ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第96話「1992-1993」【第20週】

あらすじ

家族を連れて岡山の雉真家に帰ったるい(深津絵里)は、いなくなる直前の母の様子を雪衣から聞き、ますます疑問を深めます。その夜、ひなた(川栄李奈)は部屋の片隅に家族写真が飾られているのを発見。写真を通して初めて祖父や祖母の姿を見て、家族の歴史に思いをはせるのでした。数日後、錠一郎(オダギリジョー)はるいを連れてある場所に向かうのですが…。

96話ネタバレ

雉真家

客間

雪衣「算太さんと たちばなを立て直す。 あのころの安子さんは その一心じゃった。」

るい「雪衣さん。 私の叔母さん。」

雪衣「よう来られたなあ。 ありがとね。」

錠一郎「あっ いえ。 こちらこそ 大勢で押しかけまして…。」

雪衣「今夜は ごっつぉにしますから。 楽しみにしょおってよお。 フフッ。」

錠一郎「あの通帳 返しに来はったんやな。 伯父さん。 あのクリスマスに。」

回想

算太「るいじゃのう。」

るい「算太伯父さんですか?」

回想終了

錠一郎「10年前 偶然 ひなたと出会て るいが京都にいること知って…。 それから… 仕事する度に ためてたんやと思う。 謝りたかったんやと思うよ。 るいと それから るいのお母さんに。」

るい「それやったら… それやったら すぐに そない言うてくれたらええのに…。」

錠一郎「最後に… 少しだけ欲しかったんと違うかなあ。 家族と過ごす時間が。 最後に 少しだけ。」

ダイニング

勇「ほうか。 ひなた 映画村で働きょんか。」

ひなた「うん。 時代劇が好きやから。」

勇「ふ~ん。 桃太郎。 遠慮せんと どんどん食われえ。」

桃太郎「食べてます。」

勇「ハハハッ。 錠一郎さんも。」

錠一郎「ああ はい。」

勇「あ~。 錠一郎さんの『ジョー』いうなあ やっぱり あれか? ジョー・ディマジオからとったんか?」

雪衣「そねんわきゃあなかろう。」

(笑い声)

錠一郎「うわあ…。」

るい「ああ! また もう…。」

錠一郎「ごめんなさい。 すいません。」

るい「あ~。」

錠一郎「うわ…。」

るい「はい。」

錠一郎「ありがとう。 あ… るいとは 大阪で出会うたんです。」

勇「そうか。」

錠一郎「そのころ るいは クリーニング屋さんに勤めてて 僕は そこの客でした。」

勇「うん そうか。」

錠一郎「それから ずっと るいに洗濯してもろてます。」

勇「そうか そうか。 ハハハハ…。 フフフ… あ…。」

(すすり泣き)

勇「ああ…。 あの日… るいが 岡山ぁ出る言うた日。 わしにゃあ 分かっとった。」

回想

勇「住むとこが決まったら 知らせられえよ。」

るい「うん。」

回想終了

勇「るいが 居場所を知らせる気も 手紙やら電話やら よこす気もねえ いうことを。 もう二度と岡山に帰ってくる気がねえ いうことを。 それが こねえして 元気な姿見せてくれて…。 旦那さんやら 娘やら 息子やら連れてきてくれるたあ…。 うう… こ… こねん うれしいこたあねえ。」

(すすり泣き)

るい「勇叔父さん。 長い間 心配かけてごめんなさい。」

(立ち上がるひなた)

るい「ひなた。 何やの 食事中に。」

ひなた「これ 誰?」

るい「お母ちゃんの おじいちゃんと おばあちゃんや。」

ひなた「こっちは?」

勇「るいのお父さんじゃ。 わしの兄さんじゃ。」

ひなた「私と桃のおじいちゃん?」

勇「そうじゃ。」

桃太郎「かっこええなあ。」

ひなた「うん。 こんなん自慢のお父さんやん。」

るい「お母ちゃんは会うたことあらへん。」

ひなた「えっ そうなん?」

勇「るいが生まれる前に 兵隊に取られてしもうたからのう。」

ひなた「ああ…。 うん? おばあちゃんの写真は? あらへんの?」

雪衣「確か アルバムと一緒にしてえたはずじゃ。」

雪衣「はい。」

るい「お母ちゃんの お母さんや。」

ひなた「ふ~ん。 うん? この人は?」

るい「勇叔父さんや。」

ひなた「えっ。」

勇「フッ ヘヘヘヘ…。 ああ… 今年は兄さんの… るいの親父の五十回忌じゃ。 いや… 兄さんだけじゃねえ。 終戦の年に亡うなった人 みんなの 五十回忌じゃ。 できることじゃった 終戦の日まで 岡山におってくれたら ええ供養になろうがのお。」

正門前

桃太郎「それでな…。」

勇「うん。」

桃太郎「2年の夏に やっとレギュラーとってな。」

勇「うん。」

桃太郎「告白しようて決めてん。」

勇「お~!」

桃太郎「甲子園行けたら その人に告白しようて。」

勇「おう!」

桃太郎「そやけど…。」

勇「うん?」

桃太郎「その前に ほかの男と結婚してしもた。」

勇「あ~!」

桃太郎「それで 僕の初恋は終わったんや。」

勇「ふ~ん。 桃太郎。」

勇「うん? おなごを好きになった時ゃあ 甲子園出れたら あれができたら これができたらいうて 先延ばしにするんじゃねえ。 絶対 報われんぞ。 うん。 フフッ ハハハハ…。」

るいの部屋

回想

(雨の音)

回想終了

ひなた「お母ちゃん?」

るい「あ…。」

ひなた「何? この部屋。」

るい「昔 お母ちゃんが使てた部屋や。」

ひなた「へえ~。」

るい「ちょっと お父ちゃんと出かけてくるわ。」

ひなた「あっ そうなん? あっ なあ 昔の写真とかないん?」

るい「えっ? さあ…。 卒業アルバムやったら どっか入ってる思うけど。」

ひなた「探してもええ?」

るい「あんまり散らかさんといてよ。」

ひなた「うん。 あっ お母ちゃん。 あの… お母ちゃんのお母さんて 生きてはるん? あ… いや。 お盆やし 聞いとこかな思て。」

るい「分からへん。」

ひなた「えっ?」

るい「子供の頃 生き別れたんや。」

ひなた「えっ…。 あっ そう…。」

るい「行ってきます。」

ひなた「行ってらっしゃい。」

喫茶店・ディッパーマウスブルース

玄関

錠一郎「定一さんが亡くなって店閉めたいうんは 随分昔に聞いてたんや。 けど 木暮さんに聞いてみたら おんなじ名前の店が岡山になるて 出入りのミュージシャンが 言うてたんやて。」

るい「そしたら 全く別の店かも分からへんの?」

錠一郎「うん…。 ここや。」

ホール

「いらっしゃいませ。 お待ち遠さま。 どうぞ。」

錠一郎「定一さん…。」

るい「そん… そんなはずあらへんやない。」

錠一郎「そやけど…。」

「あの~父の知り合いじゃろうか。 あっ 定一は わしの父親じゃ。」

♬~(レコード)

健一「戦争が終わって帰ってきた時 行き違いがあってのう。 わしゃあ てっきり 父さんが 死んだもんじゃとばあ思い込んで 復員船の着いた横須賀へ そのまま居ついとったんじゃ。 しゃあけど… 父さんが もうおらんのも 父さんの店がねえのも承知で 岡山へ来たんじゃ。 そしたら…。」

回想

♬~(レコード『On the sunny side of the Street』)

健一「父さん…。」

回想終了

健一「孫の一人が ひいじいちゃんの店 一緒にやろうや言うてくれてのう。」

(ドアが開く音)

慎一「じいちゃん。」

健一「うん?」

慎一「おはぎ買ってきたよ。」

健一「はい ご苦労さん。」

慎一「ひいじいちゃんにお供えしとくね。」

健一「ああ。 あっ 孫の慎一じゃ。 大月さん。」

慎一「いらっしゃいませ。」

健一「こねえなこともあるんじゃのう。 稔さんと安子ちゃんが結婚して 娘が生まれたいうなあ 父さんから話聞いとったけど…。 まさか こねえして 錠一郎君の奥さんとして 来てくれるたあのお。」

健一「安子ちゃんのこたあ うわさで聞いた。 娘ょお捨てて 進駐軍さんとアメリカ行ったいうて 悪う言ようた人もおったけど…。 安子ちゃんは そねえな子じゃねえ。 わしが保証する。 何せ わしゃあ 稔さんと安子ちゃんの 初デートの目撃者じゃからの。」

るい「初デート?」

健一「ああ そうじゃ。 テーブル席に座って… コーヒー飲みょうった。」

回想

安子「あ…。 ありがとうございます。」

稔「May I put sugar in your coffee?」

安子「あっ はい。 フフフッ。 あ… イエス。」

回想終了

健一「アッハハハッ。 はい どうぞ。」

るい「ありがとうございます。」

錠一郎「ありがとうございます。」

健一「はい。」

錠一郎「お砂糖入れる?」

るい「ありがとう。」

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