あらすじ
時は流れて1983年。ひなた(川栄李奈)は18歳になりました。高校三年生になり、同級生の一恵(三浦透子)も小夜子(新川優愛)も、ガキ大将だった吉之丞(徳永ゆうき)ですらも卒業後のことを考えていましたが、何も考えていなかったひなたは焦るばかり。そんなある日、るい(深津絵里)に回転焼き屋の店番を頼まれたひなたの元に無愛想な客(本郷奏多)がやってきて…。
71話ネタバレ
大月家
居間
♬~(テレビ)
桃太郎「お父ちゃん。 お母ちゃん。 おはよう。」
錠一郎「おう おはよう。」
るい「おはよう。 桃太郎。」
錠一郎「かっこええな。」
るい「初練習の前から汚すよ。」
桃太郎「そうかて…。 頂きま~す!」
るい「は~い。」
錠一郎「前掛けしたらええねん。」
桃太郎「お父ちゃん こぼしてるで。」
錠一郎「え~? うそ。」
るい「はあ~。 もう ジョーさんが前掛けしい。 お姉ちゃんは?」
錠一郎「まだ寝てる。」
るい「え~。 もう…。 ひなた~! ひなた~! はよ起きなさい。 ごはん冷めるよ。」
ひなたの部屋
るい「はあ…。 また増えてる…。」
るい「ひなた! ほら!」
ひなた「う~ん… お母ちゃん…。」
るい「春休みやからいうて いつまでも寝て。 起きなさい。 あんた もう高3
になるんでしょ?」
ひなた「あっしには関わりのねぇこってござんす。」
るい「ひなた! あ~! ちょっ ちょっ ちょっ! ほら ほら ほら。 はい はい はい。」
ひなた「顔洗ってくる…。」
るい「はよ はよ。 よいしょ。」
居間
♬~(テレビ)
ひなた「おはよう。」
桃太郎「おはよう。 お姉ちゃん。」
ひなた「フフッ 桃~。 おはよう。 お父ちゃん。」
錠一郎「うんうん…。 ひなた。 おはよう。」
ひなた「うん? あっ 新しい『朝ドラ』?」
錠一郎「うん。 『おしん』や。」
ひなた「何? 『おしん』て。」
錠一郎「主人公の名前や。」
ひなた「へえ~。 頂きます。」
錠一郎「あ~! 出た。」
テレビ『そのころ…』。
ひなた「うん?」
テレビ『おしんは 一人で北へ向かって…』。
ひなた「わっ 何や このおばあさん。 電車の中で正座してるで。」
錠一郎「ひなた。 この『朝ドラ』は すごいで。」
ひなた「すごいて 何が?」
錠一郎「さっきまでな いろんな人が 入れ代わり立ち代わり出てきて おしんのうわさ話ばっかりしてたんや。」
ひなた「えっ それが どないしたん?」
錠一郎「今 初めて おしんが出てきたんや。」
ひなた「えっ。」
錠一郎「15分近く ヒロインが出てきいひんかったんや。」
ひなた「そら画期的やな。」
錠一郎「これは名作になる気ぃするなあ。」
ひなた「そやけど ヒロインやのに えらいおばあさんやな。」
錠一郎「それが またええんや。」
ひなた「ふ~ん…。」
桃太郎「お代わり!」
ひなた「おしん どこへ向かってんのやろ…。」
るい「ひなた。 はよ食べて支度しなさいよ。」
ひなた「うん? 支度て?」
るい「もう忘れてる…。」
野田家
座敷
るい「結構な お点前で。」
一恵「替茶わんで失礼いたします。」
一子「サッチモも ひなたちゃんも つきおうてくれて ありがとう。」
るい「いいえ。」
ひなた「ごちそうさまでした。」
るい「上手になったねえ いっちゃん。」
一恵「ありがとう。 おばちゃん。」
一子「な~にが。 まだまだえ。 けど まあ 次のお茶会でお点前やるのは これで合格にしとこか。」
一恵「ありがとうございます。」
るい「いっちゃんは 卒業したら そのまま お茶の道に進むん?」
一恵「ううん。 短大受ける。」
一子 ひなた「えっ。」
一子「何で?」
一恵「何でて 別にええやない。」
一子「お母さんの手伝いしてた方が 茶道は身につくえ。」
一恵「お父さんは ええ言うたもん。」
一子「あかん! 短大なんか。」
一恵「何で?」
一子「どうせ 勉強もしんと 遊び歩いて 留年すんのがオチや。」
一恵「何で そんなん分かるん。」
一子「分かるんや。 お母さんには。」
一恵「せやから 何で?」
広場
一恵「もう。 何で お母さんに決められなあかんのよ。」
ひなた「えっ いっちゃん どこの短大行くん?」
一恵「どこでも ええんや。」
ひなた「えっ?」
一恵「ちゃんと考える時間ほしいだけ。」
ひなた「考えるって?」
一恵「ホンマに お茶の先生になるんかどうか。 茶道の家の一人娘やからいうて 勝手に人生決められたないわ。」
ひなた「なるほどなあ…。」
一恵「ひなちゃんは?」
ひなた「えっ?」
一恵「進学するん?」
ひなた「さあ…。」
一恵「『さあ』て。 私ら 3日後には 高校3年生やで。」
ひなた「それは そうやけど…。 あっ! それ! もう出たん?」
一恵「うん。」
ひなた「えっ マヤと亜弓さん どうなった?」
一恵「ここんとこ マヤと亜弓さんいうより アルディスとオリゲルド どうなった いう感じやわ。」
ひなた「借りてええ?」
一恵「うん。」
ひなた「ありがとう。」
大月家
回転焼き屋・大月
「おおきに。」
「やった~。 早く帰って食べよ。」
桃太郎「ただいま。」
るい「お帰り。」
錠一郎「ただいま。」
るい「桃太郎。 野球どうやった?」
桃太郎「楽しかった。」
錠一郎「おにいちゃんらに優しくしてもろたな。」
桃太郎「うん。」
るい「そう よかったな。」
桃太郎「おなかすいた。」
るい「今 新しいの焼くさかい 手ぇ洗といで。」
桃太郎「は~い!」
錠一郎「筋がええって褒められとったわ。」
るい「ホンマ?」
錠一郎「うん。 よかった。 僕やなくて るいに似て。 ベリー 元気やった?」
るい「ああ うん。 すごく…。」
錠一郎「えっ 何?」
るい「いや 一子さんがな いっちゃんに 短大なんか行くな 遊び歩くのがオチや言うて…。」
錠一郎「いやいや… どの口が言うてるんや。」
るい「フフッ ねえ。」
桃太郎「お母ちゃん 回転焼き頂戴!」
るい「ちょっと待っとき。」
桃太郎「はい!」
小夜子「こんにちは。」
るい「小夜ちゃん。」
錠一郎「あ~ いらっしゃい。」
小夜子「5つ くれはりますか。」
るい「は~い。 いつも ありがとう。」
錠一郎「ひなた いてるで。」
小夜子「あっ ホンマですか?」
るい「上がっていき。」
小夜子「お邪魔します。」
るい「は~い。」
ひなたの部屋
ひなた「『マヤ… おそろしい子』。」
小夜子「ひなちゃん。 入ってええ?」
ひなた「うん? 小夜ちゃん? ええよ!」
小夜子「お邪魔します。」
ひなた「ああ。」
小夜子「ごめんね 急に。」
ひなた「ううん。 どうぞ。」
小夜子「ありがとう。」
ひなた「あっ お稽古の帰り?」
小夜子「うん。」
ひなた「おっ 何? ピアノ? 英語?」
小夜子「今日は お習字。」
ひなた「はあ~。 相変わらず いろいろやってんなあ。」
小夜子「うん… けど もうそろそろ 塾だけにしよ思てる。」
ひなた「えっ え… 小夜ちゃんも進学するん?」
小夜子「えっ うん。」
ひなた「四大?」
小夜子「うん。」
ひなた「あ~ みんな いつの間に そんなこと考えてたん。」
小夜子「いつの間にて…。」
ひなた「うん? 桃。 何か用事?」
小夜子「あっ 桃ちゃん。 入っといで。 ああ そっか。 桃ちゃん この春から小学生なんや。」
桃太郎「教えてほしい。」
小夜子「桃ちゃん 入学前から もう勉強してんの? 偉いね。」
ひなた「いや… 桃。 足し算やったら なんぼ何でも お姉ちゃんかて教えられるで。」
小夜子「構へん 教えたげる。」
ひなた「いやいや… そんなん悪いわ。 せっかく遊びに来てくれたのに。」
小夜子「私も勉強になるし。」
ひなた「勉強?」
小夜子「私 将来は 学校の先生になりたい思てんの。」
ひなた「ほう…。」
小夜子「教えてあげる。 どこ?」
桃太郎「ここ。」
小夜子「あっ ここね。 ここは… 『みんなで何匹ですか』。 まず…。」
荒物屋・あかにし
♬~(ラジオ)
ひなた「うわっ もう やめてえな ケチエモン…。 吉之丞。」
吉之丞「冷やかしやったら 帰ってや。」
ひなた「何で 冷やかして決めつけんの。」
吉之丞「貧乏人に帰るわけないやろう。」
ひなた「それも そやな。」
吉之丞「認めんのかい。」
ひなた「ホンマのことやさかい。」
吉之丞「張り合いないなあ。」
ひなた「うん? 店番? 珍しいな。」
吉之丞「親父が 今からやっとけって うるさいんや。」
ひなた「えっ 今からて?」
吉之丞「どうせ 店継ぐんやからて。 けど 俺は そないな気ぃないけどな。」
ひなた「えっ?」
吉之丞「そら そうやろ。 どんどん大きい電器屋出来て 安うに買えんのに こないな店継いで どないすんねん。」
電車
♬~(『おしん』のテーマ音楽)
車内アナウンス『次の停車駅は 帷子ノ辻 帷子ノ辻です』。
太秦映画村
<ひなたが向かった先は 映画村でした ひなたは 時々 この場所に来ます つらい時や 悲しい時 落ち込んだ時 何となく不安な時。 ここに来ると 何だか心が落ち着くのです>
回想
るい「いっちゃんは 卒業したら そのまま お茶の道に進むん?」
一恵「ううん。 短大受ける。」
<侍のように りんとして 弱音を吐かず こうと決めたことは 命懸けで やり遂げる。 そんな生き方に ひなたは憧れていました>
吉之丞「親父が 今からやっとけって うるさいんや。」
ひなた「今からて?」
吉之丞「どうせ 店継ぐんやからて。」
<ただ ひなたは まだ 見つけることができずにいました。 命懸けで やり遂げたいと思える 夢も 目標も…>
ひなた「え… 小夜ちゃんも進学するん?」
小夜子「えっ うん。」
ひなた「四大?」
小夜子「うん。」
回想終了
大月家
回転焼き屋・大月
ひなた♬『遊び疲れた映画村の帰り これで青春も終わりかなとつぶやいて あなたの肩をながめながら やせたなと思ったら泣けてきた』 うっ うっ うっ うっ…。」
るい「ひなた。 あんた 回転焼き抱えて どこ行ってたん?」
ひなた「さあ…。 私は どこへ向かってんのやろ。」
るい「何言うてんの。 ちょっと代わって。」
ひなた「えっ。」
るい「お豆腐 切らしてんの忘れてたんや。」
ひなた「えっ?」
るい「もう焼いた分 売り切ったらいいから。 お願い。」
ひなた「もう~ こっちは それどころやないのに。」
ひなた「♬『京都で生まれた女やさかい 京都の街よう捨てん』 おいでやす。 何個しましょ?」
「おばさんは?」
ひなた「えっ?」
「いつものおばさん いないの?」
ひなた「あっ すいません。 今ちょっと。」
「娘?」