ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第88話「1984-1992」【第18週】

あらすじ

ひなた(川栄李奈)が企画した映画村のお化け屋敷は、大成功を収めます。でも、落ち武者の幽霊を演じた五十嵐(本郷奏多)は、喜ぶどころか不満げな様子。大部屋俳優のままではだめだと焦りを募らせます。もどかしさを抱えるひなたはある日、上司の榊原(平埜生成)が激しく動揺しているところに遭遇。なにかと思いテレビを観ると、そこではすみれ(安達祐実)の結婚記者会見が行われていて…。

88話ネタバレ

俳優会館

休憩所

ひなた「一秒でも長く 文ちゃんと一緒にいたい。 文ちゃんと暮らしたい。」

五十嵐「俺は…。 今はまだ 結婚できない。 大部屋のままじゃ駄目なんだ。」

ひなた「はあ… じゃあ あれは何やったん?」

回想

五十嵐「拙者 家禄も僅か。 されど…。 ついてきてくれるか。」

回想終了

ひなた「お金がなくても 仕事がなくても 私を幸せにする。 そやから ついてきてほしいて。 ハハッ 私 平気やで。 お金なんかなくても 仕事なんかなくても 文ちゃんといられたら それだけで…。」

五十嵐「ひなた。 分かってほしい。 俺は 侍でいたいんだ。」

大月家

居間

(テレビをたたく音)

桃太郎「何で…。」

(テレビをたたく音)

ひなた「やかましいなあ。 何なん? さっきから。」

桃太郎「そうかて テレビが…。」

(テレビをたたく音)

るい「どいてみ。」

(テレビをたたく音)

桃太郎「あっ! 来た!」

テレビ『ワンナウト 一塁で…』。

桃太郎「えっ…!」

るい「あれ?」

桃太郎「早う。」

ひなた「もう やかましいて。」

吉之丞「よいしょ。」

(テレビの音)

桃太郎「直った! よっしゃ よっしゃ 来た来た。 まだ星稜負けてる!」

るい「ありがとう 吉之丞君。」

吉之丞「いえ。」

ひなた「すごいやん 吉之丞。」

吉之丞「何が?」

ひなた「あんた こないな特技があったんやなあ。」

吉之丞「特技て。 職業や。」

錠一郎「まあ まあ まあ すいかでも食べ ほら。」

吉之丞「すんません。 呼ばれます。」

るい「回転焼きも食べるでしょ?」

吉之丞「ありがとう おばちゃん。」

るい「お盆やのに来てもろて 助かったわあ。」

ひなた「てっきりケチエモンが来る思てたわ。」

錠一郎「吉右衛門さんや。」

吉之丞「お父ちゃん ぎっくり腰でな。」

錠一郎「えっ 大丈夫なん?」

吉之丞「昔 ええ年して チャンバラして 腰痛めてから 癖になってしもてるて おばあちゃんに笑われてたわ。」

るい「吉之丞君。 これ お父さんにお見舞い 持ってってね。」

吉之丞「いや おばちゃん これは ちょっと多すぎるて。」

るい「ええから。」

吉之丞「え…。」

小夜子『こんにちは。』

るい「あら 小夜ちゃん。 いらっしゃい。」

ひなた「小夜ちゃん。」

小夜子「ひなちゃん。 おばちゃん あんこだけ売ってもろていい?」

るい「ええよ。 おはぎ作んの?」

小夜子「うん。 おばあちゃんにお供え。」

るい「それじゃあ 上がって。」

小夜子「ありがとう。」

小夜子「お邪魔します。」

錠一郎「ほら 小夜ちゃんも すいか食べ。」

小夜子「ありがとう。」

ひなた「どうぞ。」

小夜子「あれ? 赤螺君。」

吉之丞「おう。 藤井 久しぶりやな。」

小夜子「家の仕事してるんや?」

吉之丞「いっぺん就職したけどな。」

小夜子「あ~ うちのクーラーも調子悪いんえ。」

吉之丞「見に行ったろか?」

小夜子「ホンマ? お母さん喜ぶわ。」

桃太郎「うそやろ!? えっ… ツーアウト 三塁やで!? 9回表やで!? 敬遠はないやろ!」

小夜子「モモちゃん どないしたん?」

桃太郎「どないもこないも… うわっ! 小夜ちゃん!」

小夜子「えっ。」

桃太郎「えっ いつの間に!?」

ひなた「今頃 何言うてんの 桃。」

小夜子「甲子園 どないかしたん?」

桃太郎「あ… 松井が ずっと敬遠されてるんや。」

小夜子「ええ?」

桃太郎「5打席連続やで。」

ひなた「何で そんなことするん?」

桃太郎「打たれたら困るからに決まってるやろ。」

錠一郎「松井君て 高3やろ?」

桃太郎「うん。」

るい「かわいそうやねえ。 最後の夏やのに。」

小夜子「けど 明徳の子かて かわいそうやわ。 最後の夏に こんな…。」

吉之丞「ピッチャーかて 勝負したいよなあ。」

テレビ『胸の内は いかに…』。

ひなた「私 一秒でも長く 文ちゃんと一緒にいたい!」

「ボール」

ひなた「文ちゃんと暮らしたい。」

「ボール」

「ボール。 フォアボール。」

ひなた「文ちゃん 何で 私のこと敬遠すんの…!」

ひなたの部屋

ひなた「私かて ちょっとずつ ためてるんやで。 文ちゃん…。」

玄関前

回想

小夜子「明徳の子かて かわいそうやわ。 最後の夏に こんな…。」

回想終了

桃太郎「(心の声)『かわいそうやわと 君が言ったから 8月16日は… 8月16日は あ~ 小夜ちゃん 好きや~! 記念日。』」

俳優会館

廊下

一恵「ひなちゃん おはよう。」

ひなた「あれ いっちゃん おはよう。 今日 『水無月ぼたん』の撮影やったっけ?」

一恵「ううん。 今日は 養成所のお稽古。」

ひなた「へえ~。 もう すっかり大先生やなあ。」

一恵「やめてえな。 榊原さん。 おはようございます。」

榊原「ああ…。」

ひなた「これ 会報出来ました。」

榊原「ああ ありがとう。」

ひなた「どないしたんやろ。」

一恵「何やろ?」

ひなた「うん?」

休憩所

ひなた「甲子園やろか。」

テレビ・凛太朗『9年前 『破天荒将軍』に ゲスト出演していただいた時が最初です』。

ひなた「えっ…。」

『それから交際を続けてたんですか?』。

凛太朗『いえ…』。

すみれ『私が主演する 『茶道家 水無月ぼたんの事件簿』に ゲストに出ていただいて 久しぶりにお会いしたんです』。

『お~。 めちゃくちゃ普通ですね』。

『もうちょっと 破天荒なエピソードありませんかね?』。

凛太朗『アハハッ そんなこと言われてもねえ。 ハッハッハッハッハッ』。

太秦映画村

お化け屋敷

五十嵐「うおっ!」

虚無蔵「落ち武者の霊が 腰を抜かしてどうする。」

五十嵐「虚無蔵さん…。 扮装はしないんですか?」

虚無蔵「拙者は 扮装せずとも 暗闇に潜んで 現れればよいと言われておる。」

五十嵐「あ… そのままでも 怖いからですかね。 だから 怖いですって。」

虚無蔵「近頃 道場に姿を見せぬな。 鍛錬は1日怠れば1日分 3日怠れば3日分 それまで身につけたものを失う。 日々 鍛錬し いつ来るとも分からぬ機会に備えよ。」

五十嵐「いつ来るとも分からないって…。 永遠に来ないかもしれない。 そういうことですよね?」

虚無蔵「いかにも。」

五十嵐「もう7年ですよ? 『妖術七変化』に 伊織の役で出てから もう7年。 いまだに あれ以上の役を もらったことがありません。 ドラマやステージで ただ斬られて死んだり 時代劇の扮装して 道案内したり 落ち武者の恰好して カップルや 親子連れを キャ~キャ~言わせたり。 こんなの いつまで続くんですか?」

虚無蔵「拙者は 40年 斬られ続けておる。」

五十嵐「俺には理解できません。 虚無蔵さんだって 一度は 強いライトを浴びたんじゃないですか。 俺なんかより もっと強いライトを。 そこから 30年近くでしょ? 何で耐えられるんですか? こんな屈辱に。」

虚無蔵「文四郎。 傘張り浪人とて 刀を携えておる限りは侍だ。 あべこべに いくら刀を振り回しておっても いとしいおなごを泣かす者は 真の侍にあらず。 おひなを泣かすな。 泣かせたら その時は…。」

大月家

回転焼き屋・大月

ラジオ『大会11日目の3試合 県立岐阜商業 対 愛知の東邦』。

森岡「来年は ももたろさんの高校も 出られたらええなあ。」

錠一郎「そうですねえ。」

森岡「今日も部活か?」

錠一郎「ええ。 盆休み以外は毎日。」

森岡「はあ~ 大したもんやなあ!」

るい「ただいま~。」

錠一郎「ああ お帰り。」

るい「よかったわあ。 牛肉 安うなってて。」

森岡「うわっ えらい豪勢やな。」

錠一郎「ああ 桃太郎の誕生日なんです。」

森岡「へえ~!」

るい「森岡さん 後でビール1ケース 届けてくれはる?」

森岡「えっ。 誰が飲むんや。」

錠一郎「あっ 今日 五十嵐君が来るんです。」

森岡「五十嵐君…? あっ ひなたちゃんの彼氏か!」

るい「そうです。」

森岡「弟の誕生祝に来るやなんて これはもう いよいよ! 近々やなあ!」

錠一郎「いや~ まあ どうですかねえ。」

森岡「いや そうや。」

錠一郎「アッハハッ。」

俳優会館

休憩所

ラジオ『甲子園球場で行われている 全国高校野球 11日目の今日は 3回戦3試合が行われ 3校がベスト8に名乗りを上げました。 第1試合の奈良の天理高校 対 山梨の東海大甲府高校は 7対4で 天理高校が勝ちました』。

回想

「あ~! う~ はっ うりゃ~!」

剣之介「えいっ!」

「あ…。 あ~… やあ~!」

「キャ~」

「うあ~!」

「キャ~」

五十嵐「あ~!」

廊下

すみれ「お疲れさまでした。」

「お疲れさまでした。」

一恵「お疲れさまでした。」

凛太朗「すみれ。」

すみれ「ああ 凛太朗。 そっちも もう撮影終わったの?」

凛太朗「うん。 迎えに来たよ。」

すみれ「あら うれしい。」

凛太朗「あっ 一恵ちゃん。 今日も すみれの茶道指導 ありがとう。」

一恵「とんでもない。」

すみれ「じゃあね。 また次の撮影で。」

一恵「お疲れさまでした。」

すみれ「お疲れさま。 ありがとう。 あっ お疲れさま。」

榊原「お疲れさまでした。」

休憩所

ひなた「ごめん 文ちゃん。 遅なってしもた。 あれ? 文ちゃ~ん?」

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