはった!」
錠一郎「すごい店やなあ。」
ひなた「なあ!」
錠一郎「うん。」
吉右衛門「もなかがないとは どういうこっちゃ! 吉之丞の好物やで!」
「すいません。 ここは茶屋ですさかい…。」
吉右衛門「ほな 何があるんや。」
「おだんごに あんみつ。 それから わらび餅もございます。」
吉右衛門「吉之丞 どれがええ?」
吉之丞「全部!」
吉右衛門「皆 持ってきて。」
「あっ はい!」
ひなた「吉之丞。 おなか壊すで。」
吉之丞「ひなた。」
吉右衛門「ホッホッホッ。 大月さん。」
錠一郎「こんにちは。」
吉右衛門「オープン早々 大月さんも かなりの時代劇好きやな。」
錠一郎「いや 僕より娘がモモケンに夢中でして…。」
吉右衛門「ああ。 あっ ほな また あれに行きはるんか?」
錠一郎「あれ?」
ひなた「『モモケン 来たる!』。」
吉之丞「来年の春 サイン会があるんや。」
ひなた「モモケンが来んの? モモケンに会えんの!?」
吉之丞「そうや!」
ひなた「お父ちゃん!」
錠一郎「おう!」
吉右衛門「少々 高うつくんやけど 吉之丞にせがまれたら しょうがないわ。 なっ?」
(笑い声)
大月家
居間
ひなた「ただいま~!」
錠一郎「ただいま~。」
るい「お帰り。」
ひなた「お母ちゃん!」
るい「ひなた どやった? 映画村。」
ひなた「楽しかった!」
るい「ホンマ。 よかったな。 手 洗いなさい。」
ひなた「は~い。」
錠一郎「これ お土産。」
るい「ありがとう。」
ひなた「それでな お母ちゃん!」
るい「何?」
ひなた「1,500円 頂戴。」
錠一郎「ひなた。 ちゃんと説明しい。 お母ちゃん びっくりしてるやろ。」
ひなた「来年 モモケンのサイン会があんねん。 入場料 1,500円かかるんや。 お願い お母ちゃん。」
るい「あかん。」
ひなた「お母ちゃん!」
るい「行きたかったら 自分で お小遣いためて行きなさい。」
ひなた「そんなご無体な。 吉之丞は連れてってもらうのに。」
るい「よそは よそ。 うちは うちや。」
ひなた「お母ちゃん。 モモケンに会えるんやで。 そないなチャンス 二度とないでえ!」
るい「あかん言うたら あかん! 4年生にもなって お手伝いもせんと。 あれしてほしい これしてほしい 言うんやないの!」
錠一郎「ひなた。 るい。 何があったん?」
賀茂川
錠一郎「侍が泣くんか? おかしいぞ。 ひなた。 お母ちゃんが話があるんやって。」
るい「ひなた。」
ひなた「何?」
るい「さっきは ごめんね。 きつう言うて。 お母ちゃん ひなたに しっかりしてほしかったんや。 もうすぐ お姉ちゃんになるんやから。 ここに 赤ちゃんがいてるんや。」
ひなた「赤ちゃん?」
錠一郎「これからは何でも 赤ちゃんと半分こやな。 我慢できるか?」
ひなた「我慢する。 おやつも お小遣いも 半分こする。 お手伝いもする! やった… やった! 赤ちゃんや! やった~!」
錠一郎「僕も うれしい。」
ひなた「赤ちゃん 赤ちゃん!」
錠一郎「ひなたに きょうだいが出来て。 家族が増えて。」
ひなた「お父ちゃん!」
錠一郎「おう おう! ホホッ。」
ひなた「あ~ やった! 赤ちゃんや! やった。 なあ いつ生まれるん?」
錠一郎「来週ぐらい…。」
ひなた「来週!? じゃあ すぐやなあ。 楽しみ。 やった やった。」