ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第66話「1965-1976」【第14週】

あらすじ

るい(深津絵里)は悩んでいました。12月に入ってから急激に回転焼きの売り上げが落ちていたのです。その原因はまさかの…。一方、ひなた(新津ちせ)は、憧れの桃山剣之介(尾上菊之助)のサイン会に行くため、空き瓶を拾って酒屋さんに持って行ってお金を貯める「空き瓶貯金」を始めました。お年玉も合わせて、ついに目標の1500円を貯めたひなたは映画村へ。そこで待っていたのは、ある運命的な出会いでした。

66話ネタバレ

賀茂川

錠一郎「あれ? ひなた。」

ひなた「あっ お父ちゃん。」

錠一郎「どないしたんや? 何か 落としたんか?」

ひなた「いや ちゃうねん。 あっ! あった! はあ~!」

錠一郎「うん?」

ひなた「わあ~!」

錠一郎「ジュースの空き瓶?」

ひなた「やった~!」

錠一郎「そんなもん 何すんねん。」

ひなた「フッフッフッ。」

森岡家

ひなた「おじちゃん! また持ってきました!」

森岡「お~ ひなたちゃん。 精出るな。」

錠一郎「こんにちは。」

森岡「あっ どうも どうも。 寒なってきたな。」

錠一郎「いや~ ホンマ。 熱いのん キュ~ッと1杯 欲しなりますね。」

森岡「いや あんた下戸やがな。」

錠一郎「あっ お湯のことです。」

森岡「お湯かい! 熱かんの言い方やで それ。 はい。 ご苦労さん。」

ひなた「ありがとう!」

大月家

玄関前

錠一郎「ふ~ん。 空き瓶一本10円で引き取ってくれんのか。」

ひなた「うん。 昨日は3本持っていって 30円もらったで。」

錠一郎「フフッ すごいなあ。」

ひなた「一升瓶は 一本で30円やて。 また見つけたことないけど。」

錠一郎「そんな稼いで どうする気や。」

ひなた「決まってるやん。 モモケンのサイン会に行くねん。」

錠一郎「おう おう。 それは壮大な計画やな。」

ひなた「お姉ちゃんになるんやから これくらいは自分で稼がんとな。」

錠一郎「偉いなあ ひなたは。」

ひなた「ヒヒッ そやろ~。」

ひなたの部屋

<ひなたは 地道に空き瓶貯金を続けました>

ひなた「ジャラジャラ~。 フフッ。 だいぶ たまった。 あとは お年玉が伊藤博文やったら…! フッ フッ フッ フッ。 やった~!」

居間

(ひなたのはしゃく声)

るい「う~ん…。」

錠一郎「はい。」

るい「ありがとう。 はあ… やっぱり…。」

錠一郎「どうしたん?」

るい「何や えらい 売り上げ落ちてんのよ。 何でやろう…。 12月に入ってから急に…。」

(読経)

テレビ『おかあさんは関係ないわ 私自身の問題です』。

るい「ひなた。 いつまで そないしてんの? 遅刻するよ。」

ひなた「鮎子が気になって。」

るい「はよ行きなさい。」

ひなた「行ってきます!」

るい「行ってらっしゃい。」

(チャンネルを替える音)

テレビ♬『まいにち まいにち ぼくらは てっぱんの うえで やかれて いやになっちゃうよ あるあさ ぼくは みせのおじさんと けんかして うみに にげこんだのさ』

るい「これや! これのせいや!」

♬『はじめて およいだ うみのそこ とっても きもちが いいもんだ おなかの アンコが おもいけど うみは ひろいぜ こころがはずむ ももいろサンゴが て…』

回転焼き屋・大月

一子「子門真人を恨んでも しゃあなあいやないの。」

るい「一子さん…。」

一子「1つ頂戴。」

るい「はい。 ありがとうございます。」

一子「こないなブーム いっときのもんや。」

るい「そやろか?」

一子「私も食べてみたけどな 回転焼きと たい焼きは似て非なるもんやわ。」

るい「そうなん?」

一子「回転焼きは こう… ふんわりしてるやろ?」

るい「うん。」

一子「たい焼きはな 何て言うか こう… 皮がパリッとしてて その口当たりが絶妙なんえ。 あれはあれで おいしいわ。」

るい「どないしよ…。」

一子「あんたなあ こないな あんこ作れるんやから もっと本格的な和菓子屋さんしたら? 1個60円の回転焼き作ってるより もうかると思うけど。」

<それは るいも何度も考えたことでした。 けれど 商売の手を広げる気には どうしてもなれませんでした>

回想

るい「はい どうぞ。」

「ありがとう。 るいちゃん。」

安子「ご苦労さまでした。」

回想終了

<つつましく暮らせれば それでいい。 その時が一番幸せなのだ。 るいは 心のどこかで いつも そう思っていました>

居間

ひなた「明けましておめでとうございます。」

錠一郎「はい おめでとう。」

るい「ひなた おめでとう。」

ひなた「うん。」

(笑い声)

錠一郎「るい。」

るい「はいはい。 じゃあ お父ちゃんから。」

錠一郎「ひなた。」

ひなた「はい!」

錠一郎「はい お年玉。」

ひなた「お父ちゃん。 お母ちゃん。 ありがとう!」

広場

一恵「ひなちゃ~ん。」

ひなた「いっちゃ~ん。 あ~あ 今年も岩倉具視やった。 あ~!」

一恵「やった!」

ひなた「もう…! ううっ。 ん! えっ 何…?」

(笑い声)

ひなた「もう~。 まだ当分 空き瓶拾わんとあかんわ。」

一恵「若い身空で大変やなあ。」

小夜子「頑張って。 ひなちゃん。」

ひなた「うん。 ありがとう。」

小夜子「さっ やろやろ。 ねっ。」

一恵「うん。」

ひなた「あっ! いっちゃんと 小夜ちゃんも 行かへん?」

2人「えっ?」

ひなた「モモケンのサイン会!」

一恵「チャンバラ興味な~い。」

ひなた「あ… やっぱり。」

小夜子「私 行こかな。」

2人「えっ!」

小夜子「ひなちゃんが そないに夢中になる スターさんに会うてみたい。」

ひなた「ホンマに!?」

小夜子「うん。」

一恵「それやったら 私も行くわ。」

2人「えっ!」

一恵「3人で行こう。」

ひなた「うん! やった~! そやけど… ホンマにええの? 1,500円やで。」

一恵「おばあちゃんにもろたお年玉で行ける。」

小夜子「私も。」

ひなた「あ… へえ~。 うん そっか…。 ヘヘッ。」

小夜子「ほら やろう。」

一恵「うん。」

ひなた「うん。」

一恵「いくで。」

ひなた「うん! はっ!」

一恵「うわっ! もう…。」

ひなた「やった~!」

大月家

ひなたの部屋

『暗闇でしか 見えぬものがある。 暗闇でしか 聴こえぬ歌がある。 黍之丞… 見参』。

ひなた「やった!」

太秦映画村

ひなた「あっ モモケン! あ~ かっこええなあ! あ~。」

小夜子「行こ!」

ひなた「うん!」

ひなた「楽しみ。」

一恵「楽しみ。 早く始まってほしい。」

「い~や いや いや 皆様。 大変 長らくお待たせいたしました! 間もなく 間もなく始まりますよ!」

(拍手と歓声)

「ありがとうございます。 皆様のおかげで この『棗 黍之丞』シリーズ 本年も絶好調でございます!」

(拍手と歓声)

「日頃の感謝の気持ちを込めまして サイン会 始めちゃいますよ!」

「待て 待てい!」

「おったぞ!」

「な… 何だ 君たちは。」

「ここで 何をしている! 怪しいやつめ。」

「何を考えてんだ! 誰だと思ってんだ 司会者だぞ ばか野郎 この野郎。 おい 何…。」

虚無蔵「かかれい!」

「お… おい ちょっと やめ…。 おいおい… やめろ~!」

(ざわめき)

ひなた「どうしたん?」

『暗闇でしか 見えぬものがある。』

(歓声)

『暗闇でしか 聴こえぬ歌がある。』

(歓声)

(拍手と歓声)

「黍之丞 見参。」

(拍手と歓声)

ひなた「モモケン! 黍之丞~!」

一同「お~!」

(拍手と歓声)

ひなた「黍之丞!」

(拍手と歓声)

(拍手)

「え~い!」

ひなた「ああ!」

(刃音)

「うあ~!」

ひなた「わあ~!」

「うっ… あ~!」

ひなた「わあ!」

「いや すばらしい!」

(拍手)

「よっ! モモケン 日本一! かっこよくて クラクラしたんちゃいますか? ええ? 本物ですよ。」

ひなた「最高!」

「さあ それでは 桃山剣之介サイン会 始めちゃいますよ!」

(拍手と歓声)

剣之介「ありがとうございます。」

ひなた「楽しみやけど緊張する。」

一恵「ひなちゃん しっかり。」

小夜子「頑張って。」

ひなた「うん。 うんうん。」

「はい 次の方 どうぞ。 お待たせしました。」

ひなた「あ… はい!」

一恵「ひなちゃん 頑張って。」

(鼓動)

ひなた「あ… あの これ うちのお店の回転焼きです! どうぞ!」

剣之介「ありがとう。 頂きますよ。」

ひなた「はあ~! お願いします!」

剣之介「お名前は?」

ひなた「大月ひなたです。」

剣之介「うん。 はい。」

ひなた「あっ ありがとうございます! あの… 私… 侍になりたいです!」

剣之介「えっ? あ… 志を失わなければ きっとなれますよ。」

ひなた「はい!」

ひなた「わあ~。 ああ… かっこよかったなあ。」

小夜子「うん。 それに優しかったね。」

一恵「ホンマ。 私もファンになってしもた。」

ひなた「ホンマ!?」

一恵「うん。」

ひなた「緊張し過ぎて おなかすいた。 なあ?」

(物が落ちる音)

ひなた「落ちましたよ。 落ちましたよ。」

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