ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第80話「1983-1984」【第17週】

あらすじ

再映画化することになった「妖術七変化!隠れ里の決闘」の敵役をオーディションで選ぶという話が発表され、ひなた(川栄李奈)や五十嵐(本郷奏多)は驚きます。女優の役はないのかと不機嫌になったすみれ(安達祐実)に付き合わされたひなたは、時代劇スターのモモケン(尾上菊之助)と大部屋俳優の虚無蔵(松重豊)の因縁についてのうわさ話を聞かされるのですが…。

80話ネタバレ

剣之介「私の父である 先代 桃山剣之介の遺作 『妖術七変化 隠れ里の決闘』。 これを 二代目である私の主演で 再映画化します!」

(拍手と歓声)

剣之介「乞うご期待。」

ひなた「『妖術七変化』…。 あっ…。」

大月家

回転焼き屋・大月

ひなた「ただいま。」

るい「お帰り。」

<かつて 初代剣之介と 虚無蔵が共演した この映画を 今 二代目健之助が再映画化する>

ひなた「この映画を…。」

<そこには ひなたには想像もつかない 侍たちの思惑が交錯していました>

太秦映画村

「あっ! ちょっと! 写真撮ってもらおう。」

「撮ろう 撮ろう!」

「かっこいいね。」

「写真いいですか? すいません。」

「はい チーズ。」

(シャッター音)

「はい。」

「ありがとうございました。」

「かっこいいわあ。」

五十嵐「楽しんでってください。」

「ちょっと 私も撮ってほしい。」

ひなた「すいませ~ん! 写真よろしいですか?」

五十嵐「はい。」

(シャッター音)

ひなた「愛想ないなあ。」

五十嵐「何で 新選組が 庶民に 愛想よくしないといけないんだ。」

(シャッター音)

五十嵐「勝手に撮るな。」

ひなた「映画村のパンフレット用や 仕事や。」

(シャッター音)

五十嵐「だったら ますます撮るな。」

ひなた「ええやんか。 協力しい。 あ… 逃げるか!」

五十嵐「休憩だ。」

ひなた「ちょっと…。」

五十嵐「撮るなって…。」

俳優会館

休憩所

ひなた「あと一枚だけ。」

五十嵐「しつこいな。」

ひなた「何で~?」

テレビ・矢代『亡き 初代桃山剣之介の遺作となった 『妖術七変化 隠れ里の決闘』 この映画を…』。

会見

八代「二代目剣之介主演で 再映画化することを ここに発表いたします。 メガホンをとりますのは テレビ版『黍之丞』シリーズを 長く演出しております轟 強です。」

「どなたの発案ですか?」

八代「二代目です。」

「大変 失礼ですが 『妖術七変化 隠れ里の決闘』は 先代の主演映画としては 最も興行成績が悪く 批評家からも酷評されていました。 なぜ この作品を選ばれたんですか?」

剣之介「酷評されていたからこそ。 …とだけ申し上げておきましょう。」

八代「え~ この映画の制作にあたり 一つ 告知がございます。」

剣之介「それは 私が。 この映画において 黍之丞の敵役となる 小野寺左近という人物。 この役を演じる俳優を広く募り オーディションで選考いたします。」

休憩所

テレビ・剣之介『年齢 経験は問いません。 我こそはと思う方は 是非 応募してください』。

平岡「年齢 経験問わんということは…!」

園山「大部屋でもええんか?」

岸「千載一遇のチャンスやで これ!」

平岡「おう! ホンマや。 うわ~ サインの練習しとかな あかんやん。」

岸「早い 早い。」

園山「受かる気満々やがな。」

平岡「ホンマに。」

テレビ『高山さん。 意気込み お聞かせください』。

テレビ・高山『大先輩の皆様方に…』。

大月家

回転焼き屋・大月

るい「はい 熱々1つ。」

五十嵐「ありがとうございます。」

るい「おおきに。」

ひなた「ホンマに受ける気なん? オーディション。」

五十嵐「当たり前だろ。」

広場

ひなた「テレビ出てる有名な俳優さんらかて 受けるんやろう?」

五十嵐「多分な。」

ひなた「勝ち目あるん? 万年死体役のあんたが受けて。」

五十嵐「お前でも ミス条映のコンテストに出られただろ。」

ひなた「お前でもって どういうこと!」

五十嵐「虚無蔵さんに特訓してもらうよ。」

ひなた「虚無蔵さん?」

五十嵐「だって 虚無蔵さんの演じた役の オーディションだから。」

ひなた「あ~ そうか。」

一恵「ひなちゃん。」

ひなた「あっ いっちゃん。」

一恵「久しぶり。」

ひなた「久しぶり。」

五十嵐「じゃあな。」

ひなた「ああ また。」

一恵「どっかで…。」

ひなた「思い出さんといて。」

一恵「ああ コンテストで ひなちゃんに斬られてはった人か。」

ひなた「思い出さんといてて。」

一恵「俳優さん?」

ひなた「うん 一応な。」

一恵「ふ~ん。」

ひなた「何? 今日 短大の帰り?」

一恵「うん。」

ひなた「お~。 あか抜けたのう おいち。 フフフフッ。」

一恵「あっ なあ ひなちゃん。」

ひなた「うん?」

一恵「映画村で バイト募集してへん?」

ひなた「えっ?」

俳優会館

休憩所

榊原「へえ~ お父さんが日本舞踊のお師匠さん。 お母さんが茶道の先生。 はあ~ 芸事一家やなあ。」

一恵「それが嫌なんです。 何や 生まれた時から 人生決められてるみたいで。 せやから 短大の間に いろんなこと経験しときたい思て。」

榊原「まあ でも その特技は うちでは役に立つやろから。 僕から人事に 話 通しとくわ。」

2人「ありがとうございます。」

すみれ「ちょっと 榊原。」

ひなた「もはや呼び捨て…。」

榊原「はい!」

すみれ「何で 女優のオーディションはないのよ。」

榊原「えっ?」

すみれ「モモケンさんの映画のオーディションよ!」

榊原「すいません。 その辺りのことは 全く僕の管轄外で…。」

すみれ「何で 女優にはチャンスがないのよ。」

榊原「この企画は ミス条映の売り出しも兼ねてますんで。」

すみれ「ミス条映? フッ 若いだけの大根でしょ?」

一恵「ひなちゃん あの人…。」

ひなた「うん。 美咲すみれさん。」

一恵「美咲すみれ!?」

ひなた「うん。」

一恵「…って誰?」

ひなた「いっちゃん!」

一恵「えっ?」

ひなた「何 言うてんの!」

すみれ「ひなた!」

ひなた「はい。」

すみれ「今日は つきあいなさいよ!」

ひなた「は… はい。」

道場

虚無蔵「ふん! ふん! ふん! うん! ふん! ふん! ふん! ふん!」

そば処・うちいり

すみれ「そもそも ろくな男じゃないのよ。 あの二代目モモケンは!」

ひなた「えっ?」

すみれ「あんた 先代のモモケン知ってる?」

ひなた「モモケンさんのお父さんですよね?」

すみれ「そう。 初代モモケン。 初代黍之丞。 ただし 映画でね。 先代は 映画一筋の人だった。 でも 息子である二代目は これからはテレビの時代だって 先代と仲たがいしたの。」

ひなた「仲たがい…。」

すみれ「そのくせ 先代が亡くなった途端に 二代目モモケンを襲名してさ 今度は 先代の遺作を再映画化だなんて。 全く 調子いいったらありゃしない。」

ひなた「すみれさん… やめてください。 おゆみちゃんが黍之丞の悪口言うの 聞きたくありません。」

すみれ「かわいそうなのは虚無さんよ…。」

ひなた「虚無蔵さん?」

すみれ「条映の中じゃあ 有名な話だけどさあ 本当は あの映画 先代と二代目のモモケンの 親子共演で企画されてたらしいわよ。」

ひなた「えっ?」

すみれ「でも とっくにテレビのスターだった 二代目が それを拒否した。」

ひなた「そうやったんですか…。」

すみれ「それで 先代は 当てつけみたいに 大部屋の一人だった 虚無さんを抜てきしたの。 でも映画は大失敗。 駄作だって言われて 先代は失意のうちに亡くなって 虚無さんは大部屋に逆戻り。 今も虚無さんがいる条映で あれを再映画化して しかも 左近の役を オーディションで選ぶなんて… 虚無さんに対しての 一世一代の嫌みじゃない!」

吉右衛門「あの大抜てきは そういうことやったんですか。 これで 長年の疑問が晴れました。」

ひなた「ケチエモン。」

吉右衛門「誰がケチエモンや。」

ひなた「すいません。 あっ 吉之丞のおじちゃん。 おばちゃん。 おばあちゃん。 こんばんは。」

初美「こんばんは。」

清子「こんばんは ひなたちゃん。」

吉之丞「おい ひなた。」

ひなた「あっ 吉之丞。 オッス。」

吉之丞「そちらのお方は もしかして…。」

ひなた「うん。 美咲すみれさん。 映画村で お世話になってんねん。」

吉之丞「やっぱり おゆみちゃん! サインください。」

すみれ「あ… フフッ。」

初美「吉之丞 失礼やないの。」

すみれ「構いませんよ~! フフッ。」

吉之丞「ありがとうございます!」

すみれ「箸袋?」

初美「いや… 吉之丞! 失礼やない! せめて伝票の裏にしなさい。」

すみれ「それも失礼よ!」

初美「すいません!」

すみれ「私を誰だと思ってるの!? 美咲すみれよ!」

(吉之丞 初美 すみれの騒ぐ声)

ひなた「おじちゃん。 そないにモモケンに興味あったん?」

吉右衛門「何しろ 私は 初代モモケンが デビューした年に生まれた男やさかいな。」

ひなた「え… そうなん?」

吉右衛門「うん。」

ひなた「古い話やなあ。」

清子「あの日は にぎやかやったわ。」

ひなた「にぎやか?」

清子「私が 朝早うに産気づいてしもてねえ。 まだ お豆腐屋さんしか開いてへんような 時分やったわ。」

ひなた「へえ~。」

清子「主人が店先につけっ放しのラジオ置いて 産婆さん呼びに行ったん。」

吉右衛門「そしたら その隙に それを盗みよったやつがおったんや。」

ひなた「え~!」

吉右衛門「けしからん話や。」

清子「まだテレビもない時代で ラジオは貴重やったんえ。」

ひなた「え… 捕まったんですか? その盗人は。」

清子「近所の和菓子屋さんの子ぉの ちょっとした いたずらやった。」

ひなた「いやいや… いたずらで済まへんでしょ。 奉行所へ引っ立てんと。」

清子「大将が 紅白まんじゅう持って お祝いに来てくれはって 主人も それで機嫌直したんえ。」

吉右衛門「何て言うたかいなあ あの店。」

清子「さあ…。 あのお店の名前も あの子の名前も忘れてもたなあ…。」

吉右衛門「あの町の人ら 皆 どないなったやろう。」

清子「戦争やったさかいなあ…。」

吉右衛門「お父ちゃん…。 よう 私のこと かわいがってくれてなあ…。」

清子「ひどいこと言うてしもた。 あれが 今生の別れになるとは思わんと…。」

吉右衛門「お父ちゃ~ん!」

清子「あなた!」

(泣き声)」

すみれ「はい どうぞ。」

吉之丞「ありがとうございます。」

初美「ありがとうございます。 一杯どうです?」

すみれ「え~。 ヘヘヘッ。 まあ。 もう そんあ酔わせてどうする…。」

ひなた「何の話やったっけ…。」

すみれ「あっ いやいや… あ~! うん。 やっぱり 色紙がいいわね。」

初美「ああ。 ねえ 箸袋だなんて…。」

吉之丞「すいません 失礼しました。 いや… なかったから 色紙が…。」

すみれ「よかった。 あって よかった。」

吉之丞「あって よかった。 ありがとうございます。」

俳優会館

道場

五十嵐「虚無蔵さん!」

虚無蔵「文四郎。」

五十嵐「雑巾がけなら俺がしますよ。 虚無蔵さん。 左近の殺陣 教えてください。 絶対に オーディションで勝ち取りたいんです。 お願いします。」

虚無蔵「断る。」

五十嵐「えっ…。」

中庭

五十嵐「くっ…! えい。 えい。 えい。 やっ!」

ひなた「五十嵐。 おはよう。」

五十嵐「おう おはよう。」

ひなた「どないしたん?」

五十嵐「何が?」

ひなた「虚無蔵さんに 左近の殺陣 教えてもらうんやなかったん?」

五十嵐「断られた。」

ひなた「えっ?」

五十嵐「教えるつもりはないって。」

道場

剣之介「虚無さん。 悪く思わないでくださいね。 この度のオーディション。 それじゃあ。」

虚無蔵「モモケンさん。 わしも受けますわ。」

剣之介「えっ?」

虚無蔵「左近役のオーディション。」

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