ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第89話「1984-1992」【第18週】

あらすじ

ひなた(川栄李奈)は、弟の桃太郎(青木柚)の誕生日会になかなか現れない五十嵐(本郷奏多)のことを心配します。その頃、一人でやけ酒をあおっていた五十嵐は、同じ店ですみれ(安達祐実)とその夫に遭遇。酔いに任せて絡んでしまい、騒動を引き起こしてしまいます。後日、監督に呼ばれた五十嵐は、今回の件の責任を取るよう言われ…。

89話ネタバレ

大月家

居間

ひなた「ただいま。」

るい「お帰り。 あれ? 五十嵐君は?」

ひなた「来てへん?」

るい「えっ?」

ひなた「もしかして 先 来てるか 思たんやけど。」

るい「来てへんよ。 電話したら?」

ひなた「会社から何べんもかけた。」

るい「おかしいねえ。」

ひなた「プレゼント買いに行ったんかなあ…。」

そば処・うちいり

凛太朗「おいしいなあ この焼きみそ。」

すみれ「でしょ でしょ? 冷酒に合うのよ。」

凛太朗「うんうん!」

初美「ちょっと あんた。 あれ 破天荒諸郡?」

吉右衛門「あっ ホンマや。」

初美「色紙 買うてこよか。」

すみれ「すみませ~ん。」

「は~い。」

すみれ「焼きみそ1つ追加で。」

五十嵐「お代わり。」

「は~い。」

すみれ「あら 五十嵐じゃない? 何 どうしたの? 一人で? あっ ひなたと待ち合わせ?」

「すみません。 サインいいですか?」

凛太朗「もちろん。」

すみれ「ねえ。 もしよかったら 向こうで一緒に飲む? 何か悩んでることあるんだったら 凛太朗に話してみたら?」

「すみません。 これにもいいですか?」

すみれ「凛太朗 知ってるでしょ? 大部屋の…。」

五十嵐「『世を治めんがため 天荒を破る。 人呼んで…』。 ファサ~。 『破天荒将軍』。 あ~ あんたさ どういう気持ちで言ってんの あれ。 フッ。 いっつも 武家屋敷の広間から庭に下りてきてさ 代わり映えのしない殺陣で 悪党ども斬って。 全員死んでんのに 誰に向かって言ってんの? あのせりふ。 お空に向かって言ってんの? アハハハハ…。」

吉右衛門「言いよったで…。」

五十嵐「あ~あ~ やってて ばかばかしくなんない?」

すみれ「ちょっと五十嵐。」

五十嵐「いい商売だよなあ。 何にも新しいことやんなくても そこに安住してりゃあ 手に入る。 金だって 女だって。 まあ 女って言っても 二流の女優だけど ハハハッ。」

大月家

居間

(呼び出し音)

ひなた「どないしたんやろ…。」

太秦映画村

お化け屋敷

ひなた「間もなく開場で~す。」

一同「は~い。」

ひなた「お願いしま~す。」

「お願いします。」

「遅なってすんません。」

「遅いで…。」

「スタンバイしよか。」

「おう。」

荒物屋・あかにし

錠一郎「こんにちは。」

清子「ああ 大月さん。 こんにちは。」

錠一郎「え~っ 単三電池4つください。」

清子「はいはい。」

初美「はい ただいま。」

清子「買わはる?」

錠一郎「えっ?」

清子「それ 2年前の売れ残りなんえ。」

錠一郎「2年前。 それは長いですねえ。」

清子「そういう大きいもんは 皆さん 町の大きい電器屋さんで 買わはるさかいねえ。」

錠一郎「ああ そっか。」

清子「安うしときますえ。」

吉右衛門「お母ちゃん。 勝手に値下げしたらあかんで。」

清子「ええやないの。」

吉右衛門「大体 大月さんが CDみたいなもん買うて聴くわけ あらへんやろ。」

初美「大月さん。 ほあら あの ひなたちゃんの彼氏 い…。」

錠一郎「ああ 五十嵐君?」

初美「あっ そうそう その子。 大丈夫なん?」

錠一郎「えっ 大丈夫って?」

吉右衛門「おい。 いらんこと言うな。」

初美「そやかて…。」

俳優会館

中庭

すみれ「あっ ひなた。」

ひなた「あっ すみれさん。 おはようございます。」

すみれ「もしかして五十嵐 捜してる?」

ひなた「えっ? 見はりましたか? どこで?」

会議室

五十嵐「申し訳ありませんでした。」

轟「ああいう気分の夜もあるやろ。 …って凛太朗さんは言うてくれてはる。 『自分のことだけやったら こらえたんやけど』って。」

五十嵐「すみません。」

畑野「けど そこは将軍様や。 寛大なお裁きを下してくれはった。」

轟「凛太朗さんも お前の殺陣を買うてくれてはるんや。 けどな わしらは条映として 『破天荒将軍』の演出として 全くの不問に付すいうわけには いかんのや。」

五十嵐「はい。」

轟「この先一年 『破天荒将軍』には出さん。 よそのドラマも 凛太朗さんに気ぃ遣て お前を外す監督がいてるかもしれん。」

廊下

五十嵐「はあ~。」

野田家

茶室

榊原「ちょっとお茶飲みませんかって 喫茶店でも行くのか思ったら…。」

一恵「私 立派や思います。 榊原さんのこと。」

榊原「えっ?」

一恵「落ち目やった すみれさんに 辛抱強う仕事作って。 シリーズ持つとこまで 復活させはって。 そやから… 何か 見てて つらうて。」

榊原「えっ…。 そ… それは…。 バレてたいうこと?」

一恵「バレバレです。」

榊原「はあ… おいしい。」

一恵「ありがとうございます。」

榊原「野田さん。」

一恵「はい。」

榊原「僕は満足なんや。 すみれさんが機嫌よう笑てくれはったら それで。」

一恵「榊原さん…。 あほですね。」

榊原「はっきり言うたなあ。」

一恵「でも… みんな あほですよね。 人を好きになるやなんて あほやからやと思います。 傷ついたり 傷つけられたりしながら… それでも… 人を好きになるんやから。」

俳優会館

休憩所

五十嵐「俺…。 役者やめるよ。 そんな大きくないけど 親父が会社経営してて。 一番上の兄貴が副社長やってる。 そこで働こうと思う。 だから ひなた。 一緒に東京に帰ってほしい。 ひなたと結婚しようと思ったら…。 それしかないんだ。」

ひなた「何で? 何で そんなこと言うの? 私 言うたやんか。 待ってるって。 文ちゃんが納得できるまで待ってるって。」

五十嵐「来ないんだ。 そんな日は来ない。 ここにいる限り。 一番大事なものは何かって考えた。 ひなたなんだ。 かなわない夢なんかじゃなくて。 ひなたと一緒にいることが 俺にとっての…。」

ひなた「うそ言わんといて。 私を言い訳に使わんといて。 夢から逃げる言い訳に。 文ちゃんの夢は 私の夢や。 文ちゃんは アラカンの五十倍 モモケンさんの百倍 すごい時代劇スターになれる。 そうなる人や。」

ひなた「そのためやったら 私 何でもする。 どんな苦労かて 耐えてみせる。 文ちゃんと一緒やったら どんなことかて乗り越えられる。 私かて 結婚資金ためてんねん。 定期で積み立てしてんのやで。 なっ? 一緒に頑張ろ。 文ちゃん。」

五十嵐「ひなた。 ひなた。」

ひなた「文ちゃん。」

五十嵐「どうして お前は そんなばかなんだよ。」

(すすり泣き)

五十嵐「ひなた…。」

(すすり泣き)

五十嵐「ひなた。」

ひなた「どないしたん 文ちゃん。」

(すすり泣き)

五十嵐「俺… ばかで 明るいお前が大好きだ。」

ひなた「フフッ。 私も 文ちゃんが好き。」

五十嵐「だから もう…。 一緒には いられない。」

ひなた「文ちゃん?」

五十嵐「ひなた。 もう 傷つけたくない。 傷つきたくない。 ひなたの明るさが ひなたの放つ光が…。 俺には まぶしすぎるんだ。」

大月家

回転焼き屋・大月

るい「ひなた お帰り。」

錠一郎「ああ お帰り。」

るい「どないしたんやろう。 何か知ってんの?」

ひなたの部屋

(泣き声)

ひなた「文ちゃん…。 ううっ… 文ちゃん…。」

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