あらすじ
映画村のステージで茶道家役を演じることが決まったすみれ(安達祐実)は、一恵(三浦透子)のもとで茶道の稽古を重ねることに。付き添い役を任されたひなた(川栄李奈)は、稽古後もすみれの愚痴に付き合う羽目となり、五十嵐(本郷奏多)となかなか会うことができません。そんなある日、一恵の細かい指導に対して、いよいよすみれの不機嫌が最高潮に達してしまい…。
85話ネタバレ
野田家
茶室
すみれ「美咲すみれです。 よろしくお願いいたします。」
一子「いや~ ホンマやわ。 テレビで見たことある人や。」
すみれ「フフ… サインしましょか?」
一子「いや それはいりません。」
一恵「お母さん。」
ひなた「始まる前から 機嫌 損ねんといて…。」
一子「去年やったやろか…。 『破天荒将軍』に ゲストで出てはりましたね。」
すみれ「ええ。 珠姫の役で。」
一子「あの時も お茶たててはって。」
すみれ「ええ。」
一子「ぎこちなかったわあ。」
ひなた「おばちゃん…。」
榊原「茶室まで使わせてもろて 助かります。」
一子「ううん 構へん。 そやけど 私は あくまでも一恵の後見やから。」
一恵「えっ。」
すみれ「えっ。」
一子「あんたが責任持って 指導しよし。 失礼します。」
すみれ「何よ! お師匠さんが 教えてくれるんじゃないの?」
<ひなたは 自分が ますます忙しくなることを覚悟しました>
俳優会館
道場
虚無蔵「ふん。 ふん!」
五十嵐「ぐあっ!」
虚無蔵「今日は ここまで。」
五十嵐「はい。 ありがとうございました。」
回想
ひなた「手伝おか? 読み合わせとか。」
五十嵐「ハハッ いいよ。」
ひなた「何でえな。 仕事終わったら 道場行くわ。」
回想終了
野田家
茶室
一恵「はい ふくさをさばいたら 左手でお棗を取って。 清めて。 お茶わんのあった所に置いてください。 お茶わんのあった所 もう少し上です。 もう一度 ふくさをさばいて。 茶しゃくを清めて。 そこじゃ ありません。」
そば処・うちいり
すみれ「何のよ 一恵! 百恵の100分の1が偉そうに!」
ひなた「すいません。」
すみれ「何で 私が映画村のバイトに しごかれなくちゃならないの!?」
ひなた「ホンマすいません。」
すみれ「大体 何なの? この役。 榊原の嫌がらせ?」
ひなた「うん?」
すみれ「タイトルが『京都茶道家殺人事件』で 茶道家の役をお願いしますって言われたら そりゃあ… 主役だと思うじゃないのよ!」
ひなた「うん…。 ふだんは お上品な茶道家が 殺人事件が起きると 刑事顔負けの推理をしそうです。」
すみれ「それが 出てきて早々 お茶会の最中に殺される 茶道家の役だっていうじゃない!」
ひなた「すいません。」
すみれ「どうでもいいけど おいしいわね この焼きみそ。」
ひなた「すいませ~ん。 焼きみそ追加で。」
「は~い!」
すみれ「っていうか あんた 全然 飲んでないわね。」
ひなた「未成年です。」
すみれ「さっさと成長しなさいよ! 気が利かないわね!」
ひなた「すいません。」
俳優会館
道場
五十嵐「くっ!」
虚無蔵「ふん。 ふん。 ふん!」
五十嵐「はっ! あ…。」
虚無蔵「集中しておらんな。」
五十嵐「はあ… すいません。」
虚無蔵「今日は ここまで。」
五十嵐「はい。 ありがとうございました。」
(足音)
五十嵐「はあ…。」
そば処・うちいり
榊原『あっ 大月さん? どないしたん? お茶の稽古行ったっきり 戻ってきいひんし。』
ひなた「すみれさんに うちいりに引っ張ってこられて…。」
榊原『また機嫌悪いんか?』
ひなた「ちょっと…。」
すみれ「ハッ!」
榊原『堪忍な。』
ひなた「それはいいんですけど 会報づくり まだ済んでなくて…。」
榊原『僕がやっとくわ。』
ひなた「あっ いやいやいや! 私がやります。 明日でよろしいですか?」
榊原『うん。 それは構へんけど…。』
ひなた「あ…。 それと… あの…。」
榊原『うん?』
ひなた「まだ道場に 誰か いはります?」
榊原『えっ? いや さっき見た時は 電気消えてたわ。』
ひなた「ああ… そうですか…。」
すみれ「ひなた! いつまで私をほっとくつもり!」
ひなた「すいません ただいま! 失礼します。」
野田家
茶室
一恵「お茶わんは 右手前 左横 右横の三手で。 それは 右手から。 正面は 向こう側に。 それは時計回り。」
ひなた「お点前 頂戴します。」
すみれ「どうぞ。」
一恵「もういっぺん。 もういっぺん。 もういっぺん。 もういっぺん。 もういっぺん。」
ひなた「はあ~。」
そば処・うちいり
すみれ「大体さあ あのまどろっこしい作法は 何のためにあるわけ? お酒みたいにさ とっくりから おちょこに注げば いいんじゃないの 手酌でさ。 フフフッ。」
ひなた「『酒蔵杜氏殺人事件』に 変えてもらいましょか?」
すみれ「いいわね!」
ひなた「冗談です。」
すみれ「あんた 全然ウーロン茶が進んでないわね。」
ひなた「あ… すいません。 抹茶で おなか タポタポで…。」
すみれ「もっと内臓鍛えなさいよ!」
俳優会館
道場
ひなた「はあ…。 そら そうやな…。」
大月家
玄関前
ひなた「はあ…。」
<ひなたは もう何日も 五十嵐に会えずにいました>
野田家
茶室
一恵「もういっぺん。 もういっぺん 最初から。 もういっぺん。」
すみれ「もう嫌! はあ やってらんない!」
一恵「すみれさん!」
すみれ「榊原。」
ひなた「え…。」
榊原「すみれさん。 稽古を続けてください。」
すみれ「嫌よ。」
榊原「京都茶道家殺人事件」は あなたのための企画です。」
すみれ「はあ? 主演でもないのに? 大体 映画やドラマならともかく たかが映画村のステージよ? 客の半分 子供よ? お茶のお作法なんて本気でやったからって 誰が見てるっていうのよ!」
榊原「僕が見てます! ちゃんと僕が見てますから。 お願いします。 稽古を続けてください。」
すみれ「撮影所の重役ならともかく 映画村の平社員が見てたからって 何になるのよ!」
一恵「すみれさん。」
ひなた「すみれさ…。」
すみれ「何よ!」
一恵「榊原さんは ここが すみれさんの正念場や思てはるんです。 それは つまり 榊原さんにとっても 正念場なんやと思います。 せやから 私も 未熟ながら お手伝いさしてもろてはるんです。」
榊原「野田さん…。」
一子「はい そこまで。 みんな 座りよし。」
俳優会館
道場
五十嵐「あっ… すみません。 もう一回お願いします。」
虚無蔵「今日は ここまで。」
五十嵐「でも まだ時間が…。」
虚無蔵「雑念のある限り いい殺陣はできん。」
五十嵐「あ…。」
野田家
茶室
一子「さあ。 落ち着いたか? お茶はなあ 作法の正確さでもない。 仕事の成功の道具でもない。 相手のこと思う気持ちや。 それだけのもんや。」
ひなた「(すすり泣き)」
一子「ひなたちゃん? 何で あんたが泣くん。」
ひなた「(すすり泣き)すいません。 失礼します。」
俳優会館
道場
ひなた「五十嵐!」
大月家
玄関前
五十嵐「はあ…。 何なんだよ お前。 いつも うろちょろ 邪魔ばっかりするくせに 映画が決まった途端 姿くらませやがって。」
ひなた「(すすり泣き) 映画村のステージに すみれさんの出番が決まって…。 茶道のお稽古に つきあうように榊原さんから言われて…。 毎日 いっちゃんちの茶室行って 抹茶がぶがぶ飲んで…。 すみれさんの愚痴聞かされて…。」
五十嵐「ちゃんと毎日 顔見せろ。 寂しいだろ。 ばか。」