ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第81話「1983-1984」【第17週】

あらすじ

モモケン(尾上菊之助)と虚無蔵(松重豊)の因縁についての噂話を聞いたひなた(川栄李奈)は、CM撮影の時に会った謎の振付師(濱田岳)に真相を聞こうとするのですが、映画「妖術七変化!隠れ里の決闘」のリバイバル上映のチケットをもらってはぐらかされます。そのチケットを欲しがる五十嵐(本郷奏多)の熱意に押されたひなたは、二人で一緒に映画を見に行くことなり…。

81話ネタバレ

俳優会館

道場

虚無蔵「モモケンさん。 わしも受けますわ。」

剣之介「えっ?」

虚無蔵「左近役のオーディション。」

剣之介「虚無さん。 あの映画のことを 上層部が何て言ってるか知ってますか? 『虚無さんじゃなければ ヒットしたかもしれない』。 受けたところで 恥をかくだけですよ。」

休憩所

♬~(テレビ 『棗黍之丞』のテーマ音楽)

テレビ『条映太秦映画村』。

ひなた「あっ! あのコマーシャル。 出来たんや…。」

剣之介『映画村でしか見られぬショーがある』。 『映画村でしか 買えぬ土産がある』。

『…などなど てんこ盛り』。

剣之介『条映太秦映画村』。

一同『Come and enjoy the Samurai Park!』

算太「Come and enjoy the Samurai Park!」

ひなた「振り付けのおっちゃん。」

算太「何や。」

ひなた「あ… こんにちは 映画村業務部の大月ひなたです。」

算太「あ~ ほうか。 ひなたちゃんいうんか。 あ~ かうぇえらしいのう。」

ひなた「あ… いや~。」

算太「ハッハッハッハッ…。 わしゃあ サンタ黒須じゃ。」

ひなた「サンタクロース?」

算太「あ~ サンタ黒須。 サンタでええ。」

ひなた「あっ サンタさん。 楽しそうですね。」

算太「あっ?」

ひなた「踊ってる時。 フフフフ。 何や こっちまで楽しなります。 フフフ…。 あ… 何ですか?」

算太「いや…。」

ひなた「今日は どないしたんですか?」

算太「あ~。 ダンゴちゃんに呼ばれてきたんじゃ。」

ひなた「ダンゴちゃん…。 モモケンさんのことですか?」

算太「ああ そうじゃ。」

ひなた「何で そない呼ばはるんですか?」

算太「う~ん あいつは昔 団五郎っちゅう名前じゃったんじゃ。」

ひなた「そしたら 団五郎時代からのお知り合いですか?」

算太「ああ。 思えば長えつきあいじゃ。」

ひなた「あの~ ホンマなんですか?」

算太「うん?」

ひなた「『妖術七変化』いう映画 ホンマは 先代と二代目のモモケンさんの 親子共演のはずやったて。 それ モモケンさんが拒否して 怒った先代が 当てつけで 無名の虚無蔵さんを抜てきしたて。 ももけんさんは 虚無蔵さんへの一世一代の嫌みで 左近役をオーディションをするて。 サンタさん。 何か知ってはりますか?」

算太「まあ… これでも見てけえ。」

<それは 初代桃山剣之介の映画の リバイバル上映のチケットでした>

ひなた「うん? どういうこと…?」

別日

♬~(テレビ)

ひなた「なあなあ いっちゃん。 今度の休み 一緒に行こうなあ。」

一恵「嫌やて。 一人で行き。」

ひなた「そうかて 2枚もろたんやもん タダなんやから行こ。」

一恵「タダほど高いもんあらへんわ。 何で そんな当たらへんかった映画 見に行かなあかんの。」

ひなた「いっちゃ~ん…。」

(足音)

ひなた「あっ 五十嵐。」

五十嵐「それ… 俺にくれ。」

ひなた「えっ?」

五十嵐「頼む。」

ひなた「何で あんたにあげなあかんの。」

五十嵐「オーディションに備えて 見ておきたいんだ!」

ひなた「欲しかったら土下座して頼みい。」

一恵「ひなちゃん!」

ひなた「冗談やて。 五十嵐はプライド高いから そんなこと…。」

五十嵐「頼む! このとおりだ! 俺に譲ってくれ~!」

ひなた「ちょっと ホンマにしんといてえな。 私が悪代官みたいやんか。」

五十嵐「頼む!」

電車

ひなた「(心の声)『何で…? 何で こいつと…。 まあ ええか。』」

大月家

回転焼き屋・大月

「ほな 行こか。」

「うん。」

「ものすごくおいしかった。」

「ねえ。」

錠一郎「あっ ありがとうございました。」

「ごちそうさま。」

「ごちそうさまでした。」

るい「おおきに ありがとうございました。 またね。」

「ごちそうさまでした。」

るい「どうも。」

錠一郎「あれ? ひなたは?」

るい「映画やて。」

錠一郎「へえ~。 誰と?」

るい「いっちゃんに断られたからいうて ほら 五十嵐君いうて あの 大部屋の。」

錠一郎「ああ いっつも熱々買う子か。」

るい「そう。」

錠一郎「何 見に行ったんやろ。 えっ!?」

るい「何の巡り合わせやろねえ。」

映画館

場内

五十嵐「んっ。」

ひなた「えっ 買うてきてくれたん?」

五十嵐「お前に借りは作りたくない。」

ひなた「ふん。 チケットのお礼やて 素直に言うたらええやん。」

五十嵐「ふん。 もともとタダ券のくせに。」

ひなた「腹立つなあ。 うん? 自分の分は?」

五十嵐「俺はいらない。」

ひなた「何で?」

五十嵐「何でもだ。」

ひなた「ふ~ん…。」

(開演のブザー)

(鳴き声)

「お侍様! どうか… どうかお助けください! この里は 妖術使いに操られているのです。 どうか!」

口々に「お願いします!」

『暗闇でしか 見えぬものがある。 暗闇でしか 聴こえぬ歌がある』。

『黍之丞 見参』。

(刃音)

「はっ はっ… てやっ!」

「あ…。 ううっ!」

「やっ!」

「があっ! ぐあ…。」

電車

五十嵐「本当 すごかったなあ 殺陣。」

ひなた「うん。 すごかった。」

大月家

回転焼き屋・大月

五十嵐「本当に すごかったなあ 殺陣…。」

ひなた「うん ホンマにすごかった…。」

五十嵐「虚無蔵さん かっこよかったなあ。」

ひなた「うん かっこよかった。」

五十嵐「確かに 映画は訳分からんかったけど…。」

ひなた「うん 訳分からんかった。」

るい「ひなた。 どこ行くん。」

ひなた「あれ?」

るい「ぼ~っとしてるんやから。」

ひなた「ただいま。」

るい「お帰り。」

五十嵐「こんにちは。」

るい「こんにちは。 すいません 娘につきおうてもろて。」

ひなた「逆やわ お母ちゃん。 私が五十嵐を連れてったったんや。」

五十嵐「じゃあな。」

ひなた「えっ? 回転焼き買いに来たんと違うん?」

五十嵐「あ~ またにする。」

ひなた「えっ 何で? せっかく ここまで来たのに。」

五十嵐「いや~ 今日は…。」

ひなた「えっ?」

ひなた「えっ えっ ちょっと…。」

五十嵐「あ~…。」

ひなた「五十嵐! やめてえな こんなとこで死体の稽古なんか…。」

るい「五十嵐君!? 大丈夫? 五十嵐君?」

ひなた「えっ ちょっと 五十嵐? 五十嵐!」

るい「五十嵐君!」

居間

一同「頂きます。」

五十嵐「頂きます。 はあ~。 うん。」

錠一郎「ええ食べっぷりやなあ。 すいません。」

るい「そら 倒れるほど おなかすいてたんやもんねえ。」

ひなた「晩ごはん食べるお金も あらへんのやったら ポップコーンなんか 買うてくれんでもええのに。」

五十嵐「うるさい。」

錠一郎「偉いなあ。 食べるもんも食べんと 稽古に励むやなんて。」

桃太郎「そういうの 『武士は食わねど高楊枝』っていうんやで。」

ひなた「よう知ってんなあ。 桃。」

るい「高楊枝はええけど 体壊したら 元も子もあらへんで。」

五十嵐「はい… 分かってはいるんですけど…。」

るい「1人暮らし?」

五十嵐「はい。」

錠一郎「そやろなあ。 こっちの言葉やないもん。」

ひなた「あっ そう言われたらそやな。」

るい「えっ 今 気付いたん?」

ひなた「あんた どっから来たん?」

錠一郎「ひなた。 それ 野良犬に声かける時のやつや。」

ひなた「ああ。」

五十嵐「東京だよ。」

ひなた「えっ! 生意気に。」

桃太郎「ジャイアンツファン?」

五十嵐「えっ?」

るい「今は 1人暮らし?」

五十嵐「はい。 条映のすぐそばにアパートを借りてます。」

ひなた「えっ 親の仕送りも何もなしに?」

五十嵐「当たり前だ。 時代劇俳優になるって言って 家を飛び出したんだから。 甘えられるわけないだろ。」

錠一郎「偉いなあ。」

ひなた「後先考えてへんだけちゃう?」

るい「ひなた。」

五十嵐「そうだ。 後先考えないくらい 夢中になれうものを見つけたから。 あんおでっかいスクリーンの真ん中で モモケンさんにも誰にも負けない 世界一かっこいい大立ち回りを 俺はしたい。 それが 俺の夢なんだ。」

玄関

五十嵐「ごちそうさまでした。」

ひなた「あっ 五十嵐。 あ… これ。 まあ 残りもんやから 熱々やのうて悪いけど。」

五十嵐「ありがとう。 映画も。」

ひなた「ああ ええて ええて。 タダ券やし。」

五十嵐「俺… 怖くなってきた。」

ひなた「えっ?」

五十嵐「今日の 虚無蔵さんの左近の殺陣 見て。 俺 できるようになんのかな。 あんな すごい殺陣。 オーディションまで どんな稽古したって あんなレベルには…。」

ひなた「何 言うてんの。 あんた アラカンの五十倍なんやろ? モモケンさんにも 誰にも 負けへんのやろう? 受ける前からビビッて どうすんの。 頑張り。 応援してるから。」

五十嵐「うん。」

ひなた「うん。」

五十嵐「おやすみ。」

ひなた「おやすみ。」

ひなた「(心の声)『あれ? 私 今 応援してるって言うた? 五十嵐のこと。 何でやろ…。』」

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