ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第8話「1939-1941」【第二週】

あらすじ

砂糖が配給制になり、「たちばな」の菓子作りも打撃を受けていました。そんな中、金太(甲本雅裕)から安子(上白石萌音)に砂糖会社の息子との見合い話が持ちかけられます。突然の話に戸惑いを隠せない安子。家族の幸せを願う気持ちと稔(松村北斗)への思いとの間で、安子の心は大きく揺らいでいました。小しず(西田尚美)の心配をよそに、安子は翌朝、置き手紙を残し小さなかばんひとつで始発の汽車に乗り込んだのでした。

8話ネタバレ

橘家

お菓子司・たちばな

ラジオ『政府は 首相官邸で 第14回 総動員審議会を開き 生活必需品の統制などに関する 6つの勅令案を諮問することを 決定しました』。

安子「あっ お父さん。 なあ 今日 おはぎもあんころ餅も これで おしまい? えろう少ねんと違う?」

金太「安子。 おめえ 見合いせえ。」

安子「へっ?」

居間

金太「うちと取り引きしょおる 砂糖の生産会社の次男さんじゃ。 おめえも 年が明けりゃあ 16じゃ。 ええ頃会いじゃろう。」

安子「ごめんなさい。 あんまり急で…。」

杵太郎「安子。 はっきり言うて こりゃあ政略結婚じゃあ。」

金太「なっ お… 親父! 何ゅう人聞きの悪いこと。」

杵太郎「このままじゃ 思うような菓子が作れん。 そねんなる前に 砂糖の会社と 手ぇ結んどこういう魂胆じゃ。」

金太「魂胆言うな。」

ひさ「まあ 金太と小しずさんだって 似たようなもんじゃった。」

安子「えっ?」

ひさ「小しずさんは 小豆農家の娘さんでなあ。 このとおり べっぴんさんじゃし 気も利くし こりゃあ ええわいと おじいちゃんが金太に勧めたんじゃ。」

杵太郎「こいつも 初みゃあ 誰が 見合いなんかするか 言ようったけど 会わせてみたら まあ 一目でポ~ッとなってしもうて。」

金太「い… い… 今 そねえな話ゃあ ええじゃろうが!」

ひさ「ちなみに おじいちゃんとおばあちゃんは 恋愛結婚じゃ。」

杵太郎「うん!」

金太「その話もいらん! 安子! ええか よう聞け! おめえは かわいい一人娘じゃ。 なんぼ 店のためじゃ言うても しょうもねえ男に やる気ゃあねえ! お人柄は 申し分ねえ。 こんな人が婿に来てくれて おめえと 店を2人で もり立ててくれたら こねん頼もしいこたあねえ! のう 小しず。 のう!」

小しず「いや…。」

お菓子司・たちばな

小しず「ごめんな…。 急に あねえなことに なってしもうて。」

安子「ううん。」

小しず「安子。 お願えじゃから 無理ゃあせんといてちょうでえよ。 みんな 安子に 幸せになってもれえてえ思ようる。 じゃけど 何が安子の幸せなんかは 安子にしか分からんのじゃからな。」

安子「うん。」

安子の部屋

ラジオ『「基礎英語講座」の時間です。 講師の堀 英四郎です』。

小しず「安子~。 ラジオ始まっとるよ。 入るよ? 安子…。」

安子『かならず今日中に帰ります 心配しないでください 安子』

水田屋・とうふ

小しず「お見合いのこたあ 無理ゅうせんでもええ言うたんよ。 安子の幸せが一番なんじゃから言うて。」

きぬ「あほじゃなあ おばちゃん。 そねえなん 余計 安子ちゃん 追い詰めるだけじゃが。 大丈夫じゃ。 夜にゃあ ちゃんと帰ってくらあ。」

小しず「きぬちゃん。 雉真 稔さんいう人のとこ?」

きぬ「何じゃ 知っとったんかな。」

小しず「その人んとけえ行ったんかな? 大阪の。」

きぬ「多分…。」

列車

(汽笛)

おぐら荘

玄関

「いろはにほへと ちりぬ!」

「ぬすと!」

「待て~!」

くま「誰や? あ~ もう また鈴木君の女友達かいな もう。 しゃあないな あの子は 取っ替え引っ替え。 もう。 あのな 悪いこと言わへん。 やめときて。」

安子「あ… あの…。」

くま「そやけど あんた 鈴木君の好みにしたら また・・・ ええ? 地味やな これ。 それに また 顔がおぼこいなあ。 あっ そうか。 あの気ぃの きっつい女にひかかれて 顔に ばんそうこう貼んのん懲りたんや。 フッフッフッフッ。」

稔「ただいま帰りました。」

くま「お帰り。」

稔「安子ちゃん?」

くま「ええっ! 雉真君の女友達やったん? い~やっ 珍しや。」

雉真「はあ…。」

くま「いや~ でも よかったわあ。 あんたは あんたで 勉強ばっかりしてるやろ。 もう 私…。」

稔の部屋

稔「どねんしたん? 急に。」

安子「配達で…。」

稔「配達?」

安子「商店街の えっと… 荒物屋の 清子さんの親戚が こっちで結婚されて。 紅白まんじゅうを届けるように 頼まれたんです。 ハハッ せっかくじゃから 稔さんの住んどる町 見てみとうて。」

稔「そう。 何もねえとこじゃろ。」

安子「あ… お手紙に書いてあったとおり。 ヘヘヘッ。 しゃあけど 稔さんには会えんと思うてました。」

稔「ああ 今日は 午後の授業はねんじゃ。」

安子「そうですか。」

稔「ああ。」

安子「よかった。」

稔「何時の汽車で帰るん?」

安子「夕方… 5時半ごろのつもりです。」

稔「ああ…。」

映画館

『暗闇でしか 見えぬものがある。 暗闇でしか 聴こえぬ歌がある。』

(拍手)

口々に「モモケン!」

『黍之丞 見参!』

(拍手)

『て~い てやっ! うわっ!』

『うっ! うわっ…。』

『おい 行け!』

『おりゃ!』

(歓声)

『ううっ てやっ!』

『てめえ! あっ!』

(拍手と歓声)

食堂

稔「よかったよ やっと映画の約束が果たせて。」

安子「フフフッ はい。 モモケン 勇ましかったですねえ。」

稔「なあ 本当によかったんかな。 こんな学生用の食堂で。」

安子「稔さんが ふだん行きょおる場所がええんです。 う~ん フフフッ おいしい!」

河原

安子「わあ… 本当に似とるなあ 旭川に。」

稔「そうじゃろ。」

安子「あっ 本当じゃあ。 潮の香りがする。 It smells like the ocean.」

稔「おっ!」

安子「フフフッ 『基礎英語講座』で覚えました。」

稔「本当に毎日 聴きょうるんじゃな。 日が暮れたら寒いよ。 Sunset. A beautiful sunset. Do you see that beautiful sunset?」

安子「Yes, I do. I see a beautiful sunset over the river.」

稔「じゃあ 気を付けて帰ってね。」

安子「あっ…。」

稔「ああ 着ていって。 それじゃあ またね。」

安子「はい。 ありがとうございました。」

列車

(汽笛)

(汽車の走行音)

安子「(すすり泣き)」

駅員「岡山 岡山。」

安子「(すすり泣き) すんません すぐ降ります。」

安子「何で…?」

稔「そねん 小せえ かばん一つで 配達もねえじゃろう。 何で泣いてるん? 安子ちゃん。 何があったん?」

安子「(泣き声)」

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