あらすじ
条映太秦映画村で夏休みの間アルバイトをしていたひなた(川栄李奈)は、「破天荒将軍」の撮影現場で女優の美咲すみれ(安達祐実)の機嫌を損ねてしまいます。ひなたを止めようとした大部屋俳優の五十嵐(本郷奏多)は、却(かえ)ってさらに大きなトラブルを引き起こし、撮影は中断。しかし、そんな二人の時代劇愛に心を動かされたすみれは、新たな気持ちで次の仕事に向かうのでした。
79話ネタバレ
大月家
回転焼き屋・大月
「うまそう!」
「おばちゃん はよ頂戴。」
「おばちゃん 1個頂戴。」
るい「はい 1個ね。」
「おばちゃん 1個! 1個!」
るい「ありがとう。 ちょっと待ってね。」
「俺が先や!」
「僕が先や!」
ひなたの部屋
ひなた「どないしよう… 間に合わへん…。」
一恵「毎年 これや。」
小夜子「小学校の時から全然変わらんへんな ひなちゃん。」
一恵「ほら はよしい。 手伝ったげるさかい。」
ひなた「ありがとう…。」
小夜子「そや ひなちゃん。」
ひなた「うん?」
小夜子「結局 何やったん?」
ひなた「何が?」
小夜子「映画村のアルバイト。 時代劇を救うとか何とか。」
一恵「ああ そうそう。」
ひなた「ああ…。 それが いまだに よう分からへんねん。」
るい『ひなた~!』
回転焼き屋・大月
ひなた「何? 虚無蔵さん! すみません。 最後の最後に アルバイト行かれへんかって…。」
虚無蔵「些少だが。 ひと夏の勤め ご苦労であった。」
ひなた「バイト料ですか?」
虚無蔵「いかにも。」
ひなた「こんな 五円玉と五十円ばっかりで?」
るい「文句言うてんと お礼言いなさい。」
ひなた「あ… ありがとうございます。」
虚無蔵「しからば 御免つかまつる。」
ひなた「あっ あの 虚無蔵さん! 楽しかったです 映画村のアルバイト。 好きになりました。 映画村も 時代劇も 前よりも もっともっと好きになりました。」
虚無蔵「さようか。」
ひなた「はい!」
虚無蔵「何よりじゃ。」
<夏の終わりに ひなたは 自分の進むべき道を見つけました。 By the end of the summer, Hinata had found the path she would follow after high school>
居間
♬~(テレビ)
錠一郎「ひなた 遅いなあ。」
るい「何 言うてんの?」
錠一郎「うん?」
桃太郎「お父ちゃん。 今日は お姉ちゃんの初打席や。」
錠一郎「えっ…。 ああ そっか。」
太秦映画村
<高校を卒業したひなたは 条映映画村に就職しました>
<そして 業務部に配属されました>
ひなた「お静かに。 お静かに~!」
「カット~!」
ひなた「お静かに~!」
平岡「お前が うるさいわ。」
<榊原が ひなたの直属の上司です>
俳優会館
舞台裏
ひなた「これです。」
すみれ「げたじゃなくて 草履!」
ひなた「すいません。 こっちか…。」
「いや~。」
(拍手)
すみれ「七寸!」
ひなた「すいません。」
「今日も お暇ですねえ。」
「ねえ? お嬢さん。」
すみれ「もう! あっためておきなさいよ。」
「あっ! あれは… おゆみ? おゆみ~!」
すみれ「は~い!」
(拍手)
舞台
すみれ「な~に? おとっつぁん。」
「おお おゆみ。 あれを見てごらん。」
すみれ「えっ?」
「いや あれだよ あれ。」
すみれ「えっ?」
(笑い声)
「だから あれだって あの…。」
すみれ「どれ?」
<ひなたは 今 いろんな仕事を経験しているところです>
休憩所
♬~(ラジオ)
「ひなたちゃん こっちもお茶頂戴。」
ひなた「はい。 あっ 五十嵐。」
五十嵐「ああ。」
ひなた「えっ? えっ えっ 新選組? うそや。 いつの間に そんな出世したん? えっ 何のドラマ出んの?」
五十嵐「ばか。 相変わらずだな お前は。」
ひなた「えっ 何で? 新選組やろ? 沖田総司やろ? それくらい知ってんのやから。」
五十嵐「よく見ろ。 これは 扮バイの衣装だ。」
ひなた「あ…。」
五十嵐「映画村の扮装案内のアルバイトだよ。」
ひなた「ホンマや。」
五十嵐「そんな見分けもつかないやつが よく ぬけぬけと 映画村の職員を名乗れるな。 こんな ばかを採用するなんて 条映は何を考えてるんだか。」
ひなた「腹立つ~! 見とき いずれ出世して あんたなんか出入り禁止にしたるから。」
五十嵐「愚か者め。 お前が出世する前に 俺がスターになってるわ。」
ひなた「はあ~。 どうぞ。」
「おおきに。」
虚無蔵「文四郎。」
五十嵐「虚無蔵さん お疲れさまです。」
虚無蔵「拙者 今 撮影が終わった。 稽古をするぞ。」
五十嵐「いや… 今 ようやく休憩に…。 すぐ行きます。」
<五十嵐は 大部屋の仕事をしながら 虚無蔵に稽古をつけてもらっています>
虚無蔵「ふん! ふん!」
ひなた「はあ…。 これが済んだら帰れる…。」
榊原「ああ 大月さん。 道場に お茶3つお願い。」
ひなた「あ… はい。 喜んでお持ちします。」
道場
榊原「ありがとうございます。」
ひなた「失礼します。」
榊原「ああ ありがとう。 お客様にお出しして。」
ひなた「はい。 はい。 粗茶でございますが。」
剣之介「ありがとう。」
ひなた「モ…! (心の声)『モモモモモモモモ… モモケ~ン!』
榊原「新入社員の大月です。 私の直属の部下として いろいろ研修中です。」
剣之介「それは それは。」
ひなた「(心の声)『ひい~! ありがとう。 榊原さん。』」
剣之介「うん? 大月?」
付き人「モモケンさん。 『大月』というと…。」
剣之介「回転焼きの『大月』さんのお嬢さん?」
ひなた「あっ はい!」
剣之介「大きくなりましたねえ。」
ひなた「(心の声)『モモケンさん 覚えててくれた…!』」
剣之介「時々 差し入れ用に 付き人に買いに行かせてますよ。」
ひなた「えっ。」
榊原「あ… あの!」
回想
剣之介「ひとまず 100個頂けますか?」
錠一郎 ひなた るい「100個!?」
清子「大月さん! 大月さん。 産まれるんか?」
剣之介「私が送りましょう。 そこに車を待たせてありますから。」
回想終了
榊原「そんなことが…。」
剣之介「あの時 生まれたお子さんは お元気ですか?」
ひなた「あっ はい! おかげさまで 弟は すくすく育ってます。」
剣之介「そう。 よかった。」
大月家
居間
ひなた「それでな 言うたんや。 弟の名前は モモケンさんにあやかろうて お父ちゃんが言うて 桃太郎にしたって。」
錠一郎「ええっ そ… そしたら?」
ひなた「いいお名前ですねって!」
錠一郎「いいお名前ですねって るい!」
るい「ホンマに あの時は お世話になったねえ。」
錠一郎「うん。」
桃太郎「剣太郎の方がよかった。」
ひなた「何 ぜいたく言うてんの。」
錠一郎「えっ それで それで?」
ひなた「何が?」
錠一郎「いや モモケンさんと 何の打ち合わせやったん?」
ひなた「ああ コマーシャル撮るねんて。」
錠一郎「コマーシャル?」
ひなた「うん。 映画村の宣伝 テレビで流すんやて。」
るい「それに モモケンさんが出んの?」
ひなた「そう。 やっぱり『黍之丞』シリーズは 条映の看板ドラマやもん!」
るい「ふ~ん… すごいなあ。」
錠一郎「うん うん うん。」
太秦映画村
「では いきます!」
「よ~い スタート!」
(カチンコの音)
剣之介「映画村でしか 見られぬショーがある。 映画村でしか 買えぬ土産がある。」
「とりゃ~!」
「ていっ!」
「はっ!」
「はっ!」
「とう!」
「はっ!」
「はっ! はっ!」
剣之介「条映太秦映画村 どうぞ お運びください。」
(拍手)
算太「いけ~ん! いけん いけん いけん いけん いけん! こねえなもん 一個も おもろうねえがあ。 どこの でえつなら このCMを企画したんは。」
榊原「あ… 私ですけど…。」
算太「お前か。」
榊原「はい。」
算太「にいちゃん こっち 来い。」
榊原「あっ はい…。」
算太「あんた 何のために このCMを企画したんや?」
榊原「えっ? そら… より多くの人に 来場してもらうために。」
算太「ほう~。 そうじゃろう。 それじゃったら こねえなもんじゃあ おえん。」
榊原「おえん?」
算太「ああ。」
「おい! 何や その男は。」
算太「何やとは何や おらあ! わしゃ ダンゴちゃんの親友じゃ。」
ひなた「ダンゴちゃん?」
剣之介「すいません。 私のことです。」
算太「ダンゴちゃん ここは わしに任しとけえ。」
俳優会館
稽古場
五十嵐「えい! やっ!」
虚無蔵「何とした文四郎。 集中しておらんようだな。」
五十嵐「すみません。 今 モモケンさんの コマーシャル撮りしてるらしくて…。 すみません! 集中します。」
太秦映画村
「はい 本番いきま~す!」
「よ~い スタート!」
(カチンコの音)
剣之介「映画村でしか 見られぬショーがある。 映画村でしか 買えぬ土産がある。」
剣之介「条映太秦映画村。 どうぞ お運びください。」
一同「Come and enjoy the Samurai Park!」
「カット!」
(カチンコの音)
「オッケー! お疲れさまでした~!」
五十嵐「斬新だな…。」
ひなた「五十嵐。」
算太「さすがや。 さすが ダンゴちゃんや。」
剣之介「ありがとうございます。」
ひなた「っていうか 何もん? あの おっちゃん…。」
算太「わしに任してえたら 間違いねんじゃ。」
剣之介「これは 来年の映画の宣伝にも 協力してもらわねばなりませんな。」
算太「映画?」
轟「モモケンさん!」
剣之介「いいじゃないですか 轟さん。 そろそろ映画村の皆さんには 知ってもらったって。 テレビの申し子といわれた モモケンこと 二代目 桃山剣之介。 劇場用映画制作をすることと 相成りました。」
(拍手と歓声)
ひなた「それは 『黍之丞』の映画ですか!?」
剣之介「そのとおり 私の父である先代 桃山剣之介の遺作 『妖術七変化 隠れ里の決闘』。 これを 二代目である私の主演で 再映画化します!」
(拍手と歓声)
剣之介「乞うご期待。」
ひなた「『妖術七変化』…。 あっ…。」